Level2から始まる召喚魔剣士の異世界成り上がり冒険記

みずうし

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フェーズ1

10.旅立ちの日に

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 いよいよ出発の日になった。
 すでに旅の準備は終わり、ハルヒトらにも挨拶を済ませてある。なんだか名残惜しそうにされて、最後は泣きながら「辛かったらいつでも頼ってくれよ」と抱きつかれた。俺は子供か。
 
 そして、部屋に泊まったユリエからの誘惑に耐えつつ眠れない夜を過ごし、朝に至る。おかげで目の下に隈が.....。

 「おはよーございます」
 「お、おはよ」

 目をこすりながらユリエは今にでも二度寝しそうだ。そして普段がしっかりしている分、そのなんだか抜けているようなギャップが。つまりヤバイ。

 「ーーえっ、な、なんで壁に頭打ち付けてるんですかゆうまくん!?」
 「自重です」


 まあそんなこともありながら、誰か王子に絡まれることもなく部屋を出た。



 ☆☆☆



 「おーーーーい!」

 2人静かに長い廊下を歩いていると、呼びかけてくる声が聞こえた。ちなみに誰かさん王子に絡まれたくないから早朝の出発である。
 振り返ってみると、いつかのハヤトさんが駆け寄ってくるのが見えた。例の召喚以来見かけもしなかったが、今更何用だろうか。

 「ユウマと言ったな。俺が世話を見てやれなかったせめてもの餞別だ。受け取ってくれ」
 「・・・・!?」

 な、なんだとっ!普通同郷とはいえ関わることのなかった奴になんて餞別なんかするだろうか。いやしない。
 簡単に言うと、この人超イケメン。

 俺は戸惑いながら袋を受け取る。中には何か入っているがここで開けないのが礼儀だろう。

 「困ったら冒険者ギルドに俺の名前を出してくれ。できる限りのサポートはすると約束しよう。同じ日本人のよしみだ」

 そう言ってにこりと笑うハヤトさん。負けじと俺も微笑み返すが笑みの純度が違う。ハヤトさんは120%、俺は30%の合金製だ。

 しかし、その120%スマイルハヤトさんは、さっきからユリエの方をチラチラ見るのはなんなんだろうか。
 まさか、この人。狙ってんのか?ぜーったい渡さないぞ。

 そんな俺の本意を気にもしないでハヤトさんは一言ぼそりと言った。

 「・・・お前も無理はするなよ」

 「わかってます。あなたこそ上に振り回されてまた胃を壊さないでくださいよ?」

 中身の割には冷たく言い放つユリエ。上辺だけ心配している風を装っている。

 しかし、それ以上に気になるのが.....。
 なんかこの2人知り合いみたいだし、それも元彼元カノ的な雰囲気出しちゃってるよ。

 「「・・・・」」

 「行きましょうゆうまくん」
 「え、うん」
 「体に気をつけるんだぞ!」

 手を引かれてハヤトさんと離れてしまった。
 なんだかユリエはハヤトさんに対して怒っているみたいだ。ますます元恋人説が有力になる。

 「知り合い?」
 「・・・昔お世話になった人です」

 それって元彼?
 なんて俺の口から言えるはずもなく。

 「そっか」

 としか言いようがなかった。まあユリエは可愛い。そりゃもう天使のような可愛さだ。だからこそ元彼なんていてもおかしくはないんだけど....うーん。

 「まあお兄ちゃんなんですけどね」
 「・・・へ?」
 「だからお兄ちゃん」

 ・・・・え、ええ、えええ?

 まさかのそっち身内

 ちょっとホッとした。
 

 ☆☆☆


 「待っていたぞ愚民!」
 「グハハハハハ!待ちくたびれましたな!」

 城を出ると騎士を数名引き連れた王子がニヤリと笑って待ち構えていた。
 最悪だ。こいつと出会わないために早朝に出たのに。コイツ俺のこと大好きかよ。だが残念、俺は大嫌いだ。だから早く散れ!

 「城を出るのだろう?ならば私からも餞別をくれてやろう!」
 「え?」

 あれ?思ったよりいい人?
 なんて思いは次の瞬間に覆される。

 「痛みという名の餞別をな!体を持って味わうがいい!グハハハハハ!!騎士よ行け!!」
 「ガハハハハハ!!」

 やっぱりクソ野郎だった。徹頭徹尾、終始一貫。逆に最後までクソ野郎で清々しいぐらいだ。

 「「「「うおおおお!!!」」」」

 王子の命令に応じて5人の騎士が向かってくる。手に持つのは真剣。殺す気満々である。

 「ユリエ、下がってて」
 「1人で大丈夫ですか?」

 はっきり言って「たぶん無理」だが、まあ3回ぐらい死ねばなんとかなるだろう。
 そんなことを思っている間にも接近してきた騎士は真剣を振り上げ、そして俺の脳天めがけて振り下ろす。

 が、ご存知の通り俺は避けるだけなら得意なのだ。
 振り下ろされた剣を瞬時に横に跳びのき躱す。そして手持ちの木刀で隙だらけの騎士を打った。
 鈍い音がして騎士が倒れる。案外、強い騎士じゃないのかもしれない。

 しかし、肝心なことを俺は忘れていた。騎士は5人いることを。そしてその4人もまた斬りかかってきていたことを。
 つまり、俺は1人倒してホッとしていたのだ。

 「覚悟!」
 「!しまっ」

 た、まで言い切らず背中を斬られた。手入れされていた真剣は俺の肌を簡単に斬り裂き、そして俺の胴を簡単に貫く。
 後ろから斬られ、前から刺された俺は痛みを感じる暇もなく、壮絶な熱さだけを感じて絶命したーーーー

 が、復活。

 「痛いわこのやろう!」

 「「「「は!??」」」」

 即座に起き上がり、ポカーンとしている間に騎士を木刀でめった打ちする。

 「呪霊!」

 ついでに幽霊も召喚。誰にも見えない幽霊は光を帯びて登場し、我に返った騎士たちを後ろから殴りかかった。ドゲスである。

 さて、ではいくら騎士といえども後ろから見えない奴が殴りかかったらどうなるか。
 もちろん気絶する。
 これぞ幽霊を十分に生かした戦法「背後霊」である!
 え?名前?イカしてるでしょ。
 
 「なっ!どうなったのだ!?い、今のは一体!?」
 「き、貴様死んだはずじゃ」

 バタバタと倒れた騎士たちを目にして王子は見事にうろたえていた。
 残っているのは王子とその側近のおっさんのゲルマンとやらだけだ。

 「はは、何が起こったんだろうな?」

 そして俺は手を出すことなく王子の近くにいるいかついおっさんも幽霊に奇襲させ、気絶させた。
 うひょー!!幽霊超つえーじゃん!

 「ゲルマン!?お、お前なにをーー」

 「・・・さて、形勢逆転だな?」

 王子の顔が青くなる。味方が誰もいなくなったことに気が付いたのだろう。

 「あ、あ、あ!ハハハハハ!私は王子であるぞ?何ができるというのだ?手を出してみろ、すぐに王国が敵に回るぞ?」

 ここぞとばかりに王子の特権を使用してきた。
 確かに俺は何もできない。王子に手を出したら指名手配ものだからな。
 だから、「俺」はなにもしない。

 「幽霊、そいつをしばり上げろ」

 命令通りに幽霊は王子をひっ転がして地面に抑えつける。

 「な、なにをする!?私にこんなことをしていいと」

 「はあ?俺はなにもしてないぜ?」

 「な、なにもしてないわけが.....」

 しかし実際俺はなにもしていない。見えない何か・・・・・・が勝手にやってるだけである。だから別にアウトじゃない。ヘッドスライディングのギリギリセーフなのだ。

 「よし、じゃあ王子?お返しだ」

 幽霊が体をきつく締め上げ、王子は悲鳴をあげた。しかし、こいつを助ける奴はもういない。いたとしても助けないだろう。日頃の行いの結果だ。

 「あがっ、クソガッ!覚えてろよ!この仕返しはどこに逃げようと必ず見つけ出して嬲り殺してやるからな!」
 「はいはい。できるならやってみろよ?」

 適当に返すと王子は悔しそうに顔を歪める。そしてあろうことかユリエに目をつけた。

 「グハハ、私は忘れないからな!いつか絶対お前の眼の前であの女も殺してやる!その時泣いて喚くが」
 「幽霊、折れ」

 「あ?あ、ああああああああああ!!!」

 ポキッ、という音とともに王子が壮絶な悲鳴を上げた。
 俺だけならまだしも、ユリエは関係ない。そんなやつを殺すと言っているのだ。

 「言った分の覚悟はできてんだろうな?」

 「あ、あ、あ、だ、黙れ!私がこの世で一番偉いのだ!衛兵!誰もいないのか!さっさとこの男と女を」
 「折れ」

 「ああああああああああ!!!」

 再び骨が折れ、悲鳴が響く。

 「ゆ、ゆうまくん!!」
 「・・・わかってる」

 さすがに人道的にヤバイのは理解している。
 だから最後の通告だ。

 「いいか?今後一切俺らに関わるな。そして、心を入れ替えろ。いいな」

 さすがに懲りたのか、俺の言葉に王子は勢いよく顔を縦にふる。

 「よし、そんじゃあ」

 俺は木刀を振りかぶった。王子の顔が青く染まり、ユリエが制止してくるが関係ない。
 俺は勢いよく木刀を振り下ろしーーーー

 ーーー寸止めで止めた。
 王子は振り下ろす前からすでに意識を手放し、泡を吹いていた。ただ、ビビっただけだ。結果的に俺は何もしていない。何かする気もない。
 同時に、気絶していた騎士たちが何人か起き上がってきていた。

 「あ、ちょうどいい。こいつ縛って吊るし上げといてくれよ」
 「「・・・は?」」
 「恨みあるでしょ?」
 「「承知!!」」

 最後はささやかな仕返しをして王子とのけじめをつけた。
 騎士たちもお疲れさまだ。仕方なく従っている感はプンプン出ていたからな。彼らを責めるのは御門違いというやつだ。

 なんで王子は俺に突っかかってきたのか最後までわからなかったが、これで万事解決。もう流石に絡まれることはないだろう。流石に懲りたはずだ。

 「もうゆうまくんやりすぎです!」

 そして俺も懲りた。拷問みたいで精神磨り減るわアレ.....。
 そして確かに幽霊は便利だが、使い方次第では危ない。自重しなければ・・・。

 「相手はいくらクズだとしても王子ですよ?これから面倒なことになるじゃないですかー!」
 「・・・そっちなんだな」

 そっちでした。

 「わかってるんですかー!?」
 「・・・わかってるって」
 「もー!」

 そんな会話をしながら俺たちは歩き始める。
 そう、王子を懲らしめてもまだ終わりじゃない。これからが始まりなのだ。

 街は眠りから覚め、徐々に起き始める。まるで俺たちの門出を祝うように明るくなり、無意識に足を速めてしまう。

 そして、空には未来を明るく照らすような朝日が昇っていたーーー





ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
一章完結。
更新遅くてすみませんでした!来週からは少し早くなると思います!
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