たぶん荘、きっと荘〜道祖神大家とイチャラブなんてあり得ない!?〜

振悶亭めこ

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第一章:アラミタマはうらーか男子!?

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『アラミタマのクロアさん』の配信を見た後、和也は何かのヒントにならないかと、クロアのアーカイブを見たり、SNSをチェックしたりしていた。
 始めたばかりと言うクロアの動画アーカイブはまだ少なく、先程見た乳首オナニーのものの他は、初回の自己紹介とまったりした雑談のものと、アラミタマのクロアさんメスお兄さん化配信そのいち……普通にオナニーをしているもの、合わせて二本だけだった。
 SNSをチェックして目に止まったものが問題だ。黒の狐面で顔を覆い、着物はきちんと着付けた状態。それでいて鏡を使って尻を強調するアングルの自撮り写真と共に、本日の配信のお知らせが書かれていた。

 アパートの更新、または退居まで残り二十日。

 二十日で色々どうにか出来るかと問われたなら、今の周りに見放されつつある和也ではどうにも出来ない。足りないなりに、和也は分かっていた。ならば大家を何とかして、退居せず家賃を踏み倒してしまおう。ゴミクズ的思考は今も元気に和也の中にあった。
 快楽に弱そうな大家なら、快楽堕ちさせてしまえばいい。二十日という制限はあるが、そこは賭けだと思って。
「あのクソ野朗、確か配信が今日あるんだよな。動画見たって直接言って……も、脅せねぇとして……気持ち良くしてやる、とか言って釣れたりしねーか?」
 ゴミクズはゴミクズなりに考える。和也の四半世紀ほどの短い人生経験の中で、今が一番物事を考えていたなんて、今の和也には知る由もない。
 シトシトと、雨音が外から聞こえてくる。和也は雨避けにパーカーを羽織り、スマホと鍵をポケットに入れて外に出た。
 向かった先は、部屋から徒歩一分もかからない、大家の住む古民家だった。
「出て来いクソ野朗!居るのは分かってんだ!」
 入り口のドアをガンガン叩き、大声で捲し立てるように叫ぶ。和也は、常に自分が優位に立っていないと気が済まない子供のまま成人してしまった、悪い見本のような男でもある。暫くドアを叩き、喚き散らしていると、ドアがガラリと開いた。
「やかましい!」
 ドアを開けた白亜は一言、和也に言い放ち、持っていた扇子で和也の頭をピシャリと叩いた。
「っ!何しやがんだクソ野朗!」
「用件を言え。金が無いからと喧嘩を売りに来たならば帰れ」
 睨めつけてくる赤い目や、叩かれた事にムカつきはしたものの、用件と言われて和也は少し冷静になる。喧嘩に売り値が付くなら、勝てそうな奴を選んでいくらでも売るが、現実そんな事をしてもお巡りさんのお世話になって終わる事が目に見えている。
「アパートの更新の話だ」
「……まともに考えてきたのか?」
 訝しげに和也を睨めつける白亜。雨音だけが響く沈黙の後、和也は無言でコクリと頷いた。
「履物を脱いで、付いて来るが良い……また玄関先で無茶をされては敵わぬ」
 和也は今すぐにでも白亜に殴りかかりたい衝動を、グッと堪えた。暴力に屈する事の無い目の前の人外大家の前では、暴力など無意味な上に、逆に脅しの材料を与えるだけだと痛感したばかりだ。
 大人しく玄関のドアを閉めてサンダルを脱ぎ、白亜の後ろに付いて行く。案内された客間であろう、十畳ほどの生活感の無い和室、中心には座卓と、座卓を取り囲むように座布団が四枚並べてあるだけ。
「書類と……茶ぐらいは出そう。座って待っておれ。それと、我はクソ野朗では無い。白亜さんだ。以後謹むように」
 自分で「さん」付けをするのは白亜の趣味だろうか?スッと、先に差し出された茶は常温の、500mlのペットボトルの茶だった。白亜も自分用に同じ物を持って来て、書類やペンと一緒に座卓の上に置く。
 生活感が、本当に無い。白亜は普段どうやって生活しているのだろうか?和也は少しだけ興味が湧いてきていた。が、それは今日の本題ではない。
「金は用意出来たのだろうな?」
「いや、その前に質問に来た」
「ほぅ。更新の意思と準備を進めているのならば、我は喜んで答えよう」
 座布団の上に座り、座卓を挟んだ向かい側で白亜は柔らかな表情を浮かべていた。
 こんな表情も出来るなんて、ズルいだろ。
 今までは常に和也自身が攻撃的だったが為に見る事が無かった、白亜の表情だった。
「……アラミタマのクロアさん」
「え!?」
「という、最近伸びてる裏アカ男子……あれは白亜さん、だよな?」
 ペットボトルの茶を飲もうとしていた白亜の動きがピタリと止まり、頬は淡い朱に染まっていった。
「メスお兄さんになりたいっつって、リクエスト通りに乳首オナニー配信してた、クロアさん、な」
 ぱくぱくと口を動かし、直ぐには声にならない声を出そうとする白亜。アッ、ウッ、という短い音を何度か立てた後咳払いを一つ。
「こほん。えぇ……確かに。アラミタマのクロアさんは我である……チャンネル登録とSNSのフォローは済んでおるか?知っているなら済ませるが良い!」
「ちょっ!白亜さん!?食いつき過ぎじゃね?今!いま済ませっから、落ち着け!」
 目を輝かせ、座卓に身を乗り出し食いついてきた白亜を避けるように横に移動し、和也はスマホを出してアラミタマのクロアさんのチャンネル登録をした。SNSは……和也自身、自分の行動を知られるのが何と無く嫌で、非公開のグループに入れただけにしておいた。
「もうすぐ配信の時間だが、気になるのならば生で現場を見て行け。ファンサービス?というものだ」
「は……はぁ……」
 男のモン見せられても全く嬉しくねえよ!
 と、言いたかったが、脱線しきった話で楽しそうにはしゃぐ白亜を前にして、和也は言葉を飲み込んだ。
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