たぶん荘、きっと荘〜道祖神大家とイチャラブなんてあり得ない!?〜

振悶亭めこ

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第五章:幼き恋情

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 いつの間にか、辺りは宵闇に包まれていた。全ての戒めから白亜を解放した。差し込む街灯の、うっすらとした光に赤く腫れた打擲痕の残る白い肌が照らされていた。
 生々しい、和也が付けた縄と鞭の痕。和也はぼんやりした罪の意識の中、白亜に付けた痕を、艶やかで美しいと、見惚れていた。
「ごめんなさい、ごめんなさい。ぬしさま」
 啜り泣く白亜の声。和也はそっと白亜を抱きしめて、あやすように髪を撫でた。

 白亜さんが謝る事は無いのだと、言いたい反面、啜り泣いて謝り続ける様を、もう少し腕の中に感じていたい。和也の内側で、相反するものがせめぎ合っていた。
「ごめんなさいっ、ぬしさま。ごめんなさい……白亜は……どんな苦しいお仕置きでも、折檻でも……ご、拷問とかでも、受けます……からぁ」
 こんな状態で、いけないと思うけど……白亜さんさ、今の台詞はオレの下半身煽ってるっつーの。
「だから……っ、お願いします、ぬしさま……白亜の事を、嫌わないで。置いて行かないで、下さい……」
 あー、これ、ダメなやつだ。戦闘終了。
 和也は、白亜さんの髪を撫で続け、羽根のような耳元に口元を寄せた。
「大丈夫だ……嫌わねーよ。着物を着て、下で飯でも食おう。な?白亜さん」
 ちゅっと白亜の耳元にキスをして、和也はゆっくり腕を離した。暗くなった部屋の電気をつけた。
「はい……ぬしさま。で、でも……お仕置きは?折檻でも、拷問でもっ」
 さっき泣いたカラスが何とやら、つーモンだなこれ。泣き止んだ白亜さんは、期待に目を輝かせて、んな事言ってら。して欲しいんだろう、とは思うが。
「しねえよ。今、白亜さんに必要なモンは反省会。色々きちんと聞いておきてーし」
「反省会……ですか?あの……ではせめてコレを……」
 眉尻を下げ、脱力し、シュンとした白亜さんは、少しの間を置いて風呂敷の上の貞操帯、さっき使った金属のものを差し出してきた。それは嫌じゃねーのか……
「ぬしさま、白亜が反省出来るまで、どうか貞操帯をお付け下さい」
 仕方ない。それ一つ付けて白亜さんが安心するってなら、付けといてやるか。
「あー……まあ、素直にオネダリ出来たんだ、付けてやるよ。ただし、尿道ブジーは外しとく」
「ありがとうございます、ぬしさま♡」
 貞操帯を、白亜さんに再び付けた。
 白亜は花のように綻んで、綺麗に笑う。純真、無垢、そんな言葉が似合う。少女のような、少年のような、不思議なものだった。
 付けたモノがモノだった事は、気にしない方向でいよう。

 反省会、と称した宅飲みは、オレが間借りしている部屋で行われている。夕食用に作ったおかずが、つまみメニューのようなものだった事が幸いだった。
 唐揚げ、冷奴、バーニャカウダー。足りないようならそこら辺に残っている、エイヒレでも炙ろうか?二人だけなら充分過ぎる気はする。唐揚げは作り過ぎたし、バーニャカウダー用の野菜は切り過ぎた気がするからな。
 酒は、最近日本酒を用意している。白亜さんの、道祖神の祠に一度供えてから、家に持って帰るようにしているモノだ。
 二人共、グラス一杯ほどをのんで、白亜さんがバーニャカウダーに夢中になっていた頃に、和也は話を切り出した。
「白亜さん、そろそろ本題に入ろうぜ。今日、うちの親父に脱がされかかって、触られた時な、止めろって言ったのは何でだ?」
 白亜はさんシャリシャリと、バーニャカウダーソースを付けたキュウリを齧り終えてから、口を開く。
「それは……やめて欲しかったからだ。何故?ふむ……我は、元からあの男が少し苦手だ。他は……」
 和也はじっと考えている様子の白亜さんを見つめ、続きを待つ。
「白亜さんの本当の気持ち、どんな小さな事でもいい。オレに教えてくれ」
「思い付いた所から話すぞ。動画で沢山の者に見られるのは、心地よい。だが……触れられるとなると、話は違ったようだ」
 和也は空になったままの白亜さんのグラスに酒を注いだ。白亜さんはそれをグイッと一気に飲み干して、俯く。
「笑わずに……聞け。あのように、誰かに触れられるならば……和也の手で触れてほしいと……思ってしまう。我は、気が狂ってしまったのだろうか……」
 真剣に悩み、俯き、語る姿を笑えはしない。まして、オレ自身の関わる事だ。
「何もおかしくない。ただ、白亜さん。それだけの情報じゃ、他人の気持ちなんて分かんねえ。他に、何かあるか?」
「他には……ふむ。和也に縄やベルトで拘束されると、気持ちよくなる?抱きしめられているような、不思議な気分だぞあれは」
 今度はオレの、空のグラスに酒を注いで半分程を飲み干した。
「はい次ー!何かねえのかよ」
「急かすでない……触れられてしまうと、身体がすぐに火照ってしまう故、あの男に触れられた時、気持ちよくなってはいけない気がした……理由は、分からぬ」
 白亜さんは手酌で空のグラスに酒を注いでは飲み干し、注いでは飲み干していく。
 酔った方が本音が出やすいだろう。オレはそれを待ちつつ台所から一升瓶を二本と、四号瓶を一本、取ってきた。
 それから暫くは、純粋に酒を楽しんでいた。
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