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お正月旅行(みすずSIDE)
「鯛のお頭付って、今時…」
「でも、美味しいですよ?」
「まあそうなんだけど」
目の前に広がるのは、豪勢なお正月料理の数々が乗ったお膳だ。
おせち料理は勿論、お雑煮や日本酒なんかもはじめから付いている。
私、真下みすずと彼女--佐藤友紀は、二人で高級旅館の年越しプラン宿泊を利用中である。
大晦日の昨日チェックインして、二人で新しい年を迎えた。
カウントダウンしようかなんて照れくさい話をしていたはずなのに、それを待たずして肌を重ねてしまい、結局の所いつ日付をまたいだのか、あまりはっきりとは認識できていないのだけれど。
かくして迎えた元日の夕食がこの、豪華なお正月料理という事だ。
実家暮らしの彼女がどういう言い訳をして年末年始の泊まり旅行に出て来ているのか、私は良く知らない。
簡単な事で、女友達と旅行するのだと言えば話の通りは良いだろうけど。
スタイルの良い彼女のどこにそんなに食べ物が入るのかと思うほど、彼女は元気良くお膳の料理に箸を付けている。
私はと言えば、とてもじゃないが全部をたいらげる気力もないので適当に気分の赴くまま料理をつまむ程度なのだけれど。
あれ以来、私と彼女は社内の人には隠した形で深い関係を継続している。
一応付き合っている事にはなっているはずだけど、やっている事はデートにかこつけて互いの身体を貪るような事ばかりで、正直これで良いのか悩むばかりだ。
更に私は営業部副部長であり一課課長も兼任している中で、彼女は最近主任職に昇進したとは言え相変わらず営業部一課所属は変わらない。
つまり上司部下の関係も、相変わらず継続中なのである。
二人きりの時は互いを下の名前で呼ぶようになった。
彼女は私を「みすずさん」と呼ぶ事が多いけど、エッチする時だけ呼び捨てにされるので、なぜか呼び捨てにされると条件反射的に身体が火照ってしまうようになった。
私も私で、普段は彼女を「友紀ちゃん」と呼ぶ事が多いけど、感情が昂ると彼女を呼び捨てにしてしまうから、お互いさまと言えばそうなるだろう。
彼女の言う通り、食べにくいけれども鯛は美味しい。
こんなの食べるのっていつ以来だろう…などと考えていると、友紀は「今日のお風呂ですけど」と急に話題を変えてきた。
「…何?」
「日本酒風呂、らしいですよ」
「そうなんだ…珍しいね」
「お正月だから、じゃないですか?」
「そうかもね」
この旅館はとあるリゾートホテルチェーンのグループに属しているものの、この施設だけが純和風旅館、しかもかなり豪勢な仕様となっており、各客室が隣接しない、別棟として存在している。
当然、お風呂も各客室に専用のものが設えられていた。
友紀の話では、このリゾートホテルチェーンこそ、私のかつての思い人である所の松浦美咲その人と、その恋人である所の二宮冴子が現在勤務している会社なのだという事だ。
本来なら予約を取るのも一苦労というこの旅館の年越しプランが予約できたのも、友紀が頼み込んで客室を押さえてもらったという話である。
だがコネを使ったのはそこまでで、料金に関しては他の利用客同様、いや部屋を手配してもらった分上乗せして払おうという事で、私と相談しそれで話をつけた。
聞けば松浦部長は今やこのリゾートホテルチェーンの専務職に就いているとの事である。
ホテル経営というよりも、プランや商品開発の担当役員として招かれ、早々に結果を出しているらしい話も聞いて、つくづく遠い存在になってしまったなと寂しい気持ちになった。
…私は部長どころかまだ副部長になったばかりだと言うのに。
「…どうしたんですか?みすずさん」
「…いえ、何でもないわ」
「そんな事言って、何だか心配だなあ」
はじめのうちこそ友紀は私に恐縮していたけれども、付き合うようになってからは何かと世話を焼いたり明るいムードを演出したりと、少しでも私が楽しくなれるようにと気を使ってくれている。
更には自分だってボロボロになるほど多忙なはずなのに、みすずさんはもっと多忙だろうからなどと言って私を癒してくれようともするのだ。
だから今回のお泊り企画も、全面的に友紀の発案で、私はそれに従う形で昨日から彼女と時間を共にしている。
「…食べさせてあげましょうか」
「え、いいよ…自分で食べてるし」
半ば冗談めかして友紀が私の隣に密着して座り、私の箸を取ってお膳の料理を取り始めた。
「はい、あーんっ」
「え…ちょ、恥ずかしいから」
目を伏せながらも彼女の顔を見ると、自分が食べる訳でもないのに「あーん」と大きく口を開けているのが可笑しくて、私はつい笑ってしまった。
「ほら」
その隙を突いて私の口内に箸が押し込まれて、私は強制的に料理を食べさせられた。
「良かった」
「え?」
「何か、沈んだ顔してたし…笑ってくれたから」
「あ、ごめんなさい」
「ハイ、じゃ今度はお酒でも如何ですか?」
コンパニオン宜しく徳利を構えて、友紀が営業スマイルを繰り出してくる。
私はその所作の美しさに息を飲んだ。
…どうして、こんなに何でもできて完璧な娘が、ただ仕事一筋に生きてきただけの私なんかに興味を持ってくれるのだろうか。
彼女はいつも私に対する好意も、敬意も隠す事なく表現してくれている。
私はそんな彼女に好意を持たれている事は純粋に嬉しく誇らしいと思うのだけれど、彼女があまりにも無防備だから、いつも緊張してしまうのだ。
ちょっとした表情や仕草の変化に、いちいちドキドキしてしまうし、それこそ彼女の裸身や乱れる姿を一度ならず目にしてしまったから、彼女を見る度いちいちそういう場面を連想してばかりで、全く落ち着かない。
彼女の行為がなければ単なるセクハラ上司に成り下がってしまう事が自分でも良くわかるから、だから私は時折こうして微妙な気分に陥ってしまうのだ。
彼女はそれをいつも勘違いして、そういう時には特に大胆に身体を差し出してくるものだから、私にとってはかえって逆効果になってしまっていると言うのに、私はずるいからその事実を告げる事なく、差し出された彼女の身体にしつこく愛撫を施してしまうのだ。
今もそう。
浴衣姿で徳利を傾け、私のおちょこにお酒を注ぐ姿なんて、男が見ればたまらない事この上ないだろう。
今彼女が着ているのは、多少おしゃれな柄ではあるが旅館備え付けの浴衣である。
異動前は受付を担当していた彼女は言うまでもなく、顔もスタイルも恐ろしく整っている。
聞けばミスキャンパスに選ばれアナウンサーを目指して、地方局だが合格も勝ち取った実力者なのだから、彼女の美貌も知性も、間違いなく本物なのだ。
そんな「本物」の彼女が身に着ければ、普通の浴衣もそうでないもののように美しく見えてくる。
決して着崩してはいないはずなのに、襟元から覗く肌の色が白くて、そこばかりに目が行ってしまうし、そのすぐ下にある、形の良い胸だって、見るなと言われても目が行くのは仕方ないと思うのだ。
「…もしかして、誘惑してる?」
おちょこをあおってから生唾も飲み込み、思い切って尋ねてみると、彼女は「あ、わかっちゃいました?」と笑って答えた。
彼女は生来下品な言動を、しようと思ってもできない娘なのだろう。
明るい茶色の髪も、少し薄い色の瞳も、生まれつきのものだという事で、日本人離れした娘のように見られがちだが、性格や考え方は案外古風な娘である。
全力で誘惑して見せろと言った所で、大した事はできないのも、どうやら自覚しているらしい。
だから彼女は、私がいやらしい目で彼女の身体や顔を見つめる事に関して、嫌悪感どころか悦びを覚えるのだと言うから、相当変わった感性の持ち主だと思う。
近頃は少しずつだけど、経験も積み慣れてきたのもあって、少しはそれっぽい誘惑もできるようになったと思うが、どこまで行っても彼女の品格が損なわれる事はないのだろうな、と私は思っている。
…それに。
そんな彼女だからこそ、全てを暴いて悶えさせる事に至上の価値が生まれるしこちらの征服欲も満たされるというものだ。
私はおちょこをお膳に置いて、あえて真面目に声をかけた。
「…うん、さっきから友紀の裸ばっかり想像してる」
「……」
おずおずとした動作で友紀は徳利を置く。
急に恥ずかしくなったのかもしれない。
「第一ここへ来てから半分以上は、裸しか見てないし」
「それは私だけじゃないし、お互いさまじゃないですか」
「ま、そうだけど」
身体を起こして自席へ戻ろうとする友紀の腕を掴んで、腕から抜くように浴衣を引き下ろす。
あっさりと肩が露出し、その白さに一瞬目を奪われた。
何度も見ているはずなのに、毎回私はこうして目を奪われ動きを止めてしまう。
「友紀って浴衣も似合うんだね、意外だったけど」
「……」
恥ずかしいのか、友紀は浴衣を整えず肩を露出させたまま私の身体にしがみついてきた。
「わ、私だってずっと…みすずさんとくっついていたくて仕方ないんです」
私はそんな友紀の肩に手を置き、髪を撫でながら尋ねる。
「…我慢してるって事?」
「そんなの、当たり前じゃないですか…」
涙声で訴える友紀が健気に思えて、私はトントンと彼女の肩を叩きそのままゆっくりと抱きかかえるようにして彼女の身体を包んだ。
私の方がずっと身体が小さいから、腕はめいっぱい広げても足りないぐらいかもしれないけれど。
「…まだ、料理が残っているのに…始めちゃったらおさまらなくなっちゃう」
友紀が何かに耐えるように私にしがみついたまま身体を震わせた。
処女ではなかった友紀だが、何か別種の官能に目覚めたらしき身体を持て余しているようで、それを眺めているだけでも、どこか私の支配欲は満たされていく。
「…じゃ口移しで食べさせてあげようか」
そんな事を言ってからかうと、友紀は真剣に怒る。
「そんなの絶対、ダメですから…恥ずかし過ぎます」
「…残念、お雑煮なんかは命がけで行う所存だったのに」
「嘘ばっかり」
それを合図に友紀は私から離れて、浴衣を直し自席へ戻っていった。
さっき日本酒風呂の話をしていたし、できればお風呂で事に及びたいのだろう。
それならまあ、焦る事もないだろうと思い、私は多すぎる料理をそれでも頑張って胃袋に収めた。
「でも、美味しいですよ?」
「まあそうなんだけど」
目の前に広がるのは、豪勢なお正月料理の数々が乗ったお膳だ。
おせち料理は勿論、お雑煮や日本酒なんかもはじめから付いている。
私、真下みすずと彼女--佐藤友紀は、二人で高級旅館の年越しプラン宿泊を利用中である。
大晦日の昨日チェックインして、二人で新しい年を迎えた。
カウントダウンしようかなんて照れくさい話をしていたはずなのに、それを待たずして肌を重ねてしまい、結局の所いつ日付をまたいだのか、あまりはっきりとは認識できていないのだけれど。
かくして迎えた元日の夕食がこの、豪華なお正月料理という事だ。
実家暮らしの彼女がどういう言い訳をして年末年始の泊まり旅行に出て来ているのか、私は良く知らない。
簡単な事で、女友達と旅行するのだと言えば話の通りは良いだろうけど。
スタイルの良い彼女のどこにそんなに食べ物が入るのかと思うほど、彼女は元気良くお膳の料理に箸を付けている。
私はと言えば、とてもじゃないが全部をたいらげる気力もないので適当に気分の赴くまま料理をつまむ程度なのだけれど。
あれ以来、私と彼女は社内の人には隠した形で深い関係を継続している。
一応付き合っている事にはなっているはずだけど、やっている事はデートにかこつけて互いの身体を貪るような事ばかりで、正直これで良いのか悩むばかりだ。
更に私は営業部副部長であり一課課長も兼任している中で、彼女は最近主任職に昇進したとは言え相変わらず営業部一課所属は変わらない。
つまり上司部下の関係も、相変わらず継続中なのである。
二人きりの時は互いを下の名前で呼ぶようになった。
彼女は私を「みすずさん」と呼ぶ事が多いけど、エッチする時だけ呼び捨てにされるので、なぜか呼び捨てにされると条件反射的に身体が火照ってしまうようになった。
私も私で、普段は彼女を「友紀ちゃん」と呼ぶ事が多いけど、感情が昂ると彼女を呼び捨てにしてしまうから、お互いさまと言えばそうなるだろう。
彼女の言う通り、食べにくいけれども鯛は美味しい。
こんなの食べるのっていつ以来だろう…などと考えていると、友紀は「今日のお風呂ですけど」と急に話題を変えてきた。
「…何?」
「日本酒風呂、らしいですよ」
「そうなんだ…珍しいね」
「お正月だから、じゃないですか?」
「そうかもね」
この旅館はとあるリゾートホテルチェーンのグループに属しているものの、この施設だけが純和風旅館、しかもかなり豪勢な仕様となっており、各客室が隣接しない、別棟として存在している。
当然、お風呂も各客室に専用のものが設えられていた。
友紀の話では、このリゾートホテルチェーンこそ、私のかつての思い人である所の松浦美咲その人と、その恋人である所の二宮冴子が現在勤務している会社なのだという事だ。
本来なら予約を取るのも一苦労というこの旅館の年越しプランが予約できたのも、友紀が頼み込んで客室を押さえてもらったという話である。
だがコネを使ったのはそこまでで、料金に関しては他の利用客同様、いや部屋を手配してもらった分上乗せして払おうという事で、私と相談しそれで話をつけた。
聞けば松浦部長は今やこのリゾートホテルチェーンの専務職に就いているとの事である。
ホテル経営というよりも、プランや商品開発の担当役員として招かれ、早々に結果を出しているらしい話も聞いて、つくづく遠い存在になってしまったなと寂しい気持ちになった。
…私は部長どころかまだ副部長になったばかりだと言うのに。
「…どうしたんですか?みすずさん」
「…いえ、何でもないわ」
「そんな事言って、何だか心配だなあ」
はじめのうちこそ友紀は私に恐縮していたけれども、付き合うようになってからは何かと世話を焼いたり明るいムードを演出したりと、少しでも私が楽しくなれるようにと気を使ってくれている。
更には自分だってボロボロになるほど多忙なはずなのに、みすずさんはもっと多忙だろうからなどと言って私を癒してくれようともするのだ。
だから今回のお泊り企画も、全面的に友紀の発案で、私はそれに従う形で昨日から彼女と時間を共にしている。
「…食べさせてあげましょうか」
「え、いいよ…自分で食べてるし」
半ば冗談めかして友紀が私の隣に密着して座り、私の箸を取ってお膳の料理を取り始めた。
「はい、あーんっ」
「え…ちょ、恥ずかしいから」
目を伏せながらも彼女の顔を見ると、自分が食べる訳でもないのに「あーん」と大きく口を開けているのが可笑しくて、私はつい笑ってしまった。
「ほら」
その隙を突いて私の口内に箸が押し込まれて、私は強制的に料理を食べさせられた。
「良かった」
「え?」
「何か、沈んだ顔してたし…笑ってくれたから」
「あ、ごめんなさい」
「ハイ、じゃ今度はお酒でも如何ですか?」
コンパニオン宜しく徳利を構えて、友紀が営業スマイルを繰り出してくる。
私はその所作の美しさに息を飲んだ。
…どうして、こんなに何でもできて完璧な娘が、ただ仕事一筋に生きてきただけの私なんかに興味を持ってくれるのだろうか。
彼女はいつも私に対する好意も、敬意も隠す事なく表現してくれている。
私はそんな彼女に好意を持たれている事は純粋に嬉しく誇らしいと思うのだけれど、彼女があまりにも無防備だから、いつも緊張してしまうのだ。
ちょっとした表情や仕草の変化に、いちいちドキドキしてしまうし、それこそ彼女の裸身や乱れる姿を一度ならず目にしてしまったから、彼女を見る度いちいちそういう場面を連想してばかりで、全く落ち着かない。
彼女の行為がなければ単なるセクハラ上司に成り下がってしまう事が自分でも良くわかるから、だから私は時折こうして微妙な気分に陥ってしまうのだ。
彼女はそれをいつも勘違いして、そういう時には特に大胆に身体を差し出してくるものだから、私にとってはかえって逆効果になってしまっていると言うのに、私はずるいからその事実を告げる事なく、差し出された彼女の身体にしつこく愛撫を施してしまうのだ。
今もそう。
浴衣姿で徳利を傾け、私のおちょこにお酒を注ぐ姿なんて、男が見ればたまらない事この上ないだろう。
今彼女が着ているのは、多少おしゃれな柄ではあるが旅館備え付けの浴衣である。
異動前は受付を担当していた彼女は言うまでもなく、顔もスタイルも恐ろしく整っている。
聞けばミスキャンパスに選ばれアナウンサーを目指して、地方局だが合格も勝ち取った実力者なのだから、彼女の美貌も知性も、間違いなく本物なのだ。
そんな「本物」の彼女が身に着ければ、普通の浴衣もそうでないもののように美しく見えてくる。
決して着崩してはいないはずなのに、襟元から覗く肌の色が白くて、そこばかりに目が行ってしまうし、そのすぐ下にある、形の良い胸だって、見るなと言われても目が行くのは仕方ないと思うのだ。
「…もしかして、誘惑してる?」
おちょこをあおってから生唾も飲み込み、思い切って尋ねてみると、彼女は「あ、わかっちゃいました?」と笑って答えた。
彼女は生来下品な言動を、しようと思ってもできない娘なのだろう。
明るい茶色の髪も、少し薄い色の瞳も、生まれつきのものだという事で、日本人離れした娘のように見られがちだが、性格や考え方は案外古風な娘である。
全力で誘惑して見せろと言った所で、大した事はできないのも、どうやら自覚しているらしい。
だから彼女は、私がいやらしい目で彼女の身体や顔を見つめる事に関して、嫌悪感どころか悦びを覚えるのだと言うから、相当変わった感性の持ち主だと思う。
近頃は少しずつだけど、経験も積み慣れてきたのもあって、少しはそれっぽい誘惑もできるようになったと思うが、どこまで行っても彼女の品格が損なわれる事はないのだろうな、と私は思っている。
…それに。
そんな彼女だからこそ、全てを暴いて悶えさせる事に至上の価値が生まれるしこちらの征服欲も満たされるというものだ。
私はおちょこをお膳に置いて、あえて真面目に声をかけた。
「…うん、さっきから友紀の裸ばっかり想像してる」
「……」
おずおずとした動作で友紀は徳利を置く。
急に恥ずかしくなったのかもしれない。
「第一ここへ来てから半分以上は、裸しか見てないし」
「それは私だけじゃないし、お互いさまじゃないですか」
「ま、そうだけど」
身体を起こして自席へ戻ろうとする友紀の腕を掴んで、腕から抜くように浴衣を引き下ろす。
あっさりと肩が露出し、その白さに一瞬目を奪われた。
何度も見ているはずなのに、毎回私はこうして目を奪われ動きを止めてしまう。
「友紀って浴衣も似合うんだね、意外だったけど」
「……」
恥ずかしいのか、友紀は浴衣を整えず肩を露出させたまま私の身体にしがみついてきた。
「わ、私だってずっと…みすずさんとくっついていたくて仕方ないんです」
私はそんな友紀の肩に手を置き、髪を撫でながら尋ねる。
「…我慢してるって事?」
「そんなの、当たり前じゃないですか…」
涙声で訴える友紀が健気に思えて、私はトントンと彼女の肩を叩きそのままゆっくりと抱きかかえるようにして彼女の身体を包んだ。
私の方がずっと身体が小さいから、腕はめいっぱい広げても足りないぐらいかもしれないけれど。
「…まだ、料理が残っているのに…始めちゃったらおさまらなくなっちゃう」
友紀が何かに耐えるように私にしがみついたまま身体を震わせた。
処女ではなかった友紀だが、何か別種の官能に目覚めたらしき身体を持て余しているようで、それを眺めているだけでも、どこか私の支配欲は満たされていく。
「…じゃ口移しで食べさせてあげようか」
そんな事を言ってからかうと、友紀は真剣に怒る。
「そんなの絶対、ダメですから…恥ずかし過ぎます」
「…残念、お雑煮なんかは命がけで行う所存だったのに」
「嘘ばっかり」
それを合図に友紀は私から離れて、浴衣を直し自席へ戻っていった。
さっき日本酒風呂の話をしていたし、できればお風呂で事に及びたいのだろう。
それならまあ、焦る事もないだろうと思い、私は多すぎる料理をそれでも頑張って胃袋に収めた。
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