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おかしな交換と回想

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それほどよくある話ではないと思うけれど、とある夫婦が夫の浮気予防の為に、妻に強いられ女性もののショーツを履いて仕事に向かうというエピソードを聞いた事がある。

美咲さんがそれを参考にしたかどうかは知らないが、ある朝、いつもするように着替えて部屋を出る直前に緩やかなキスを交わしていた時の事、美咲さんから「履いている下着を交換したい」と言われた時には、ひっくり返りそうになるほど驚いた。

「お姉さま、その…何を言ってるのかわかってるんですか」
「わかってる」

曰く、いいように容子社長に襲われない為の一つの対策だと言うのだけれど、本気の容子社長に襲われた場合その程度のものが抑止力になるとは到底思えないし、私と交換したショーツだとばれれば、容子社長の事だからますます盛り上がってしまう材料にすらなりはしないかと不安だ。

…それに、そんな事をしたら、毎朝の軽いキスでもけっこう私が股間を濡らしてしまっている事が美咲さんに知られるから恥ずかしい。
身体を密着させ、指を絡めて握られた手を引き寄せられるとこちらもなかなか抵抗する気力が失せるけれども、それでも私は頑張って訴えてみた。

「その、あの…けっこう濡らしちゃってるし…恥ずかしいです」
「そんなの、私だってそうよ」
「え……」
「実際に履いてみればわかる事だけど」

いや、待って欲しい。
美咲さんは、自分がキスだけでどれだけ濡らしたかを私に知られるのを恥ずかしいとは思わないのだろうか。
何ならどの程度濡らしたか知って欲しいぐらいの勢いを感じるのは、気の所為ではないような感じがする。

それに。
私の方は割と、美咲さんの好みと言うか指示と言うか、そういう背景もあってTバックとかそんな、際どいデザインのショーツを履いているけれど、美咲さんはそうでもなくて、生地や色、装飾こそセクシーなものだけれどデザインはそこまで露骨にいやらしい類のショーツを履いている訳ではない。

「……」

美咲さんが、私の汚した、けっこう際どいショーツを履いて仕事にいそしむ姿を想像すると、どこか倒錯した興奮を覚えない訳ではないけれど。
かと言ってハイそうですかと受け入れるにはハードルが高いのではないか。

「脱ぎなさい、冴子」
「え…ちょ、あの」

強引にスカートをまくられてショーツが引き下ろされる。
完全にヘアを処理した自分の秘部が晒され、私はあらぬ興奮を覚えてしまった。
実際、あまりぐだぐだやっていると出勤時間に間に合わないのだけれど。

美咲さんは事もなげに私のショーツを一旦ベッド上に置くと、何の躊躇もなく自分のショーツを脱いで私に履かせてきた。
慌ててその手を制止て自力でショーツを引き上げるけれど、いざ本当に交換したショーツを履いてみると、物理的な感覚とは違った何かがプラスされて、変な気持ちになる。

「……」

さっき見たので形や色はわかっている。
今日の美咲さんは、光沢のある純白のショーツを履いていた。
片側だけが結べる紐のデザインで、美咲さんにはこういうデザイン性の高い下着はよく似合うのだけれど。
それが今、自分の秘部を覆っている。
そして、意識すればわかる程度に、私がもう濡らしている場所に重なる布地もまた、私のものではない蜜で少し濡れているのがわかった。

「……」

私がもじもじしている間にも、美咲さんは先ほどベッド上に置いた私の黒いTバックショーツを取り上げて、これまた躊躇なく自分で履き始めている。

「ちょ、あの、待ってください」
「もう、何よ?冴子ったら」
「は、恥ずかしいんです」
「別にどうって事ないでしょ?これくらい」
「……」

完全に定位置に収まったショーツは、美咲さんの鼠蹊部も露わに秘部にまで食い込んで見える。
ついでに言うと引き上げる過程でお尻側からもその姿を確認してしまったが、紐のように細い布地が美咲さんのお尻の割れ目に食い込み、まるで何も身に着けていないかのように見えるぐらいで目のやり場に困った。

「まったく、自分はいつもこんな姿を晒しておいて…」
「それは、お姉さまが」
「しかもけっこう濡らしてるし」
「く、食い込んでる分そう思うだけなんじゃないですか」
「ちょっと、狼狽え過ぎだから」

いや、だって。
自分がそれを履いている姿なんて見慣れているけれど、実際の所美咲さんが仕事服の下にこうも際どい下着を身に着ける機会は少ないし、いかにも系の過激な下着やコスプレ衣装の類は、私が身に着けて事に及ぶ頻度が圧倒的に高いのであって、美咲さんにこの手のものを身に着けさせるプレイというのはほとんど、経験していないのだ。

けれども、美咲さんのその姿を眺めていると、それだけで身体の芯が疼いてくるような、妙な昂ぶりを感じてしまう。

「ね…もう一回キスしよう?冴子」
「え、あ……ん」

交換したショーツに染み込んだ美咲さんの蜜が自分の粘膜から吸収されるかのような錯覚と同時に、自分と美咲さんの蜜がショーツの布に染みて混じっていく感覚がものすごく変態じみた興奮をもたらし、この時のキスは唇を触れ合わせているだけなのに、身体がガクガクと震えてくるほどの強烈な緊張感を帯びていた。

「ん…これだけでイっちゃいそうです、と言うかこのままオナニーしたくなってきました」
「ダメ、我慢して」
「……」

わかっている。美咲さんだって我慢しているのだ。
何なら美咲さんの方が、普段履き慣れていないタイプの面積の狭いショーツを履いているのだから刺激もひとしおだろう。

いや…しかし、こんな状態で仕事になるのだろうか、とりあえず自分自身が不安だ。
もはや美咲さんとショーツを交換した事を一刻も早く忘れるしかないのだが。
そして美咲さんも一応平静を装ってはいるものの、この所容子社長に悪戯された反動でやたらと私との上書きセックスに固執するようになって以来、何と言うか…誤解を恐れずに言えば、より淫乱っぽい感じが極まっているのである。
勿論それは、私自身がいわゆるそちら側の女だからこそわかる事であって、美咲さんが堕ちたとかそういう意味合いでは断じてない。

ただ、私と激しい交わりを重ねれば重ねるほど、多分容子社長に与えている印象は逆効果になっていると言うか、美咲さんが本来完璧にコントロールしていたはずの、女性固有の色気のようなものが漏れ出てしまっていて、むしろ容子社長に撒き餌を散らかしているような感じがするのだけれど、付き合い始めた当初には絶対にしなかったような、いやらしいおねだりをされてしまうとこちらもスイッチが入ってしまって思う存分攻め立ててしまい、結果撒き餌の強化に私も加担してしまっているから何も言えない。

美咲さんは、容子社長に迫られたり、実際悪戯された日には必ず、私に迫り激しく犯してとねだってくるようになった。
年上の美咲さんが私に媚びていやらしいおねだりをする様子に、言うまでもなく私は興奮してしまうし、しかも勢いに任せて多少乱暴に犯し続けても、美咲さんはあんあんと喘いで良がるものだから、こちらも毎回調子に乗って一晩中美咲さんを貫きまくってしまう。

負けたくない相手である所の容子社長によって、美咲さんの新たな性癖が花開いて私がその恩恵を受けているという図式には、はなはだ不本意な部分もあるのだけれど、いざ迫られてしまうとどうにも抗えないのが実情だ。
挙句この所は、「冴子、縛って」とか、物理的なプレイ内容もおかしな方向の要求が増えている気がして、実に危険性を感じる。

本意ではないが一度だけ美咲さんの両手首を拘束した上で貫いた際、美咲さんはあえて嫌がったり強がったりするのかなと思いきや、しおらしく弱弱しい表情を見せつついいように私に身体を任せてくるので、本当に全身縛り上げたらどうなるのかと、あらぬ興味までそそられてしまう有様だ。

…私は別に、美咲さんをマゾとして育成したい訳ではないのに、結果的にそんな感じのプレイに今の所はまりつつある。
そして美咲さん自身も、これまでと違ったプレイに興じる事で、少し殻を破る事ができたような、新たな自分の一面を知り同時に私に知らせる事で喜んでいるような、そんな気もするから、一概にこれが良くない事だとは思わない。

もしかすると、容子社長や過去の恋人も知らない、私とだけ共有する秘密を増やす事で安心感を得ているのかもしれないと思うのだけれど。

「じゃ、行きましょうか」
「ほ、本当にこれで行くんですか」
「そうよ」
「いや、私はいいんですが…お姉さまは」
「大丈夫だから」

ショーツの上からストッキングを履いて、スカートを下ろせばそれはもう、いつもの仕事モードの美咲さんなのだけれど。
私としては心配である。

いや、別に構わないのだ。そこまで律儀にならなくても、美咲さんがしたいと思えば容子社長と交わるのだって仕方ないと、ある面で覚悟はできているし、その時々で選ぶのは美咲さんの気持ちだから、いくら悔しくてもそこはどうにもならない事だと、心のどこかでは理解できている。

「毎日しようって訳じゃないんだから…とりあえず今日はこうして、自分が冴子のものだという事を実感しながら過ごしてみたいってだけの事よ」
「はぁ…」

それのどこが『だけの事』なのか、私には今一つ理解できないけれど。
しかし美咲さんの口から「冴子のもの」という言葉が当たり前のように飛び出してきたのには、身がすくむような興奮を覚えてしまった。
だからと言う訳ではないが、今の美咲さんが欲しがっているであろう言葉が、自然と口をついて出てくる。

「じゃ、帰った後はどれくらい濡らしたのかチェックですね」
「そう」

多分、私の方がだらしない結果になりそうで自爆フラグが立った思いがする。
それから微妙な表情のままの私の手を美咲さんが握って、二人で一緒に玄関を出た。

*-*-*-*-*-

考えてみれば、何も容子社長に何かされたからと言って、いちいち律儀に私に打ち明けたり知らせる必要などないはずなのに、美咲さんは条件反射的に私におねだりをする事で、間接的にその事実を伝えてしまっているのだが、それについて美咲さん本人が深く思考できていないのも、ある意味問題ではなかろうか。

ひょっとすると美咲さん自身が心や身体に生じている変化に戸惑い、制御しきれていないのかもしれないと心配になってくる。
だからそこを、私が考えてあげるべき立場なのかもしれないと思いつつ、やっぱり貧乏性なのか、ガツガツしてしまうのは自分でも情けない限りだ。

実の所を言えば、美咲さんと一緒に暮らすようになってからというもの、二人きりの時間が長くなった分、交わりの性急さというものはだいぶ落ち着いてきていたし、週末など時間のある時こそちょっと贅沢に時間と手間をかけて交わる事もするけれど、無意識のうちに私は美咲さんの体調を気遣うようになっていた。
その事にずっと、全く気付いていなかったけれど、ここ最近そういう事を気にせずに美咲さんを犯すようになってから、後付けでその事実に思い至ったというのも、容子社長を小憎らしく思う要素にプラスされている。

しかも過去に美咲さんをそこまで度々激しく抱き潰した相手はいなかったと見えて、美咲さんがそういう交わりの積み重ねにより急激に女としての色香が爆発する件に、美咲さんも気付いていなかったと見えて、ここ最近は明らかに、出退勤時の挨拶ぐらいしか接点がないような社の従業員の多くが、美咲さんのフェロモンに打ちのめされている事を、本人はどの程度自覚しているのだろうか。

「……」

前職時代の事を、電車の中で思い出してみる。
私の立つすぐ傍には、現在の美咲さんがいるのだけれど、そちらに意識を集中してしまうと色々な事が刺激となってとても仕事どころではなくなりそうだったから、私はあえて思考を過去に巡らせてみた。

…前職のメーカーで私は受付の仕事から始めてその後秘書課へ異動したけれど、受付時代、つまり美咲さんに憧れている多くの女子社員と同じように私が美咲さんを眺めていた頃の事は、今でも鮮やかに思い出す事ができる。

当時美咲さんは社で唯一の女性部長だった。今は他に誰かが部長に昇進しているかもしれないけれども、たったそれだけの事実に加えて美咲さんはとても人当りが良く優しい人だと評判だったから、誰もが美咲さんに憧れていたし、一緒に仕事できたらいいのになんて噂もしているものだった。
キャリア女性の中には癖の強い人が多かったり、有能故に人を見下すような態度を垣間見せてしまう人も多いような気がするけれど、美咲さんはそうならないようにかなり意識していたのではないかと思われる。

単に挨拶を交わすだけ、こちらの挨拶に笑顔で返してくれるだけ、それだけでもどれだけ嬉しい気持ちになる事ができたか、美咲さんにいくら伝えてもきっとわからないだろうけど、私に限らず大抵の人はそう思っていたに違いない。

明るいけれども落ち着いた、親しみやすいけれど決して気品を失わない、それでいておそらく影では苦労も努力もしていたはずだろうに、それをみじんも感じさせない、それが皆の思う美咲さんへの共通認識だ。

明る過ぎないブランの、ゆるくウェーブした髪に眼鏡、それと明るめカラーのパンツスーツが美咲さんのトレードマークだった。
時々ちょっとシックな色やデザインのスーツで出勤する日には、ただ服の色が違うだけなのに、ちょっと大人っぽい雰囲気が強調されてドキドキするね、なんて受付女子の間でも話題になったものだ。

私はそんな会話の輪に入る事は滅多になくて、所詮美咲さんは殿上人だと思ってぼんやりと憧れの眼差しを向ける対象、それだけでしかなかった気がする。
だって私は、そんなキャリア女性の歩んだ暮らしも、今どんなプライベートを過ごしているかも、想像すらできないくらいに何も知らなかったし、知る術もなかったから。

「どんな人と付き合っているんだろうか」なんて美咲さんの交友関係に興味を持つ人は勿論いたと思う。
でもそんな事はきっと、私たちのような普通の女の想像し得る範囲を超えているのだから、勝手に自分たちの枠組みの中でそれを思い描く事自体が失礼な気がしていて、そんな事を考えるのさえ避けていた。

でも縁があって私はプライベートで美咲さんと繋がってしまい、しかもただの遊び相手気分の扱いしかされないだろうと思っていたのに、どういう訳だか今日まで傍にいて、挙句…と言うのは失礼かもしれないが、ショーツを交換までして同じ職場に向かっている。

あの頃も今もずっと、美咲さんは他の女性とは違う輝きを放っているし、それを私は今でもまぶしく感じている。
だからそういう人に強く求められる事に今なお、躊躇がない訳ではない。
でも、そんな瞬間の積み重ねが長い時間に繋がるのだろうし、せめて身体だけでも…いつまでも美咲さんに求めてもらえるような存在でありたいと思っているのは本心だ。
私自身は常に受け身であるべきだと思っていたが、美咲さんはそれを望まなかったし、身体だけの浮気に嫉妬された事も意外だったけれど、そんな風に思われていた事に、どうしていいかわからないような高揚も覚えたのは事実だ。

美咲さんには、私に飽きたらいつでもぱっと手放す事を躊躇わないでいて欲しい気がしていたし、いつそうされてもいいような心の準備を、こちらも整えておかなければならないと、そこに必死になっていた。
でも美咲さんはそういう、ドライな性格の人ではない。
そんなの少しでも美咲さんを知っていれば誰にでもわかる事なのだが、私は美咲さんにそうあって欲しいという願望を投影してしまっていて、ありのままの美咲さんを受け止めるのが怖かったのかもしれない。

美咲さんの転職先にまでのこのこついて行っておきながら何を今更、と思うし、きっと前の職場の人たちも、親しい人を除けば私の事は思慮の浅い女だと、思っているかもしれない。

でもそれは別にどうでも良い事だ。
彼ら、彼女らにどう思われた所で、実際美咲さんの傍にいて一緒に暮らしている相手は今、私なのだから。

「……?」

見るともなく美咲さんの顔を見つめてしまっていたようで、美咲さんが心配そうな表情でこちらを覗いてくる。
電車内だと言うのに、その表情を見ただけで胸が掻き毟られるようにざわついて、それにほんの30分前にあんなにキスしていたのにまたキスしたくなって、自分が嫌になった。

「大丈夫です、ちょっと考え事してただけなので」
「…そう」

それでも微妙に気遣う表情を残したまま美咲さんが向き直るけれど、私はやはり胸の高鳴りがおさまらなかった。
こっそりショーツを交換している件を除いても、やっぱりどうしても、ここ最近の美咲さんの佇まいや仕草、ともかく漂う雰囲気の全てにおいて愛らしさなのか何なのか、本当に壊してしまいたくなるような儚さのような魅力が加わっていて、しかもそれは私の勘違いではなく客観的事実なのだ。

遠くから眺めている頃だって十分に魅力的な人だった。
距離が縮まってますますそれを強く感じたのはあったけど、美咲さんから本能的な何かを刺激するようなフェロモンが倍量ぐらいに増えたのは、間違いなく私の手によるものだと思うから、それもあって余計興奮するのかもしれない。

…それに。
かつてはリードしてくれる事が多かった美咲さんが、夜ごと私に甘えるように交わりをねだってきたり、媚びたような調子で、それでも割と真面目に迫ってきたりしているからか、そういうシーンがいちいちちらついて不埒な気持ちになりやすいのかもしれない。

私自身がまさか、美咲さんの性的魅力の底無し加減にやきもきするなんて想像もしなかった。
そうなる事に嬉しさも感じるが、同時に心配にもなってしまう。
それこそ、新たに容子社長のような人に目をつけられて誘われる可能性が高まる件について、応じる応じないは美咲さんの自由だと思う反面、そういう機会が増える事そのものを私は歓迎していない。
つまり結局私は、美咲さんを独占していたいのだ。

だから表面的に違うふりをするのは、自分に嘘をついている事だと思うから、辞める事にした、というのがここ最近の私の心情である。

そう考えれば、まだ容子社長は物分かりのいい方で扱いやすいとも言えるではないか、と一瞬錯覚したけれど、そういう理屈は抜きにして、私はなぜだか容子社長に対して独特の、親近感だか近親憎悪だかわからない、もやもやとした感情を抱いている。

「おはようございます」
「おはよう、冴子ちゃん♪」

100%形式的とわかるので腹立たしいが、容子社長は朝から私の腕に絡みついて頬を寄せてくる。
生理的には嫌ではないが、苦笑いで返すしかない。
こんな事をしておきながら美咲さんにはもっと生々しい感じで迫っているくせに。
わかっているぞと一瞬だけ視線で牽制すると、容子社長は心得たようにぱっと腕を離すので、そこもまた微妙だ。

気を取り直して美咲さんを見ると、すっかり仕事モードの表情に変わりブリーフケースを開いて支度を整えている所だった。

「……」

私は半ばほっとして感情の乱れを整える。
エッチな時の美咲さんの破壊力は、それはもう言うまでもなく絶大ではあるが、私個人としては、仕事モードの美咲さんを眺めているのがとても好きだ。
美咲さんのプライベートを全く知らなかった頃の、あの気持ちをリアルに思い起こす事ができるからかもしれないけれど、単純に、美咲さんの働く姿を見ているのがどこか誇らしくて、嬉しい。
こんなに凄い人と、自分は深い関係なのだと再認識できるのが、正直言って気持ちいい。

ましてや今日に限って言えば、朝のキスでちょっと濡らしたショーツをこっそり交換して履いている訳で、ほんの少しでもそれを思い出しただけで、まるでシンクロするように股間が疼いてしまいそうになる。

とにかくその事が容子社長にばれませんようにと祈りつつ、私はそうする為の最善策として、美咲さんとショーツを交換している事実を忘れて働く事にした。

*-*-*-*-*-

その日、勤務時間中に美咲さんから何かを訴えられる事はなかった。
万一にもトイレに連れ込まれるとか執務室で何かするとか言い出しはしないかと若干心配していたけれど、幸いにもと言うべきか、今日は多忙で物理的にそんな暇がなかったという所が正しい。

…けど、その反動なのか何なのか、帰宅するやいなや美咲さんに自慰を見ていて欲しいと言われ、私は朝に続いてまたひっくり返りそうなぐらいに驚いてしまう。

「ど、どうしたんですか…一体」
「いいから」

今日は帰りも同じ時間になったので、出勤同様二人で一緒に帰宅したのだけれど、それまで割と普通にしていた美咲さんが、部屋に入るなり靴を脱ぎ捨てバッグも放り出し私を連行してソファに向かったので、その変わりようにこちらはついていけなくなった。

「チェックするって、言ってたでしょ?」
「言いましたけど…そんなに慌てなくても」
「ダメ」

止める暇もなくソファに座った美咲さんがストッキングも脱ぎ捨てるので、私はびっくりして立ったままの姿勢で美咲さんの様子を見る事しかできない。
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