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3 バイト決まり…?
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くすくす……
子供が笑う様な声が聞こえた気がして、私は辺りを見回す。
でも誰もいない静かな廊下だった。
この声、さっきも聞いたような……でも誰もいないしな。
変なの。幻聴? それとも近所の子供が近くで遊んでいるとかかな。
首を傾げつつも私は笠置さんの後を追うと、彼は廊下の奥にある部屋に入っていった。
「失礼します」
後に続いて私も中に入るとそこは十畳ほどの部屋だった。
中央にはテーブルと黒い革張りのソファーが向い合せに置かれている。
壁には棚がびっしり並んでいて本や怪しげな見たことのないものが並んでいた。
……本もなんだか癖が強いけど……
「座って」
と言い、笠置さんは私の履歴書を持ったままソファーに腰かけた。
「は、はい」
私は戸惑いつつ鞄を下ろして彼の向かい側のソファーに腰かけた。
「失礼します」
なんだろうこの展開。
なんで私、履歴書落っことしてしかもこの人に拾われちゃったのかな?
バイトを早く決めたいけど、この展開は予想外すぎる。
「ひとりぐらし?」
「え? あ、はい、そう、ですけど……」
まっさきに聞くことかな、それ……
疑問に思っていると、彼は履歴書を折りたたみながら言った。
「明日から大丈夫?」
……なんて言った今?
笠置さんに言われた言葉を私は頭の中で繰り返す。
明日から……って言いませんでした、今?
え、明日?
「そ、それってどういう……」
「明日から来てって事。エプロンは用意しておくから、大学、何時に終わる?」
「え? あ……えーと……三時前には終わるので……半までには来られると思いますけど……」
「じゃあ明日からよろしく」
「あ、は、はい」
……面接ってこんなだっけ? いいや違うと思う。
何が何だかわからないけど、バイトが決まった。
「詳しいことは甲斐に聞いて」
そこでドアを叩く音が響いた。
笠置さんが返事をする間もなく扉が開き、入って来たのは顔がそっくりな少年ふたりだった。
長めの、明るい茶色の髪。ひとりは紅い瞳でひとりは青い瞳をしている。
……コンタクトかな。
ちょっと不思議な雰囲気のふたりは私の顔を見るなりにやにやと笑って言った。
「あれ、珍しいね、女の子をここに通すなんて。笠置さん、彼女つくるきになったの?」
「一葉、笠置さんが彼女をつくるわけないじゃないか」
「そう? 二葉。人間て言うのはわからないものだよ。女性に興味のない笠置さんでも何をきっかけに変わるかわから……」
「一葉、二葉」
腹の底から低く響く声に、私は思わず震えてしまう。
それはふたりも同じみたいで、怯えた目をして笠置さんを見つめた。
「い、嫌だなあ、笠置さん。僕たちは話をしに来たんだよ、ねえ、二葉」
「そうだよ、笠置さん。僕たちはいつものように笠置さんと話をしたくて来たんだよ。最近うちの神社の神様なんだけど……」
「杉下さん」
少年の言葉を遮り、笠置さんは真顔で私を見つめて言った。
「明日からよろしく」
こ、怖いんだけどなんか……
そう思いつつ私は頷き、そそくさとその部屋を後にした。
店舗の方に出ると、すぐに眼鏡の店員さんが近づいてくる。
「大丈夫でした? 笠置さん、なんて言っていました?」
そう言って、彼はすごく心配そうな顔をして私の顔を見つめる。
「え、えーと……明日から来てほしいと言われたんですが……」
「その様子だと特に説明、受けてないですよね」
そう言って彼は苦笑いする。
ええ、受けてないです。っていうかアレ、面接と言っていいのだろうか?
聞かれたの、ひとり暮らしかどうかだけだし。って言うかなんであんなこと聞かれたんだろ?
「透さ……笠置さんが自分から面接するの初めてだから心配だったんですけど……とりあえず決まって良かった。僕ひとりじゃさばききれないので」
ひとりじゃさばききれない……?
そういえば店長さんはレアキャラだっけ。お客さん来ていたけど普段何してるんだろ?
「そうだ、この後……閉店後になりますけど少し時間とれますか? 詳しいこと、説明するので」
説明は聞きたい、というか聞かせてほしい。
そしてどうして私が採用されたのかも知りたい。
「大丈夫です」
私が頷き答えると、店員さんはほっとしたような顔をして微笑み言った。
「僕は甲斐緋月と言います」
「杉下美羽です」
「杉下さんね。じゃあ、七時前にここにまた来てください」
営業中はたしかに話しできないだろうな。
今もまだ店には女性客がいてじっとこちらの様子をうかがっている。
……私、ここで働いて大丈夫かな。ちょっと怖いかも。
でも早くバイト決めないとだしな……
私は甲斐さんに、わかりました、伝えいったんその店を後にした。
子供が笑う様な声が聞こえた気がして、私は辺りを見回す。
でも誰もいない静かな廊下だった。
この声、さっきも聞いたような……でも誰もいないしな。
変なの。幻聴? それとも近所の子供が近くで遊んでいるとかかな。
首を傾げつつも私は笠置さんの後を追うと、彼は廊下の奥にある部屋に入っていった。
「失礼します」
後に続いて私も中に入るとそこは十畳ほどの部屋だった。
中央にはテーブルと黒い革張りのソファーが向い合せに置かれている。
壁には棚がびっしり並んでいて本や怪しげな見たことのないものが並んでいた。
……本もなんだか癖が強いけど……
「座って」
と言い、笠置さんは私の履歴書を持ったままソファーに腰かけた。
「は、はい」
私は戸惑いつつ鞄を下ろして彼の向かい側のソファーに腰かけた。
「失礼します」
なんだろうこの展開。
なんで私、履歴書落っことしてしかもこの人に拾われちゃったのかな?
バイトを早く決めたいけど、この展開は予想外すぎる。
「ひとりぐらし?」
「え? あ、はい、そう、ですけど……」
まっさきに聞くことかな、それ……
疑問に思っていると、彼は履歴書を折りたたみながら言った。
「明日から大丈夫?」
……なんて言った今?
笠置さんに言われた言葉を私は頭の中で繰り返す。
明日から……って言いませんでした、今?
え、明日?
「そ、それってどういう……」
「明日から来てって事。エプロンは用意しておくから、大学、何時に終わる?」
「え? あ……えーと……三時前には終わるので……半までには来られると思いますけど……」
「じゃあ明日からよろしく」
「あ、は、はい」
……面接ってこんなだっけ? いいや違うと思う。
何が何だかわからないけど、バイトが決まった。
「詳しいことは甲斐に聞いて」
そこでドアを叩く音が響いた。
笠置さんが返事をする間もなく扉が開き、入って来たのは顔がそっくりな少年ふたりだった。
長めの、明るい茶色の髪。ひとりは紅い瞳でひとりは青い瞳をしている。
……コンタクトかな。
ちょっと不思議な雰囲気のふたりは私の顔を見るなりにやにやと笑って言った。
「あれ、珍しいね、女の子をここに通すなんて。笠置さん、彼女つくるきになったの?」
「一葉、笠置さんが彼女をつくるわけないじゃないか」
「そう? 二葉。人間て言うのはわからないものだよ。女性に興味のない笠置さんでも何をきっかけに変わるかわから……」
「一葉、二葉」
腹の底から低く響く声に、私は思わず震えてしまう。
それはふたりも同じみたいで、怯えた目をして笠置さんを見つめた。
「い、嫌だなあ、笠置さん。僕たちは話をしに来たんだよ、ねえ、二葉」
「そうだよ、笠置さん。僕たちはいつものように笠置さんと話をしたくて来たんだよ。最近うちの神社の神様なんだけど……」
「杉下さん」
少年の言葉を遮り、笠置さんは真顔で私を見つめて言った。
「明日からよろしく」
こ、怖いんだけどなんか……
そう思いつつ私は頷き、そそくさとその部屋を後にした。
店舗の方に出ると、すぐに眼鏡の店員さんが近づいてくる。
「大丈夫でした? 笠置さん、なんて言っていました?」
そう言って、彼はすごく心配そうな顔をして私の顔を見つめる。
「え、えーと……明日から来てほしいと言われたんですが……」
「その様子だと特に説明、受けてないですよね」
そう言って彼は苦笑いする。
ええ、受けてないです。っていうかアレ、面接と言っていいのだろうか?
聞かれたの、ひとり暮らしかどうかだけだし。って言うかなんであんなこと聞かれたんだろ?
「透さ……笠置さんが自分から面接するの初めてだから心配だったんですけど……とりあえず決まって良かった。僕ひとりじゃさばききれないので」
ひとりじゃさばききれない……?
そういえば店長さんはレアキャラだっけ。お客さん来ていたけど普段何してるんだろ?
「そうだ、この後……閉店後になりますけど少し時間とれますか? 詳しいこと、説明するので」
説明は聞きたい、というか聞かせてほしい。
そしてどうして私が採用されたのかも知りたい。
「大丈夫です」
私が頷き答えると、店員さんはほっとしたような顔をして微笑み言った。
「僕は甲斐緋月と言います」
「杉下美羽です」
「杉下さんね。じゃあ、七時前にここにまた来てください」
営業中はたしかに話しできないだろうな。
今もまだ店には女性客がいてじっとこちらの様子をうかがっている。
……私、ここで働いて大丈夫かな。ちょっと怖いかも。
でも早くバイト決めないとだしな……
私は甲斐さんに、わかりました、伝えいったんその店を後にした。
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