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歓迎会

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「丸夫くんのエッチっ! スケベっ! 変態っ!」
 群青学園ギルドホール、中央にある広いダンスホールから廊下を歩いて進んだ奥まった隅にある控室に瑠璃子の怒声が響き渡った。
「ドレスってエッチなドレスじゃない」



 胸もとが激しく開いた丸夫特製ドレスを着た瑠璃子はそれはそれで可愛かった。
 しかしそんなセクシーな服を着たこともない瑠璃子にとっては拷問刑に等しい羞恥プレイだった。

「やだなあルリルリは、SEXOでは晴れの舞台にエロ装備を身に付けるくらい当然の事だよ」
 やれやれと小ばかにするような仕草を見せる丸夫、やっぱりその視線は瑠璃子のおっぱいにあった。
「別に恥ずかしがることじゃない、街中を歩くわけじゃないんだから、まあ街中をエロ装備で歩く女の子もいるけどね」
 そうなの? と隣の加奈子に目配せしてみれば、確かに加奈子も瑠璃子ほどではないが胸もとが開いたセクシーなドレスを着ていた。

「とにかく、主役にはそれなりに派手な格好をしてもらわないとね」
 そう言うと丸夫は真司の顔を見た。口の動きだけで何かを伝えようとしている様子だった。たぶんホ、メ、ロと言っている様だった。

「瑠璃ちゃんのその服可愛いよ」
 真司がにこやかな笑みを作ってそう言うと「そ……そう?」と瑠璃子もまんざらではない顔になった。
「ちょっとおっぱいが開きすぎかもしれないけど、真ちゃんが可愛いって言うなら」
 セクシードレスを着て、モジモジと恥ずかしそうにする瑠璃子は破壊力抜群の可愛さだった。
 丸夫が小さくガッツポーズを決める。

 結局真司の言葉が決め手になり、瑠璃子はそのセクシードレスを着ることを了承した。
 女の子はやっぱりお洒落をしたいのである。きわどい服だって、好きな男の子が可愛いと言えばまんざらじゃない。

「衣装が決まったなら、今日のダンスパーティの説明をするわね」
 加奈子の説明はこんな感じだった。
 まず、出席者は真司と瑠璃子のクラスメートだけ、20人ほどのパーティになるようだった。
 軽音部でギターを弾いている斉藤くんとNPCのバンド演奏に合わせみんなで踊る。曲はクラブミュージック中心で初心者でもなんなく踊れるそうだ。
 実際にBGMを流しながら加奈子に軽くレクチャーを受けると、二人ともちゃんと踊れた。瑠璃子なんかは持ち前のVRゲーム上手さを発揮して見事に踊った。
 セクシードレスの瑠璃子の踊りはとにかく栄えた。
 さらに立食スペースが確保され料理研究会所属の嫁にしたい女の子クラスナンバーワンの後藤さんの料理と加奈子のお茶が振る舞われるそうだ。

 一通り必要なレクチャーを受けた真司たちがダンスホールに移動すると、そこにはもう十数人のクラスメートが集まっていて、二人を歓迎してくれた。
 ホールは広々としていて、中世の貴族が集まる劇場の様だった。
 ダンスをする中央のスペースは十分な広さで20人程度が踊るのにちょうどよい広さだった。
 ダンススペースの脇には立食台が置かれ、美味しそうな料理が湯気を上げている。ホールの奥にはステージがありバンドがすでにセッティングを済ませていた。

「瑠璃ちゃんマジ可愛い、結婚して」
 クラスメートの男子が口々に瑠璃子を褒める。
「あんたたち瑠璃ちゃん驚いてるでしょ、たからないたからない」
 瑠璃子を囲んでぎゃーぎゃー騒ぐ男子を女子たちが一匹一匹引き連れていく。瑠璃子は嬉しそうに男の子たちの相手をしていた。
 そんなやり取りをしているうちにパーティの開始の時間になった。

「盛り上げってるかい、野郎ども、今日は新しい仲間の歓迎会だ」
 わあと歓声がわく、壇上に立つ丸夫が唾を飛ばしながら開会のあいさつを始めた。
 ほどなくして、真司と瑠璃子も壇上に上がりみんなにあいさつした。
「私、このゲームを遊びつくすつもりだから、皆、よろしくなのだ」

 瑠璃子が元気な声であいさつすると、男連中から黄色い声援が飛んだ。女の子たちも力いっぱい拍手してくれた。
 その後軽音部の斉藤くんと料理研究会の後藤さんが軽く挨拶をして、ミュージックスタートともに歓迎会は開演となった。

 予想の通り、瑠璃子には多数のダンスのお誘いがあった。
 瑠璃子は片っ端から男子の手を取ると、ホール中央で踊り倒した。
 そんな瑠璃子を立食コーナーのお茶を飲みながら見ていた真司も女子に誘われた。

「瑠璃ちゃん妙にダンス上手いね、クラブとかに通って……るわけないか、瑠璃ちゃん全身麻痺だもんね」
 真司をダンスに誘った嫁にしたい女子ナンバーワンの後藤さんが不思議そうに瑠璃子を見た。
「こっちでは凄い元気そうでよかった。みんな瑠璃ちゃんのこと好きで、心配してるんだよね」

 女子の大半は瑠璃子に優しいし、男子連中にも密かな人気があった。
 皆、瑠璃子を大事に思っていてくれている、それが二人には有難かった。

 後藤さんと軽く何曲が踊った後、今度は加奈子が真司の元へやってきた。
「瑠璃ちゃん凄い元気、あっという間にこの会場の誰よりダンス上手くなっちゃったね」
 瑠璃子はホールのど真ん中で相変わらす踊りたおしている。
 男子連中はそんな瑠璃子と祭りではしゃぐ子供の様に戯れていた。
 とても心地良い時間だった。

 加奈子の踊りは控えめで、中央で踊る瑠璃子の良い引き立て役になった。
 真司もそんな加奈子の手を取り控えめに踊った。
 数曲踊った後、加奈子は立食台のお茶をチェックしに行った。

「真ちゃんっ! 来てっ!」
 男子全員と踊りたおした瑠璃子が真司を呼んだ。真司はうなずいて、ホール中央へと向かう。
 瑠璃子の手をとって二人が踊り出した時には周りから声援が飛んだ。
「やっぱお似合いだぜ、二人とも」
「頑張れよな、瑠璃ちゃん、真司」
「みんな、ありがとう~」

 感極まった瑠璃子は泣いてしまった。ポロポロと涙をこぼしながら、それでも嬉しそうに笑った。

「私決めたよ」
 涙をぬぐって瑠璃子が凄く真面目な顔をした。
「何を?」
「病気なんかに絶対負けない、絶対、しぶとく、しぶとく生きてやるのだ」
「それで、僕のお嫁さんになるんだよね」
「うん、幼稚園の時に約束したもんね」
「そう、約束した」
「三流小説家が書いた設定みたいな運命に負けるもんか」

 ゲームを始める数日前、瑠璃子は真司に言った。
「本当は死ぬのすごく怖い……怖いの」
 真司はその時も上手い返事ができなかった。ただ瑠璃子を抱きしめた。

 今も真司はふいにダンスを止め、瑠璃子を抱きしめた。
「ちょっ! 真ちゃんどうしたの?」
「好きだ……僕は瑠璃ちゃんを愛している」
 パッと瑠璃子の顔が桜色に染まる。

「私も……真ちゃんを愛しています」
 抱き合う二人を見て、みんなが拍手した。
 大歓声に包まれながら二人はキスをした。

 この日は、二人にとってとても思い出深い夜になった。
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