隅のソファー

アール

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前編

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 とある王国の、中央公園と呼ばれるところに限られた貴族しか入れない宮殿がありました。

そこに清楚な庶民の格好をした年老いた男がやってきました。

年老いた男はその宮殿の門の前で兵士に尋ねました。
 
『入口はここかね。』

兵士は呆れた様子で、
 
『はい。そうですが、ここはレベル8以上の所得証明書、あるいは上級貴族証明書をご提示頂かなければ入場を許可することはできません。申し訳ないのですが・・・』

と兵士が続けようとした時に年老いた男はポケットから所得証明書を取り出し、
 
『これじゃろ。』

と兵士に見せました。兵士は眉毛をひそめ、

 『はい。えーと。そうです。これです。誠に失礼いたしました。ではスキャンをお願いします。』と言いました。

男は慣れた手つきでスキャンし、入場ゲートを通りました。

数時間後、先程の兵士が宮殿内の見回りをしていると、3階の隅のソファーに座りながら年老いた男が窓の外を眺めていました。

兵士は真っ先に男の元へ駆け寄り、左側から顔をのぞかせ話しかけました。
 
『おじいさん。ご気分はいかがですか?』男はゆっくりと左側を向き、少し眉をひそめた様子で答えました。
 
『悪くないな。ただ、このソファーは少し手入れが足りないんじゃないか。』兵士は焦った様子で
 
『申し訳ありません。清掃部にきちんと申し上げておきます。代わりと言ってはなんですが、1階の大広間には国内でも最高級の品質のソファーと手入れされた品々があります。ご案内いたしましょうか?』

と告げました。(後編へ続く)
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