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仮面の下の素顔
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屋敷に流れる空気が、どこかよそよそしく、重たくなっていた。
王立学園からの正式な調査の知らせが届いたのは、私が例の“匿名の通報”を口にしてから三日目のことだった。セリーヌは食欲もなく、鏡の前に座る時間さえ短くなった。クラリッサも、いつものように外出しては優雅に紅茶会に出かけることをしなくなっていた。
「……どうして、こんなことに」
夕暮れ時の居間で、セリーヌはぽつりと呟いた。窓の外では、赤く染まった空がにじむように広がっていた。
「リディア、あんた……誰かに、何か言ったりしてないわよね?」
不安そうな目が、私を見た。
私は、わざとらしく驚いたふりをして首を横に振る。
「私が? まさか。そんな大事なお話、他人にできるような立場ではありませんもの」
「……そう、よね」
セリーヌはうつむき、くしゃくしゃになったハンカチを握りしめた。
セリーヌがこんなふうに弱るのを見るのは、初めてだった。今まで何をしても、あの子は私を見下ろす高い塔の上から笑っていた。努力なんて一度もしなくても、全てが手に入ると信じていた。
でも、その“塔”は偽物だったのだ。彼女の“土台”は崩れかけている。
(まだよ……これはほんの序章)
私は静かに目を伏せた。これから“あの子”がもっと困ったときに、一番“都合のいい存在”として手を伸ばしてくるのは、きっと私だ。
そのときに、ようやく私の次の手が打てる。
夜。私が一人で書斎に戻ると、机の上には一通の封筒が置かれていた。
見覚えのある筆跡だった。伯父、ギルバートからだ。
『リディア、そなたに忠告を送る。クラリッサから“妙な動き”をしていると聞いた。これ以上騒ぎを起こせば、そなたの身にも危険が及ぶ。』
伯父の忠告は、遠まわしな脅しでもあった。
けれど、私は笑ってしまった。伯父がクラリッサと通じていることも、屋敷の財産が“私のもの”になることを恐れていることも、もう知っている。
地下の保管室から見つけたもう一つの証拠――それは、私が成人するまで凍結された父の財産の目録と、法的な相続の証明書だった。名義は、リディア・エインセル。
クラリッサが焦るのも無理はない。今のうちに私を“追い出す”必要があるのだ。
でも、それももう遅い。
「……焦って、いいのよ。どうか、たくさん、悩んで、壊れていって」
私は手紙を破り、暖炉にくべた。火がぱちぱちと燃え上がり、赤く光る。まるで、私の中の復讐の炎を映しているようだった。
数日後。
「リディア様、あの……少しよろしいでしょうか?」
声をかけてきたのは、厨房のメイドのマーサだった。彼女は使用人たちの中でも長く屋敷に仕えていて、クラリッサたちが来る前から私をよく知っている。
「どうしたの、マーサ?」
「実は……少し、お話が……」
人目を避けて、私たちは中庭の石段に腰を下ろした。マーサは、少しの沈黙のあと、口を開いた。
「クラリッサ様が、貴女を療養施設に送ろうとしているという話を耳にしました。“神経が不安定”だと、外部に話していたそうです」
私の胸の奥で、何かがピクリと動いた。
──ついに来たか。
「ありがとう、マーサ。それを私に伝えてくれて」
「……リディア様、私は……旦那様がご存命だった頃から、貴女を見てまいりました。もし、私にできることがあるなら……」
「ええ……あるわ」
私は静かに頷いた。今まで、私の仕返しは“個人的”な範囲にとどめていた。でも、そろそろ“他人の目”を利用する時期かもしれない。
私はマーサに、保管室の存在と、証拠の写しを一部託すことにした。
「……クラリッサ様が私に何かしたときは、これを公爵家に渡してほしいの」
マーサは驚いたように目を見開いたが、やがて強く頷いた。
「わかりました。必ず、守ります」
私は少しだけ目を閉じた。
次の手を打つための準備は整った。
クラリッサの“仮面”が剥がれるその瞬間を、私は一番近くで見届けてやる。
その日の午後、私は書斎に呼び出された。
「リディア、少し話があるの」
そう言ったクラリッサの声は、いつになく柔らかかった。けれど、その裏に潜んだ棘のような冷たさに、私はすぐ気づいた。
書斎の椅子に腰掛けると、彼女は銀のティーセットを自ら手に取って、私のカップに香り高いハーブティーを注いだ。
「最近、少し……お疲れのように見えるわね。顔色も優れないし」
「そうですか? 特に変わったことはありませんけれど」
「そう。けれど……やはり気になるのよ。若い娘がこんな重苦しい屋敷で暮らすのは、やはりよくないと思うの」
クラリッサは笑った。薄氷のような笑みだった。
「実はね、知人に、とても評判のいい療養施設を経営している人がいて。空気もきれいで、食事も上等。貴女のような繊細な子には、ぴったりな場所だと思って」
「……療養施設、ですか?」
「ええ、ほんの数ヶ月。気分転換になるわ。お父様がご存命なら、きっとそうされたと思うの」
私はティーカップを持ち上げ、湯気の向こうに彼女の目をじっと見た。クラリッサのその目は、笑っていなかった。
──これは“追放”だ。
表向きは「療養」。けれど実際は、“私をここから排除する”ための計画。
私がいなくなれば、彼女は安心して財産を掌握できる。セリーヌの問題も、私の口を封じれば対処できる。……その程度に、私を見ているのだ。
「……ご厚意は嬉しいですが、お断りいたしますわ」
「まあ……どうして? あら、もしかして……おかしな誤解をしているのかしら。私があなたを追い出そうとしている、なんて……」
その声が少しだけ尖った。
「私のことを思ってくださるお気持ちは、よく伝わってきました。でも、家を離れるのは不安ですし……お父様との思い出も、この家にはありますから」
「…………」
クラリッサの指が、ティーカップの縁をきつくなぞった。
怒りを、どうにか抑えているのが、よくわかる。
「それでも、もし……あなたの“精神状態”が周囲に不安を与えるようなことになったら、それは問題よね。家の名誉にも関わるし」
「……ご心配なく。精神的に不安定なのは、むしろセリーヌの方ではないかしら。最近は悪夢にうなされているご様子で」
私は、あくまで優しく微笑んでみせた。
「それに……もし私が“療養施設”に行くようなことになるなら、その前に“書き置き”を残しておかなくては。自分に起きたことを、事細かに。王立の監察部の方々に、改めてお伝えする必要がありますもの」
クラリッサの顔が引きつった。
私は立ち上がり、丁寧に礼をしてから静かに言った。
「ご心配、ありがとうございました。お母様。では、これにて」
扉を閉める直前、彼女の震える吐息が聞こえた。
部屋に戻ると、私はすぐに机の引き出しからあるものを取り出した。
それは、クラリッサが以前こっそりと雇った医師との記録の写し。メイドのマーサが密かに入手してくれたものだ。そこには、私を「不安定な状態にある」と診断するよう依頼した内容が残っていた。
「ふふ……こんなに証拠を撒き散らして。お母様ってば、案外、詰めが甘いのね」
私はそれらを封筒にまとめ、次の“切り札”として温存する。
焦りは、ミスを生む。クラリッサも、セリーヌも、すでに十分に崩れかけている。
今、私がすべきことは──“決定打”を打つための準備。
夜、マーサがそっと私の部屋を訪ねてきた。
「リディア様……よろしいでしょうか?」
「ええ、どうぞ。待ってたの」
彼女はそっと扉を閉め、声を潜めて言った。
「屋敷の使用人の中にも、クラリッサ様への不信感を持つ者が多くいます。リディア様が公に動くとき、支援を申し出たいとのことです」
その言葉に、私は目を見開いた。
「……それは……本当?」
「ええ。お嬢様のことを見てきた者たちが、声を上げはじめています」
私はゆっくりと頷いた。ようやく、空気が変わり始めている。
私は一人じゃない。彼女たちの手を借りて、次の一手を打つことができる。
(これでようやく……次の章が始められる)
私は立ち上がり、窓を開けた。
夜風が、淡い月明かりとともに部屋へと流れ込んでくる。
この風は、嵐の前触れ。
静かに、ゆっくりと、私は“落とし穴”の準備を始めた。
王立学園からの正式な調査の知らせが届いたのは、私が例の“匿名の通報”を口にしてから三日目のことだった。セリーヌは食欲もなく、鏡の前に座る時間さえ短くなった。クラリッサも、いつものように外出しては優雅に紅茶会に出かけることをしなくなっていた。
「……どうして、こんなことに」
夕暮れ時の居間で、セリーヌはぽつりと呟いた。窓の外では、赤く染まった空がにじむように広がっていた。
「リディア、あんた……誰かに、何か言ったりしてないわよね?」
不安そうな目が、私を見た。
私は、わざとらしく驚いたふりをして首を横に振る。
「私が? まさか。そんな大事なお話、他人にできるような立場ではありませんもの」
「……そう、よね」
セリーヌはうつむき、くしゃくしゃになったハンカチを握りしめた。
セリーヌがこんなふうに弱るのを見るのは、初めてだった。今まで何をしても、あの子は私を見下ろす高い塔の上から笑っていた。努力なんて一度もしなくても、全てが手に入ると信じていた。
でも、その“塔”は偽物だったのだ。彼女の“土台”は崩れかけている。
(まだよ……これはほんの序章)
私は静かに目を伏せた。これから“あの子”がもっと困ったときに、一番“都合のいい存在”として手を伸ばしてくるのは、きっと私だ。
そのときに、ようやく私の次の手が打てる。
夜。私が一人で書斎に戻ると、机の上には一通の封筒が置かれていた。
見覚えのある筆跡だった。伯父、ギルバートからだ。
『リディア、そなたに忠告を送る。クラリッサから“妙な動き”をしていると聞いた。これ以上騒ぎを起こせば、そなたの身にも危険が及ぶ。』
伯父の忠告は、遠まわしな脅しでもあった。
けれど、私は笑ってしまった。伯父がクラリッサと通じていることも、屋敷の財産が“私のもの”になることを恐れていることも、もう知っている。
地下の保管室から見つけたもう一つの証拠――それは、私が成人するまで凍結された父の財産の目録と、法的な相続の証明書だった。名義は、リディア・エインセル。
クラリッサが焦るのも無理はない。今のうちに私を“追い出す”必要があるのだ。
でも、それももう遅い。
「……焦って、いいのよ。どうか、たくさん、悩んで、壊れていって」
私は手紙を破り、暖炉にくべた。火がぱちぱちと燃え上がり、赤く光る。まるで、私の中の復讐の炎を映しているようだった。
数日後。
「リディア様、あの……少しよろしいでしょうか?」
声をかけてきたのは、厨房のメイドのマーサだった。彼女は使用人たちの中でも長く屋敷に仕えていて、クラリッサたちが来る前から私をよく知っている。
「どうしたの、マーサ?」
「実は……少し、お話が……」
人目を避けて、私たちは中庭の石段に腰を下ろした。マーサは、少しの沈黙のあと、口を開いた。
「クラリッサ様が、貴女を療養施設に送ろうとしているという話を耳にしました。“神経が不安定”だと、外部に話していたそうです」
私の胸の奥で、何かがピクリと動いた。
──ついに来たか。
「ありがとう、マーサ。それを私に伝えてくれて」
「……リディア様、私は……旦那様がご存命だった頃から、貴女を見てまいりました。もし、私にできることがあるなら……」
「ええ……あるわ」
私は静かに頷いた。今まで、私の仕返しは“個人的”な範囲にとどめていた。でも、そろそろ“他人の目”を利用する時期かもしれない。
私はマーサに、保管室の存在と、証拠の写しを一部託すことにした。
「……クラリッサ様が私に何かしたときは、これを公爵家に渡してほしいの」
マーサは驚いたように目を見開いたが、やがて強く頷いた。
「わかりました。必ず、守ります」
私は少しだけ目を閉じた。
次の手を打つための準備は整った。
クラリッサの“仮面”が剥がれるその瞬間を、私は一番近くで見届けてやる。
その日の午後、私は書斎に呼び出された。
「リディア、少し話があるの」
そう言ったクラリッサの声は、いつになく柔らかかった。けれど、その裏に潜んだ棘のような冷たさに、私はすぐ気づいた。
書斎の椅子に腰掛けると、彼女は銀のティーセットを自ら手に取って、私のカップに香り高いハーブティーを注いだ。
「最近、少し……お疲れのように見えるわね。顔色も優れないし」
「そうですか? 特に変わったことはありませんけれど」
「そう。けれど……やはり気になるのよ。若い娘がこんな重苦しい屋敷で暮らすのは、やはりよくないと思うの」
クラリッサは笑った。薄氷のような笑みだった。
「実はね、知人に、とても評判のいい療養施設を経営している人がいて。空気もきれいで、食事も上等。貴女のような繊細な子には、ぴったりな場所だと思って」
「……療養施設、ですか?」
「ええ、ほんの数ヶ月。気分転換になるわ。お父様がご存命なら、きっとそうされたと思うの」
私はティーカップを持ち上げ、湯気の向こうに彼女の目をじっと見た。クラリッサのその目は、笑っていなかった。
──これは“追放”だ。
表向きは「療養」。けれど実際は、“私をここから排除する”ための計画。
私がいなくなれば、彼女は安心して財産を掌握できる。セリーヌの問題も、私の口を封じれば対処できる。……その程度に、私を見ているのだ。
「……ご厚意は嬉しいですが、お断りいたしますわ」
「まあ……どうして? あら、もしかして……おかしな誤解をしているのかしら。私があなたを追い出そうとしている、なんて……」
その声が少しだけ尖った。
「私のことを思ってくださるお気持ちは、よく伝わってきました。でも、家を離れるのは不安ですし……お父様との思い出も、この家にはありますから」
「…………」
クラリッサの指が、ティーカップの縁をきつくなぞった。
怒りを、どうにか抑えているのが、よくわかる。
「それでも、もし……あなたの“精神状態”が周囲に不安を与えるようなことになったら、それは問題よね。家の名誉にも関わるし」
「……ご心配なく。精神的に不安定なのは、むしろセリーヌの方ではないかしら。最近は悪夢にうなされているご様子で」
私は、あくまで優しく微笑んでみせた。
「それに……もし私が“療養施設”に行くようなことになるなら、その前に“書き置き”を残しておかなくては。自分に起きたことを、事細かに。王立の監察部の方々に、改めてお伝えする必要がありますもの」
クラリッサの顔が引きつった。
私は立ち上がり、丁寧に礼をしてから静かに言った。
「ご心配、ありがとうございました。お母様。では、これにて」
扉を閉める直前、彼女の震える吐息が聞こえた。
部屋に戻ると、私はすぐに机の引き出しからあるものを取り出した。
それは、クラリッサが以前こっそりと雇った医師との記録の写し。メイドのマーサが密かに入手してくれたものだ。そこには、私を「不安定な状態にある」と診断するよう依頼した内容が残っていた。
「ふふ……こんなに証拠を撒き散らして。お母様ってば、案外、詰めが甘いのね」
私はそれらを封筒にまとめ、次の“切り札”として温存する。
焦りは、ミスを生む。クラリッサも、セリーヌも、すでに十分に崩れかけている。
今、私がすべきことは──“決定打”を打つための準備。
夜、マーサがそっと私の部屋を訪ねてきた。
「リディア様……よろしいでしょうか?」
「ええ、どうぞ。待ってたの」
彼女はそっと扉を閉め、声を潜めて言った。
「屋敷の使用人の中にも、クラリッサ様への不信感を持つ者が多くいます。リディア様が公に動くとき、支援を申し出たいとのことです」
その言葉に、私は目を見開いた。
「……それは……本当?」
「ええ。お嬢様のことを見てきた者たちが、声を上げはじめています」
私はゆっくりと頷いた。ようやく、空気が変わり始めている。
私は一人じゃない。彼女たちの手を借りて、次の一手を打つことができる。
(これでようやく……次の章が始められる)
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