31 / 41
第五章:幼き恋情
⑤
しおりを挟む
西村和也は、戸惑っていた。
「所で和也、我は尻が痛い」
腫れが数日間残りそうな程、鞭で叩いた後だ、痛むだろう。正直、悪かったと思ってる。後悔はしていない。けど……
「あのー、白亜さん?」
「何だ?和也は酒が足りぬのか?我は今、心地よい気分だ」
今。白亜さんは胡座をかいたオレの膝の上を円座代わりにして、横抱きにされるような状態で座っている。腕をオレの首に回して抱きついて、時々頬擦りをしてくる。
周囲には、空の酒瓶がいくつも転がっていて、少なくとも四合瓶二本と一升瓶二本が、空になっていた。
殆ど白亜さんが飲んだ、残骸。この人はザルなのか?と、和也は思ったが、白亜さんはそもそも人間じゃねーや、という部分に帰結した。
「話の続き、出来るか?」
「内容によるが、今ならもれなく色々話せそうだ。お得だな」
お得感は求めてねえよ。スーパーのセール品じゃあるまいし。
「さっき……泣きながら、嫌わないで、置いてかないでって、白亜さん言ってたのは、何で?」
オレに抱きついていた、白亜さんの腕の力が弱くなった。そっと、支えるように、オレは白亜の背中に腕を回す。
「……ふう。我の、性質の裏返し?なのかも知れぬ。願われたのなら見守り、導き、背中を見送る。二度と会わぬ者が殆どだ。恐らく、それが寂しいのだと、思い始めてしまったのだろう。何故和也に縋ってしまったのかは、分からぬ」
白亜さんはオレの肩に軽く擦りついて、首をもたげた。
「ただ……和也に疑われていた事が、その……一番辛くて。年甲斐もなく、みっともなく泣いてしまった……」
反省会と称して、飲んで話していて出てきた、オレの中の予感が当たればいい。
「辛い時は泣けばいい、年甲斐だのみっともないだの気にしねーでいい……白亜さんはさ、酒飲みてえって理由は?配信やプレイをしてえって理由は、何だ?」
「酒は美味いからたまに飲みたい……配信やプレイは、気持ちよくなりたく、実際気持ちよくなれるから。だな」
「美味いモンや、気持ちいー事、白亜さんは好き?ま、気持ちいー事については、プレイん時は素直に言ってんの、オレは聞いてっけどな。配信見てる奴らも知ってる事だぜ?」
ハッと顔を上げた白亜さんは、オレの顔をじっと見て、少し恥ずかしそうに口篭っていた。
「ぁ……美味い酒も、気持ちいい事も、好きだ。だが……それに当てはめてしまうと、我は、我は…………」
うっすらと涙を浮かべ、顔を背けようとする白亜さんの顎を、オレは優しく掴む。
「恥ずかしくて泣きそー?可愛い所あんじゃねーか。続き、言え。言って聞かせろ」
「好き…………和也が、好き」
少し前に予感した事、当たればいいと和也が望んだ答えは、すぐに出された。
気付かされてしまった、初めての感情に、甘やかな戸惑いに、白亜は呆然となる。
人間ごとき、と、我は思っていた。いつの間にか、時間の流れの加速と共に、その考えも塗り替えられていたのか。今ある、和也の腕の温もりが心地よい。何故だか胸は高鳴り、下腹はキュウっと疼き始めていた。
「ありがとう、白亜さん。オレも今日、話してて頭ン中整理出来た。聞いてくれないか」
コクリと頷いた白亜は、不安からもう一度和也にぎゅっと抱きついた。
「オレも、白亜さんが好き。嫉妬もするし、独占欲も強えーみてーだ」
「和也は、我が……好き?一緒、なのか?」
「知らねー。他人同士じゃん、分かんねー部分がある方がいいんじゃね?不便でも時々新しい部分が見えたりすんの、今は嫌いじゃねーよ」
和也の手が、白亜の頭をワシャリと撫でた。話し合い、確かめあう事。あの男に言われたという部分は気に食わぬが、本当に必要な事だったと、白亜は思う。和也には、まだまだ告げておらぬ事が、我にはある。新しく出てくる事も、これからあるだろう。
「我は、和也の……静かに耳元で囁く声も、好きである。従ってしまいたくて、疼いてしまう……今ならよく分かる。始めは確かに、誰でも良かったのかも知れぬが……我は、和也に蹂躙され、無力な存在に貶められ、性処理の道具のように扱われたいのだと」
オレの、一瞬のときめきを返して下さい白亜さん。
「そんなキラキラした目で後半部分を熱弁すんじゃねーよ。今日はもう何もしねえ。明日、酔っ払いの戯言じゃねーって確かめられたらそん時は」
「ふむ。期待しておるぞ、和也」
反省会と称した宅飲みは、告白大会となり、無事終了した。
「所で和也、我は尻が痛い」
腫れが数日間残りそうな程、鞭で叩いた後だ、痛むだろう。正直、悪かったと思ってる。後悔はしていない。けど……
「あのー、白亜さん?」
「何だ?和也は酒が足りぬのか?我は今、心地よい気分だ」
今。白亜さんは胡座をかいたオレの膝の上を円座代わりにして、横抱きにされるような状態で座っている。腕をオレの首に回して抱きついて、時々頬擦りをしてくる。
周囲には、空の酒瓶がいくつも転がっていて、少なくとも四合瓶二本と一升瓶二本が、空になっていた。
殆ど白亜さんが飲んだ、残骸。この人はザルなのか?と、和也は思ったが、白亜さんはそもそも人間じゃねーや、という部分に帰結した。
「話の続き、出来るか?」
「内容によるが、今ならもれなく色々話せそうだ。お得だな」
お得感は求めてねえよ。スーパーのセール品じゃあるまいし。
「さっき……泣きながら、嫌わないで、置いてかないでって、白亜さん言ってたのは、何で?」
オレに抱きついていた、白亜さんの腕の力が弱くなった。そっと、支えるように、オレは白亜の背中に腕を回す。
「……ふう。我の、性質の裏返し?なのかも知れぬ。願われたのなら見守り、導き、背中を見送る。二度と会わぬ者が殆どだ。恐らく、それが寂しいのだと、思い始めてしまったのだろう。何故和也に縋ってしまったのかは、分からぬ」
白亜さんはオレの肩に軽く擦りついて、首をもたげた。
「ただ……和也に疑われていた事が、その……一番辛くて。年甲斐もなく、みっともなく泣いてしまった……」
反省会と称して、飲んで話していて出てきた、オレの中の予感が当たればいい。
「辛い時は泣けばいい、年甲斐だのみっともないだの気にしねーでいい……白亜さんはさ、酒飲みてえって理由は?配信やプレイをしてえって理由は、何だ?」
「酒は美味いからたまに飲みたい……配信やプレイは、気持ちよくなりたく、実際気持ちよくなれるから。だな」
「美味いモンや、気持ちいー事、白亜さんは好き?ま、気持ちいー事については、プレイん時は素直に言ってんの、オレは聞いてっけどな。配信見てる奴らも知ってる事だぜ?」
ハッと顔を上げた白亜さんは、オレの顔をじっと見て、少し恥ずかしそうに口篭っていた。
「ぁ……美味い酒も、気持ちいい事も、好きだ。だが……それに当てはめてしまうと、我は、我は…………」
うっすらと涙を浮かべ、顔を背けようとする白亜さんの顎を、オレは優しく掴む。
「恥ずかしくて泣きそー?可愛い所あんじゃねーか。続き、言え。言って聞かせろ」
「好き…………和也が、好き」
少し前に予感した事、当たればいいと和也が望んだ答えは、すぐに出された。
気付かされてしまった、初めての感情に、甘やかな戸惑いに、白亜は呆然となる。
人間ごとき、と、我は思っていた。いつの間にか、時間の流れの加速と共に、その考えも塗り替えられていたのか。今ある、和也の腕の温もりが心地よい。何故だか胸は高鳴り、下腹はキュウっと疼き始めていた。
「ありがとう、白亜さん。オレも今日、話してて頭ン中整理出来た。聞いてくれないか」
コクリと頷いた白亜は、不安からもう一度和也にぎゅっと抱きついた。
「オレも、白亜さんが好き。嫉妬もするし、独占欲も強えーみてーだ」
「和也は、我が……好き?一緒、なのか?」
「知らねー。他人同士じゃん、分かんねー部分がある方がいいんじゃね?不便でも時々新しい部分が見えたりすんの、今は嫌いじゃねーよ」
和也の手が、白亜の頭をワシャリと撫でた。話し合い、確かめあう事。あの男に言われたという部分は気に食わぬが、本当に必要な事だったと、白亜は思う。和也には、まだまだ告げておらぬ事が、我にはある。新しく出てくる事も、これからあるだろう。
「我は、和也の……静かに耳元で囁く声も、好きである。従ってしまいたくて、疼いてしまう……今ならよく分かる。始めは確かに、誰でも良かったのかも知れぬが……我は、和也に蹂躙され、無力な存在に貶められ、性処理の道具のように扱われたいのだと」
オレの、一瞬のときめきを返して下さい白亜さん。
「そんなキラキラした目で後半部分を熱弁すんじゃねーよ。今日はもう何もしねえ。明日、酔っ払いの戯言じゃねーって確かめられたらそん時は」
「ふむ。期待しておるぞ、和也」
反省会と称した宅飲みは、告白大会となり、無事終了した。
0
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
経理部の美人チーフは、イケメン新人営業に口説かれています――「凛さん、俺だけに甘くないですか?」年下の猛攻にツンデレ先輩が陥落寸前!
中岡 始
BL
社内一の“整いすぎた男”、阿波座凛(あわざりん)は経理部のチーフ。
無表情・無駄のない所作・隙のない資料――
完璧主義で知られる凛に、誰もが一歩距離を置いている。
けれど、新卒営業の谷町光だけは違った。
イケメン・人懐こい・書類はギリギリ不備、でも笑顔は無敵。
毎日のように経費精算の修正を理由に現れる彼は、
凛にだけ距離感がおかしい――そしてやたら甘い。
「また会えて嬉しいです。…書類ミスった甲斐ありました」
戸惑う凛をよそに、光の“攻略”は着実に進行中。
けれど凛は、自分だけに見せる光の視線に、
どこか“計算”を感じ始めていて……?
狙って懐くイケメン新人営業×こじらせツンデレ美人経理チーフ
業務上のやりとりから始まる、じわじわ甘くてときどき切ない“再計算不能”なオフィスラブ!
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
入社1ヶ月のワンコ系男子が、知らずのうちに射止めたのはイケメン社長!?
monteri
BL
CM制作会社の新入社員、藤白純太は入社1ヶ月で教育係の先輩が過労で倒れたため、特別なクライアントの担当を引き継ぐことになる。
そのクライアントは、女子禁制ミーハー厳禁の芸能事務所だった。
主人公の無知で純なところに、翻弄されたり、骨抜きにされるイケメン社長と、何も知らない純太がドキドキするお話です。
※今回の表紙はAI生成です
※小説家になろうにも公開してます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる