Level2から始まる召喚魔剣士の異世界成り上がり冒険記

みずうし

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フェーズ2

12.正しいモンスターの運び方

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 「はい、では依頼を受けるにあたって重視しなければならない依頼の内容とはなんだと思いますか?」

 依頼がペタペタ貼ってあるボードを前にユリエがそんなことを聞いてきた。

 「うーん、自分のレベルにあった依頼選びとか?」
 「いえいえ、依頼金ですよ」
 「・・・うん?」
 「だから依頼金ですよ」

 ・・・金か。

 「生々しいな」
 「何言ってるんですか!ただでさえお金がないのに!1にお金!2にお金!34にお金で5にお金です!」
 「全部金じゃないか」

 せっかくの異世界だと言うのにロマンのない話である。

 「つまり、コレです!」

 バン!とユリエはボードを叩いた。その場所は赤い線でグルグル囲われている。絶対ヤバイやつじゃんか。

 「と、いうのは冗談で、この黄色の依頼を今回は受けます」

 ユリエによると依頼は緑→黄→赤と難易度、そして依頼金が上がるらしい。今回受けるのは黄色。程よい難易度と程よい依頼金から一番人気らしい。
 ちなみに緑はおつかいや頼みごと系が、赤はダンジョンの踏破などの危険系が依頼されているという。

 「で、今回受けるのが"討伐クエスト 旅人を襲うダイアウルフを10体討伐せよ!"か」

 推奨ランクは3つ星。3つ星は冒険者の平均ランクだから一般的なクエストだろう。
 ・・・そしてなにより報酬が銅貨2枚!2万円である。日給としては随分破格だ。

 「ま、3つ星と言っても一番死者が出てるのもそのクエストなんですがね♪」
 「え?」

 あ、あっれ~?いまさらりと物騒なことが....。



 ☆☆☆




 ダイアウルフがいるという森についた。町を出て、数十分歩いたところだ。街に近く、冒険者も多いことから行き来された様子が見られる。いまも周りに冒険者がチラホラ。
 なんだかゲームでよく見る風景だけど、実際己で来てみると感慨深いなあ。

 てかこんなに冒険者いたら森のモンスターとか狩られ尽くされそうだが。

 「その心配は無用ですよ!ダイアウルフは1日1回交尾するお盛んなモンスターですから、その分数が多いんです」
 「へ、へえ」

 聞きたくないことを聞いてしまった。

 「だから子ウルフがクゥンクゥン鳴いてる側で親ウルフを、こう、グサリと....」
 「止めてあげて!?」
 「まあ冗談ですよ♪」
 「いや目がマジなんですけど!?」

 このユリエはきっとやるぞ.....。こう見えてユリエは慈悲が無いからな。え、子供?何言ってるんですか敵ですよ?えい、グサッ。みたいな。

 「まあでも親と離れた子ウルフをペットにするのはいいかもしれませんね」 
 「大きくなったら餌にされそうだな」
 「ゆうまくん、美味しそうですもんね」
 「へっ!?」
 「じょーだんですよっ♪」


 と、2人で話しながらも森に入る。俺は(なぜか)冷や汗をかきながら進んでいた。
 異世界の森と言っても地球とあまり変わらない。
 ただ。ただ.......

 「ゲェーコゲコ」
 「ギッギッキッキッキッ」
 「ウォーーーーン」
 「ジリジリジリジリ」

 謎の鳴き声があちこちから聞こえるだけだ。
 それにいまは夏だからかは知らないが、とても蒸し暑いしジメジメしている。
 ・・・もう帰りたい。
 だいたいこんな広い森で狼なんか見つけられるものなのかーーーー

 「っ!!ゆうまくん!来ますよ!」
 「へ?」

 いきなり茂みが揺れる。そこから飛び出してきたのは真っ白な毛を揺らすシェパードぐらいのオオカミだった。

 「グオオオオオ!!!」

 オオカミはヨダレを撒き散らして飛びかかってくる。
 きったねえーー!!とか言ってる場合じゃない。

 「ぐっ!」

 なんとか最初のタックルを木刀で受け止めるとそのままオオカミを受け流す。
 その体勢が崩れたオオカミをユリエは間髪を入れずに真剣で斬り倒した。
 グシャア、というグロい音と、生臭い血の匂いが臭ってくる。

 「ふう、危なかったな!」

 心臓がもげるかと思ったぜまったく。
 それにしてもデカイし、それなりに強い。

 「コイツ、もしかしてダイアウルフのボスとかかな?」
 「え、何言ってるんですか?これは普通の、いえまだ大人になりかけのダイアウルフですよ?」

 「・・・えっ......」

 

 ☆☆☆




 突発性マジデスカショックを乗り越えた俺はその後も襲いかかってくるダイアウルフを次々となぎ倒し、10匹の討伐に成功していた。
 まあ途中から「呪霊」を使い、ウルフの意表をついて攻撃したせいで効率がむちゃ上がったのは俺の手柄だろう。
 全部とどめを差したのはユリエだけどなっ。だって俺、真剣もってないし。木刀しか持たない派だし。真剣買うの忘れてただけだけど。

 だから経験値はユリエが全部掻っ攫っていった。なのにダイアウルフの亡骸は俺が全部運ぶという理不尽。

 「ゆうまくーん、少し持ちましょうか?」

 と、声はかけてくるが勿論持つ気は皆無なのだ。

 「いや、いいよ」
 「じゃあお言葉に甘えて」

 そらな。まあ俺もユリエの可愛らしい私服を獣の血で汚すのはどうかと思うけどさ。

 「てかなんでとどめ差してんのに返り血浴びてないんだ?」
 「それは、女の子だからです?」
 「すげえな!?」

 俺なんかダイアウルフのヨダレでビショビショだぞ。トラウマレベルだぞ。
 地球の服、これだけしかないのに......。



 「はい、確かに10匹確認しました。銅貨2枚になります」

 ギルドに戻り、依頼達成の報告をすませる。しかしなぜか担当のお姉さんはおっかなびっくりしていた。

 「でも、次からはモンスターの確定部位だけでいいですよ?」
 「え、確定部位?」
 「はい、それが討伐の確認になりますので。例えばダイアウルフなら耳を持っていただければ」
 「「・・・・」」

 じゃあわざわざ亡骸持ってこなくて良かったのか。道理で道中他の冒険者にジロジロ見られると思った。

 「ま、まあ銅貨2枚分の対価だと思えば。ね、ゆうまくん?」
 「う、うん........うん?」

 なんか誤魔化された気がする。

 「そんなことより今日の宿とご飯探しですよ!汗かいたからお風呂も浴びたいし......ああ、なんでもう夕暮れなんですか?」
 「そりゃあずっと森にいたからなー」

 もう東の空が夕焼け色に染まっている。あと数十分もすれば辺りは暗くなるだろう。

 異世界の街は眠っていくように太陽の日の入りを見送っていた。


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