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フェーズ2
11.ギルド
しおりを挟む街は想像以上に雑多で、そして人々の笑い声が溢れていた。石造りの通りには商人達の出店が並び、母娘の家族や冒険者らしき人々が多く行き交っている。
また、その行き交う人々の人種も様々だ。ポピュラーな人族だけでなく獣人やエルフ、数は少ないが小人なんてものもいる。
「さて、冒険者ギルドはどこかな」
城を出て、これからは自給自足の生活だ。手元にあるのは心やさしきメイド長が用意してくれた銅貨5枚。日本円にして約5万円だ。
一二週間はこれで過ごせる。
しかし逆に一二週間しか過ごせない。つまりNEEETしてる暇はないのだ。グスン。
「え、登録料銅貨1枚!?」
「はい、結構高いですよ?」
さらに叩きつけられる無情な事実。
冒険者登録料1万円。うま○棒が1000本買える値段である。
つまり俺達はあとうま○棒3000本分で生活しなければならないのか。
うま○棒3000本の明日が待ってるぜ!
全然おいしくない。
軽く絶望していると、いつの間にか冒険者ギルドの目の前に来ていた。
金色に輝く成金みたいな建物だ。どういう手入れをしているのか、傷も汚れも一切見当たらない。
そして、入り口にはたむろするヤンキー達。通してくださいなんて言ったら問答無用で殴られそうだ。ただでさえ日本人はフラグ回収率高いのに。
しかし、いつまでも入り口でうじうじしている訳にもいかない。
「まあ冒険者ギルドはまたの機会ということでーーーグエッ」
「逃げるのが早いですよ」
踵を返したが、襟を掴まれたので首がしまった。
「もう、男の子なんだからシャキッとしてください!そんなんで私が男の人に絡まれたらどうするんですか?」
「殺す」
「そ、そこまで!?」
と言いつつユリエはちょっとほおを緩ませる。
まあ冗談はここらにしといて。
「よいしょっ」
とドアを開ける。冒険者?言ったら退いてくれました。
中はやはり酒場風になっていた。大勢の冒険者が酒飲みをし、べろんべろんになっている。さすがは冒険者ギルド。いろんな意味でベテランの巣窟だ。
俺が入ると入り口付近の冒険者はチラリと一瞥してくる。が、それだけで視線を戻した。思ったより人は他人に興味がないらしい。
何事もなく受付に入ると、美人さんに出迎えられた。
ほほう、あっちが天然タイプの可愛いい天使だとすれば、こちらは大人な女神様って感じだろうか。
やはり異世界は美人が多い。
あイタッ!なんで足踏むのユリエさん!?
「冒険者登録をしたいんですが....」
「はい、ではこちらの紙に要項をご記入ください」
お姉さん超事務的っ!!!流れ作業じゃん!!
なのは置いといて、勧められたのは名前や種族、職業などを書く欄があるシンプルな紙だ。ご親切に日本語で書かれてあり、日本の市役所をしみじみと思い出させる。
そんな俺の後ろでユリエは退屈そうにしていた。
「あれ、ユリエは冒険者登録しないの?」
まさかお金がないから!?くっ、ユリエにそんな気遣いをさせるなんて!これからそんな思いをさせないように俺が頑張らねばーーー
「あ、私はもう登録してるんですよー!」
・・・はい。俺の決心返してくれ。
いざ思ったら召喚されてしばらく経つ人が、便利な冒険者ギルドに行ってないはずが無かった。
だが、ああ、うま○棒1000本分浮いた!ウレシイナー、ハハ。
紙を適当にサラサラっと書き、受付に渡すと、
「ではしばらくお待ちください」
ニッコリして受付の人は紙を奥の方へ持って行ってしまった。
何かが出来るまで待てという事らしい。
暇なのでギルドの展示を眺める。するとランキングを見つけた。個人ランキングとPTランキング、そしてギルドランキングに分かれている。
知らないものばかりだ。てかまず異世界語で読めない。これは本格的に文字を読む練習をしなければ....。
「お待たせしました、こちらが冒険者カードになります」
「お、早い!」
「受付は早さが命ですので」
差し出されたのはシンプルな白色のカード。そこにも名前と職業、それにランクらしきものと何かのパーセンテージしか載っていない。簡素だ。
「こちら、ランクは冒険者ギルド独自のもの。そしてパーセンテージは依頼成功率を表しております。依頼成功率の低下は評判にも関わってくるので気をつけてくださいね」
そしてランク表を見せてくれた。
ランク 昇格条件
1つ星 指定された魔物の討伐成功
2つ星 指定された魔物の討伐成功
3つ星 指定された魔物の討伐成功
4つ星 4つ星迷宮の制覇
5つ星 デッドモンスターの討伐成功
6つ星 災害級モンスターの討伐成功
7つ星
降格条件:依頼成功率が20%を切った場合1ランク降格。
「当然ですが、受けられる依頼はランクにあったもののみになります。また、飛び級などは存在しないので一歩ずつランクアップしてくださいね」
終わり、まる。
ええ、短すぎないか?
「そんなことよりも!」
「えっ?」
ズイッと受付の人が身を乗り出してきた。花の香りがフワッと匂う。
「もしかして貴方達が噂に聞くセブンズの方ですか!?」
「・・・はい?」
なんて言った?セブンイ○ブン?
「せ、セブンズって?」
「・・・ああ、別人ですか。ーーーチッ」
「舌打ち!?」
「え?何のことでしょう?」
うふふ、と受付は笑う。だ、騙されないぞ。
「セブンズって何ですか?」
「ああ、セブンズとはあるパーティーの名前ですよ。つい最近、そのメンバーがこの街に来ていると聞きまして。みんなそれで探してるんです」
ほらっと彼女が指さした先にはランキングボード。確かにPTランキングの2位に「セブンズ」と書いてあるーーーー気がする.....。
つまり有名冒険者と言ったところか。
「彼達の1人はイケメン剣闘士。1人は超美少女魔法使い。そんな2人がこの街にーーーって。あ、でも貴方はイケメンじゃありませんでしたね。疑うほうが酷でした」
「それを言うほうが酷じゃないっすか?」
「ふふ、そうですね。ああ、そうだ。これは受付としてなんですが。1つ、注意があります」
そう言って受付の人は紙を渡してきた。
そこにはある顔が載っている。
「攫い屋にご注意ください。もう何人も冒険者が犠牲になっていますので」
「へー、物騒なんですね」
攫い屋か。確かにユリエは気をつけないといけないかもな。天使だから。
「・・・では良い冒険者生活を」
ニッコリ笑って彼女は送り出してくれた。悪女の匂いがプンプンする人である。
だが美人なのは間違いないな、うん。
さて、さっきからユリエの姿が見えないがどこへ行ったかなーーーーーて、なにっ!?
「ちょいちょい、俺らと行こうぜー!」
「ほんとほんと、楽しいからサッ!」
「ちょ、やめてくださいよー」
男2人がユリエをナンパしているっっ!!!
ふ、ふん!ば、馬鹿な奴らだ!ユリエがあんな奴らに靡くわけが.....。
「行こうぜ行こうぜ?」
「もー、やめてくださいってばー」
・・・満更でもなさそうだっっっ!!!
えーえー、そりゃイケメン2人組だけれども。
で、でも.....。
そんな時、ユリエと目があった。動けないでいる俺を見てユリエはなぜかムッとしていた。
「行こうぜ行こうzeーーーー」
「いい加減離してくださいね?」
「オゲッ」
満更でも無かったはずのユリエは一瞬で態度を変えると男の腹を肘で打ち、2秒で悶絶させていた。
そんなユリエはぷんぷん頬を膨らませながらやってくる。
「楽しそう、でしたね?」
時折とんでくる天使の笑顔が闇堕ちしてる件について。
なんでこんなに不機嫌なんだ。
だがユリエも、うん。
「ユリエ・・・・も?」
アレが楽しいのかは知らないが。
「それは~~~~~~っ!」
一心不乱に俺を見て、何かを言いたそうにして、ユリエは肩を落とした。
「ま、いいですよ。さ、じゃあ早速依頼を受けてみましょう」
「うん、そうだな」
ユリエはすぐに切り替えたらしい。
さて、いったい依頼にはどんなものがあるんだろう?
4
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