「影の薄い女」と嘲笑された私ですが、最強の聖騎士団長に見初められました

有賀冬馬

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盗賊に襲われた馬車から、私は聖騎士団の皆さんと一緒に、彼らの本拠地へと向かっていた。私を助けてくれた、光り輝く銀色の鎧をまとった騎士団長、レオナルド様。彼は、私が乗っていた馬車が壊れてしまったからと、自分の馬に私を乗せてくれた。

「大丈夫ですか?まだ震えていますね」

馬の上で、私は彼の温かい腕の中にいる。その安心感と、彼の心遣いが嬉しくて、私は小さく頷いた。

「はい、ありがとうございます。でも、まさか聖騎士団の皆様にお会いできるなんて……」

私の言葉に、レオナルド様は優しく笑った。

「私たちも、この道を通る予定はなかったのですが……。これも何かのご縁でしょう」

その言葉が、凍り付いていた私の心を、少しずつ温めてくれるようだった。私は、彼の背中にそっと顔をうずめた。彼の鎧は冷たかったけれど、その内側にある温かさが、私を包み込んでくれた。

聖騎士団の本拠地に着くと、私は一人の女性騎士に案内され、身なりを整えるための部屋に通された。彼女は、私と同じくらいの年頃だろうか。とても優しい笑顔で、私のことを気遣ってくれた。

「どうぞ、ごゆっくりお休みください。団長様が、お怪我がないか心配しておられましたから」

その言葉に、私は胸が締め付けられるような思いがした。見ず知らずの私に、彼はどうしてこんなに優しくしてくれるのだろう。

その夜、私はレオナルド様に、これまでのことをすべて話した。彼に婚約を破棄されたこと、社交界から孤立したこと、そして、旅に出た理由。

「『影の薄い女』……そう言われたのですか」

私の話を聞き終えたレオナルド様は、静かにそう呟いた。彼の瞳は、私を哀れむような色ではなく、ただ、私の痛みを分かち合おうとするような、優しい光を宿していた。

「ええ……。私は、彼にとって何の価値もなかったようです」

私が俯いてそう言うと、彼は私の手にそっと触れた。

「そんなことはありません。あなたは、とても素敵な女性です」

彼の言葉は、私の心を優しく撫でてくれた。誰にも言えなかった心の傷を、彼はただ黙って、受け止めてくれた。

「もしよろしければ、このまま、私たち騎士団に身を置いてはいかがですか?無理に旅を続ける必要はありません。あなたの心の傷が癒えるまで、ここにいてください」

彼の提案に、私は驚いた。見ず知らずの私を、騎士団に受け入れてくれるなんて。

「でも……私には、何もできません」

私は、自分の無力さを恥じてそう答えた。

「大丈夫です。できることから、少しずつ始めればいいのです。私たちは、あなたを歓迎します」

その夜、私はレオナルド様の隣で、久しぶりに心の底から安堵することができた。





次の日から、私は騎士団での生活を始めた。レオナルド様の計らいで、私は騎士たちの身の回りの世話をすることになった。

最初は、何もかもが初めてで、戸惑うことばかりだった。でも、騎士たちはみんな、私に優しく接してくれた。

「クラリス様、この鎧の手入れは、こうするんですよ」

「クラリス様、紅茶のお湯加減は、このくらいがちょうどいいんです」

彼らは、私が失敗しても、決して怒ったりはしなかった。むしろ、私が一生懸命に取り組む姿を、温かく見守ってくれた。

レオナルド様も、毎日のように私の様子を見に来てくれた。

「今日は、どんなことをしましたか?」

私が一日のできごとを話すと、彼はいつも楽しそうに耳を傾けてくれた。そして、私が少しでもできたことがあると、心から褒めてくれた。

「クラリスは、本当に何でもこなすんですね。素晴らしい」

そんな彼の言葉に、私は自分が少しずつ変わっていくのを感じた。

ある日、私は騎士たちの訓練を見学していた。彼らが真剣な表情で剣を振る姿は、とても美しかった。その中で、一際輝いているのは、やはりレオナルド様だった。彼の剣さばきは、まるで芸術のようだった。

訓練が終わると、レオナルド様が私に声をかけてきた。

「どうでしたか?私たちの訓練は」

「はい、とても素晴らしかったです。レオナルド様は、本当にすごいです」

私がそう言うと、彼は照れたように笑った。

「そんなことはありません。これも、日々の鍛錬の成果です。もしよろしければ、少しだけ、剣を教えてあげましょうか?」

私は驚いた。私が剣を?

「いえ、私には……」

「大丈夫です。少しだけですよ」

彼は、私に木剣を持たせてくれた。私は、ぎこちなく剣を構える。レオナルド様は、私の背後に立ち、私の手を優しく取ってくれた。

「剣は、こうやって構えるのです。そして、こう……」

彼の温かい手が、私の手を包み込む。彼の声が、私の耳元で優しく囁かれる。

その瞬間、私は、彼に守られていることを、心から実感した。





騎士団での生活は、私にとって、かけがえのないものになっていった。

私は、朝早く起きて、騎士たちの朝食の準備を手伝い、昼間は、彼らの鎧や剣の手入れをする。そして、夜は、彼らの話を静かに聞く。

騎士たちは、私を「クラリス様」と呼んで、大切に扱ってくれた。彼らは、私の過去を知っても、私を軽蔑したりはしなかった。むしろ、私のことを「繊細で優しい女性だ」と言ってくれた。

彼らとの生活の中で、私は、自分の存在を肯定してくれる人々に囲まれていることを知った。そして、私は、少しずつ、自分に自信を持てるようになっていった。

レオナルド様とは、毎晩のように、二人で星空を眺めた。

「エドガー様は、私を『影の薄い女』と言いました。でも、レオナルド様は、私を『可憐な花』だと言ってくれます。どうしてですか?」

ある夜、私は、レオナルド様にそう尋ねた。

彼は、私の頭を優しく撫でて、こう言った。

「花は、誰かに見てもらわなければ、その美しさを知ってもらえません。でも、あなたは、誰かに見てもらわなくても、美しいのです。あなたは、光を浴びなくても、自分で輝くことができます。私は、あなたのその輝きに、心を奪われたのです」

彼の言葉は、私の心を震わせた。私は、彼の言葉に、涙が止まらなくなった。

私は、彼の言葉が、何よりも嬉しかった。





それから、数ヶ月が経った。私の心は、すっかり癒えていた。

私は、もう、過去の自分を恥じることはなかった。

「レオナルド様、私、そろそろ旅を再開しようと思います」

ある日、私はレオナルド様にそう告げた。

彼は、少し寂しそうな顔をしたが、私の決意を尊重してくれた。

「そうですか……。寂しくなりますね」

「でも、レオナルド様のおかげで、私は強くなれました。ありがとうございます」

私がそう言うと、彼は私を優しく抱きしめた。

「クラリス、君はもう、一人ではない。もし、何かあったら、いつでも私のところに帰ってくればいい」

彼の言葉に、私は胸が熱くなった。

「はい」

私は、彼の胸の中で、小さく頷いた。



そして、出発の日。私は、騎士団の皆に見送られながら、再び馬車に乗り込んだ。

「さようなら、クラリス様!」

「お元気で!」

私は、窓から手を振る彼らに、笑顔で応えた。

その時、私は、自分がもう、一人ではないことを知った。

私が一人で旅立った時とは違う。私の周りには、私を愛し、私を守ってくれる人たちがいる。

私は、この旅の先に、どんな未来が待っているのか、とても楽しみになった。
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