99%興味【打ち切り】

朝陽ヨル(月嶺)

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二章〈pleasure〉~今日の俺はドキドキ乙女心~

一 有馬視点

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 今日もニコニコ元気満点スマイル全開でチョコの席まで一直線。

「チョーコ! 帰ろう!」
「おー」

 素っ気ない返事をして席を立つチョコ。
 一緒に帰ることにまだ抵抗があるのか? 何となく嫌そうだな……

「もしかして嫌?」
「ちげぇよ。お前、いちいち声デケェんだよ」
「ん?」

 声がデカイ? ……あーそうかそうか。周りに聞かれるのが嫌ってことか。そうだったすっかり忘れていたよ。チョコは目立つのが嫌なんだよな。恥ずかしがっていただけか。

「ごめんごめん。ついテンション上がるんだよな。だってチョコと一緒に帰れるなんて夢のようだよ!」
「……大袈裟だな。結構な頻度で一緒に帰ってるだろ」
「大袈裟なんかじゃないさ。何の為に学校に来るかなんて、チョコに会う為に来るようなものだよ!」
「お前まじで恥ずかしいヤツだな。学級委員だろが。せめて嘘でもそっちの仕事の為とかなんとか言っとけよ」

 ぶつくさ言いながらぷいって顔を逸らして目を合わせないようにしてる。
 照れてるんだ、可愛いなぁ。懐かない猫みたいだ

「……ほら、帰るぞ」
「はーい」

 スクールバッグを持って先に教室を出ていくチョコを追う。クラス内が何となくザワザワしてた気がするけどそんなのは気にしない。俺とチョコの愛の下校を邪魔されたらたまったものじゃない。たまに気を使ったり、はやし立てたりしてもらっていたけど、それはやっぱりやめてほしい。チョコはそういう目立つのを嫌がるからね。こういうのは自然体でいるべきだ。後ろから隣へ移動する。
 
「今日は荷物がいっぱいだな、ちょっと重い」
「溜めとくのが悪ぃんだろ」
「そうだけど、細々と持って帰るよりまとめときたいんだよ。軽い日が多いと得した気分になるんだ」
「そんなもんか?」

 怪訝な顔をして返事をするチョコ。
 こうやって何でもない会話をしてるのも楽しいって思うんだ。友人とじゃニュアンスが違うような……こう……やっぱり恋人と話してる時って、やけに気持ちが高ぶるよな。フワフワしてるというか、微笑ましいというか、嬉しいって気持ちになる
 チョコと一緒にいられる時間はまちまちで、休み時間も昼食も、約束をしていなければふらっとどこかに行ってしまう。俺も友人とバカ騒ぎをしていたりするから気付かないこともある。学校で一緒にいる時間と言えば、この下校時間と、触られる練習の約束した日くらい。
 ああ……もっとチョコと一緒にいたいな
 校門を出た帰り道、チョコは触れないように一定の距離を保っている。
 こういう時って、ちょっと切ないよなぁ。恋人なんだからもっと近くにいたいって言うかさ。チョコ相手だからそんなことも言えないけど

「ちっ……人来る。横に並ぶなよな」

 舌打ちしてるチョコは本当に嫌そうな表情で腹が立ってる雰囲気が出てる。前方から歩いてくる集団を見ていた。
 横に並ばれると狭いしな
 しかも向こうは楽しそうに会話に夢中になってて避けようとか考えてなさそうだ。だからわざわざこちらが避けないといけないわけで、チョコは触れないようにって考えてるから、余計に苛立つんだろう。

「チョコは壁際に行ったらいいよ。俺がこっちいるから」
「あ、ああ……」

 チョコを壁寄りにして、集団の間に俺がいる形で進み横切る。
 チョコと近い……
 通り過ぎると集団分、道が広くなってもう壁に寄る必要が無いからまた離れないといけないわけだ。
 まだ寄っててもいいかな……? ああでもダメか。でもせっかく近いし……………手、繋ぎたい…………なぁんて……思っちゃったり…………

「おい」
「はいぃぃっ!?」
「なっ……なんだよ。んな素っ頓狂な声出して。びっくりした」
「あ、あはっ、ごめん」
「もう人いねぇしそっち行けよ」
「ああ、うん。そうだね」

 言われてから二歩分の距離を空ける。

「お前、さっきから何ソワソワしてんだ?」
「ええっ。そんなことないけどっ、いやまあ、ちょっと今日はそういう日なんだよな~はははっ」
「どっちだよ、変なヤツ。……いつもか」

 さり気にヒドい! でもそんな正直な所もイイよ!

「あ、あのさ、チョコ……嫌じゃなければ……手、繋いじゃダメかな?」
「……」

 思い切って言ってみたらチョコは真顔のまま固まってしまっている。
 ほら、チョコ困った顔してるじゃないか。やっぱりダメだ!

「いや、あの、ちょっと言ってみたかっただけで」
「……荷物貸せ」
「え?」
「トートバッグ。そんでそっち持て」

 トートバッグを渡し、片方の持ち手を持つともう片方がだらんと下がる。俺も下がった方を持つと重さが分散される。

「重いって言ってたし手伝ってやる。それに、鎌倉の時みてぇだろ?」

 キュン……
 チョコが俺に笑いかけてくれて、しかも鎌倉の時の手繋ぎ風呂敷を覚えてくれてる!!

「そう、だね……」

 普段からチョコを観察している俺が、今だけは目を逸らしてしまう。
 チョコはとても可愛くて、そしてとてもカッコいいんだ




 今日もチョコのお家にお邪魔することになった。別れの交差点に着く前に俺は。

『今日もチョコの家行きたい。行っちゃ迷惑かな……?』

 さほど日も空いてないのに二度目の訪問をしていいものか緊張しながら聞いてみる。
 チョコは少し考える素振りをしてから。

『……まあ、今日も親遅ぇしいいけど』

 と、チョコもやや照れてる様子で了承してくれた。

「お邪魔します」
「おう」

 すぐにチョコの部屋に来て荷物を床に置いて、それからチョコに近寄っていく。

「な、なに」
「握手しよう」
「は? なんで」
「したかったから」
「…………ほらよ」

 俺の気持ちを汲んでくれたのか、仕方ないというように手を差し出してくれる。
 その手をしっかりと握ると、チョコはぴくりと身体を強張らせた。

「っ……」
「ふふ。でもこれじゃあ手を繋ぐとは違うね」
「手、繋ぎたいのか?」
「うん。外じゃさっきみたいに物を隔てないといけないし、直接は繋げないから」
「……まあ、二人きりなら練習みたいなもんだよな」

 握手した手を解いて、正面から横に移動する。そしてチョコから手を繋いでくれた。

「これでいいのか?」
「あ、うん。ありがとう。……ちょっと歩いてみてもいいかな」
「ん」

 手を繋いで部屋の中を一周する。男二人が並んで歩くスペースなんてほぼ無いので数歩で終わってしまうけど、それでも出来ないよりかはマシだ。
 体は小柄だけど、手は俺より大きくて節張っててゴツゴツしてる。チョコの手はこんな手なんだな
 するりと指をチョコの指の間に忍ばせて絡ませた。

「これ、恋人繋ぎって言うんだよ」
「これは知ってる」

 チョコも指を俺の指にしっかり絡ませてくれることによってしっかりと恋人繋ぎになった。まるで心を許されたような気分になる。
 家の中で二人きりの時だけ。外では出来ない特別なこと。俺だけに許されていること。手を繋ぐだけのことなのに、こんなにも特別感を味わえる。

「チョコ」

 顔を見合わせると心なしかチョコの顔が赤らんでいる。もしかしたら同じことを考えていたのかもしれない。違ったとしても嫌がっていない。それだけでいい。

「キスしていい?」
「……聞くなよ、いちいち」
「聞かないと怒るだろ?」
「そりゃそうだけど」

 離したくないと、強く繋いだままその手を引いて唇を重ねた。あんまり嬉しくて笑いかけたら、チョコはそっぽを向いてしまった。

「いつか外でも、こうやって手を繋いで歩けたらいいな」
「いや、それは勘弁」
「えーっ、どうしてだい!?」
「男同士で恋人繋ぎしてたら変だろ」
「俺は気にしないけど」
「俺が気にする。まじで無理」

 正直に無理と強調されるとさすがにヘコむ。そんなに否定しなくてもいいのに。

「こんなにずっとお前と密着してるとか目立つし……近くて……スゲェ照れる」

 ん゛あ゛あああっ純情ボーイッ……!
 チョコは照れるとすぐに顔を逸らして顔を見せてくれない。照れてるのがすぐに分かって可愛いけど、今はその顔が見たいのに。

「こっち向いて」
「嫌だ」
「どうして?」
「どうしてって……なんでもねぇよ。もう離すからな」

 チョコから指が、手のひらが離れていく。
 俺はまだ離したくなくて、離れていく手首を掴んだ。

「しっつけぇ! まだやんのかよ!」
「手を繋ぐだけじゃやっぱり物足りないなって」
「っ!?」

 手首を引いて正面を向き合って腰を引き寄せた。そして角度をつけて頬にキスを落とす。

「ああ……やっぱりもったいないな。こんなに照れて可愛いチョコを他の人に見せるなんて」
「んなっ……」
「俺だけ。俺だけで独り占めしたい」
「ちょっ……と、やめ、ろっ……は、ふ……」

 腰に回した手を背中から項へ、左耳と這わせ悪戯にやんわりと触れる。形を確かめるみたく耳の縁を撫でる。右耳の付近で囁きながら。

「チョコもそう思わない? 俺を独り占めしたいって」
「独り占め? お前を……?」
「そうだよ。学校じゃあんまり二人きりになれないだろ? 屋上での練習もあんまり出来ないしさ」

 耳朶を食み、舌先を入れてつついてみる。クチュリと唾液の音をわざと立てながら、反対の耳を手のひらで塞いで余計に響かせて意識させる。

「部屋で二人きりなら独り占め出来るんだよ。誰にも邪魔されずに練習が出来る」
「そっ、かも……しんねぇけど、耳ばっか、やめろよ……っ」
「じゃあどこがいい? 腕? 足?」

 耳から肩、腕、太腿と撫で下ろしていく。ただ撫でているだけで、チョコの身体はビクビクと震える。時々もっと敏感な箇所に触れると身体が跳ねるんだ。

「ここは?」
「あっんっ、そんな、とこ、触れられること、ねぇだろっ」

 お尻を撫でて掴み揉んでみた。

「わからないよ? 行列に並んでる時に後ろから触られてしまうかもしれない」
「な、無いだろっ! ふぁっ、あっ」

 両手でチョコのお尻を持ち上げ撫で回す。なんだか痴漢みたいだなと思いつつ、こんな前から堂々と触る痴漢もいないだろう。割れ目の上、尾てい骨や背筋をなぞったり、太腿を揉んだり。

「もっ、やめろっ……」

 俺の胸を押して離れると、ベッドに腰掛けて上がってしまった息を整えてる。

「どうかな。少しは触られるのに慣れたかい?」
「慣れるかっ! こんな、くすぐったくなるようなところばっか触りやがって」
「荒療治って言うだろ? 通常より快感の強いところを重点的に刺激すれば、それより弱い快感はマシになるんじゃないかと思ってね。ほら」
「うっ」

 チョコの腕を握ってみた。そしてすかさず撫でてみる。
 ビクビク反応はするものの、お尻を触っている時よりかは幾分堪えられているように見える。

「マシだけどっ……やっぱりダメだ!」

 腕を振り払って引っ込めてしまう。俺が触ったところを掴んで抑え込んで落ち着かせているようだ。

「……でも、少しは進歩したってことなのか。学校じゃ時間もねぇし、誰かに見られるかもしれねぇ。家なら……親が遅くていない日なら邪魔されることもないし、確かに練習場所にはいいかもな」
「うんうん、そうだろ?」
「それに……お前を独り占めってのも、悪くねぇよな」
「えっ。あ、ああ……」

 自分が人気者であることは分かってる。学級委員長の役割で仕事を振られることもある。だから学校では忙しくて、それに加えて人通りが少ない曜日と時間に合わせて屋上で練習するのは本当に限られていた。それでさっきは独り占め出来ることを利点に挙げた。
 チョコも俺を独り占めしたいと思ってくれているなんて意外だな……

「お前、顔赤くねぇ?」
「えっ。そう、かな……」

 自分が言った言葉で不意を突かれるとは思っていなかった。独占欲は人並みにある。ただチョコにもあるとは思っていなかった。
 だってチョコは基本淡白でクールだし、割と怒ってるし、学校じゃすぐどこかに行っちゃうし、他の人よりは好かれてると思うけど、恋人として好きって言われてない。信頼と好きが混同してて勘違いだったとかいつか言われるんじゃないかと思ってて、実は結構不安だ。でも独占欲があるっていうのは、少なくとも好意がちゃんとあるってことなんだよな……?

「……俺のこと、どう思ってる? ……好き?」
「なんだよ突然」
「いや……言われたことないから」
「あー…………まあ、そうだな。嫌いではねぇよ」
「そうじゃなくて、もっとちゃんと言ってほしい!」

 座ってるチョコの肩を掴んで真正面からそう言った。驚いた顔をしているチョコを見て我に返り、声を荒げてしまったことを反省する。その場にへたり込んで項垂れた。

「……ごめん、女々しいよな。こういうの」
「いや……」
「!」

 ぽんぽんと頭を撫でられる。その手付きはとても優しげで、顔を上げるとチョコの顔も同じように優しく微笑んでいた。

「そうだよな。俺だってそうだったし、言われないと不安になるよな。お前のことは……まあ……好き……だとは思ってるよ」
「……っ」
「って、泣くなよ!」

 一瞬にして目頭が熱くなる。潤んで視界が揺れる。今までに無いくらい優しい声で、それがとても安心したから。

「好きって……言ってくれたからっ……感動して……」
「あーあーほら、とりあえずティッシュで拭くなり鼻かむなりしとけ。お前、案外涙もろいのな」

 箱ごとティッシュを渡されて、言われた通りに目を拭いて、折りたたんだティッシュで鼻をかむ。数分後にはすっかり落ち着いて、座布団の上で正座をする。

「ありがとう、ワガママを聞いてくれて」
「ワガママってわけではねぇんじゃねぇの。まあ何度も言うのはごめんだけどな」
「俺は好きだよ! いっぱい話したいし遊びたいし、もっと触ってキスもしたい!」
「お、おお……」
「あと…………もっと深く繋がりたいなって…………」
「……!」

 多分、俺とチョコは今同じくらい顔が赤いような気がする。発言の意味を理解してくれたから黙っているのだろうか。俺もどう答えようか迷ってる。
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