転生大魔女の祝福 〜そのチビっ子令嬢、最強につき〜

緋色のおと

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七人の弟子たち~最初の弟子は異変を知る~

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※※※

約百数十年ぶりにドラゴンや四大精霊たちがノルドの地に姿を現したことは、瞬く間に暁の国中に広まっていった。いや、正確には大陸中にというべきか。


※※※


七賢人の一人であり、アルバの最初の弟子でもある暁の国の女王オーブのもとへ使役している使い魔がボロボロになりながらその知らせを届けた時、オーブが「まさか・・・あり得ないのじゃ」、そう呟いたのも無理のないことといえよう。それくらい久しく彼の存在達には逢っていないのだ。

大カラスの姿をした使い魔は余程恐ろしい思いをしたのか、ひどく衰弱しており、ノルドの地にドラゴンたちの出現の知らせ以外はロクな情報を持っていなかった。軽く舌打ちして「役立たずめ・・・!」大ガラスを睨みつけ北方に意識を向ける。確かに何かが起きている。だが、それ以上のことがわからない。一体、ノルドで何がおきたというのか?


オーブは魔法の師であり育て親の大魔女アルバと同じ鮮やかな紅い髪をしている。七人の弟子たちのうち、最初の弟子であるオーブと最後の弟子マリウスだけが紅い髪なのだ。オッドアイは違う色合いだが。

そのため、母アルバと同じ夜明けを意味する暁と天明の言葉を国名にして国を興したのがオーブであり、まだ幼かったマリウスだ。だがマリウスは妻亡きあと国王の座を退き息子のアリオスが後を継いで天明の国の王となっている。

ではマリウスは今どうしているのかというと、表情が乏しい他は意外にも非常に行動的だったこともあり大陸中を転々と渡り歩いている。兄姉弟子たちを訪ね歩くのが楽しみだとオーブのもとへも時折やってくるのだが、最近確か天明の国と隣接するノルド辺境伯の娘マリアが結婚したと、娘夫婦と一緒に挨拶に来ていなかったか?

「まさかな・・・。」

マリアはマリウスによく似てはいるが魔力の多いものに特有のオッドアイではない。魔力も平均よりやや上という程度だったはずだ。自分たちと同じ紅い髪には親しみを覚えたが、それだけだ。とても【桃源郷】に眠る彼らを呼び覚ますほどの力は持ってはいない。

「何が起きているのじゃ?小さな妖精たちも呼びかけに答えない。」

最も小さな妖精たちは気まぐれで滅多に呼びかけても来ないのだが。

形の良い指でトントンと書類机を軽く叩きながら考えても答えが出るはずがなく、使い魔は当分使い物にならない。

そんな時に異常事態を告げるノルド辺境伯からの緊急の知らせが入ったと王宮魔法士団の団長が、オーブの居る執務室に転がり込むようにして入室許可を求めてきた。聞けばノルド辺境伯から至急の知らせが入ったというではないか。

「ノルド辺境伯からか!?すぐ魔道具を寄こせ!」

「アルバが目覚めたと申しております。【夜明けの大魔女アルバ】が生まれ変わったと伝えてくれと・・・!本当でしょうか?」

決して小さいとは言えない水晶玉タイプの高性能魔道具を大事そうに抱え、魔法士団長が息を切らせて入室してくる。


「アルバ!?生まれ変わったとはどういうことじゃ!?」


※※※

国内ならば王宮にも通信可能な魔道具を通して、アレックスとマリアの間にアルバが誕生していたことを知るのは、そのすぐあとのこと。


貴族の赤子が正式にお披露目となるのは1歳をすぎてからのことである。平和な暁の国でも1歳未満の赤子の生存率は決して高いとは言えないからだ。領地内で内々に誕生の知らせが公布はされるが、王宮に出生届が提出されるのは、あくまで生後1年の誕生日を迎えてからなのである。

その慣習があったがために、師であり育て親であるアルバの誕生にまさか気づかずに見逃すとは思いもよらないオーブであった。


「師匠~!今、このオーブが馳せ参じますのじゃ・・・!」


待っていてくれと固く拳を握りしめ、王宮の転移門<ゲート>と呼ばれる巨大な魔道具に向かって駆け出す姿を、放置された使い魔の大ガラスが「カァ・・・」と鳴きながら見つめていた。

ちなみに大ガラスがボロボロになったのは、小さな妖精たちに偵察に来たのを気付かれて、オーブの使い魔と知った彼らにボコボコにされたからである。


※※※

ドラゴンの坊(ぼう)や四大精霊たちに小さな妖精たちが鉄壁の守りを固めるノルド辺境伯家で、赤子のアルバと対面したオーブがアルバを寄越せとアレックスやマリアに詰め寄ったのは、オーブが転移門<ゲート>でノルドへと転移してからすぐの話であった。

精霊たちの説教が再び始まるのも、また当然と言えば当然の成り行きだった。

ちなみに赤子のアルバはといえば……。

泣き疲れてぐったりと眠っていたのであった。



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