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う、嘘でしょう? 前編(数子)
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私も入館手続きを済ませ、お父さんの病室へ
「……ああそれと、あさって(水曜日)から学会で、金曜の夕方戻って来ます。その間は、他の医者が診に来ますので」
と鈴田先生。
「ああ、分かった。……いや、分かりました」
イケメン医師は苦笑してから、
「だから、ですます調じゃなくて良いですって! 舌噛まれて食べられなくなって治りが遅くなったら、僕の評価もベッドの回転率も下がって迷惑ですから」
と、片眉を上げながら皮肉っぽく言う。
「ははは、ありがとな。そう言えば数子、金曜日誕生日だろう? その…彼氏と約束とかはどうなんだ? お父さんの事なら気にしなくて良いんだぞ」
ギックーん!!!
「ああ…誕生日の日なんだけどねぇ……」
と言いながら、脳内フル回転で真っ赤なウソを考える。
「彼、金曜日は部長と一緒に大阪に出張なの……。で、埋め合わせは後日してくれる事になってるから大丈夫」
ふふふ、と幸せそうに口の端を上向かせ偽りの笑みを浮かべる。
空しい、そして心苦しい。
なぁんて言ってる場合じゃないっ!!
これ以上突っ込まれない為に別の話題を考える…も、良いネタが浮かびませ~ん。
ええい、この際なんでも良いっ!!
「先生……、学会はどちらに行かれるんですか?」
ぜんぜん興味無いけどねー!
「北海道です」
「わあっ、美味しいものが沢山食べられそうですね! 新鮮なお刺身とか、絞りたてのミルクとか、あとラーメンとか……」
イケメンドクターは鼻先で笑ってから、
「旅行に行くわけでは無いので……。それに、あたったり腹を下すと仕事に差し支えますので、僕は生ものも牛乳も口にしないようにしてるんです。あと正直、北海道に行ってまでラーメン食いたいとは思いませんねえ」
と、さらりと言う。
もとはと言えば話を振った私が悪いけど、くぅぅ、そんな言い方しなくてもぉぉ!!
超がつくほどかっこイイし笑顔も可愛いけど、貴方に彼女がいないのは、忙しいからだけじゃないはずっ!!
そう思った娘の横で、お父さんは感心したように
「体に気をつかってるなんてプロだなぁ……」
とポソリ。
この人の事が本当に好きなのねぇ……。
でも確かにプロかも。
口にするものはオーガニックとかかな?
何だかこの人いろいろこだわりそうだから……。
けれど翌日私は、衝撃的な事実を知るのだった。
*
翌日夕方六時半、病院一階のコンビニに飲み物とグミを買いに行った時の事、
あ……
「鈴田先生、こんばんは」
「あ、こんばんは」
彼が持っている、カップラーメンが山盛り入ったカゴに自然に目が行った。
五百mlのイチゴ牛乳も数本見える。
「じゃんけんで負けて買い出しですか?」
いきなり吹き出すイケメンドクター。
「ははは、全部僕が食べるんですよ」
「あの、おやつとか忙しい時の非常食ですか?」
「いや、普通に僕のいつもの食事ですよ」
しれっと言われて目をぱちくり。
「この二年、朝はイチゴ牛乳で、昼は職員食堂が開いてる時間に間に合えば行きますけど、大抵無理ですし、夜も週に四、五日はカップラーメンですね」
え゛、えええーっ!? この人、体になんて全然気ぃ使ってないしーっ!!
なるほどそれだけラーメンばっか食べてたら、北海道行ってまで食べたくは無いわな~!
それに牛乳はNGって言ってたけど、イチゴがつけば良いんかーい!!
ま、まあ本物の牛乳じゃないけどネ……。
「あ、体に悪そうって顔に書いてありますけど、僕は健康診断で毎年A判定もらってますし、大丈夫です」
「ですよねぇ~」
何も言うまい。言い返されても面倒臭いし。
「北海道気を付けて行って来て下さいね。では」
そして金曜日の夕方、お花の水を取り替えようと病院の廊下に出た私は、遠く方からこちらに向かって歩いて来る男性に目が釘付けになりフリーズ。
な、何で優君がいるのよーーーっ!!!?
「……ああそれと、あさって(水曜日)から学会で、金曜の夕方戻って来ます。その間は、他の医者が診に来ますので」
と鈴田先生。
「ああ、分かった。……いや、分かりました」
イケメン医師は苦笑してから、
「だから、ですます調じゃなくて良いですって! 舌噛まれて食べられなくなって治りが遅くなったら、僕の評価もベッドの回転率も下がって迷惑ですから」
と、片眉を上げながら皮肉っぽく言う。
「ははは、ありがとな。そう言えば数子、金曜日誕生日だろう? その…彼氏と約束とかはどうなんだ? お父さんの事なら気にしなくて良いんだぞ」
ギックーん!!!
「ああ…誕生日の日なんだけどねぇ……」
と言いながら、脳内フル回転で真っ赤なウソを考える。
「彼、金曜日は部長と一緒に大阪に出張なの……。で、埋め合わせは後日してくれる事になってるから大丈夫」
ふふふ、と幸せそうに口の端を上向かせ偽りの笑みを浮かべる。
空しい、そして心苦しい。
なぁんて言ってる場合じゃないっ!!
これ以上突っ込まれない為に別の話題を考える…も、良いネタが浮かびませ~ん。
ええい、この際なんでも良いっ!!
「先生……、学会はどちらに行かれるんですか?」
ぜんぜん興味無いけどねー!
「北海道です」
「わあっ、美味しいものが沢山食べられそうですね! 新鮮なお刺身とか、絞りたてのミルクとか、あとラーメンとか……」
イケメンドクターは鼻先で笑ってから、
「旅行に行くわけでは無いので……。それに、あたったり腹を下すと仕事に差し支えますので、僕は生ものも牛乳も口にしないようにしてるんです。あと正直、北海道に行ってまでラーメン食いたいとは思いませんねえ」
と、さらりと言う。
もとはと言えば話を振った私が悪いけど、くぅぅ、そんな言い方しなくてもぉぉ!!
超がつくほどかっこイイし笑顔も可愛いけど、貴方に彼女がいないのは、忙しいからだけじゃないはずっ!!
そう思った娘の横で、お父さんは感心したように
「体に気をつかってるなんてプロだなぁ……」
とポソリ。
この人の事が本当に好きなのねぇ……。
でも確かにプロかも。
口にするものはオーガニックとかかな?
何だかこの人いろいろこだわりそうだから……。
けれど翌日私は、衝撃的な事実を知るのだった。
*
翌日夕方六時半、病院一階のコンビニに飲み物とグミを買いに行った時の事、
あ……
「鈴田先生、こんばんは」
「あ、こんばんは」
彼が持っている、カップラーメンが山盛り入ったカゴに自然に目が行った。
五百mlのイチゴ牛乳も数本見える。
「じゃんけんで負けて買い出しですか?」
いきなり吹き出すイケメンドクター。
「ははは、全部僕が食べるんですよ」
「あの、おやつとか忙しい時の非常食ですか?」
「いや、普通に僕のいつもの食事ですよ」
しれっと言われて目をぱちくり。
「この二年、朝はイチゴ牛乳で、昼は職員食堂が開いてる時間に間に合えば行きますけど、大抵無理ですし、夜も週に四、五日はカップラーメンですね」
え゛、えええーっ!? この人、体になんて全然気ぃ使ってないしーっ!!
なるほどそれだけラーメンばっか食べてたら、北海道行ってまで食べたくは無いわな~!
それに牛乳はNGって言ってたけど、イチゴがつけば良いんかーい!!
ま、まあ本物の牛乳じゃないけどネ……。
「あ、体に悪そうって顔に書いてありますけど、僕は健康診断で毎年A判定もらってますし、大丈夫です」
「ですよねぇ~」
何も言うまい。言い返されても面倒臭いし。
「北海道気を付けて行って来て下さいね。では」
そして金曜日の夕方、お花の水を取り替えようと病院の廊下に出た私は、遠く方からこちらに向かって歩いて来る男性に目が釘付けになりフリーズ。
な、何で優君がいるのよーーーっ!!!?
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