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後日譚③ 甘い日常?(メルド視点)
(メルドside)
今日はいつもより処理する書類が多かった。
半分ほど書類を処理した後、ケイが「休憩しましょう」とお茶を入れてくれたので、二人でソファーに腰をかけていた。
いつもなら向かい合って座るのだが、今日はなぜか隣に腰をかけてくる。
「メルド殿下、少し失礼いたします」
「……ん、どうし……」
俺が言葉を言い切る前に、ケイはそっと俺の頬に触れた。
指先で輪郭をなぞるようにゆっくりと撫でる。
「っ……! おい、くすぐったいって……」
「殿下の頬は、触れると想像以上に柔らかくて……病みつきになりますね」
柔らかく微笑みながら、ツンツンと頬をつつかれる。
(これって完全に動物との戯れ方じゃないか!?)
「俺はお前のペットじゃないんだが?」
「ペットにこんなことしませんよ?」
そう言うとケイは俺の手からカップをそっと取り上げ、テーブルに置くと、背へ手を回して引き寄せた。
「ちょっ……」
「今日は、いつもより鼓動が速いように感じますね」
「それは……お前が急に抱きつくから……!」
「殿下……可愛い」
「っ……! ケイ、そういうの……ほんと……恥ずかしい……!」
「いいじゃないですか。俺たちは“本当の”恋人同士になったのでしょう?」
耳元に落ちる声は、少し低く、柔らかい。
それだけで胸が一気に熱くなり、鼓動が落ち着かなくなる。
「ちょっと、ケイ……ま、待て……!」
声が上ずる俺を見て、ケイはゆっくりと俺の手を取った。
指を絡め、そっと包み込むように。
「殿下の手……温かいですね」
「は、離せって……」
「そう言う割に、殿下の手は逃げませんが?」
「そ……それは」
ケイに握られた手は、簡単に振りほどけそうなほどの力しか込められていない。
それでも俺はその手を離すことが出来ないでいる。
ケイはそっと耳元へ唇を寄せる。
触れるか触れないかの曖昧な距離が、更に俺の呼吸を乱す。
「ケ、ケイ……」
「殿下……俺は、殿下が思う以上に……面倒な男なんですよ」
「……?」
「殿下のこの頬も、耳も、その呼吸も、全部……俺だけのものにしたい……」
ケイは囁きながら、俺の耳の縁に指先をゆっくり沿わせた。
俺の反応を楽しむように、指をすべらせていく。
「んっ……」
びくりと震え、背が無意識に反ってしまう。
ケイはその様子に、満足げに目を細めた。
「声が漏れていますよ、殿下」
「だ、だまれっ……!」
触れられた耳が熱い。
呼吸は浅く、早くなる。
ケイの瞳は唯々甘く、俺をとろけるように見つめている。
「なぁケイ、お前今日ちょっと……おかしい……」
「おかしいわけじゃないですよ。ただ……殿下があまりにも可愛らしすぎて、我慢が……」
言葉の続きを誤魔化すように飲み込み、ケイは曖昧に微笑んだ。
「殿下……こういうことは、嫌ですか?」
「……お前にされることなら……全部、嫌じゃない……」
俺の一言に、ケイの目がかすかに揺れた。
「殿下……」
ケイは俺の額にコツンと額を合わせ、甘くかすれる声で続けた。
「……そんな風に言われたら……もう、殿下を手放せなくなってしまいますよ」
「……もともと、離す気ないだろ?」
ケイは俺の言葉に笑みをこぼし、抱き寄せた。
「ええ。……一生、離しません。離れませんよ絶対に……」
ケイの深く吸い込まれそうな青い瞳が俺をとらえ、離さない。
視線に引き寄せられるように、どちらともなく顔が近づく。
重なる呼吸。触れそうで触れない距離。
そのまま、唇がそっと重なりかけた——その時。
——ドンドン!
「メルド様ぁ! ご無事ですか!? 追加の資料をお持ちしました」
ドアの外から聞こえた、父の執事であるセバスの声に現実に戻される。
「——セバスめ、また邪魔しやがって……」
「ん? ケイ、いま何か言ったか?」
「いえ、資料を受け取ってきますね」
「お、おう」
(……なんかケイ、目が笑ってないんだけど)
ケイの背にほんのり漂う不穏な空気に首をかしげつつ、俺はすっかり冷めてしまった紅茶を口に運んだのだった。
今日はいつもより処理する書類が多かった。
半分ほど書類を処理した後、ケイが「休憩しましょう」とお茶を入れてくれたので、二人でソファーに腰をかけていた。
いつもなら向かい合って座るのだが、今日はなぜか隣に腰をかけてくる。
「メルド殿下、少し失礼いたします」
「……ん、どうし……」
俺が言葉を言い切る前に、ケイはそっと俺の頬に触れた。
指先で輪郭をなぞるようにゆっくりと撫でる。
「っ……! おい、くすぐったいって……」
「殿下の頬は、触れると想像以上に柔らかくて……病みつきになりますね」
柔らかく微笑みながら、ツンツンと頬をつつかれる。
(これって完全に動物との戯れ方じゃないか!?)
「俺はお前のペットじゃないんだが?」
「ペットにこんなことしませんよ?」
そう言うとケイは俺の手からカップをそっと取り上げ、テーブルに置くと、背へ手を回して引き寄せた。
「ちょっ……」
「今日は、いつもより鼓動が速いように感じますね」
「それは……お前が急に抱きつくから……!」
「殿下……可愛い」
「っ……! ケイ、そういうの……ほんと……恥ずかしい……!」
「いいじゃないですか。俺たちは“本当の”恋人同士になったのでしょう?」
耳元に落ちる声は、少し低く、柔らかい。
それだけで胸が一気に熱くなり、鼓動が落ち着かなくなる。
「ちょっと、ケイ……ま、待て……!」
声が上ずる俺を見て、ケイはゆっくりと俺の手を取った。
指を絡め、そっと包み込むように。
「殿下の手……温かいですね」
「は、離せって……」
「そう言う割に、殿下の手は逃げませんが?」
「そ……それは」
ケイに握られた手は、簡単に振りほどけそうなほどの力しか込められていない。
それでも俺はその手を離すことが出来ないでいる。
ケイはそっと耳元へ唇を寄せる。
触れるか触れないかの曖昧な距離が、更に俺の呼吸を乱す。
「ケ、ケイ……」
「殿下……俺は、殿下が思う以上に……面倒な男なんですよ」
「……?」
「殿下のこの頬も、耳も、その呼吸も、全部……俺だけのものにしたい……」
ケイは囁きながら、俺の耳の縁に指先をゆっくり沿わせた。
俺の反応を楽しむように、指をすべらせていく。
「んっ……」
びくりと震え、背が無意識に反ってしまう。
ケイはその様子に、満足げに目を細めた。
「声が漏れていますよ、殿下」
「だ、だまれっ……!」
触れられた耳が熱い。
呼吸は浅く、早くなる。
ケイの瞳は唯々甘く、俺をとろけるように見つめている。
「なぁケイ、お前今日ちょっと……おかしい……」
「おかしいわけじゃないですよ。ただ……殿下があまりにも可愛らしすぎて、我慢が……」
言葉の続きを誤魔化すように飲み込み、ケイは曖昧に微笑んだ。
「殿下……こういうことは、嫌ですか?」
「……お前にされることなら……全部、嫌じゃない……」
俺の一言に、ケイの目がかすかに揺れた。
「殿下……」
ケイは俺の額にコツンと額を合わせ、甘くかすれる声で続けた。
「……そんな風に言われたら……もう、殿下を手放せなくなってしまいますよ」
「……もともと、離す気ないだろ?」
ケイは俺の言葉に笑みをこぼし、抱き寄せた。
「ええ。……一生、離しません。離れませんよ絶対に……」
ケイの深く吸い込まれそうな青い瞳が俺をとらえ、離さない。
視線に引き寄せられるように、どちらともなく顔が近づく。
重なる呼吸。触れそうで触れない距離。
そのまま、唇がそっと重なりかけた——その時。
——ドンドン!
「メルド様ぁ! ご無事ですか!? 追加の資料をお持ちしました」
ドアの外から聞こえた、父の執事であるセバスの声に現実に戻される。
「——セバスめ、また邪魔しやがって……」
「ん? ケイ、いま何か言ったか?」
「いえ、資料を受け取ってきますね」
「お、おう」
(……なんかケイ、目が笑ってないんだけど)
ケイの背にほんのり漂う不穏な空気に首をかしげつつ、俺はすっかり冷めてしまった紅茶を口に運んだのだった。
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