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関係を持ち始めてから
二回目の誘い ニ
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宮殿に着いたのは指定時刻三十分前。入るのにいちいち手続きが必要でそこから中に移動案内する時間も含めると良い頃合いだろう。
――だがやっぱ面倒なんだよな。こっそり侵入するよかマシだけどよ……。そういやなんか渡されてたな
国に滞在すると決めた後、ラーから親交証を渡されていた。これがあると色々楽で、招待状なんかよりよっぽど効力があるとのこと。
警備員にその親交証を見せると今までの無表情から一転し、驚きながら謝罪と最上級の礼の構えをされる。
警備員の豹変ぶりにアレッシュも驚く。
「し、失礼致しましたッ! お気をつけてお通りくださいッ!!」
「え。ああ……どうも」
すんなりと宮殿へ通された。しかも扱いがいやに丁寧である。来賓室に通されると別の案内人がやってきて恭しく頭を下げる。
「アレッシュ様、お待ち申し上げておりました。ささ、こちらへどうぞ」
「はあ、よろしくお願いします」
あまりにもすんなりと入れて怖いくらいだ。夜にこっそり侵入した時や、偽装招待状の工作の時はあんなにも大変だったのにと内心苦笑する。
「国王様はダンスホールでお待ちでございます」
「ダンスホール?」
そのままの意味なら舞踏の為の部屋だろう。会見やパーティなども行われる場所である。
ーー踊り子の演舞鑑賞とかそういうのか? それか踊りに誘われた…………は無ぇな
いまいち意図は読めないがとりあえず黙ってついていき、到着すると扉が開かれる。
「うわ……」
思わず声を漏らしたじろぐ。
広いダンスホール内を囲むように下僕たちがびっしりと整列しており、中央には椅子にドンと座って構えているラーがいる。
今まで案内してきた案内人も、周りの下僕たちの中に紛れていった。
「来たか」
ラーが立ち上がり数メートル前までやって来る。ここ数日会わなかっただけだというのに、雰囲気は冷ややかで初対面の時のような緊張感が漂っている。
来賓室や応接間ではなくダンスホールで対面する意図はよく分からないが、アレッシュは咄嗟に笑顔を作って話しかけることにした。
「こんばんは、ラー様。お招き頂きありがとうございます」
すっと自然と胸に手を当てて深くお辞儀をする。最上級の礼の構えを取り、それから話し続ける。
「頂いた親交証、凄い物らしいですね。今日で実感しました」
「あれは私直属のVIP扱いとなる親交証だからな。特殊塗料と特殊加工を施してあり複製は不可能。世界に一つしかないお前専用だ。無くしたとしても他の者には使えん。この国で携帯しておけば役立つだろう」
「そんな高価なものを……」
チート級のアイテムの存在にじーんと感動するが、その時間は一瞬だった。
ラーが更に近寄って来ると同時に横蹴りをかましてきたからだ。腕でガードしたが普通に痛い。
「ちょっと! なんですか急に!?」
問いには答えずラーの蹴撃は止まらない。前蹴り、二段蹴り、回し蹴りと猛攻が続き、全てガードするにはダメージが残る為、大振りの攻撃は躱す。
「っ!」
踵落としに足払い、床に手をついたハイキック、踏みつけなどあらゆる足技が連発されてくる。
避けつつなんとか隙を見て抱き着くようにして前からホールドすると、周囲にいる下僕たちが一斉に動き出した。その下僕たちにラーは腕を伸ばして止まるよう制した。
下僕たちに聞こえないようにひそひそと耳打ちをする。
「……公開処刑でもする気ですか」
「鬱憤晴らしだ」
「鬱憤……」
「お前もやり返せばいいだろう」
「やり返したら周りに蜂の巣にされますよ。というかこういうことするなら事前に言っておいてください」
「事前に言ったらつまらんだろう」
「変なサプライズやめてください。あとせめて下穿いてください」
「あ?」
「さっきからチラホラ見えるんですよ……下着が!」
強調して言われるとラーはキョトンとし、それからくっくっと面白そうに笑った。
「何を言うかと思えばそんなことを気にしていたのか。まるで童貞だな」
「そりゃあ気にしますよ……目の前であんな過激なチラリズム初めて見ました」
「ハッ。これは愉快だな。あまり蹴りは入らなかったがこれはこれで鬱憤晴らしになったぞ」
先程の冷ややかな視線から柔らかい笑みに変わりほっと胸を撫で下ろす。
「皆の者、これにて解散とする! 各自持ち場へ戻れ!」
「「ハッ!!」」
ラーの一声で周りの下僕たちは一斉に返事をした。
ラーがまず動かなければ下僕たちも動けない為、ダンスホールから一番最初に出たのはラーだった。続いてアレッシュもダンスホールをあとにした。
――だがやっぱ面倒なんだよな。こっそり侵入するよかマシだけどよ……。そういやなんか渡されてたな
国に滞在すると決めた後、ラーから親交証を渡されていた。これがあると色々楽で、招待状なんかよりよっぽど効力があるとのこと。
警備員にその親交証を見せると今までの無表情から一転し、驚きながら謝罪と最上級の礼の構えをされる。
警備員の豹変ぶりにアレッシュも驚く。
「し、失礼致しましたッ! お気をつけてお通りくださいッ!!」
「え。ああ……どうも」
すんなりと宮殿へ通された。しかも扱いがいやに丁寧である。来賓室に通されると別の案内人がやってきて恭しく頭を下げる。
「アレッシュ様、お待ち申し上げておりました。ささ、こちらへどうぞ」
「はあ、よろしくお願いします」
あまりにもすんなりと入れて怖いくらいだ。夜にこっそり侵入した時や、偽装招待状の工作の時はあんなにも大変だったのにと内心苦笑する。
「国王様はダンスホールでお待ちでございます」
「ダンスホール?」
そのままの意味なら舞踏の為の部屋だろう。会見やパーティなども行われる場所である。
ーー踊り子の演舞鑑賞とかそういうのか? それか踊りに誘われた…………は無ぇな
いまいち意図は読めないがとりあえず黙ってついていき、到着すると扉が開かれる。
「うわ……」
思わず声を漏らしたじろぐ。
広いダンスホール内を囲むように下僕たちがびっしりと整列しており、中央には椅子にドンと座って構えているラーがいる。
今まで案内してきた案内人も、周りの下僕たちの中に紛れていった。
「来たか」
ラーが立ち上がり数メートル前までやって来る。ここ数日会わなかっただけだというのに、雰囲気は冷ややかで初対面の時のような緊張感が漂っている。
来賓室や応接間ではなくダンスホールで対面する意図はよく分からないが、アレッシュは咄嗟に笑顔を作って話しかけることにした。
「こんばんは、ラー様。お招き頂きありがとうございます」
すっと自然と胸に手を当てて深くお辞儀をする。最上級の礼の構えを取り、それから話し続ける。
「頂いた親交証、凄い物らしいですね。今日で実感しました」
「あれは私直属のVIP扱いとなる親交証だからな。特殊塗料と特殊加工を施してあり複製は不可能。世界に一つしかないお前専用だ。無くしたとしても他の者には使えん。この国で携帯しておけば役立つだろう」
「そんな高価なものを……」
チート級のアイテムの存在にじーんと感動するが、その時間は一瞬だった。
ラーが更に近寄って来ると同時に横蹴りをかましてきたからだ。腕でガードしたが普通に痛い。
「ちょっと! なんですか急に!?」
問いには答えずラーの蹴撃は止まらない。前蹴り、二段蹴り、回し蹴りと猛攻が続き、全てガードするにはダメージが残る為、大振りの攻撃は躱す。
「っ!」
踵落としに足払い、床に手をついたハイキック、踏みつけなどあらゆる足技が連発されてくる。
避けつつなんとか隙を見て抱き着くようにして前からホールドすると、周囲にいる下僕たちが一斉に動き出した。その下僕たちにラーは腕を伸ばして止まるよう制した。
下僕たちに聞こえないようにひそひそと耳打ちをする。
「……公開処刑でもする気ですか」
「鬱憤晴らしだ」
「鬱憤……」
「お前もやり返せばいいだろう」
「やり返したら周りに蜂の巣にされますよ。というかこういうことするなら事前に言っておいてください」
「事前に言ったらつまらんだろう」
「変なサプライズやめてください。あとせめて下穿いてください」
「あ?」
「さっきからチラホラ見えるんですよ……下着が!」
強調して言われるとラーはキョトンとし、それからくっくっと面白そうに笑った。
「何を言うかと思えばそんなことを気にしていたのか。まるで童貞だな」
「そりゃあ気にしますよ……目の前であんな過激なチラリズム初めて見ました」
「ハッ。これは愉快だな。あまり蹴りは入らなかったがこれはこれで鬱憤晴らしになったぞ」
先程の冷ややかな視線から柔らかい笑みに変わりほっと胸を撫で下ろす。
「皆の者、これにて解散とする! 各自持ち場へ戻れ!」
「「ハッ!!」」
ラーの一声で周りの下僕たちは一斉に返事をした。
ラーがまず動かなければ下僕たちも動けない為、ダンスホールから一番最初に出たのはラーだった。続いてアレッシュもダンスホールをあとにした。
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