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フェーズ1
8.そんな変な日
しおりを挟む「グフ、グハハハハハ!!!」
豪華なソファに座った王国の第6王子、シュペトロメンネーは先ほどの出来事に笑いが止まらなかった。
先ほどの出来事とはもちろん、出来の悪い召喚者をフルボッコにしたことである。
「見たかゲルマン!素手でやれと言った時のやつの顔を!ボコボコにされた奴の体を!グハハ!爽快であるぞ!」
「わははは!そうでございますな!」
悪どく笑う2人。そんな2人を止めようとする者はいない。
シュペトロメンネーが王子というものもあるが、彼の親、つまり国王もよっぽどのゲスであるため止めようとする正しい道徳を持ち合わせた者はこの王城にはすでに存在しないのだ。
よって、賄賂と権力が行き交い腐敗した政治が行われている。
「さて、やつは部屋で苦しんでいることだろう!見に行ってやるか!」
「そうしましょう!苦しむ姿が楽しみですな!」
「「グハハハハハ!!」」
☆☆☆
シュペトロメンネーとゲルマンは奴が住む部屋へと到着した。先の召喚者、ハヤトがせめて生活だけは、と気遣い日本風に整われた和室である。
シュペトロメンネーはその部屋に先に人をよこして中の様子を確認させていた。
「グハハ、どうだ中は?奴の血で一杯か?うめき声で満タンか?」
「そ、それが.....」
中の様子をこっそりと見た手下はどもる。その様子にイラついた王子は手下を蹴る。
「いいから答えろ!家族もろとも皆殺しにされたいのか!」
「は、はい!な、中で、その、奴はーー」
「奴は?」
「ーーー女とイチャイチャしております」
「「ーーーは?」」
王子は耳を疑った。普通ならあれだけボコられて呻き声を上げるしかできないはずなのだから。
しかし、奴はすでに一度死んでいることを王子は知らない。そして、生き返ったことも。
「な、何を馬鹿なことを!ええい!見た方が早いわ!」
すっかりテンパった王子は部屋のドアを強引に開ける。
そして王子は絶句した。
なぜならそこではーーーー
「ふふ、ここですかゆうまくん♪」
「あ、違う、もうちょい左」
奴がメイドに膝枕されながら耳かきされていたのだから。
「あ.....あ.....」
ありえない光景に口をパクパクさせる王子。
奴はそんな王子に気づいてハテナを浮かべながらも、
「あ、ども」
と一応挨拶を交わす。
しかし、王子はもはやそんな言葉聞いてはいなかった。
「な、なんで?」
☆☆☆
「・・・・・」
「シュペトロメンネー様!まあまあそんなこともありますぞ!」
周りの手下は脳筋のゲルマンがいつ王子の沸点を超えさせるかとヒヤヒヤしていた。
「そんなこともあるだと!?あれだけの傷がすっかり無かったのだぞ!
くっ、くそ!なぜか無性に腹がたつ!あんな奴もう一度殴り倒してしまえ!」
「少しお待ちください我が君」
憤る王子を諌めるようにそこへ現れた黒服を纏う男。王子に雇われた忍者という暗殺部隊の隊長である。
「そんな手ぬるいことをせず、殺してしまわれたらいかがですか?」
「こ、殺す?」
さすがの王子も「殺し」には少し抵抗があった。
「しかし殺してしまえばハヤトに何を言われるか....」
「いえ、事故に見せかければいいのです。訓練中にできた傷が悪化して大量出血し、死亡した。と言えばハヤト殿も納得するでしょう」
「「あったま良いーー!!!!」」
王子とゲルマンは忍者を見直した。ただの陰気臭い奴らだと思っていたが、実はできる集団だったのだと。
王子はニヤリと笑う。あの生意気な奴がもうすぐ死ぬのかと思うと。自分の意向に逆らった奴が死ぬかと思うと。
もう、王子は笑いが止まらなかった。
「よし、では今夜奴を殺せ!」
「ははっ!」
そうして、深夜に奴を殺すことが決定した。
☆☆☆
「あれ?布団が真っ赤だ.....」
朝起きると布団が赤色に染まっていた。それも首元の部分だけ。
しかも部屋が全体的に生臭い。もしかして.....俺夜に死んだ?
「ゆーうまくん♪おはようございまー......おねしょ?」
「どうしたらそうなるんだ?赤色だぞ?」
朝出勤してきたユリエも驚いてることから、ユリエ、ではないと。
じゃあ一体だれが深夜に俺を.....?俺が不死身じゃなかったらどうしてくれんだよ全く!
「ってあれ?」
なんか体が軽い。しかも力がみなぎってくる。この感覚.....まさか!
「ステータス」
ーーーーーーーーーーーー
・楠 夕間 〈くすのき ゆうま〉
年齢 17
性別 男
種族 人間族
職業 七星の魔剣士
Level 2→3
攻撃 C→B+
防御 C-→C+
魔攻 D+→C
魔防 C→B
俊敏 B→B+
魔力 B→A-
総合評価 B-
【ユニークスキル】呪霊
【スキル】鑑定(低)Level2→3
【七星スキル】死亡耐性
【称号】召喚されし者・文字無しの召喚者・七星
経験値 100/20000
ーーーーーーーーーーーーーーー
「なんかステータス上がってるぅぅ!!」
絶対夜に殺されたな俺。もう死ぬたびに何か起こることはわかっているのだ。
問題はだれが夜に俺を殺したかだが......。
「グハハ!死体ーー死体ーー!」
死体死体と誰かが歌っている。俺の部屋の前で。十中八九こいつしかいない。
「どんな顔で死んでいるのかなー!」
そしてバァン!と俺の部屋のドアを蹴破ってきた。
「死体はどこーーーーーでえ?」
俺と目があう、いつぞやの王子。
顔には「なんで死んでないの?」と書いてあるようだ。コイツかよ全く。俺をボコったり殺したりクソみたいなやつだなほんと。
「・・・なんの用でしょう?そういえば布団が真っ赤なんですけど心当たりあります?」
「し、しらなーい」
王子はさっさと逃げて行ってしまった。
・・・ふぅ。ほんとにクズな野郎だ。王子でなければ殴ってる。
「ねぇゆうまくん」
クズな王子にイライラしているとユリエが声をかけてきた。
「なんだ?」
「いえ、あのーーゆうまくん、ここを出てはいかがですか?」
「え」
「教えられることは大体終わりましたし、ここにいても腐った大臣たちに利用されるだけです。だからもう出て行った方がーーー」
なんだか寂しそうに言うユリエ。
確かに出て行きたいとは思っていたが、なんだいきなりだな。
「そうだな。じゃあもう出てくよ」
俺がそう答えると、ユリエはもじもじする。何かを俺に言って欲しいみたいに。
「い、いつごろ出ていくんですか?」
「あー、もう明日ぐらいに」
出ていけるのなら早めがいい。
「ひ、1人で?」
「え?」
何言ってるんだ?
「ユリエも来るんじゃないの?」
「・・・・っ!」
途端に笑顔が弾け飛んだ。
「行くに決まってるじゃないですか~!もう早く言ってくださいよゆうまくん!」
ユリエは嬉しそうに俺の手を握る。こんなユリエは珍しい。
まったく、今日は変なことしか起こらないな。
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