お姉様に夢中なはずなのにその他の誘惑が多すぎます

那須野 紺

文字の大きさ
7 / 71

涙のショータイム

しおりを挟む
忘れ物を取りに戻った秘書課の更衣室で、私は衝撃の光景を目の当たりにした。
年齢も近く比較的仲良くしてくれている先輩の梢さんが、更衣室奥のカーテンの部屋で、裸になり真帆さんに身体を弄ばれて、大きな喘ぎ声を上げまくっていたのだ。

…明日また普通にあそこで制服に着替えるのかと思うと気が滅入る。
早く、この事は忘れてしまいたかった。

帰りの電車の中でも、その光景は生々しく能吏に蘇ってきて、私はいても立ってもいられなかった。
自分の頭の中の映像を、同じ車両に乗り合わせる他の人に知られたら、などとありもしない考えに囚われ動揺してしまっている。
第一、いくら冷静を装っても、あの時しっかりと濡らしてしまったショーツの中の感触はまだ続いていて、その張り付く感じが、さきほどの光景は現実のものであった事を裏付けているようで嫌だった。

美咲さんと暮らす恵比寿のマンションの玄関扉を開けると、部屋に美咲さんの姿はなくどうやらシャワーでも浴びているらしい様子だった。
私は部屋にバッグを落として床に座り込む。
すぐに美咲さんと顔を合わせずに済んだのはありがたい気もしていた。

するとそこへバタバタという足音と共に、身体もろくに拭かないままで、裸にバスタオルを羽織っただけの美咲さんが現れて、私はぎょっとした。
今日はやたらと、何の前触れもなく女性の裸ばかり見る日だ。

「冴子?」

勢い余って足を滑らせそうになったのか、美咲さんはあっと言いながらも壁に手をついて身体を支えて立ち止まった。
危ないので私も腰を浮かせてしまう。

「あ…今戻りました」
「どうかしたの?」

そんなに慌てて私の様子を見に来る美咲さんこそ、どうかしているように思うのだが、そういう言葉は返せなかった。
髪も濡れたまま、身体にもあちこち水滴をたたえて、美咲さんは力のこもった目で私を見ている。
羽織った白いバスタオルで、胸元と股間はほんの少しだけ隠れているけど、それはごく一部でしかなくて、それこそ目のやり場に困るような、妖艶な佇まいだった。

「…何がですか」

緩慢に答えるが、悟られずにいられる自信などない。
だから、質問を質問で返すなどという、不誠実な受け答えをしてしまった。

「お姉さまこそ、そんなに慌てて…どうしたんですか」
「電話の様子が変だったから」
「……」

変だった、そりゃそうだろう。
そうでなければむしろ異常だ、などとやけに冷静に考える。
私は膝を抱えてそこに額を付けてうつむいた。

…こんな時一人なら、適当に自慰でもしてごまかして、寝てしまえば良いだけの事なのに。
身体に溜まった熱をどうやって逃がせばいいのか、その理由をどう説明すればいいのか、私は悩んだ。

「…もしかして、何かされた?」

美咲さんは鋭く切り込んでくる。私は即座にそれを否定した。

「されてはいないです」
「…じゃあ、何?」

時間を稼ぎたくて、私は顔を上げて美咲さんを見た。
表情だけで理解してくれるかもしれない、という期待もあったし、全裸にバスタオル一枚の美咲さんの姿を見て、梢さんの身体のイメージを上書きできるかも、という願いもあった。
『冴子は顔に書いてある』と言われるのだ。顔を見れば大体わかるのではなかろうか。

美咲さんは私の隣に跪いて、私の顔を覗き込んで来る。
シャワー中で眼鏡をかけていないから、そうしたいのだろうかと思った。

「ちょっとごめん」

言うが早いか、美咲さんの手は私が履いているクロップドパンツのホックを外して緩め始める。

「あ……」

私は特に抵抗しなかった。
緩めた所からショーツが覗き、美咲さんはその中に指を突っ込んで来る。
私は観念して少しだけ打ち明けた。

「…見ちゃっただけです、何かされたわけじゃないです」
「……」

厳密には真帆さんにキスされたけど、それは全体像から言えば些末なものだ。
触ればわかるはずだ。
濡らしてこそいるけれど、指でそこを弄られた形跡は残っていないはずだから。

ただ、美咲さんの指はその場所に触れて以降は実に軽いタッチで、確かめるようにゆっくりとあちこちを触れてくるので私はかえって昂ってしまいそうになる。

「…嘘じゃ、ないです」
「…うん」

納得してくれた様子ではあるが、美咲さんはすんなり指を外してくれない。
指はするすると、私の花弁の縁を上下にたどっている。

「じゃあ、どうして…」

指を離してくれない美咲さんにそう尋ねると、美咲さんの瞳には冷たい嫉妬の色が灯っているようだった。

「誰の、何を見たの?」
「それは…」

その事は簡単に話せない。

「どうせ秘書課でしょ」

私は黙って頷いた。
忘れ物を取りに戻ったのは当然、私の所属部署である秘書課だし、美咲さんでなくたってそう考えるはずだから。

「…何やってんだか」

呆れたように顔を背けて美咲さんはさっと私のショーツから手を抜いた。
呆れているのは秘書課に対してだろうけど、その秘書課の一員でもある私の事も含めて呆れられたような気がして落ち込む。

「……」

それでも私は、美咲さんの指が離れてしまった事の虚しさや、呆れられた事に対する言い訳を表現できる資格がないような気がして、置き物のように固まるしかない。

美咲さんは思いついたように尋ねてくる。
今度はやや私の方に顔を向けているようだ。

「…逃げてきたの?」
「それは…わかりません」

あのままあそこにいたとして、確実に参加させられたのかどうか、私にはわからない。
真帆さんは一区切り付いたような感じだったけど。
あの後二人がそのまま終わったのか、まだまだ続けているのかもわからないし、あまり考えたくなかったので思考の外に追いやっている。

美咲さんは「そこが重要なんだけど」と付け加えてきたので、私は少し考えてから「多分、逃げなくても何もされませんでした」と答えた。

…でも、直接身体に触れられなかったとしても、あんな形で混ざってしまったら、それは何かされたのと同罪ではないだろうか。
だから、正しくはどう言うべきかわからなかった。

さっきまでは美咲さんに触りたくて仕方なかったのに、今は美咲さんに触りたいと思う事さえ罪深い事のような気がして、到底そんな事は考えられなくなっている。

「大丈夫なの?ほんとに」

そう語り掛けてきた美咲さんは、いつもの優しい表情に戻っており、私の視界に入り込むように顔を覗き込んでくる。

「…多分、大丈夫です」
「……」

きっと、納得していないのだろう。
私は、ズボンのジッパーを戻す事もせずに床に正座して頭を下げた。

「…すみませんでした」
「…どうして謝るの?」
「…」

理由はともかく美咲さんの怒りを買ったのだ。だから謝るのは当然だと思う。
私は頭を下げたまま動かずにいたけど、美咲さんは「やめてよ」と明るく言って私の身体を起こそうとする。

「……」

顔を上げると美咲さんは少し寂しそうに笑っていた。

「真面目に謝罪されると、ほんとに何かあったみたいで、かえって気分が悪いから」
「す、すみません」
「それから…」

美咲さんは私の手を引いて立ち上がらせようとする。
反射的に、バスルームに連れていかれるのだろう、と思った。
立ち上がる時に美咲さんが羽織っているタオルが揺れて、もろに両方の胸の先端が目に入ってしまう。
…見慣れているはずなのに、なぜだか今はものすごく緊張した。

立たせた私の身体を、美咲さんは軽く抱きしめてくる。
私の服が濡れるのも構わないといった感じで。

「あのね、冴子」
「はい」
「私は、今どうすればそれを上書きできるのか、その事しか考えてないんだよ」
「……はい」

「冴子も同じでしょ?…」
「はい、でも…」
「分別のあるふりをしたって、どうせ無理なのよ」
「…はい」

美咲さんに対して誠実であろうとする事が、かえって美咲さんを求める素直な気持ちを阻害する。
美咲さんは、そっと身体を離して私に囁いてきた。

「秘書課って聞いて遅かれ早かれ、ちょいちょいこういう事はあるのかもと覚悟してたから」
「…そう、ですか…」
「異動がもっと早かったら、あのアプリも使ってないだろうし、私とも出会ってなかったかもしれないわね」

本当にそうかもしれない気がして、怖くなった。
枯渇している時にはあんなに欲しがっていたのに、溢れるほどになると遠ざけてしまいたくなる。

「まあでもこうなってしまった以上、冴子には巻き込まれてもらうからね」
「……」

私は期待してしまっている。
心の中ではものすごく、「上書き」されたがっている。
美咲さんの嫉妬を煽って、競うように激しく求めて欲しいとさえ思ってしまっている。
そして、こんな事で味をしめている自分の欲深さに辟易している。

美咲さんはそれらも全てわかっていて、あえて土俵に乗っているのだろう。
あさましい私を知っているのに、咎めようとしない。

美咲さんを見つめる視線に、期待と困惑が入り混じっているのが自分でもわかる。

「…なんで、って顔してるけど」
「……」
「冴子は、奪い合うに値する娘だって事よ」
「…え」
「今の冴子が、本来あるべき姿って事を自覚しなさい」
「は、はい…」

何だかよくわからないが私は反射的に返事をしていた。
ふいに美咲さんが私の耳元で囁く。
例の声色で「…わかった?」と。

私はこれを聞くと、いつも動けなくなる。
目の奥が熱くなって、身体のあらゆる器官から何かが染み出てくるような気がして。

「…上書き、して欲しいんでしょ?」
「はい…」
「じゃこっちに来て」

二人でバスルームに行ってからようやく、美咲さんの身体が冷えてしまわなかったかという事が気になった。
私はと言えば、あの声色で囁かれてしまって以降、身体が火照って熱いぐらいになっている。

「きれいに洗ってあげる」

美咲さんにそう言われて、私はシャワーのお湯で大事な場所を徹底的に攻められた。
上せてしまいそうなほど体温が上がって、私は身体を震わせながらも、筋肉だけはだらしなく弛緩させていた。
バスタブの縁に腰かけた状態で、洗い場に向かって緩く脚を開き、その間に美咲さんが屈んでいる。

まだ、秘書課の誰にも私の秘部は見られていない。
だからと言うわけじゃないけど、美咲さんにはいくらでも見て欲しい。
美咲さんはシャワーヘッドを片手に構えつつ私の秘部をじっと凝視していた。

「み、見られてるだけで…恥ずかしいです」
「…何度も見てるでしょ?今更恥ずかしいの?」
「だって…」

美咲さんはなかなか触ってくれない。
花弁の間からとろりとした蜜がこぼれると、その度にシャワーのお湯をかけてくるだけで、待ちかねているその場所にはなかなか触れてくれなかった。

「…っ…ん」

早くその気になって欲しくて、少しずつ腰を前に突き出してしまう。
そうすると、より近い所からシャワーのお湯を当てられる事となり、それまでよりも熱く細いお湯が萌芽にも当たって、流すそばから絶え間なく蜜を溢れさせてしまっていた。

「はぁ……ん…」
「どうしたの?…ヒクヒクしてるわよ」

美咲さんは全力で、例の艶めかしい声色を使って語り掛けてくる。
私はそれを聞いているだけでも猛烈に焦れて、欲望が破裂しそうになっていた。

「お姉さま、触って…くれないんですか」

涙目になり懇願すると、美咲さんはそんな私の顔を愛おしそうに見つめてきた。
その顔が見たかった、とでも言いたげに。

美咲さんは、私の土下座なんかよりも、こういう懇願を望んでいるのかもしれない。
一旦そういう考えを始めると、私は止まらなくなってしまった。

「お願いします…触ってください、もう…」
「もう…何?」

再び秘部にシャワーのお湯が当たって、私の身体が跳ねる。
一瞬で内腿をつたういやらしい蜜は洗い流されていくが、シャワーがかからなくなるとそこは再びぬめりを帯びていく。
それを、何度も繰り返されるのだ。
私は頭がおかしくなりそうになった。

「もう…これじゃ我慢できないです…」
「…ふーん」

明らかに、美咲さんはこの状況を楽しんでいる。
私が、美咲さんの知らない所でいやらしい光景に遭遇し、ショーツをあんなに濡らしたから、今このような報いを受けているのだ、と私は思う事にした。
そう考える方が、私には気が楽だったから。

「お願い、触って…舐めて欲しいんです…」
「じゃあ自分で触りなさい」
「…はいっ」

私は迷わずその場で自慰を始める。
美咲さんの目前で、蜜穴に指を突っ込んで、荒々しく中を掻き回した。
予期せず胸にシャワーのお湯をかけられたけど、私の身体はそれさえも快感として拾ってしまうほどに昂っている。

「お湯をかけていただけなのよ」
「はい、…っんぅ……」
「それなのにこんな…」

続きの言葉は勝手に私の口から飛び出していた。

「それだけで感じちゃうんです…私…あ、あ…っ」

私の秘部に視線を固定したまま、美咲さんは所在なくシャワーのお湯をあちこちに振りかけている。
時折、自分の股間にもお湯を当てているようで、私はそれを視界にとらえた瞬間、更に高揚した。
…私の自慰を見て、美咲さんもいやらしい気分になってくれている。
そう思うだけで胸がいっぱいになった。

「お姉さま…」
「…何?」

私は指を引き抜いてわざと糸を引くようにゆっくりと離していく。
秘部から伸びた糸はすぐに切れてしまったけど、ヌルヌルになった指先を花弁の付け根や萌芽に沿わせて弄って見せる。

「…どうしても、触ってくれないんですか…」
「……」

美咲さんも何かを堪えているようで、少し押し黙る気配があった。
しばらくして、小さく呟く。

「私も、我慢してるのよ」
「…あぁっ」

言葉を聞いただけで危うく達してしまいそうになったのはこの時が初めてかもしれない。
以前に、アプリの通話機能で自慰している所を聞いてもらった事はあったけど、目の前にいるのにここまで焦らされた事はあったろうか。

「…はぁ、はぁ」

私は一旦腰を引いてバスタブの縁に座り直す。
そうしないと、滑り落ちそうになるぐらい腰を突き出していたからだ。

「今、そこ舐めたら…一瞬でいっちゃいそうね」
「…は、い…んぅっ…」

舐めてくれるのだろうか、と心が期待しそれが表情にも出てしまう。
美咲さんはそれを知ってか知らずか、私のではなく自分の秘部を指で弄り始めていた。

「…お姉、さま……」

美咲さんはそれを自覚していないのだろうか。
視線は私の秘部をじっと見つめているのだが。

美咲さんの自慰を目の前で見る事は、これまた初めてかもしれない。
私がよそでいやらしく股間を濡らした罰は、触れてもらえないという仕打ちなのかと思っていたが、まさか美咲さんの自慰を見せられるという事だったのか。

美咲さんはしゃがんだ状態で、せわしなく指を動かし自分の花弁を弄んでいた。
手慣れたその動きがまたいやらしくて、私は目が離せなくなる。

「…冴子?」

美咲さんに声をかけられ、自分の手が止まっていた事に気付き私は再び自慰を始めた。
今美咲さんが自身の秘部をまさぐっている、その指で、触って欲しくてたまらない。
だからそれを素直に表現していく。

「触って、欲しいんです…ここを…っ」
「どこを?」

私はあえて両手を使わず片手の指二本で花弁を開いて、その内側を晒した。
その瞬間、そこにざっとシャワーのお湯が浴びせられた。
私は身体を痙攣させて耐える。
お湯と混じる事でやや粘度が落ちた蜜が、かえってわかりやすく股間から真下に向かってしたたり落ちる。

「…っ…あ……」

視界に入る美咲さんの姿は、洗い場にしゃがんで指先を花弁の間にほんの少し沈めながら、入り口を小刻みに弄っていた。
…見てはいけないものを見ているようで、私の身体は更に熱くなる。

「…お姉さま、いやらしいです」

思わず目をきゅっとつむりそう叫んでしまったが、美咲さんは知らん顔である。

「…どうしたの?」と可愛く返されてしまうのだが、美咲さんの指の動きは止まる事なく常に違う動きを続けている。

「…だって、だって」

聞き分けの悪い子供のように私はだだをこねた。
黙って自慰を見ている事が、こんなにも辛いなんて。

私は、すぐにでも愛撫を施して欲しいあまり、自分にできる限りのいやらしい動きと声で美咲さんを煽らなければならないのだと理解した。

「はぁ、あ…あん…っ」

ふいに、さっき秘書課のロッカールームで目撃した梢さんの姿が能吏をよぎる。
梢さんはとてもいやらしく大きな声で喘ぐ人だ。
そんな梢さんを真似るわけじゃないけど、私はバスルームにいるのにも関わらず、思い切り大きな声で喘ぐ事にした。

「…はぁっ、あ…あ…あんっ」

広いバスルームとは言え、声は反響して自分の耳にもその喘ぎ声が返ってくるから、自分でもうるさく喘いでいるなと思うが気にしない。

「あぁっ、お姉さまぁ…見て…触ってください…っんふぅ」

美咲さんとは違い、私は秘部に深く指を突っ込んで、大きく出し入れする動きを取った。
その方が、見た目にいやらしいだろうと思ったから。
声に混じって、クチャクチャっと指の出し入れする音もバスルームに反響して聞こえる。

気が付くと、たまに浴びせられていたシャワーのお湯は、いつの間にかかけられる事はなくなっていた。
…はっとして美咲さんの様子を伺うと、美咲さんが自分の股間を弄りながらそこにシャワーのお湯を当てていたのだ。

…また、こんなものを見たら。

「…く、う……んっ…」

美咲さんに触ってもらう事は諦めて、私は自分が達するために指を動かす。
蜜穴に突っ込んだ指を曲げて、中の感じるポイントを擦る。
もう片方の手では萌芽をつまんで、花弁の間から溢れた蜜を塗り付けて弄り回す。
やっている事は普通の自慰だけど、いつもと違うのは、それを見ている美咲さんもわかりやすく自慰をしているという事だ。
美咲さんは私と違い、触って欲しいとも見て欲しいとも言わない。
ただ黙って私を観察しながら自分で触っているだけだ。

その姿に、もしかしたら私よりもずっと長く、ずっと多く美咲さんはオナニーしてきたのかもしれない、と知り、またしても胸が締め付けられた。
だから、生殺しのように目の前の所有物にも触れずに我慢をし通せるのかもしれなかった。
美咲さんが殺してきた欲望の数と量は、もしかしたら計り知れないほど多いのかもしれない。

そんな暗い思考とは裏腹に、身体は達するのが近い事を知らせてくる。
…嫌だ、イキたくないのに。

「あぁっ……お姉さま…ん、いっちゃいそうです」
「うん」

いろんな理由で私は泣きそうになりながらそれを伝えた。
自慰している場合ではない。一刻も早く美咲さんに触りたいのに。
だが指の動きを止める事はできず、結局そのまま私は一度達した。
達しているのに目から涙が出た。
それは、快感に耐えられなくて流れた涙ではない。

私が達するのを見届けつつ、美咲さんは徐々に自らを弄ぶ行為を止めた。
それから、達した私がバスタブの縁から転がり落ちないようにそっと身体を支えてくれる。
私は、そういう美咲さんの気遣いにもやるせなくなり大粒の涙をこぼした。

「…なんで泣いてるのよ」

ここで本当の理由を言葉にするのは違う気がして、私はわざとらしく「触ってもらえなかったからです」とふてくされて答えると、美咲さんはアハハと笑った。

たまらなくなり私はそのまま、美咲さんに抱き付いてその胸元に顔を埋める。
美咲さんは「よく頑張ったわね」と、わざとなのか何なのかわからない事を言いながら私の身体をきゅっと抱きしめてくれた。
そうされながら私は、美咲さん自身も誰かに甘えたいとか、可愛がられたいとか、そういう願望を普通に持っているはずで、私ばかりがこうして甘えているのは贅沢なんだ、と考えていた。

おこがましいので言葉にはしなかったけど、私は改めて心の中で美咲さんに謝罪する。
一人にしちゃってごめんなさい、心配させてしまってごめんなさい、私ばかり甘えてしまってごめんなさい、と。

前から思ってはいたけれど改めて、私はずっと、美咲さんが自慰する姿を見たくなかったのだと気付く。
確かにいやらしく、そそるけど、プレイとしてのそれ以外をさせてしまうのは罪だと思った。
私では全く役不足かもしれないけれど、美咲さんが素直に甘えられる居場所は、私といるこの場所であって欲しい。
…そうなるために秘書課へ異動したいとも思っていたはずなのだ。忘れていたけれど。

「……」

私は、有無を言わさず美咲さんの身体にまとわりついて、その秘部に口をつけた。
「上がってからでいいよ」と止められたけど、そこまで待てなくて、私は無理やり洗い場の床に美咲さんを座らせて、夢中で脚の間に顔を突っ込んだ。

…さっきまで、美咲さんが自分の指で触って弄っていた場所。
そこに舌を這わせて、ズルズルと卑猥な音を立てて吸いついていく。

「冴子…っん…あぁ…」

秘書課でセクハラされつつ興奮してしまったり、課員同士の戯れを目撃してあり得ないぐらい濡らしたりしている私が言える身分ではないけれど、私は美咲さんを一人にしたくない。
やっぱり、一人で自慰なんかさせたくないし、そういう時には私をもののようにでも良いから使って欲しい。
やれと言われれば、いや言われなくてもこうして、私は美咲さんを悦ばせる事はできるから。

私は美咲さんの、心の妹であり奴隷なのだ。
私自身がそうありたいと願っていて、美咲さんにそれを許して欲しいと思っている。

「あ…んっ…ふぁ…だめぇ」

舌を回しながら萌芽を舐め上げていく。
たっぷりと、美咲さんの蜜と私の唾液を絡ませながら。
口の中の小さなぬめりのプールに、萌芽が沈んで浮いて、すごく気持ちいいはずだ。
美咲さんの感覚に共鳴するように私の身体は反応し、思わずうめき声が漏れてしまうが、それ以上に美咲さんが甲高く喘ぐようになったので、これは気にならないはずだ。

「ひ、あっ…冴子っ…凄いよ」

美咲さんがこれまでどれだけの期間、何回ぐらい一人で自慰をしてきたかは知らないけれど、こうしていればそれらの過去が一つ一つ上書きされていくのではないか、と、ありもしないがそうなって欲しいと願いつつ、私は激しく美咲さんに口淫を施した。
美咲さんが一度ぐらい達しても、やめろと言っても辞めなかった。

「どうしたの、冴子…おかしいよ」

返事はせずひたすら顔と舌を動かして行為に没頭する。
洗い場についた膝が身体を支え切れず痛みを感じるが、それも気にしない。
痛いからなのか興奮しているからか、私の身体はぶるぶると震えていたが、首から上だけは震える事もなくしっかりと美咲さんの花弁と萌芽と、蜜穴をとらえて的確に刺激を与える事ができた。
今日は、それがいくらでもできるような気すらしている。

…まだ、イかないで欲しい、もう少し持ちこたえてくれないだろうか、と願うがそれは叶わず美咲さんは身体を赤く染めて痙攣させ、一際高い声で果てた事を伝えてきた。
ほんの少しだけ私は顔を離して、顎にまで垂れたものを手の甲で拭う。
同時に自分の唇を舐めている所が美咲さんに見えてしまったようで、強く見つめられている感覚に自然と目を上げると、美咲さんはとろけた表情で私の欲望を受け入れようとしてくれていた。

「…して、いいんですか」
「…うん、して」

どんな内容であれ美咲さんに許しの言葉をもらうのがとてつもなく嬉しくなり、私は再び美咲さんの両脚を押さえつけてその中心に顔を埋める。

「あ、あ、あぁ…ん…冴子ぉ」

面白いように蜜が溢れてくるので、私はズズ、ズズ、と何度もすすり上げる音を立てた。

「っ……はぁっ」

ものの十数秒でまた美咲さんが果てたらしく、私が押さえつけていた両脚から力が抜けていくのがわかる。

「…また、いっちゃった」

美咲さんが耳まで真っ赤にして、恥ずかしそうに呟く。
私は笑顔を返して、静かに自分の両脚を開いて美咲さんの股間に噛ませた。
膝が思うように動かなくて難儀したが、美咲さんは待ってくれた。
後ろに片手をつこうとしたが倒れそうになり、そこをすかさず美咲さんが捕まえて引き寄せてくれる。

「…冴子」

美咲さんからいやらしく唇を重ねてくる。激しく舌を絡め合う、いやらしいキスだった。
そうしながら噛ませたお互いの股間を擦り合わせていく。
二人とも蜜でぐちゃぐちゃに濡らしているからやたらとそこが滑ってしまうけど、そのもどかしさもまた良かった。

…だって、そのぐらい緩やかな刺激の方が、長くくっついていられる。
キスだって長くたくさんできる。

美咲さんは片腕で私の身体を引き寄せつつ、もう片方の手では私の大きな胸を揉み込んでくる。
私は身体をよじりながらも美咲さんに更に身体を押し付けるようにした。

「…っふ…ん…はぁ」

激しく打ち付けているつもりでも、秘部に伝わる刺激は甘くとろりとしたものでしかない。
だからつい、徐々に腰を打ち付ける力も勢いも激しくしてしまう。

「ん…は、はぁん…」

知らず唇が離れて、美咲さんの可愛らしい喘ぎ声が間近で聞こえた。
もっと鳴いて欲しくて、私は更に速度を上げて腰を打ち付ける。
秘部がぶつかり合うたびに、パチュッという水音が大きく響いて、その音量にも驚いた。

こんな、硬い床のバスルームで繋がるのは身体がきついのに、それさえも刺激の一部となっている気がする。

「お姉さま、もう一回、一緒に…んっ」
「…うん、は、あぁんっ」

一緒に達したからと言ってこれで終わりにするつもりは全くない。
美咲さんの自慰が寂しいもののように見えた、そんな勝手な思い込みだけでも私は十分無限に動けるような気分だった。
そして今はなぜか、美咲さんの喘ぎ声をずっと聞いていたい。
だから指でも、道具でも、何でも使って美咲さんと快楽の渦に飲まれたい、そんな気分だった。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

落ち込んでいたら綺麗なお姉さんにナンパされてお持ち帰りされた話

水無瀬雨音
恋愛
実家の花屋で働く璃子。落ち込んでいたら綺麗なお姉さんに花束をプレゼントされ……? 恋の始まりの話。

春に狂(くる)う

転生新語
恋愛
 先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。  小説家になろう、カクヨムに投稿しています。  小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/  カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

【完結】【ママ友百合】ラテアートにハートをのせて

千鶴田ルト
恋愛
専業主婦の優菜は、夫・拓馬と娘の結と共に平穏な暮らしを送っていた。 そんな彼女の前に現れた、カフェ店員の千春。 夫婦仲は良好。別れる理由なんてどこにもない。 それでも――千春との時間は、日常の中でそっと息を潜め、やがて大きな存在へと変わっていく。 ちょっと変わったママ友不倫百合ほのぼのガールズラブ物語です。 ハッピーエンドになるのでご安心ください。

身体の繋がりしかない関係

詩織
恋愛
会社の飲み会の帰り、たまたま同じ帰りが方向だった3つ年下の後輩。 その後勢いで身体の関係になった。

身体だけの関係です‐原田巴について‐

みのりすい
恋愛
原田巴は高校一年生。(ボクっ子) 彼女には昔から尊敬している10歳年上の従姉がいた。 ある日巴は酒に酔ったお姉ちゃんに身体を奪われる。 その日から、仲の良かった二人の秒針は狂っていく。 毎日19時ごろ更新予定 「身体だけの関係です 三崎早月について」と同一世界観です。また、1~2話はそちらにも投稿しています。今回分けることにしましたため重複しています。ご迷惑をおかけします。 良ければそちらもお読みください。 身体だけの関係です‐三崎早月について‐ https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/500699060

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

処理中です...