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四章.転生聖女と冒険者ミハイル
魔王の本質?
しおりを挟むギルドからの返事を待つ間何とかワイバーンの雛を親元に返す手立てをと、相談する冒険者達。
彼らとしては、巣の近くまで雛を戻せば良いのではないかと言う事になったのだが・・・
「追尾できる個体がコイツの親とは限らねえ」
うう~んと考えるジルから出た言葉はそれだった。
「マリンが印を付けた個体は三羽だ。全部で六羽位いた筈なんだが・・・」
「追跡魔法をと思ったんだけどさ、どうもツガイじゃなかったのよ。違う巣にそれぞれ行っちゃってさ~・・・ 」
テーブルの上にある地図の上に丸い半円ドームのような透明な膜が張られ、その上を赤い点が動いている。
珍しい索敵の高等魔術である。
『ふおおぉ~ まるで宇●戦艦●マトのレーダーの様です! 』
キラッキラッの目でマリンを見つめるミリアンヌ。そしてなぜか膝の上にはワイバーンの雛が乗り更にミリア本人はミゲルの膝の上・・・
彼女の椅子には優秀な警備主任がちゃっかり座り、毛づくろい中である。
流石、主人に忠実な部下である。
「マリンのコレはそうそう出来る奴は居ないからなあ~、嬢ちゃんもビックリだろう? 」
サムがマリンの肩を抱いたまま自慢気に声をかけるとそのままキラキラした目で見上げ、何処かの赤牛の張子の人形くらいブンブンと頭を縦に振るミリアンヌ。
「凄いです流石Sクラス冒険者さんです! 尊敬します! 」
顔を赤らめ、うるうるの目で訴える美少女に周りは、ウッと鼻を抑える。
「コラ、興奮するな」
「だって、マリンさん凄いです! 素晴らしいです! こんなの初めてみました」
鼻息を荒らげて振り返るが、あまりにもミゲルの顔が近すぎて『ボンッ』と音がしそうなくらい一瞬で、耳まで赤くなる。
「お前な、何回繰り返したら慣れるんだよ? 俺はかなり平気になってきたぞ」
ニンマリ笑う黒髪の美丈夫を、ふと見上げる。
その瞳は残念ながら満天の星を湛えたラピスラズリの蒼ではなく、暗い茶色に偽装されている。それでも目を瞑るとほのかなラベンダーのサシェの残り香が優しく漂ってくるのは、殿下が近くにいる証拠だ。
彼を失ったと思った時はどうして良いのか分からなくなり、信じたくないという焦りで畑と一緒に大地を毟り取ってしまった。結局そのお陰で一緒に閉じ込められていた他の冒険者も穴から出られたのだけど、一歩間違えば生き埋めだったらしい。
ミゲルの防御魔法で、上の土が無くなり空が見えるまで三人を囲んでいてくれて良かったとミリアは本気で感謝した。
突然ポーっとミゲルの顔を見上げたまま止まったかと思うと、急にニコニコ笑顔になるミリア。
「良かったちゃんといる・・・」
「またどっか行ってたなお前」
眉を下げてやれやれという顔になるミゲル。
「はい。おかえりなさい」
「はいはい、ただいま」
「もう、どっかに一人で行かないでくださいねその間に死なれたらたまりません」
「ソレはお前に俺が言うセリフだ莫迦。前科者はお前の方だろう」
「あ、そうですね。あの時はすみませんでした」
「分かれば宜しい。ソレと、俺はお前を置いて死なない。守りきると決めたからな・・・ 何があっても生きて帰る。覚えとけよ」
額をコツンと合わせ目をじっと見つめ合う・・・
「うおっほん!・・・ お前ら後にしろせめて二階でやれ! 目に毒だ! 」
ハッ! ジルの声で我に返るミリアンヌ。
周りを慌てて見回すと砂糖をゲーゲー吐きまわる冒険者達がのたうち回っていた・・・
「王都にお戻りの際に存分にお二人きりでどうぞ」
メルがしれっと毛づくろいをしながら進言する。
「おう、そうするわ」
平気な顔でミゲルがニンマリ笑う。
ミリアは、小さくなってミゲルの膝上で
「申し訳ありません・・・」
と、ひたすら赤くなって恐縮していたのであった・・・
××××××××××
「ギィ~ ギィ~ 」
膝の上でワイバーンの雛がパタパタパタしながら鳴きはじめた。
「メルちゃん? この子どうしたのかな?」
首を傾げていたメルだったが
「どうやら親が近くに来ているようですね」
「こっちのマークしてる奴らは動いてないよ? 」
マリンが地図上の半円ドームを覗き込む。
「分からんが、外に連れて行ってみるか? 」
ジルの指示で雛を連れて外に出て上空を見上げる。
マリンが入口付近に待機し、地図をチラチラ確認している。
「今んとこ見当たらないわね~ 」
ジェーンは一応用心してクロスボウを射る構えをしている。
「御主人様、雛が親を呼んでいますが用心して随分上空で待機しておりますがどういたしましょう? 」
「どうって、どーすんだよ。向こうは怖いんだろ人が? 」
「ええ。まぁ。普通は・・・」
ちらりとミリアとミゲルを交互に見つめてピコピコ髭を動かすメル。
「ちょっと待て、メル。何か言いたそうだな」
「僭越ながら宜しいでしょうか」
ミゲルが、メルに近寄ってしゃがみ込む。
「おう、どうした? 」
「魔獣は、人を魔力の有る無しで判別します」
「へえ」
「桁違いの魔力を保有する者を同類と見なします」
「は? 」
「彼等の基本は魔力の無いモノは餌、有るモノは敵か同族、圧倒的なモノは支配者層であり、人かどうかは問題では無いのです。強大な魔力の持ち主であるミリア殿や御主人様は彼等にとってはもはや支配者なのです」
「・・・は? 」
「抵抗すら無駄という理解になります。彼らは強者から逃れられない事を知っています。こちらから近寄れるのなら、彼らは逃げることすらできないという事になります・・・」
「ちょ、待て、てことは意思疎通出来ればこっちの言うことも聞くってことか? 」
「はい。そういう事になります」
今更ながら魔王の仕組みがわかってきたミゲル。
「意思疎通ができさえすれば、聖王も聖女も魔王並って事か・・・」
ゲームの中では魔物や魔獣を操っていた魔王。まあ、今は目の前の猫になってしまったが・・・
「じゃあ、ミリーがお前と一緒に上空にあの雛を連れて行ったら受け取るかもしれんてことか? 」
「まあ、多分そうなります」
真面目くさって返事をするメルに額を押さえるミゲルだった・・・
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お読み頂きありがとうございます。
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