Golden Spice

朝陽ヨル

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気持ちを自覚してから

新たな幕開け 六(R18)

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 萎みかけている性器を抜き、避妊具を外して結ぶ。
 ラーを見ると疲れきって呼吸を整えている。
 ティッシュで散った白濁を拭き取りながら様子を窺う。

「あー……えーと……悪い。結局疲れさせたよな」
「……それ程、私は魅力的だったか」
「そりゃあもうスゲー興奮した」
「ならいい」

 微笑するラーはとても色っぽい。下着を穿いているがほぼ裸の汗をかいた姿を見ていると、またムクムクと下半身が熱を帯びてくる。これ以上するつもりはないのだが、身体は正直である。

「お前は元気だな」
「やめろって」

 足の指でアレッシュの性器をつついている。
 反射的にアレッシュはベッドから降りて立ち上がった。

「汗で気持ち悪ぃしシャワー浴びるだろ?」
「そうだな。怠いが風邪を引いたら困る」

 言葉通り怠そうに起き上がり下着を脱ぐとベッドに適当に放った。そしてさっさとシャワールームへ足を運ぶ。
 アレッシュも下衣と下着を脱いで一緒にシャワールームへ入っていった。

「本当に二回出したのか? それとも出し切らなかったのか。何故そんなにも勃起しているんだ」
「そりゃあ待ちに待ったアンタとこうして裸でいりゃあ勃つもんは勃つんだよ」
「フンッ」
「おわっ!? あ、ちょっと、な、なんだよ!?」

 ラーがハンドルを回すとシャワーが降り注ぐ。ぬるま湯を頭から被り、セットされた髪が当然濡れる。そしてラーがグシャグシャと頭に触れてきて崩される。

「私自ら頭皮マッサージしてやろう」

 悪戯っぽく笑うラーはきっと上機嫌なのだろう。
 されてばかりではアレッシュも性に合わない。

「マッサージってのはこうすんだよ!」
「ははっ、こら、はしゃぐな。お前の馬鹿力では頭が割れる」
「そこまでじゃねえよっ」

 二人ともシャワーを被り、頭や髪に触れて、全身をくすぐったり小突いたりとふざけあっている。それから抱き合ってまた性器を擦り合わせたり、胸や首筋を舐めたり吸い付くなどして性欲を発散する。逆上せない程度に留め、ざっと汗を流してバスタオルで身体を拭くと、ラーはベッドに寝転んだ。そしてアレッシュはラーの腰を真面目にマッサージする。

「なあ、アルス様と共同記者会見あっただろ。アレは結局どう利用したっていうんだ? なんか意味があったんだろ?」
「いつの話だ」
「前に俺と会った時。夏だったから一年半くらい前のことだな」
「……ああ、あのホテルのか。前に答えたはずだが」
「なんか言ってたか?」
「私のモノだと表明したようなものだと言った」
「……ソレ本気で言ってたのか?」
「お前が私と二人きりでいれば賄賂だの浮気を疑われるなどと言っていたが、私への評価は簡単に揺るがない。好色家と知られている私は女好きだと言われている。お前がいくら性愛対象が男であろうと私が手を出すはずがないし、立場をわきまえてお前が私に手を出す愚か者だと思われる可能性は低い。そして賄賂に靡くこともない。資産が枯渇しているわけでもない私がお前から僅かな賄賂を受け取り優遇する理由がない。それに私が優遇を考えたところでそちらの国の問題に口を挟める権限も無い」

 浮気と賄賂が有り得ないことを説明し、更に話が続く。

「あのくだらない質問にもちゃんと答えただろう。お前のことを気に留めている。将来国にとって有益な人材となると。あれは暗に、私の気に入りであるから寄越せば滞りなく国の架け橋となる、という意味があったわけだ」

 というのはシャムアルドス国内だけではない。世界共通らしい。ラーが気難しい性格であることは知られており、ラー自らお気に入りであると発信したことは珍しく有益な情報だ。

「アルスに頼まなかったのか? アルスの口添えがあれば何かと利用出来ただろう」

 【橋渡し役】。外務特殊専門試験を受けて結局はそこに落ち着いたというわけだ。しかしこれはアルスの力あってのものではない。

「ズルして肩書きだけじゃ意味が無い。外交官がどんな仕事するかさえ知らなかったんだぜ? だからスゲー勉強したって言っただろ? 実力があって、初めて橋渡し役は意味があるってもんだ」
「実力を先につけるか後につけるかの差だな。私の言葉も目も狂いは無かった。有益な人材となるには一年半は早い方ではないか」
「有益になるかはまだまだこれからだろうけどな。ガルマティンにもよろしくと言われたし、長い目で見てくれよ」

 和やかな雰囲気で会話していたが、うつ伏せになっていたラーが急に身体を捻って腕を掴み引っ張ってきた。

「こちらへ横になれ」

 キョトンとしながら言われるがままラーの横に寝転がると、身体を寄せて足が絡んでくる。

「世の中にとって有益だろうが無益だろうが関係ない。私にとってお前は愛しい存在だ」
「……よくそんな台詞を堂々と言えるよな。そういうところ羨ましいぜ」
「アル。ほんの少しの時間だが私の横で眠れ。この時間だけは、お前だけの私でいられる」

 その微笑みは穏やかで優しくとても綺麗だった。アレッシュはラーの気持ちごと包み込むように強く抱き締める。
 ラーは気付いていたのかもしれない。いつの日か言っていた。アレッシュに対して『一人しか愛せない』と。アレッシュは一人しか愛せない。ゴードしか愛せなかった。解放された今は対象がラーに移った。けれどラーは博愛主義で、妻は二人いて愛する対象を限定しない。それを解った上でラーを愛した。解っているのに、自分だけを愛して欲しいと想う気持ちは止められない。必要以上には接しないし、情熱を注ぎ過ぎないように抑えることもある。ラーが煽れば煽る程、どう接したらいいのか、いつか爆発した感情で押し潰してしまわないか、そんな葛藤で苦しんでいる。

「……マニスの阿呆」
「阿呆はお前だ。受け止めてやると言ったのを忘れたか?」
「……そんなのはアンタを苦しめるだけだ」
「全てに応えることは出来ない。だが受け止めることは出来る」
「…………。…………後悔するぜ」
「私の選択に後悔はない」
「はぁ……はは、……アンタ本当にカッコいいな」

 アレッシュはラーを見つめ、頬に口付ける。そしてまた抱き締めて目を閉じたのだった。
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