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★番外編01 運命の番 side 千早
運命の番02
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宮田藍。
俺は頭の中で繰り返す。
入学式で感じたあの匂いの正体は、あいつだ。
「おい、千早、千早ってば」
名前を呼ばれ、はっとして振り返る。
琳太郎が俺の肩に手を置き、首を傾げて見つめてくる。
「どうしたんだよ、ぼんやりして」
「あぁ……何でもない」
そう答えて、俺はもう一度彼が去った方角を見る。
捕まえなければ。
そう思うのに、足が動かない。
「千早ー、せっかく会ったんだから、一緒に行こうぜ?」
「おわっ」
琳太郎が、俺の腕を掴み歩き出す。
「琳太郎」
「早く行かねえと遅刻するじゃねえか」
「お前が立ち止まって藤を見ていたからだろ」
「え? まあそうだけどさあ。お前だって俺に悪戯してきたじゃねえか」
言いながら琳太郎は俺の腕から手を離さず、そのまま通りを行く。
そんなに急がなくてもここから大学まで五分少々だから、遅刻することなどないだろうに。
「お前さあ、学校どう?」
具体性のない質問に、俺は戸惑いを覚える。
「どうって何」
「最近会ってなかったじゃん? だから気になったんだよ」
確かに琳太郎と会うのは、入学以来かもしれない。
「どうって……別に、普通だよ」
友達、と言えるような存在もとりあえずできた。
そして、さっきの宮田。
あれは俺の物だ。
捕まえなければ。
「なあ、琳太郎」
「何?」
「さっきの宮田とは、仲いいのか?」
「え? あぁ。そうだけど」
「昼は、いつもどこで過ごしてるんだ?」
「昼は、中庭行くこともあるけど、最近食堂が多いかなあ」
中庭。食堂。
俺があいつを見つけられなかったのはタイミングの問題か?
昼休みまで我慢か。
「って、なんで宮田の事聞くんだよ? 俺は?」
などと、拗ねた様子で言ってくる。
自分の事を気にされないのが嫌なのだろうか。
「お前は大丈夫だろう。俺よりも社交的だし」
「えー? 俺お前よりも社交的とかないから! お前だって、いつも人に囲まれてたじゃねえか」
それは俺がアルファで、自然と人を引き寄せてしまうからだ。
自分の意思じゃない。
けれど俺はその言葉を飲み込む。
琳太郎は知らないはずだ。
俺がアルファであることを。
クラスの、いや、学年のやつらはほぼ知っていただろう事実だが、琳太郎の耳には入っていない。
俺は常に琳太郎のそばにいて、そういう情報を操作してきたから。
こいつにはそんな情報入れる必要ないから。
今更知られたところで、こいつは態度を変えることはないだろうし、離れて行くこともないだろうが。
俺はこいつを手放したくはない。
できる限りそばに置いておきたい。
琳太郎はそう思わせるような存在だった。
それは俺にとっても不思議な感情だが、この想いをなんて呼ぶのか、俺にはわからない。
「学部違うと全然会わねえよなあ。お前、お昼どこで食ってんの?」
「カフェテリアとか。外行くこともあるし」
「じゃあ全然会わねえよなあ」
残念そうに言う様子は、友人の感覚と言うよりも遠距離恋愛の恋人の感覚に近いものじゃないだろうか?
「まあ、時間を合わせないと無理だろうな」
そもそも昼は学部の友人と過ごすし、わざわざ違う学部である琳太郎に会う理由はない。
琳太郎とは、会おうと思えばいくらでも学外でいくらでも会えるのだから。
まあ、このところ大学が始まったばかりで忙しく、こいつとは連絡をほぼ取っていなかったが。
「じゃあさ、今度時間合せてメシいかね? 夕飯! それならいいだろ」
「はいはい。わかったから、そろそろ腕離せよ」
大学の門が見え、女子学生の悲鳴がちらほら聞こえてくる。
琳太郎は立ち止まりそして、俺の顔と掴む腕を交互に見た後、ばっと手を離した。
「あ、悪い。気が付かなかった」
気が付かなかったとは。
耳元で囁かれるのを嫌がった割には、自分から腕を掴んだり張り付いて来たりするのは平気なんだからよくわからない。
「じゃあな、琳太郎。また今度」
「今度じゃなくてさあ、すぐがいい」
などと軽口を叩く琳太郎に俺は手を振り、彼と別れた。
ひとり校舎に向かいながら、俺は琳太郎に言われたことを思い出す。
宮田藍。
食堂。
今日の休憩時間に、会いに行かなければ。
俺は頭の中で繰り返す。
入学式で感じたあの匂いの正体は、あいつだ。
「おい、千早、千早ってば」
名前を呼ばれ、はっとして振り返る。
琳太郎が俺の肩に手を置き、首を傾げて見つめてくる。
「どうしたんだよ、ぼんやりして」
「あぁ……何でもない」
そう答えて、俺はもう一度彼が去った方角を見る。
捕まえなければ。
そう思うのに、足が動かない。
「千早ー、せっかく会ったんだから、一緒に行こうぜ?」
「おわっ」
琳太郎が、俺の腕を掴み歩き出す。
「琳太郎」
「早く行かねえと遅刻するじゃねえか」
「お前が立ち止まって藤を見ていたからだろ」
「え? まあそうだけどさあ。お前だって俺に悪戯してきたじゃねえか」
言いながら琳太郎は俺の腕から手を離さず、そのまま通りを行く。
そんなに急がなくてもここから大学まで五分少々だから、遅刻することなどないだろうに。
「お前さあ、学校どう?」
具体性のない質問に、俺は戸惑いを覚える。
「どうって何」
「最近会ってなかったじゃん? だから気になったんだよ」
確かに琳太郎と会うのは、入学以来かもしれない。
「どうって……別に、普通だよ」
友達、と言えるような存在もとりあえずできた。
そして、さっきの宮田。
あれは俺の物だ。
捕まえなければ。
「なあ、琳太郎」
「何?」
「さっきの宮田とは、仲いいのか?」
「え? あぁ。そうだけど」
「昼は、いつもどこで過ごしてるんだ?」
「昼は、中庭行くこともあるけど、最近食堂が多いかなあ」
中庭。食堂。
俺があいつを見つけられなかったのはタイミングの問題か?
昼休みまで我慢か。
「って、なんで宮田の事聞くんだよ? 俺は?」
などと、拗ねた様子で言ってくる。
自分の事を気にされないのが嫌なのだろうか。
「お前は大丈夫だろう。俺よりも社交的だし」
「えー? 俺お前よりも社交的とかないから! お前だって、いつも人に囲まれてたじゃねえか」
それは俺がアルファで、自然と人を引き寄せてしまうからだ。
自分の意思じゃない。
けれど俺はその言葉を飲み込む。
琳太郎は知らないはずだ。
俺がアルファであることを。
クラスの、いや、学年のやつらはほぼ知っていただろう事実だが、琳太郎の耳には入っていない。
俺は常に琳太郎のそばにいて、そういう情報を操作してきたから。
こいつにはそんな情報入れる必要ないから。
今更知られたところで、こいつは態度を変えることはないだろうし、離れて行くこともないだろうが。
俺はこいつを手放したくはない。
できる限りそばに置いておきたい。
琳太郎はそう思わせるような存在だった。
それは俺にとっても不思議な感情だが、この想いをなんて呼ぶのか、俺にはわからない。
「学部違うと全然会わねえよなあ。お前、お昼どこで食ってんの?」
「カフェテリアとか。外行くこともあるし」
「じゃあ全然会わねえよなあ」
残念そうに言う様子は、友人の感覚と言うよりも遠距離恋愛の恋人の感覚に近いものじゃないだろうか?
「まあ、時間を合わせないと無理だろうな」
そもそも昼は学部の友人と過ごすし、わざわざ違う学部である琳太郎に会う理由はない。
琳太郎とは、会おうと思えばいくらでも学外でいくらでも会えるのだから。
まあ、このところ大学が始まったばかりで忙しく、こいつとは連絡をほぼ取っていなかったが。
「じゃあさ、今度時間合せてメシいかね? 夕飯! それならいいだろ」
「はいはい。わかったから、そろそろ腕離せよ」
大学の門が見え、女子学生の悲鳴がちらほら聞こえてくる。
琳太郎は立ち止まりそして、俺の顔と掴む腕を交互に見た後、ばっと手を離した。
「あ、悪い。気が付かなかった」
気が付かなかったとは。
耳元で囁かれるのを嫌がった割には、自分から腕を掴んだり張り付いて来たりするのは平気なんだからよくわからない。
「じゃあな、琳太郎。また今度」
「今度じゃなくてさあ、すぐがいい」
などと軽口を叩く琳太郎に俺は手を振り、彼と別れた。
ひとり校舎に向かいながら、俺は琳太郎に言われたことを思い出す。
宮田藍。
食堂。
今日の休憩時間に、会いに行かなければ。
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