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奏は竹内さんの部屋を後にすると、他の病室を回るのは後にしてナースステーションに戻った。
看護師からの質問に答えたり話を聞いたり、カルテをもう一度開いたりしていたが、その実廊下が気になって仕方がない。
耳を澄ませチラチラ視線を送りながら様子を窺っていると、たまたま通りかかった人物とバチっと目が合った。
よっ! と肉厚な右手が上がり、「椿の兄ちゃん、今日もお勤めご苦労さん!」
ご機嫌な挨拶に、奏もにこやかにこたえる。
「あ、鮫島さん、こんにちは。いつも申し上げていますが、僕の苗字は桜木です」
鮫島さんは、その日の気分で奏の苗字を変化させる。
椿、茨城、枕木、六本木……ラッキーなんてのもあった。好き勝手に呼んだあと必ず兄ちゃんを付ける。
因みに今まで一度も桜木と呼ばれたことはない。
「細かいことは気にすんなって~」
「まぁそうですね……って違います!」
はたから見れば冗談のようなやり取りだが、奏は鮫島さんとのこの挨拶儀礼を大切に思っている。
鮫島さんは面と向かえばジョークを飛ばし、明るく会話してくれるが、殆ど人とは関わらず部屋でお酒を飲んでいることが多い。『俺は一人ぼっち』が口癖だ。
寂しがり屋な彼が毎日仕掛ける小さないたずらに込めた思い。
臨終が近づくのを感じながら、恐らく無意識に鮫島さんは甘えられる相手を求めている。
奏は彼の思いを受け止め、そっと寄り添いたいのだ。
「……それはそうと鮫島さん、今日は凄くオシャレですね。どうしたんですか?」
糊のきいた真っ白なポロシャツに皺のない紺のパンツ、髪もさっぱりと整えて清潔感がある。いつもの飲んだくれの片りんは微塵もない。
「は? 何を言ってんだポッキーの兄ちゃん、酔ってんのか? 今日は外泊してくるって言っただろ?」
――― ポ、ポッキー? そう来たか!
「皆さんに愛される素敵な名前を有り難うございます。ちなみに僕はイチゴ味が好きですね~って違いますよ、桜木です。いや今はそこじゃなくて」
と言ったところで、部屋の奥から近づいてきた師長の守屋さんが言葉を挟む。
「鮫島さん、外泊の件はさっき私たちに聞きに来たばかりですよね? ですから先生には未だ伝えていませんでした。でも、あまり先生を困らせないで下さいね? 外泊取り消しちゃいますよ」
と笑顔でピシャリ。
この病院の緩和ケア病棟では、病状が安定している患者が外泊を希望する場合、いちいち医師に許可を取る必要はない。看護師が了承すればお泊りはオッケーだ。
「勘弁してくれよ~。兄ちゃん、まぁそういうこったからよろしくな。じゃ、お嬢ちゃんたち行ってくるぜぃ!」
鮫島さんは意気揚々と、病棟入り口の自動ドアの方へ歩いて行った。
その姿を笑顔で見送る奏の耳に、「じゃあね、おじいちゃんまたね~」と、ゴムまりのように弾んだ声が飛び込んだ。
――― あっ!
数秒後、ナースステーションの前を竹内さんの家族が通る。
奏と目が合った息子さんは足を止め、「父をどうか……」と言いかけるも、「すみませんっ、少しお話がありまして」と、とうの相手に遮られる。そのまま主治医は慌てた様子でナースステーションを飛び出し、患者の家族に駆け寄った。
「先生、どうされました?」
息子さんは深刻な話かと、表情を引きつらせる。
「あ、怖い話ではありません。ですが話しをする間、お子さんたちには遊んでいてもらいたいのですが……」
要は子供たちのいないところで話しがしたいのだ、と察した息子さんは、「私だけで良いですか?」と穏やかに問いかける。
奏は「いえあの」と独り言のように言って、傍でお嫁さんと一緒に子供たちの相手をする老婦人に視線を送った。
「できればお母様も宜しいでしょうか?」
「じゃあ私は子供たちを遊ばせてきますあから、ゆっくりお話しして下さい」
お嫁さんは感じの良い声で言って、子供たちを連れその場を後にした。
「もう一度、竹内さんの部屋にお伺いして、そこで少しお話しさせて頂きたいのですが……」
「分かりました」
主治医の問いかけに、母と息子は図らずも声をそろえた。
*
「竹内さん、ちょっといいですか?」
「ん? またお前か。今度は何の用だ!?」
先ほどまでの蕩けるような笑顔はどこへやら、竹内さんはむすっとした顔つきと尖った声で奏を迎えた。
――― 祭りの後の寂しさや、様々な思いが気持ちを重たくさせているのだろう……。きっとその中には、お孫さんたちとの約束も含まれているのではないだろうか……。
「少しお話がありまして」
と口にする若造の後ろから、奥さんと息子さんが顔を出すのを見た途端、竹内さんはビックリしたように目を見開いた。
「お前達、いったいどうしたんだ!?」
「いや、先生が少し話しをしたいっておっしゃってさ……。先生、あのお話しって?」
と、息子さんは怪訝な顔で父親の主治医を見つめる。
奏は落ち着いた様子で「立ち話もなんですから」と、二人に窓際の席をすすめ、着席するタイミングを見計らって静かに口を開いた。
「竹内さん、ご機嫌はいかがですか?」
にこやかに問いかける若造を見つめながら、深く皺の刻み込まれた頑固な顔がいっそう険しさを増す。
「だから前にも言っただろうっ! こういう時はご機嫌じゃなくて、調子はと聞くんだ!」
「そうでしたね。でも今はお体のことではなくご気分を伺いたいので、敢えてご機嫌とお尋ねしました」
「ふんっ、そんなもん聞いてどうする……」
ブツブツと呟いてそっぽを向く老人に、
「お孫さん達と楽しい時間を過ごされて御機嫌はどうかなと、主治医としては凄く気になりまして」
と柔らかく問いかける。
「そんなもんっ、なにも変わらん!!」
「そうですか? 僕にはとっても幸せそうに見えましたよ」
「わざわざそんな無駄口をたたきに来たのかっ!! 邪魔だからとっとと出て行ってくれ!!」
奏の目に声を荒らげる竹内さんは必死で虚勢を張っているようにしか見えず、痛々しくてならなかった。
「そんなに怒らないで下さい。では、聞き方を変えますね。竹内さん、何かしたい事はありませんか?」
「……」
奏がいつもと同じように竹内さんの次の言葉を待つ中、厳めしかった顔は徐々に戸惑いの色を深める。
竹内さんは、しばらく奏の目を見つめていたが、やがてその視線を下にそらしてしまった。
だが、いつものようにそっぽを向く訳ではなく、何かずっと逡巡し続けているように見える。
「父さん、どうしたんだい? やりたいことがあるなら言って」
息子さんが熱のこもった声をかけるが、竹内さんは相変わらず黙ったままだ。
――― やめておいた方が良いかも知れないな……。
「竹内さん、僕の早とちりだったかも知れませんね、すみません……。それにしても今日も綺麗な青空ですね」
奏は固まって沈んでいく空気を、明るく穏やかな声で解きほぐし、雲一つない窓の外に視線を移した。
それにつられて竹内さんも、窓の外に視線を移す。
「なぁ先生よぉ……」
竹内さんは、空を見つめたまま呟くように言った。奏も竹内さんの調子に合わせてゆっくりと応える。
「どうしました?」
「孫と中島行くって約束したんだけどよ……」
と言って洟を啜り、声を詰まらせる。
「そうみたいですね」
優しい声に導かれるように気難しい老人は、ゆっくりと奏の方へ顔を向け、嗚咽交じりに切れ切れに思いを口にする。奏は一つ一つの言葉にそっと頷きながら耳を傾けた。
「それが……急に癌だって言われるわ……なおら…治らないって言われるわ……医者が勧めるまま……ここに来て……このざまだ。孫との約束……、あんなに…あんなに楽しみにしているのに……叶えてやれ……ない……俺はそれが……心残りで………ならねぇんだ」
「父さん、あの約束を守ってくれようとしてたんだね……」
息子さんは遣る瀬無い思いを感じながら、切ない眼差しで竹内さんを見つめた。
「竹内さん、中島行きたいんですよね? みんなで力を合わせれば、行けると思いますよ」
真綿で包み込むような優しい声に、誰からともなく「え……」っと殆ど吐息だけの声が漏れる。
老人は耳を疑い、涙に濡れた瞳を驚愕したように見開き、奥さんも息子さんもびっくりした顔で、目の前の主治医を見つめている。
奏は、目の前の三人の瞳に、小さいながら新たな光が宿ったように見え、彼の胸にも温かなものが湧き上がるのを感じた。しかし、まだ話は始まったばかり、無責任な対応にならないようにと気を引き締めた。
看護師からの質問に答えたり話を聞いたり、カルテをもう一度開いたりしていたが、その実廊下が気になって仕方がない。
耳を澄ませチラチラ視線を送りながら様子を窺っていると、たまたま通りかかった人物とバチっと目が合った。
よっ! と肉厚な右手が上がり、「椿の兄ちゃん、今日もお勤めご苦労さん!」
ご機嫌な挨拶に、奏もにこやかにこたえる。
「あ、鮫島さん、こんにちは。いつも申し上げていますが、僕の苗字は桜木です」
鮫島さんは、その日の気分で奏の苗字を変化させる。
椿、茨城、枕木、六本木……ラッキーなんてのもあった。好き勝手に呼んだあと必ず兄ちゃんを付ける。
因みに今まで一度も桜木と呼ばれたことはない。
「細かいことは気にすんなって~」
「まぁそうですね……って違います!」
はたから見れば冗談のようなやり取りだが、奏は鮫島さんとのこの挨拶儀礼を大切に思っている。
鮫島さんは面と向かえばジョークを飛ばし、明るく会話してくれるが、殆ど人とは関わらず部屋でお酒を飲んでいることが多い。『俺は一人ぼっち』が口癖だ。
寂しがり屋な彼が毎日仕掛ける小さないたずらに込めた思い。
臨終が近づくのを感じながら、恐らく無意識に鮫島さんは甘えられる相手を求めている。
奏は彼の思いを受け止め、そっと寄り添いたいのだ。
「……それはそうと鮫島さん、今日は凄くオシャレですね。どうしたんですか?」
糊のきいた真っ白なポロシャツに皺のない紺のパンツ、髪もさっぱりと整えて清潔感がある。いつもの飲んだくれの片りんは微塵もない。
「は? 何を言ってんだポッキーの兄ちゃん、酔ってんのか? 今日は外泊してくるって言っただろ?」
――― ポ、ポッキー? そう来たか!
「皆さんに愛される素敵な名前を有り難うございます。ちなみに僕はイチゴ味が好きですね~って違いますよ、桜木です。いや今はそこじゃなくて」
と言ったところで、部屋の奥から近づいてきた師長の守屋さんが言葉を挟む。
「鮫島さん、外泊の件はさっき私たちに聞きに来たばかりですよね? ですから先生には未だ伝えていませんでした。でも、あまり先生を困らせないで下さいね? 外泊取り消しちゃいますよ」
と笑顔でピシャリ。
この病院の緩和ケア病棟では、病状が安定している患者が外泊を希望する場合、いちいち医師に許可を取る必要はない。看護師が了承すればお泊りはオッケーだ。
「勘弁してくれよ~。兄ちゃん、まぁそういうこったからよろしくな。じゃ、お嬢ちゃんたち行ってくるぜぃ!」
鮫島さんは意気揚々と、病棟入り口の自動ドアの方へ歩いて行った。
その姿を笑顔で見送る奏の耳に、「じゃあね、おじいちゃんまたね~」と、ゴムまりのように弾んだ声が飛び込んだ。
――― あっ!
数秒後、ナースステーションの前を竹内さんの家族が通る。
奏と目が合った息子さんは足を止め、「父をどうか……」と言いかけるも、「すみませんっ、少しお話がありまして」と、とうの相手に遮られる。そのまま主治医は慌てた様子でナースステーションを飛び出し、患者の家族に駆け寄った。
「先生、どうされました?」
息子さんは深刻な話かと、表情を引きつらせる。
「あ、怖い話ではありません。ですが話しをする間、お子さんたちには遊んでいてもらいたいのですが……」
要は子供たちのいないところで話しがしたいのだ、と察した息子さんは、「私だけで良いですか?」と穏やかに問いかける。
奏は「いえあの」と独り言のように言って、傍でお嫁さんと一緒に子供たちの相手をする老婦人に視線を送った。
「できればお母様も宜しいでしょうか?」
「じゃあ私は子供たちを遊ばせてきますあから、ゆっくりお話しして下さい」
お嫁さんは感じの良い声で言って、子供たちを連れその場を後にした。
「もう一度、竹内さんの部屋にお伺いして、そこで少しお話しさせて頂きたいのですが……」
「分かりました」
主治医の問いかけに、母と息子は図らずも声をそろえた。
*
「竹内さん、ちょっといいですか?」
「ん? またお前か。今度は何の用だ!?」
先ほどまでの蕩けるような笑顔はどこへやら、竹内さんはむすっとした顔つきと尖った声で奏を迎えた。
――― 祭りの後の寂しさや、様々な思いが気持ちを重たくさせているのだろう……。きっとその中には、お孫さんたちとの約束も含まれているのではないだろうか……。
「少しお話がありまして」
と口にする若造の後ろから、奥さんと息子さんが顔を出すのを見た途端、竹内さんはビックリしたように目を見開いた。
「お前達、いったいどうしたんだ!?」
「いや、先生が少し話しをしたいっておっしゃってさ……。先生、あのお話しって?」
と、息子さんは怪訝な顔で父親の主治医を見つめる。
奏は落ち着いた様子で「立ち話もなんですから」と、二人に窓際の席をすすめ、着席するタイミングを見計らって静かに口を開いた。
「竹内さん、ご機嫌はいかがですか?」
にこやかに問いかける若造を見つめながら、深く皺の刻み込まれた頑固な顔がいっそう険しさを増す。
「だから前にも言っただろうっ! こういう時はご機嫌じゃなくて、調子はと聞くんだ!」
「そうでしたね。でも今はお体のことではなくご気分を伺いたいので、敢えてご機嫌とお尋ねしました」
「ふんっ、そんなもん聞いてどうする……」
ブツブツと呟いてそっぽを向く老人に、
「お孫さん達と楽しい時間を過ごされて御機嫌はどうかなと、主治医としては凄く気になりまして」
と柔らかく問いかける。
「そんなもんっ、なにも変わらん!!」
「そうですか? 僕にはとっても幸せそうに見えましたよ」
「わざわざそんな無駄口をたたきに来たのかっ!! 邪魔だからとっとと出て行ってくれ!!」
奏の目に声を荒らげる竹内さんは必死で虚勢を張っているようにしか見えず、痛々しくてならなかった。
「そんなに怒らないで下さい。では、聞き方を変えますね。竹内さん、何かしたい事はありませんか?」
「……」
奏がいつもと同じように竹内さんの次の言葉を待つ中、厳めしかった顔は徐々に戸惑いの色を深める。
竹内さんは、しばらく奏の目を見つめていたが、やがてその視線を下にそらしてしまった。
だが、いつものようにそっぽを向く訳ではなく、何かずっと逡巡し続けているように見える。
「父さん、どうしたんだい? やりたいことがあるなら言って」
息子さんが熱のこもった声をかけるが、竹内さんは相変わらず黙ったままだ。
――― やめておいた方が良いかも知れないな……。
「竹内さん、僕の早とちりだったかも知れませんね、すみません……。それにしても今日も綺麗な青空ですね」
奏は固まって沈んでいく空気を、明るく穏やかな声で解きほぐし、雲一つない窓の外に視線を移した。
それにつられて竹内さんも、窓の外に視線を移す。
「なぁ先生よぉ……」
竹内さんは、空を見つめたまま呟くように言った。奏も竹内さんの調子に合わせてゆっくりと応える。
「どうしました?」
「孫と中島行くって約束したんだけどよ……」
と言って洟を啜り、声を詰まらせる。
「そうみたいですね」
優しい声に導かれるように気難しい老人は、ゆっくりと奏の方へ顔を向け、嗚咽交じりに切れ切れに思いを口にする。奏は一つ一つの言葉にそっと頷きながら耳を傾けた。
「それが……急に癌だって言われるわ……なおら…治らないって言われるわ……医者が勧めるまま……ここに来て……このざまだ。孫との約束……、あんなに…あんなに楽しみにしているのに……叶えてやれ……ない……俺はそれが……心残りで………ならねぇんだ」
「父さん、あの約束を守ってくれようとしてたんだね……」
息子さんは遣る瀬無い思いを感じながら、切ない眼差しで竹内さんを見つめた。
「竹内さん、中島行きたいんですよね? みんなで力を合わせれば、行けると思いますよ」
真綿で包み込むような優しい声に、誰からともなく「え……」っと殆ど吐息だけの声が漏れる。
老人は耳を疑い、涙に濡れた瞳を驚愕したように見開き、奥さんも息子さんもびっくりした顔で、目の前の主治医を見つめている。
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