6 / 71
女神の泉
しおりを挟む
「…ないなあ」
美咲さんと暮らす恵比寿の部屋へ帰宅した直後、普段持ち歩いているキーホルダーが見当たらない事に気付いた。
今は週に一度しか帰ってないけど、私が借りているアパートの部屋の鍵とか、そういったものをまとめて持ち歩くためのキーホルダーなのだが、見当たらないのは困る。
秘書課のロッカーで着替えた時に落としただろうか、と思い私は社へと戻る事にした。
もしかしたらまだフロアには誰か残っているかもしれない、そんな時間帯でもあったから。
社に取って返し、エレベーターで10階へと向かう。
いつもは逆にたどるこの道順を、暗い時間にたどるのは変な気分だった。
廊下の照明は少し薄暗くなっていたけれど、秘書課のデスクの一角にはまだ灯りがついている。
…良かった、まだ誰か残ってるんだと思い扉を開けてみるが、灯りのついているデスク周りに人の姿はない。
あれ?と思った瞬間、誰が聞いてもそれとわかる、女性の喘ぎ声が聞こえてきた。
私は思わず身体を硬直させ、それに聞き耳を立ててしまう。
「あはぁ、あぁん……だめ」
方角としては更衣室の辺りのようだけど。
それにしてもこの喘ぎ声は大きくて途切れる事もなく延々と一帯に響き渡っていた。
「は、あぁっ……やだぁ、あ、う…んふぅ」
正に、甲高い嬌声とでも言うべきか。
大音量でアダルト動画でも流しているんじゃないか、ぐらいのわかりやすさである。
近付いて確かめるまでもない。このエリアで誰かが、いやらしい行為にふけっているという事だ。
私は一瞬の間、ここへ何をしに戻ってきたのか忘れてしまっていた。
「あんっ、はぁ…あぁっ…あ……あぁんっ」
それにしても喘ぎ声は途切れもせず、私にまともな思考をさせてくれないぐらい大きい。
しかし思い出した。キーホルダーはロッカールームに落としたかもしれない、という事を。
念の為自分のデスクも確認したが、それらしい落とし物はなかった。
…やっぱりロッカールームなんだ、と思うけど、これは近づいて良い雰囲気とは言えないし、かと言ってだらだらとここにいてもいけない気がする。
とりあえず、これだけ夢中になって声を上げているのであれば多少の事では私の存在に気付かないかもしれない、と思ったのと、声の主とその相手が誰かというのも正直気になり、おそるおそるロッカールームへと歩を進めた。
「んっ…あふぅ、ん……あぁん」
どうでも良いがこの声の主の喘ぎ声の癖として「あぁん」とよく言うんだなあ、などと冷静に分析してしまいつつも、ロッカールームにだいぶ近づいた所でなんとなく、声の主が誰なのかわかった気がした。
「…あぁっ、もっと、激し……あ、あ…!」
疑惑は確信へと変わる。
声の主はきっと、梢さんだろう。
それがわかった所でこの状況がどう変わるわけでもないが、私の足元は知らないうちにぐらついて、じっと立っているのが辛くなってくる。
自分の足元を見下ろすと、クロップドパンツから生えた自分の脛とヒールのパンプスが見えるが、それがぐらぐらして見えるのは、足が震えているのか頭がぐらぐらしているのか、どちらなのか判然としない。
「あ、あぁっ…あはぁん…」
これだけ長く大きな喘ぎ声を聞かされていれば、こちらだって影響されてしまう。
私は無意識に生唾を飲み込んでから、更にロッカールームへ接近した。
よく耳をすましてみると、声はロッカールームより更に奥の方から聞こえてくるような気がする。
ロッカールームの扉の下の隙間から、わずかに光が漏れていた。
このロッカールームの奥にはもう一つ、カーテンで仕切られただけだが簡易ベッドを備えた部屋がある。ごくごく小さな医務室スペースのようになっているが、普段はほとんど使う人もいない。
…そこで、しているの?
「あぁっ、あ、あ…あはぁ…」
声が大きすぎるのが悪いのか、それ以外の人の声はまるで聞こえない。
あるいは梢さんが一人で?とも考えたけど、不意打ちをされているらしい感じの反応もあるみたいだし、きっと他にも人はいるはずだ。
そうなるとそれが誰なのかもまた気になってくる。
…この扉を開ければ、その時は絶対に私の存在に気付かれてしまうだろう。
だけどこのまま放っておきたくないような気分でもあった。
奥から聞こえる声はあまりにも気持ちよさそうで、何をやっているのか見て確かめたい気持ちもあるし、それに対して嫉妬なのか注意なのか、何やってるんですかと咎めたいような気持が交錯する。
「……」
扉を開けるのが怖い。
かと言ってキーホルダーを諦めて帰るわけにもいかない。
だいたい、本来職場でいやらしい事をしている人たちの方が悪いわけで、忘れ物を取りに来た私が遠慮する筋合いはないはずだ。
ただ、邪魔しちゃうかもとか、見てはいけないものを見てしまうかもとか、今後の人間関係を考えると、関わらない方が身のためだというのも十分理解できている。
そう考えた瞬間。
私のバッグの中でスマホが振動し電話の着信を知らせていた。
美咲さんかもしれない、と思うと同時に扉の向こうの気配にも変化が現れる。
私はスマホを何とかしようとしてバッグを探るが、慌てているので手元が狂い、物音が立ってしまった。
…まずい。これはもう逃げられないだろう。
ならば開き直るほかないか。
スマホの着信は留守電へと切り替わる。
…そういう設定にしていた事さえ忘れていた。それぐらい今の私は慌てているのだ。
ロッカールームの奥の喘ぎ声が止まり、今は静かになっている。
そして「誰かいるの?」という、梢さんの声が聞こえた。
私は扉の前から一歩後ずさったけど、それとほぼ同時にロッカールームの扉が徐々に開き、そこから真帆さんの顔が出てきて私はひっくり返りそうになった。
予め一歩後ずさりしておいて良かった。転ばずに済んでいる。
「…冴子ちゃん?」
「あ、あの…」
ろくに言葉も発する事ができず口をぱくぱくさせていると、真帆さんはいつもの柔らかい笑顔で語り掛けてくる。
「…忘れ物?」
「…は、い…キーホルダーを…」
「そう、じゃ遠慮しないで探して」
遠慮するなと言われても。
しかし真帆さんは扉を開けて私を待ってくれている。
真帆さんは、ボルドーカラーの秘書課制服に身を包み、その装いに一切乱れはない。
ただ、一歩部屋に入った時に、何だか甘ったるいような、そこだけ空気の匂いが異質なものであるのは私にもわかった。
「じゃあ、失礼します…」
私からその姿は見えないが、カーテンの向こう側からは小さな呼吸音が聞こえる気がする。
私は今日ほど、自分のロッカーが入口の近くで良かったと思う事はないだろう。
この場には似つかわしくない、金属音を立てて私はロッカーの扉を開けて落とし物を探した。
案の定、ロッカー扉の内側にあるアクセサリートレイにそのキーホルダーは乗っかっており、私はほっとしてそれをバッグにしまうが、その瞬間再び、さっきまでと同じ喘ぎ声が、今度はカーテンを通しただけの所からダイレクトに聞こえてきて、私はまたひっくり返りそうになった。
「あ…あぁんっ…」
いやいやこれはさすがにどうかしてる、と思うが絶え間なく聞こえる梢さんの喘ぎ声に当てられて私は思うように身体を動かせない。
極力音がしないようにロッカーの扉を閉めてみるけれど、そんなの勿論無音というわけにはいかず、パタンという音が小さく響く。
…どういう意図かは知らないが、黙って帰れという事だろうと解釈し、私は一度だけカーテンの方を見た。
「…」
カーテンは半分以上閉じてるけど、隙間というにも広いぐらいの適当な閉まり具合で、そのカーテンの下からちょうど真帆さんの白い足と黒い靴が見えた。
何故私はそこに視線をやってしまったんだ、と後悔するが、帰るべきだとわかるのに、やっぱり身体は動かない。
相変わらず梢さんの、自制のかけらも感じられない、むしろ挑発するような喘ぎ声は続いているし、勘弁してくれという気分になってくる。
「はぁ……あ、あぁんっ」
…もしかして、私がここにいる事さえ、彼女らに利用されているの?
そんな馬鹿な、とも思うが梢さんはさっきまでより明らかに高まっているのを隠し切れないような声で鳴き続けている。
「冴子ちゃん、こっちに来て」
いつもと同じ調子の真帆さんの声がカーテンの向こう側から聞こえた。
…は?なんで?と言い返すべきなのに、これまた私の中の疑惑は確信へと代わりつつあった。
…この二人、私に見せつけようという魂胆なのだろう。
「ほら、早く」
半分くらいカーテンを開けて真帆さんがこちらに顔を出し、手招きしてくる。
表情もいつもと変わらないし、髪も崩れていない。少しくせのある黒髪を後ろで三つ編みにした、昼間と同じスタイルだ。
真帆さんの様子だけ、あまりにもいつも通りなので、カーテンの向こうで本当に真帆さんが梢さんを攻めているのか、わからなくなるぐらいだ。
いや、行けるわけないでしょと私が固まっていると、真帆さんは優しく私の手を取った。その身体からは、この部屋に入った時から漂っている甘酸っぱいような香りが、濃く立ち込めてくる。
私はバッグを取り落としたが、真帆さんは気にせずそっと私を導いた。
「…冴子ちゃんにも同じ秘密を、ね」
カーテンの内側へと連れて来られて、視界に梢さんの姿が飛び込んでくる。
制服は勿論、下着も身に着けていない、いや…厳密には、ガーターとストッキング、それとストラップ付のパンプスを履いただけであとは何も着ていない。
梢さんはよく走り回るのにこの方がいいから、とストラップの付いたパンプスを好んで履くのだ。
梢さんは簡易ベットの横に立ち、惜し気もなくその裸体を晒している。
私がそちらに気を取られている間に、真帆さんがふわりと私の身体を引き寄せて、その柔らかい雰囲気とはまるで別人のように、ねっとりとした動作で唇を重ねてきた。
「……っ」
秘書課の制服は私だって毎日着ているのに、その恰好の人に抱き付かれるとなぜかどぎまぎする。
ましてや毎日毎日お世話になり、時には母親のように私を癒し導いてくれている人が、今は私と身体を密着させ、互いの口内を味わうようなキスを交わしているのだ。
…この人のキス、めちゃくちゃ気持ちいい。
一瞬我を忘れそうになってしまう。
「…ん…ふ」
わずかに漏れる真帆さんの吐息が唇に触れて、理性が飛びそうになる。口の中を這い回る舌は、いちいちいやらしい水音を立てて私の身体の内側を直接探っているかのように艶めかしい。
抵抗しなければいけないのにそれを忘れてしまいそうになる。
そして、それを恨めしそうに見つめる梢さんと目が合って、私は慌てて真帆さんから身体を離した。
「何、するんですか…」
「うふふ、嫌がらないのね?」
「……」
これは口止めのつもりなのだろう、と私は直観した。
「か、帰ります」
「ちょっと待って」
そう声を上げたのは、真帆さんではなく梢さんだった。
どうして?と驚き梢さんを見ると、私の視線を浴びて明らかに顔と身体を赤く染めて佇んでいる。
「梢ちゃん、見られたいんでしょ」
優しい真帆さんの言葉に、私は思わず振り返った。
「その、冴子ちゃんが嫌じゃなかったら…見て欲しいの」
裸同然で顔を赤らめて梢さんは懇願する。
そういう風にお願いすれば私が断る事はできないとでも、知っているかのように。
現に、と言うか既に私は梢さんの双丘も、脚は閉じているがうっすらと生えた毛の向こう側の秘部も、見てしまっているのだけど。
…見るのは別に構わないのだが、そうした後わ私はどうなってしまうのか、どうされてしまうのか。
「大丈夫、それ以上の事はしないから…」
再び、梢さんが艶めかしい声でおねだりしてくるのだが、だからと言ってハイそうですかとも答えられない。
しかし私の沈黙を了承と受け取ったのか、控えていた真帆さんが梢さんに近づきその身体に指を這わせた。
「あの、いいとは言ってな…」
「きゃあ、あぁんっ、あはぁ…っ、あ…」
私の呟きは梢さんの喘ぎ声にかき消されてしまう。
頭を抱えたくなりながらも、なぜか視線だけは梢さんの身体に集中させてしまっていた。
陸上競技をやっていた、と言う梢さんの身体は細く締まっていて、適度に筋肉がつき美しい。
やや小ぶりだが、張りがあって形の良い胸が、ゴムまりのようだと思った。
私によく見えるようにという意図なのか、真帆さんは梢さんの後ろ側に回り込んで、梢さんの弾力のある胸に指を食い込ませて、揉みしだいている。
「あぁ…んっ、見て…はぁんっ」
両方の胸を揉まれているのに、梢さんの膝はがたがたと震えて、内腿はきゅっと閉じて何かを堪えている。
真帆さんの愛撫にとろけていながらも、しっかりと私に視線を送り、見られている快感を享受しているのがわかった。
梢さんは胸をいやらしく揉みしだかれながら、時折首を振った。
その度にセミロングの真っすぐな茶色の髪が鎖骨にかかり、揺れるようにそこを撫でていく。
こんなものを至近距離で見せられて、どうすれば良いんだろう。
混乱しているせいか、私はある疑問を考えもなしに言葉にしてしまっていた。
「あの、二人はその…」
「遊んでるだけよ」
真帆さんは穏やかに微笑んで即座に答える。
…は?付き合ってるわけじゃないの?と私の顔に疑問の色が現れたからか、続けて梢さんも「そうだよ、いたずらされてるだけ、あ…あんっ」などと言う。
「梢ちゃん、生理が終わるとどうしてもエッチしたくなっちゃうんだって」
「そう、わたし…誰でもいいの…っあん」
そう言いつつ注がれる梢さんの視線は、私の存在さえもその対象であると思っている事を隠さない。
「…全員じゃないけど、梢ちゃんのむらむら解消に付き合ってる人、他にもいるのよね?」
少し意地悪な口調で真帆さんが尋ねる。
梢さんの胸を揉んでいた手は、今度は指の腹で梢さんの乳首をさわさわと撫でさすっていた。
「あぁんっ、あ…っくふぅ…ん」
梢さんは何か言おうとしているが、真帆さんの繰り出す指の動きに反応するのが精いっぱいのようである。
「今みたいに、見られながらされた事もあるんでしょ?」
「あぁ、うん…っ、見るだけじゃなくて、触られた事も、あるよ…っふぅん…」
…この、真帆さんの尋問とそれに答える梢さんの一連の会話もまた、プレイの一環なのだろう。
おそらく、いやきっと、梢さんはかなりのM気質なのだ。
「…あ、あぁんっ…すごい、興奮しちゃうよ…」
梢さんは身体を振るわせながら必死に言葉を紡ぐ。
私は、知らず自分の手を握り締めていた。立っているのが辛くなってきて、個室の壁にほんの少し背中を預ける。
真帆さんが「冴子ちゃんで良かったわね」と梢さんの耳元で囁く。
梢さんは首を縮めながらも喘ぎ声で応じた。
「あぁっ、はぁ…はぁ」
「…ね、冴子ちゃんの事好きでしょ?」
「…っ冴子ちゃん、可愛いから…好き」
「…ですって」
真帆さんはそう言いながら私に微笑みかけてくる。
私はそれに対して何ともコメントできない。
私は、いわゆるハプニングバーとかそんな所へ行った事もないし、人が交わる場面を見るのが特別に好きという趣味でもない。
むしろ、行為に夢中になる人たちの邪魔をしているようでもあり、そういう所に「見る」だけの形で参加させられるのは好まない方だと思っていた。
だが、今この光景は、この場の主役が私であるかのように、真帆さんと梢さんは身体を重ねながらそこに私が参加している事を喜んでいる。
行為を見せられる事は迷惑に決まっている、という私の認識が崩れていく気配を感じた。
「でも、私…帰らないと…待っている人がいるんです」
「あら」と真帆さんは声を上げる。
梢さんは「冴子ちゃん、もう少しだけ」とまた懇願モードだ。
その瞬間真帆さんの手が梢さんの身体をくるりと回して引き寄せ、真帆さんと梢さんは性急に唇を重ねる。
「んふ…っ…」
耳まで真っ赤に染まった梢さんが、うっとりとしながら真帆さんの舌を求めて顔を動かす。
その仕草が可愛らしくて私は見とれてしまう。
…そうだ、この二人はこんなにもいやらしく触れ合っているのに、その全てが美しいと思う。
だから私はこの空気を壊したくなくて、どうしてもすぐにこの場所から逃げ出せないのだ。
「せっかくだから、こっちも見てあげて」
唇を離した真帆さんに促され、梢さんは躊躇なく簡易ベッドに両手をつき、お尻を突き出した。
お尻もぷりっとしていて張りがあり、肌も綺麗だ。
真帆さんは自身のタイトスカートを軽くたくし上げながら膝立ちで座り、梢さんのお尻を両手で開いていく。
わずかにクチュッという水音が漏れた気がした。
私は、今どんな顔でこの二人の行為を見ているのだろうか。
美咲さんに怒られるような、物欲しそうな顔をしているに違いないと思う。
「はぁ…スースーするよぉ…っ」
見られる事で興奮するタイプの梢さんは、お尻の肉を割り開かれ大事な部分が丸見えになっている状況だけでも、どんどん昂っているようだ。
見る間にその割れ目から透明なものが溢れてきて、それが内腿をつたい落ちていくのが私の目にもはっきりと見えている。
「あ、はぁ…ん…」
羞恥に肌を染め悶える梢さんがとてつもなく愛らしい。
真帆さんは、割れ目に少し顔を近づけふーっとそこに息を吹きかけた。
梢さんの身体がビクビクと震えて、内腿をつたう蜜の量が更に増えていく。
「美味しそうね」
いやらしい事を言っているのに、真帆さんの表情はあまりにも普段通りで穏やかだ。
舐めるの?と想像しただけで、私まで崩れ落ちそうになる。
「もう少しだけ、ごめんね」
すまなそうに真帆さんは詫びてきて、その口で梢さんのお尻の穴をペロリと舐めた。
「あぁっ!…あぁんっ」
梢さんの痙攣は止まらない。
じっくりと何もしない時間を作り間を置いてから、真帆さんの舌が今度はお尻の穴よりも更に下の位置、会陰のやや下の、つまり蜜穴に軽く舌先を引っかけてから舐め上げたようだった。
真帆さんの舌の動きに合わせるように、梢さんは甲高い声を上げている。
それが何度か繰り返されて、次も同じようにするのかと思いきや、真帆さんは舌をつける前に、軽く指先を立てて梢さんの脚の間に滑り込ませ、萌芽をこね回し始める。
「う…んふ…あはぁん」
さきほどまでとはまた違った反応を見せる梢さん。
お尻が軽く左右に揺れている。
それにしても真帆さんの技術は凄い。
梢さんとの接触面積で言えばごくわずかだ。触れている時間だって短いのに。
この人は究極の焦らしテクを持っているのかもしれないと思った。
そしてその方法は、つまり私がきちんと梢さんのいやらしい場所を見えるようにというはからいでもあって、プレイを見せるという事においてもこの人は普通じゃない技術を持っているのではないかと戦慄した。
「…見える?冴子ちゃん」
いきなり名前を呼ばれてどきりとする。
絶対に、二人だけの世界に入り込まない。その徹底ぶりもまた恐ろしいものがあった。
強制的に、私はこの行為に参加させられている。
「あ、…はい」
声がかすれてしまう。私は小さく咳して極力冷静さを保とうとした。
「これぐらい全然平気?…もっと凄い事してるのかしら、あの人と」
真帆さんは梢さんのお尻を凝視したままそう尋ねてくる。
…何、どこまで見えてるの?この人…。
「ま、いいわ」
答えを求めずに真帆さんは再びその口から舌を出して梢さんの蜜穴に軽く舌先を引っかけてから舐め上げる。
舌がお尻の穴を通過する瞬間、梢さんは小さな悲鳴を上げる。
「ひゃぁんっ、あっ…はぁ…ん」
ふいに真帆さんが「あ」と言って梢さんから離れた。
さっと手を伸ばし、簡易ベッドの隅に置かれた、私も見覚えのある汗拭きシートのパッケージを手に取る。
「それ…」
一度私もそれで身体を拭かれた事がある。梢さん愛用のシートだ。
「梢ちゃんこういう使い方も好きなんだよね」
打ち明けるように真帆さんはわざとらしく私に語り掛けてくる。
そして徐にシートを一枚取り出して、強いメントールと美容液のたっぷり染み込んだシートを折りたたみ、その山折の先端を使って、ベッドに手をついて前傾している梢さんの乳首をさらっと拭き取った。
「…っあ…あぁん」
両方の乳首にさりげなく、でもしっかりとシートに染み込んだ液体を移して、そして素早くシートを折り返してから今度はあろう事か、それを梢さんの秘部へと持って行く。
尋ねる間もなく、そのシートの折れ目が、梢さんの花弁の間を通過していく。
前から後ろ方向に一回なぞってから、今度はシートの平らな面で梢さんの、クリトリスを丁寧に拭いているようだった。
おむつを替えられている途中の赤ちゃんのように、濡れたシートで股間を撫で回されている梢さんは、その時初めて声を殺して耐えているようだった。
「くっ……ふ…ん」
堪える姿もまた、たまらなく可愛らしい。
ただ、粘膜にあれだけの強さのメントールが振れてしまったら、ちょっと痛いぐらいの刺激になりはしないかと心配になる。
いや…痛いぐらいが、梢さんには良いのかもしれない。
「ここも、ね」
真帆さんは、丁寧にシートの綺麗な面を折り返しては、繰り返し梢さんの秘部を拭いて、たまには梢さんのお尻の穴の方まで、シートで丁寧に拭いていった。
「…すっきりしたかしら、あら?」
何度そこを拭いても、梢さんの花弁の間からは、透明な液体が漏れ出してきている。
さっきから、何度も何度もそこを拭いているのに、拭いたそばからまた蜜を溢れさせ、内腿まで垂らしているのだ。
「あぁっ…あはぁ…ん」
梢さんの声色が少し大人びて聞こえた。
痛みを伴う性的刺激に身体が慣れて、一段上のステージへ行った、そんな感覚を覚える。
「どんどん溢れてくるわね」
真帆さんが可笑しそうに笑いながらこちらを見てくる。
「…冴子ちゃんっ、あふ…うぅん…」
いつぞやか「このシートで乳首を拭いたら」などと梢さんが言っていたのは、つまりそれを自分がされたいから思いついた、悪戯だったのかと腑に落ちる。
私は軽く頷いて梢さんをじっと見た。
私はそういう梢さんの願望を否定するつもりはない。
ただ悪戯半分に話題にされただけで、強引にその行為をされたわけでもなかったから。
「…出した時よりびしょびしょになっちゃったわね」
真帆さんの手には、美容液の代わりに梢さんの垂らした蜜をたっぷり含んだシートがある。
無機質なはずのそのシートが、なんだか、だらしなく蜜で汚したショーツよりもいやらしいものに見えてしまった。
それに梢さんの蜜は、本物の蜂蜜よりもずっと澄んだ透明で、変な匂いもしない。
甘い香りの正体を知り、私はこの世にこんな綺麗な液体を作り出せる人がいるのか、と感慨でいっぱいだった。
美咲さんの蜜も勿論大好きだけど、それはもっと人間的な、艶めかしいものであるのに対して、梢さんの垂らすそれは、まだ直接触っても舐めてもいないけど、神聖な泉から湧き出る水のように、粘性は弱く透明であるのがわかるから、この世のものならざる物質のように見えてしまうのだ。
そんな清らかな蜜の染みたシートを無造作にたたんで、真帆さんは微笑んでいる。
…この人が扱うからこそ神聖なものに見えるのだろうか、と思い直して私は瞬きをした。
しかしその、もはや申請だとさえ思えた光景は一瞬にして色合いを変えていく。
なぜなら梢さんの脚がじりじりと開いて、膝を少し曲げながら秘部を更に露出させてきたからだ。
わずかに動いた梢さんの頭が、その行為により得られる羞恥の量を物語っている。
神聖な女神のように見えていた梢さんの姿は、途端にはしたなく被虐的な自分に酔う雌犬のように変わっていく気がした。
身体の敏感な場所にたっぷりと、メントールの美容液をなじませられて、きっと梢さんの身体は、振れただけで電流が走るぐらい敏感になっているはずだ。
真帆さんが、そんな梢さんの秘部に改めて息を吹きかけた。
すると梢さんの身体は、さっきまでとは比べ物にならないぐらい大きく跳ねて、金切り声にも似た悲鳴を上げたかと思うと、それは一瞬にして甘ったるい吐息へと変化する。
「きゃっ、ふぅ…んっ……」
…行ったり来たりするんだ、梢さんは。
普段は悪戯好きの子供のようにお茶目で、こういう事をしている時には神聖な女神と、あさましい雌犬の間を行ったり来たりする。
その過程の中で、びっくりするほど大人びた色香を漂わせこちらを挑発してくる。
しかもきっと無意識的に。
素直に言って、それは梢さんの知られざる一面ではあるが、実に魅力に溢れている。
この一面を知っているなら、単なる「生理後のむらむら解消」をねだられたとしても、断る相手はいないだろう。
「はぁ、はぁ…んっ、ふ…」
息をかけられただけでも梢さんは強烈に感じているらしい。
真帆さんは、今度は無遠慮なぐらいにいきなり梢さんの蜜穴の中央に指を差し込んだ。
貫かれた梢さんの身体が縮まるように、真帆さんの指にすがりつくのが見て取れた。
「あはぁっ、あ…っ、あ…もっとぉ」
「はいはい」
梢さんは、自分だけが裸にされていやらしい声を上げまくっているこの状況にさえ興奮を覚えている。
真帆さんは指を回して梢さんの中を、真っすぐにではなく角度を付けて擦り始めた。
途端にその指を咥えた蜜穴から透明な液体が吹き出してくる。
梢さんの蜜はさらさらしているから、それが潮なのかそうでないのか見分けがつかなかった。
ただ、お尻を突き出した恰好で大量の水を吹き出している梢さんはもはや、女神などではなく生々しい動物のように見えてきて、私は頭がぼーっとしてくる。
「…冴子ちゃん、見て…くれてる?」
かろうじて顔を起こし目を開けてこちらを見つめる梢さん。
その口からは絶え間なく、艶めかしい喘ぎ声が漏れてくる。
私は声を出す事もできず、ただ縦に首を動かした。
そうした瞬間、自分のショーツの中もだいぶまずい事になっているのではないかと気付き、焦りを覚える。
「冴子ちゃんは、はぁ…替えのパンツ持ってないの?…ん、ふぅ…ん」
梢さんは「私はあるよ」と続けたいような様子だったが、意味が伝わるであろう部分以降は喘ぎ声に変えて訴えてくるだけだ。
そんな梢さんの秘部には、真帆さんの人差し指が挿入されており、中をいいように嬲られている。
嬲られながら私と普通の会話をしようとする様子もまた、たまらなくいやらしかった。
メントールで拭かれた場所には、汗なり蜜なりがにじんで湿っているから、いつまで経っても冷たい刺激はなくならないだろう。
その冷たい刺激に陶然としながら、梢さんは快楽の高みへと向かっていく。
「冴子ちゃん、いっちゃうの、わたし……あぁん、いっちゃうのっ」
達する時さえこの人は愛らしく鳴く。
指を挿入しているのは真帆さんなのに、梢さんは私の名前を呼んで果てた。
「…」
帰らないと。
それだけは思っているのに、どうしたら良いのだろうか。
「はぁ、はぁ…」
ベッドにつっぷして呼吸する梢さんをよそに、真帆さんはさっさと指を拭いて何事もなかったかのように私に向き直った。
「ごめんね、引き留めちゃって」
「いえ…」
自分の顔を見られたくなくて、私は下を向く。
帰らないといけない、だけどすぐには身体を動かせないでいる。
その瞬間、カーテンの向こうに転がしたままのバッグから、スマホの振動音が聞こえる気がした。
電話の主が美咲さんだとしたらいよいよまずい。
その振動音が私の呪縛を解いたかのように、私の身体には力が入り、カーテンの外へと飛び出す事ができた。
「ごめんなさい、帰ります」
振り返らずにそれだけ言い残し、私はエレベーターホールへと走った。
着信はやはり美咲さんからのものだったので、折り返し電話をかけ「忘れ物を取りに行ってました、すぐ帰ります」とだけ言って電話を切る。
…だめだ、早く帰りたい。
真帆さんがしていたような抑制の利いた愛撫なんてできないけど、今すぐにでも美咲さんの花弁にしゃぶりついて、溢れ出る蜜を吸いたくて仕方なかった。
そうしないと、神話の女神を象った彫刻のように綺麗な梢さんの裸の身体が、頭から消えてくれない気がして。
梢さんのイメージを消すために美咲さんに迫るのか、という罪悪感などどうでも良かった。
美咲さんがいてくれなかったら、私もあそこに「手を出す」形で参加していたに違いない。
それがダメな事ではないにせよ、あんな物を見せられてもなお自制心を保っていられた事に私は安堵している。
※筆者注:
このお話はフィクションです。
ボディ用デオドラントシートで粘膜を拭かないでくださいね。
(説明通りの使い方をしましょう)
デリケートゾーンには専用の拭き取りシートも売ってるので、気になる方はそちらをどうぞ。
美咲さんと暮らす恵比寿の部屋へ帰宅した直後、普段持ち歩いているキーホルダーが見当たらない事に気付いた。
今は週に一度しか帰ってないけど、私が借りているアパートの部屋の鍵とか、そういったものをまとめて持ち歩くためのキーホルダーなのだが、見当たらないのは困る。
秘書課のロッカーで着替えた時に落としただろうか、と思い私は社へと戻る事にした。
もしかしたらまだフロアには誰か残っているかもしれない、そんな時間帯でもあったから。
社に取って返し、エレベーターで10階へと向かう。
いつもは逆にたどるこの道順を、暗い時間にたどるのは変な気分だった。
廊下の照明は少し薄暗くなっていたけれど、秘書課のデスクの一角にはまだ灯りがついている。
…良かった、まだ誰か残ってるんだと思い扉を開けてみるが、灯りのついているデスク周りに人の姿はない。
あれ?と思った瞬間、誰が聞いてもそれとわかる、女性の喘ぎ声が聞こえてきた。
私は思わず身体を硬直させ、それに聞き耳を立ててしまう。
「あはぁ、あぁん……だめ」
方角としては更衣室の辺りのようだけど。
それにしてもこの喘ぎ声は大きくて途切れる事もなく延々と一帯に響き渡っていた。
「は、あぁっ……やだぁ、あ、う…んふぅ」
正に、甲高い嬌声とでも言うべきか。
大音量でアダルト動画でも流しているんじゃないか、ぐらいのわかりやすさである。
近付いて確かめるまでもない。このエリアで誰かが、いやらしい行為にふけっているという事だ。
私は一瞬の間、ここへ何をしに戻ってきたのか忘れてしまっていた。
「あんっ、はぁ…あぁっ…あ……あぁんっ」
それにしても喘ぎ声は途切れもせず、私にまともな思考をさせてくれないぐらい大きい。
しかし思い出した。キーホルダーはロッカールームに落としたかもしれない、という事を。
念の為自分のデスクも確認したが、それらしい落とし物はなかった。
…やっぱりロッカールームなんだ、と思うけど、これは近づいて良い雰囲気とは言えないし、かと言ってだらだらとここにいてもいけない気がする。
とりあえず、これだけ夢中になって声を上げているのであれば多少の事では私の存在に気付かないかもしれない、と思ったのと、声の主とその相手が誰かというのも正直気になり、おそるおそるロッカールームへと歩を進めた。
「んっ…あふぅ、ん……あぁん」
どうでも良いがこの声の主の喘ぎ声の癖として「あぁん」とよく言うんだなあ、などと冷静に分析してしまいつつも、ロッカールームにだいぶ近づいた所でなんとなく、声の主が誰なのかわかった気がした。
「…あぁっ、もっと、激し……あ、あ…!」
疑惑は確信へと変わる。
声の主はきっと、梢さんだろう。
それがわかった所でこの状況がどう変わるわけでもないが、私の足元は知らないうちにぐらついて、じっと立っているのが辛くなってくる。
自分の足元を見下ろすと、クロップドパンツから生えた自分の脛とヒールのパンプスが見えるが、それがぐらぐらして見えるのは、足が震えているのか頭がぐらぐらしているのか、どちらなのか判然としない。
「あ、あぁっ…あはぁん…」
これだけ長く大きな喘ぎ声を聞かされていれば、こちらだって影響されてしまう。
私は無意識に生唾を飲み込んでから、更にロッカールームへ接近した。
よく耳をすましてみると、声はロッカールームより更に奥の方から聞こえてくるような気がする。
ロッカールームの扉の下の隙間から、わずかに光が漏れていた。
このロッカールームの奥にはもう一つ、カーテンで仕切られただけだが簡易ベッドを備えた部屋がある。ごくごく小さな医務室スペースのようになっているが、普段はほとんど使う人もいない。
…そこで、しているの?
「あぁっ、あ、あ…あはぁ…」
声が大きすぎるのが悪いのか、それ以外の人の声はまるで聞こえない。
あるいは梢さんが一人で?とも考えたけど、不意打ちをされているらしい感じの反応もあるみたいだし、きっと他にも人はいるはずだ。
そうなるとそれが誰なのかもまた気になってくる。
…この扉を開ければ、その時は絶対に私の存在に気付かれてしまうだろう。
だけどこのまま放っておきたくないような気分でもあった。
奥から聞こえる声はあまりにも気持ちよさそうで、何をやっているのか見て確かめたい気持ちもあるし、それに対して嫉妬なのか注意なのか、何やってるんですかと咎めたいような気持が交錯する。
「……」
扉を開けるのが怖い。
かと言ってキーホルダーを諦めて帰るわけにもいかない。
だいたい、本来職場でいやらしい事をしている人たちの方が悪いわけで、忘れ物を取りに来た私が遠慮する筋合いはないはずだ。
ただ、邪魔しちゃうかもとか、見てはいけないものを見てしまうかもとか、今後の人間関係を考えると、関わらない方が身のためだというのも十分理解できている。
そう考えた瞬間。
私のバッグの中でスマホが振動し電話の着信を知らせていた。
美咲さんかもしれない、と思うと同時に扉の向こうの気配にも変化が現れる。
私はスマホを何とかしようとしてバッグを探るが、慌てているので手元が狂い、物音が立ってしまった。
…まずい。これはもう逃げられないだろう。
ならば開き直るほかないか。
スマホの着信は留守電へと切り替わる。
…そういう設定にしていた事さえ忘れていた。それぐらい今の私は慌てているのだ。
ロッカールームの奥の喘ぎ声が止まり、今は静かになっている。
そして「誰かいるの?」という、梢さんの声が聞こえた。
私は扉の前から一歩後ずさったけど、それとほぼ同時にロッカールームの扉が徐々に開き、そこから真帆さんの顔が出てきて私はひっくり返りそうになった。
予め一歩後ずさりしておいて良かった。転ばずに済んでいる。
「…冴子ちゃん?」
「あ、あの…」
ろくに言葉も発する事ができず口をぱくぱくさせていると、真帆さんはいつもの柔らかい笑顔で語り掛けてくる。
「…忘れ物?」
「…は、い…キーホルダーを…」
「そう、じゃ遠慮しないで探して」
遠慮するなと言われても。
しかし真帆さんは扉を開けて私を待ってくれている。
真帆さんは、ボルドーカラーの秘書課制服に身を包み、その装いに一切乱れはない。
ただ、一歩部屋に入った時に、何だか甘ったるいような、そこだけ空気の匂いが異質なものであるのは私にもわかった。
「じゃあ、失礼します…」
私からその姿は見えないが、カーテンの向こう側からは小さな呼吸音が聞こえる気がする。
私は今日ほど、自分のロッカーが入口の近くで良かったと思う事はないだろう。
この場には似つかわしくない、金属音を立てて私はロッカーの扉を開けて落とし物を探した。
案の定、ロッカー扉の内側にあるアクセサリートレイにそのキーホルダーは乗っかっており、私はほっとしてそれをバッグにしまうが、その瞬間再び、さっきまでと同じ喘ぎ声が、今度はカーテンを通しただけの所からダイレクトに聞こえてきて、私はまたひっくり返りそうになった。
「あ…あぁんっ…」
いやいやこれはさすがにどうかしてる、と思うが絶え間なく聞こえる梢さんの喘ぎ声に当てられて私は思うように身体を動かせない。
極力音がしないようにロッカーの扉を閉めてみるけれど、そんなの勿論無音というわけにはいかず、パタンという音が小さく響く。
…どういう意図かは知らないが、黙って帰れという事だろうと解釈し、私は一度だけカーテンの方を見た。
「…」
カーテンは半分以上閉じてるけど、隙間というにも広いぐらいの適当な閉まり具合で、そのカーテンの下からちょうど真帆さんの白い足と黒い靴が見えた。
何故私はそこに視線をやってしまったんだ、と後悔するが、帰るべきだとわかるのに、やっぱり身体は動かない。
相変わらず梢さんの、自制のかけらも感じられない、むしろ挑発するような喘ぎ声は続いているし、勘弁してくれという気分になってくる。
「はぁ……あ、あぁんっ」
…もしかして、私がここにいる事さえ、彼女らに利用されているの?
そんな馬鹿な、とも思うが梢さんはさっきまでより明らかに高まっているのを隠し切れないような声で鳴き続けている。
「冴子ちゃん、こっちに来て」
いつもと同じ調子の真帆さんの声がカーテンの向こう側から聞こえた。
…は?なんで?と言い返すべきなのに、これまた私の中の疑惑は確信へと代わりつつあった。
…この二人、私に見せつけようという魂胆なのだろう。
「ほら、早く」
半分くらいカーテンを開けて真帆さんがこちらに顔を出し、手招きしてくる。
表情もいつもと変わらないし、髪も崩れていない。少しくせのある黒髪を後ろで三つ編みにした、昼間と同じスタイルだ。
真帆さんの様子だけ、あまりにもいつも通りなので、カーテンの向こうで本当に真帆さんが梢さんを攻めているのか、わからなくなるぐらいだ。
いや、行けるわけないでしょと私が固まっていると、真帆さんは優しく私の手を取った。その身体からは、この部屋に入った時から漂っている甘酸っぱいような香りが、濃く立ち込めてくる。
私はバッグを取り落としたが、真帆さんは気にせずそっと私を導いた。
「…冴子ちゃんにも同じ秘密を、ね」
カーテンの内側へと連れて来られて、視界に梢さんの姿が飛び込んでくる。
制服は勿論、下着も身に着けていない、いや…厳密には、ガーターとストッキング、それとストラップ付のパンプスを履いただけであとは何も着ていない。
梢さんはよく走り回るのにこの方がいいから、とストラップの付いたパンプスを好んで履くのだ。
梢さんは簡易ベットの横に立ち、惜し気もなくその裸体を晒している。
私がそちらに気を取られている間に、真帆さんがふわりと私の身体を引き寄せて、その柔らかい雰囲気とはまるで別人のように、ねっとりとした動作で唇を重ねてきた。
「……っ」
秘書課の制服は私だって毎日着ているのに、その恰好の人に抱き付かれるとなぜかどぎまぎする。
ましてや毎日毎日お世話になり、時には母親のように私を癒し導いてくれている人が、今は私と身体を密着させ、互いの口内を味わうようなキスを交わしているのだ。
…この人のキス、めちゃくちゃ気持ちいい。
一瞬我を忘れそうになってしまう。
「…ん…ふ」
わずかに漏れる真帆さんの吐息が唇に触れて、理性が飛びそうになる。口の中を這い回る舌は、いちいちいやらしい水音を立てて私の身体の内側を直接探っているかのように艶めかしい。
抵抗しなければいけないのにそれを忘れてしまいそうになる。
そして、それを恨めしそうに見つめる梢さんと目が合って、私は慌てて真帆さんから身体を離した。
「何、するんですか…」
「うふふ、嫌がらないのね?」
「……」
これは口止めのつもりなのだろう、と私は直観した。
「か、帰ります」
「ちょっと待って」
そう声を上げたのは、真帆さんではなく梢さんだった。
どうして?と驚き梢さんを見ると、私の視線を浴びて明らかに顔と身体を赤く染めて佇んでいる。
「梢ちゃん、見られたいんでしょ」
優しい真帆さんの言葉に、私は思わず振り返った。
「その、冴子ちゃんが嫌じゃなかったら…見て欲しいの」
裸同然で顔を赤らめて梢さんは懇願する。
そういう風にお願いすれば私が断る事はできないとでも、知っているかのように。
現に、と言うか既に私は梢さんの双丘も、脚は閉じているがうっすらと生えた毛の向こう側の秘部も、見てしまっているのだけど。
…見るのは別に構わないのだが、そうした後わ私はどうなってしまうのか、どうされてしまうのか。
「大丈夫、それ以上の事はしないから…」
再び、梢さんが艶めかしい声でおねだりしてくるのだが、だからと言ってハイそうですかとも答えられない。
しかし私の沈黙を了承と受け取ったのか、控えていた真帆さんが梢さんに近づきその身体に指を這わせた。
「あの、いいとは言ってな…」
「きゃあ、あぁんっ、あはぁ…っ、あ…」
私の呟きは梢さんの喘ぎ声にかき消されてしまう。
頭を抱えたくなりながらも、なぜか視線だけは梢さんの身体に集中させてしまっていた。
陸上競技をやっていた、と言う梢さんの身体は細く締まっていて、適度に筋肉がつき美しい。
やや小ぶりだが、張りがあって形の良い胸が、ゴムまりのようだと思った。
私によく見えるようにという意図なのか、真帆さんは梢さんの後ろ側に回り込んで、梢さんの弾力のある胸に指を食い込ませて、揉みしだいている。
「あぁ…んっ、見て…はぁんっ」
両方の胸を揉まれているのに、梢さんの膝はがたがたと震えて、内腿はきゅっと閉じて何かを堪えている。
真帆さんの愛撫にとろけていながらも、しっかりと私に視線を送り、見られている快感を享受しているのがわかった。
梢さんは胸をいやらしく揉みしだかれながら、時折首を振った。
その度にセミロングの真っすぐな茶色の髪が鎖骨にかかり、揺れるようにそこを撫でていく。
こんなものを至近距離で見せられて、どうすれば良いんだろう。
混乱しているせいか、私はある疑問を考えもなしに言葉にしてしまっていた。
「あの、二人はその…」
「遊んでるだけよ」
真帆さんは穏やかに微笑んで即座に答える。
…は?付き合ってるわけじゃないの?と私の顔に疑問の色が現れたからか、続けて梢さんも「そうだよ、いたずらされてるだけ、あ…あんっ」などと言う。
「梢ちゃん、生理が終わるとどうしてもエッチしたくなっちゃうんだって」
「そう、わたし…誰でもいいの…っあん」
そう言いつつ注がれる梢さんの視線は、私の存在さえもその対象であると思っている事を隠さない。
「…全員じゃないけど、梢ちゃんのむらむら解消に付き合ってる人、他にもいるのよね?」
少し意地悪な口調で真帆さんが尋ねる。
梢さんの胸を揉んでいた手は、今度は指の腹で梢さんの乳首をさわさわと撫でさすっていた。
「あぁんっ、あ…っくふぅ…ん」
梢さんは何か言おうとしているが、真帆さんの繰り出す指の動きに反応するのが精いっぱいのようである。
「今みたいに、見られながらされた事もあるんでしょ?」
「あぁ、うん…っ、見るだけじゃなくて、触られた事も、あるよ…っふぅん…」
…この、真帆さんの尋問とそれに答える梢さんの一連の会話もまた、プレイの一環なのだろう。
おそらく、いやきっと、梢さんはかなりのM気質なのだ。
「…あ、あぁんっ…すごい、興奮しちゃうよ…」
梢さんは身体を振るわせながら必死に言葉を紡ぐ。
私は、知らず自分の手を握り締めていた。立っているのが辛くなってきて、個室の壁にほんの少し背中を預ける。
真帆さんが「冴子ちゃんで良かったわね」と梢さんの耳元で囁く。
梢さんは首を縮めながらも喘ぎ声で応じた。
「あぁっ、はぁ…はぁ」
「…ね、冴子ちゃんの事好きでしょ?」
「…っ冴子ちゃん、可愛いから…好き」
「…ですって」
真帆さんはそう言いながら私に微笑みかけてくる。
私はそれに対して何ともコメントできない。
私は、いわゆるハプニングバーとかそんな所へ行った事もないし、人が交わる場面を見るのが特別に好きという趣味でもない。
むしろ、行為に夢中になる人たちの邪魔をしているようでもあり、そういう所に「見る」だけの形で参加させられるのは好まない方だと思っていた。
だが、今この光景は、この場の主役が私であるかのように、真帆さんと梢さんは身体を重ねながらそこに私が参加している事を喜んでいる。
行為を見せられる事は迷惑に決まっている、という私の認識が崩れていく気配を感じた。
「でも、私…帰らないと…待っている人がいるんです」
「あら」と真帆さんは声を上げる。
梢さんは「冴子ちゃん、もう少しだけ」とまた懇願モードだ。
その瞬間真帆さんの手が梢さんの身体をくるりと回して引き寄せ、真帆さんと梢さんは性急に唇を重ねる。
「んふ…っ…」
耳まで真っ赤に染まった梢さんが、うっとりとしながら真帆さんの舌を求めて顔を動かす。
その仕草が可愛らしくて私は見とれてしまう。
…そうだ、この二人はこんなにもいやらしく触れ合っているのに、その全てが美しいと思う。
だから私はこの空気を壊したくなくて、どうしてもすぐにこの場所から逃げ出せないのだ。
「せっかくだから、こっちも見てあげて」
唇を離した真帆さんに促され、梢さんは躊躇なく簡易ベッドに両手をつき、お尻を突き出した。
お尻もぷりっとしていて張りがあり、肌も綺麗だ。
真帆さんは自身のタイトスカートを軽くたくし上げながら膝立ちで座り、梢さんのお尻を両手で開いていく。
わずかにクチュッという水音が漏れた気がした。
私は、今どんな顔でこの二人の行為を見ているのだろうか。
美咲さんに怒られるような、物欲しそうな顔をしているに違いないと思う。
「はぁ…スースーするよぉ…っ」
見られる事で興奮するタイプの梢さんは、お尻の肉を割り開かれ大事な部分が丸見えになっている状況だけでも、どんどん昂っているようだ。
見る間にその割れ目から透明なものが溢れてきて、それが内腿をつたい落ちていくのが私の目にもはっきりと見えている。
「あ、はぁ…ん…」
羞恥に肌を染め悶える梢さんがとてつもなく愛らしい。
真帆さんは、割れ目に少し顔を近づけふーっとそこに息を吹きかけた。
梢さんの身体がビクビクと震えて、内腿をつたう蜜の量が更に増えていく。
「美味しそうね」
いやらしい事を言っているのに、真帆さんの表情はあまりにも普段通りで穏やかだ。
舐めるの?と想像しただけで、私まで崩れ落ちそうになる。
「もう少しだけ、ごめんね」
すまなそうに真帆さんは詫びてきて、その口で梢さんのお尻の穴をペロリと舐めた。
「あぁっ!…あぁんっ」
梢さんの痙攣は止まらない。
じっくりと何もしない時間を作り間を置いてから、真帆さんの舌が今度はお尻の穴よりも更に下の位置、会陰のやや下の、つまり蜜穴に軽く舌先を引っかけてから舐め上げたようだった。
真帆さんの舌の動きに合わせるように、梢さんは甲高い声を上げている。
それが何度か繰り返されて、次も同じようにするのかと思いきや、真帆さんは舌をつける前に、軽く指先を立てて梢さんの脚の間に滑り込ませ、萌芽をこね回し始める。
「う…んふ…あはぁん」
さきほどまでとはまた違った反応を見せる梢さん。
お尻が軽く左右に揺れている。
それにしても真帆さんの技術は凄い。
梢さんとの接触面積で言えばごくわずかだ。触れている時間だって短いのに。
この人は究極の焦らしテクを持っているのかもしれないと思った。
そしてその方法は、つまり私がきちんと梢さんのいやらしい場所を見えるようにというはからいでもあって、プレイを見せるという事においてもこの人は普通じゃない技術を持っているのではないかと戦慄した。
「…見える?冴子ちゃん」
いきなり名前を呼ばれてどきりとする。
絶対に、二人だけの世界に入り込まない。その徹底ぶりもまた恐ろしいものがあった。
強制的に、私はこの行為に参加させられている。
「あ、…はい」
声がかすれてしまう。私は小さく咳して極力冷静さを保とうとした。
「これぐらい全然平気?…もっと凄い事してるのかしら、あの人と」
真帆さんは梢さんのお尻を凝視したままそう尋ねてくる。
…何、どこまで見えてるの?この人…。
「ま、いいわ」
答えを求めずに真帆さんは再びその口から舌を出して梢さんの蜜穴に軽く舌先を引っかけてから舐め上げる。
舌がお尻の穴を通過する瞬間、梢さんは小さな悲鳴を上げる。
「ひゃぁんっ、あっ…はぁ…ん」
ふいに真帆さんが「あ」と言って梢さんから離れた。
さっと手を伸ばし、簡易ベッドの隅に置かれた、私も見覚えのある汗拭きシートのパッケージを手に取る。
「それ…」
一度私もそれで身体を拭かれた事がある。梢さん愛用のシートだ。
「梢ちゃんこういう使い方も好きなんだよね」
打ち明けるように真帆さんはわざとらしく私に語り掛けてくる。
そして徐にシートを一枚取り出して、強いメントールと美容液のたっぷり染み込んだシートを折りたたみ、その山折の先端を使って、ベッドに手をついて前傾している梢さんの乳首をさらっと拭き取った。
「…っあ…あぁん」
両方の乳首にさりげなく、でもしっかりとシートに染み込んだ液体を移して、そして素早くシートを折り返してから今度はあろう事か、それを梢さんの秘部へと持って行く。
尋ねる間もなく、そのシートの折れ目が、梢さんの花弁の間を通過していく。
前から後ろ方向に一回なぞってから、今度はシートの平らな面で梢さんの、クリトリスを丁寧に拭いているようだった。
おむつを替えられている途中の赤ちゃんのように、濡れたシートで股間を撫で回されている梢さんは、その時初めて声を殺して耐えているようだった。
「くっ……ふ…ん」
堪える姿もまた、たまらなく可愛らしい。
ただ、粘膜にあれだけの強さのメントールが振れてしまったら、ちょっと痛いぐらいの刺激になりはしないかと心配になる。
いや…痛いぐらいが、梢さんには良いのかもしれない。
「ここも、ね」
真帆さんは、丁寧にシートの綺麗な面を折り返しては、繰り返し梢さんの秘部を拭いて、たまには梢さんのお尻の穴の方まで、シートで丁寧に拭いていった。
「…すっきりしたかしら、あら?」
何度そこを拭いても、梢さんの花弁の間からは、透明な液体が漏れ出してきている。
さっきから、何度も何度もそこを拭いているのに、拭いたそばからまた蜜を溢れさせ、内腿まで垂らしているのだ。
「あぁっ…あはぁ…ん」
梢さんの声色が少し大人びて聞こえた。
痛みを伴う性的刺激に身体が慣れて、一段上のステージへ行った、そんな感覚を覚える。
「どんどん溢れてくるわね」
真帆さんが可笑しそうに笑いながらこちらを見てくる。
「…冴子ちゃんっ、あふ…うぅん…」
いつぞやか「このシートで乳首を拭いたら」などと梢さんが言っていたのは、つまりそれを自分がされたいから思いついた、悪戯だったのかと腑に落ちる。
私は軽く頷いて梢さんをじっと見た。
私はそういう梢さんの願望を否定するつもりはない。
ただ悪戯半分に話題にされただけで、強引にその行為をされたわけでもなかったから。
「…出した時よりびしょびしょになっちゃったわね」
真帆さんの手には、美容液の代わりに梢さんの垂らした蜜をたっぷり含んだシートがある。
無機質なはずのそのシートが、なんだか、だらしなく蜜で汚したショーツよりもいやらしいものに見えてしまった。
それに梢さんの蜜は、本物の蜂蜜よりもずっと澄んだ透明で、変な匂いもしない。
甘い香りの正体を知り、私はこの世にこんな綺麗な液体を作り出せる人がいるのか、と感慨でいっぱいだった。
美咲さんの蜜も勿論大好きだけど、それはもっと人間的な、艶めかしいものであるのに対して、梢さんの垂らすそれは、まだ直接触っても舐めてもいないけど、神聖な泉から湧き出る水のように、粘性は弱く透明であるのがわかるから、この世のものならざる物質のように見えてしまうのだ。
そんな清らかな蜜の染みたシートを無造作にたたんで、真帆さんは微笑んでいる。
…この人が扱うからこそ神聖なものに見えるのだろうか、と思い直して私は瞬きをした。
しかしその、もはや申請だとさえ思えた光景は一瞬にして色合いを変えていく。
なぜなら梢さんの脚がじりじりと開いて、膝を少し曲げながら秘部を更に露出させてきたからだ。
わずかに動いた梢さんの頭が、その行為により得られる羞恥の量を物語っている。
神聖な女神のように見えていた梢さんの姿は、途端にはしたなく被虐的な自分に酔う雌犬のように変わっていく気がした。
身体の敏感な場所にたっぷりと、メントールの美容液をなじませられて、きっと梢さんの身体は、振れただけで電流が走るぐらい敏感になっているはずだ。
真帆さんが、そんな梢さんの秘部に改めて息を吹きかけた。
すると梢さんの身体は、さっきまでとは比べ物にならないぐらい大きく跳ねて、金切り声にも似た悲鳴を上げたかと思うと、それは一瞬にして甘ったるい吐息へと変化する。
「きゃっ、ふぅ…んっ……」
…行ったり来たりするんだ、梢さんは。
普段は悪戯好きの子供のようにお茶目で、こういう事をしている時には神聖な女神と、あさましい雌犬の間を行ったり来たりする。
その過程の中で、びっくりするほど大人びた色香を漂わせこちらを挑発してくる。
しかもきっと無意識的に。
素直に言って、それは梢さんの知られざる一面ではあるが、実に魅力に溢れている。
この一面を知っているなら、単なる「生理後のむらむら解消」をねだられたとしても、断る相手はいないだろう。
「はぁ、はぁ…んっ、ふ…」
息をかけられただけでも梢さんは強烈に感じているらしい。
真帆さんは、今度は無遠慮なぐらいにいきなり梢さんの蜜穴の中央に指を差し込んだ。
貫かれた梢さんの身体が縮まるように、真帆さんの指にすがりつくのが見て取れた。
「あはぁっ、あ…っ、あ…もっとぉ」
「はいはい」
梢さんは、自分だけが裸にされていやらしい声を上げまくっているこの状況にさえ興奮を覚えている。
真帆さんは指を回して梢さんの中を、真っすぐにではなく角度を付けて擦り始めた。
途端にその指を咥えた蜜穴から透明な液体が吹き出してくる。
梢さんの蜜はさらさらしているから、それが潮なのかそうでないのか見分けがつかなかった。
ただ、お尻を突き出した恰好で大量の水を吹き出している梢さんはもはや、女神などではなく生々しい動物のように見えてきて、私は頭がぼーっとしてくる。
「…冴子ちゃん、見て…くれてる?」
かろうじて顔を起こし目を開けてこちらを見つめる梢さん。
その口からは絶え間なく、艶めかしい喘ぎ声が漏れてくる。
私は声を出す事もできず、ただ縦に首を動かした。
そうした瞬間、自分のショーツの中もだいぶまずい事になっているのではないかと気付き、焦りを覚える。
「冴子ちゃんは、はぁ…替えのパンツ持ってないの?…ん、ふぅ…ん」
梢さんは「私はあるよ」と続けたいような様子だったが、意味が伝わるであろう部分以降は喘ぎ声に変えて訴えてくるだけだ。
そんな梢さんの秘部には、真帆さんの人差し指が挿入されており、中をいいように嬲られている。
嬲られながら私と普通の会話をしようとする様子もまた、たまらなくいやらしかった。
メントールで拭かれた場所には、汗なり蜜なりがにじんで湿っているから、いつまで経っても冷たい刺激はなくならないだろう。
その冷たい刺激に陶然としながら、梢さんは快楽の高みへと向かっていく。
「冴子ちゃん、いっちゃうの、わたし……あぁん、いっちゃうのっ」
達する時さえこの人は愛らしく鳴く。
指を挿入しているのは真帆さんなのに、梢さんは私の名前を呼んで果てた。
「…」
帰らないと。
それだけは思っているのに、どうしたら良いのだろうか。
「はぁ、はぁ…」
ベッドにつっぷして呼吸する梢さんをよそに、真帆さんはさっさと指を拭いて何事もなかったかのように私に向き直った。
「ごめんね、引き留めちゃって」
「いえ…」
自分の顔を見られたくなくて、私は下を向く。
帰らないといけない、だけどすぐには身体を動かせないでいる。
その瞬間、カーテンの向こうに転がしたままのバッグから、スマホの振動音が聞こえる気がした。
電話の主が美咲さんだとしたらいよいよまずい。
その振動音が私の呪縛を解いたかのように、私の身体には力が入り、カーテンの外へと飛び出す事ができた。
「ごめんなさい、帰ります」
振り返らずにそれだけ言い残し、私はエレベーターホールへと走った。
着信はやはり美咲さんからのものだったので、折り返し電話をかけ「忘れ物を取りに行ってました、すぐ帰ります」とだけ言って電話を切る。
…だめだ、早く帰りたい。
真帆さんがしていたような抑制の利いた愛撫なんてできないけど、今すぐにでも美咲さんの花弁にしゃぶりついて、溢れ出る蜜を吸いたくて仕方なかった。
そうしないと、神話の女神を象った彫刻のように綺麗な梢さんの裸の身体が、頭から消えてくれない気がして。
梢さんのイメージを消すために美咲さんに迫るのか、という罪悪感などどうでも良かった。
美咲さんがいてくれなかったら、私もあそこに「手を出す」形で参加していたに違いない。
それがダメな事ではないにせよ、あんな物を見せられてもなお自制心を保っていられた事に私は安堵している。
※筆者注:
このお話はフィクションです。
ボディ用デオドラントシートで粘膜を拭かないでくださいね。
(説明通りの使い方をしましょう)
デリケートゾーンには専用の拭き取りシートも売ってるので、気になる方はそちらをどうぞ。
1
あなたにおすすめの小説
世界に、私たちだけ
結城らい
恋愛
バニーガールのレイカとミヤコ。いつものナイトクラブの夜――のはずが、ふたり以外の“全員”が消えてしまった。誰もいない店内、誰も走っていない街。怖いのに、どこか解放されてしまう。見られない自由の中で、ふたりは静かに、確かめ合うように抱きしめ合う。けれど未来は空白のまま。それでも今夜だけは、ネオンの下で、この愛の時間を味わっていたい。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる