【完結】転生した元社畜男子は聖女になって人生逃げ切る事を諦めません!

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四章.転生聖女と冒険者ミハイル

アレク王子とエリー嬢

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 私のお父様はこのハイドランジア王国のニ大公爵の一人であり、現国王の従兄弟いとこに当たる、シモン・グラントだ。

 そして、現国王のお妃様であるオフィーリア様は、私の父の曾々祖父の姪に当たる人である。

 つまるところ、私とは遠い親戚でもあるのだけれど何故かオフィーリア様と父は血縁としてはとても遠いはずなのに、兎に角顔が似ている。

 目の色が父は王家のラピスブルーを受け継いでいるが、オフィーリア様はリンデンの王家に多い金色の瞳。

 それ以外はよく似ていてまるで姉弟のように見える。

 だから、アレクシスに初めて会った時にすごく驚いたけど納得もした。父が子供だったら、こんな子供だったんだろうなと思ったから。


 まるで天使みたいなきれいな男の子のくせに、やんちゃで王宮の庭園を犬みたいに泥んこになって走り回ってた。

 私より二つ上になるミゲル叔父様にくっついていつも困らせていたのを覚えている。


 可愛くて可愛くて凄く懐いてくれたから仲良くして一緒に泥んこになって遊ぶようになったんだけど、ある日私の父によく似てるねって誰かが言ったんだよね。

 大きくなったら父にソックリになるかもって言われてハッとした。


 父はめちゃくちゃにモテるらしくて、母が側にいても平気でラブレターやプレゼントを送ってくる貴族女性が沢山いて、パーティー等に出席しても母をエスコートしているのに女性達が大勢突撃して来ると侍女たちが教えてくれた。

 父は母にべた惚れなのに、それでも女性が押し寄せるらしくてパーティーの後などに会うと母はいつもウンザリしていた。


 そういう時は父が母をベッタリ甘やかしていたけど・・・


 じゃあ、アレクも大きくなったら父みたいに女性からモテる男の子になるのかな?

 そう思ったら胸がチクンと痛くなった・・・

 だから、アレクが


「シモン叔父さんに似てるから僕の事好きなの? 」


 って聞いてきた時に


「別に好きじゃないもん。私の好きなのはミゲル叔父様みたいな年上の男の人だもん! 」


 て答えたら


「僕だってエリーみたいな年上の女の子じゃなくて、年下の女の子が好きだもん! 」


 て言い合いになって大喧嘩になった。

 ハリーとクロードに止められてその時は収まったけど、そのまま何だか意地になってお互いに喧嘩ばっかりし始めた。

 何度も父や母に仲直りする様に言われたけど、何だかできなかった。

 叔父様には


「お前らもそういうお年頃になったんだな~ すごいなあ」


 って笑われたけど、何だか恥ずかしくなって


「そんなんじゃないんだから! 私の好きなのは、叔父様だもの! 」


 って言い張って呆れられた。

 でもどうしても素直になれなかった。
 素直になるのは怖かった。

 アレクは父と違って皆にいい顔をする子だ。

 しかも皆にチヤホヤされていつも嬉しそうにしてる。

 だから父みたいに一人の女性を大事にする男の子じゃ無いのかもしれないって思った。

 そんなの嫌だった。

 私は私だけを見てくれる人じゃないと好きになりたくないし、好きになるのも無理だと思う。

 今でもそう思ってる。

 だけど・・・


××××××××××


「お嬢様、アレクシス第一王子殿下よりお届けものです」


 部屋をノックする音でエリーナはふと物思いに耽っていた事に気がついた。


「ああ、いいわどうぞお入りなさいな」


 そう答えると、ドアがそっと開き真っ赤な薔薇とマーガレットの大きな花束を捧げ持った侍女が入ってき
た。


「うわ、大きいわね、あら? 」


 白いマーガレットと赤い大輪の薔薇に隠れるように赤い苺が一緒に花束として混ざっている・・・?


「何で苺? 食べろって事かしらね? 」

「僭越ながらお嬢様、全部の花の意味をお調べになると宜しいかと」


 一緒についてきていた執事が一礼をして去っていった。


「意味って、苺にも花言葉があるのかしら? 」



××××××××××


「バラとマーガレットはわかりますけど、何で苺を指定するんですか花束が重いし大きいしで大変でしょうに」

「いいんだよあれで」

 
 執務机の書類をペラリとめくるとサインをするアレクシス。


 そこへ


「ちょっとアレク! 」


 ばあん!と勢いよくドアが開いて飛び込んでくるエリーナ嬢。


「何よアレ」


 顔を真っ赤にしてプルプルと震えるエリーナ嬢。


「バラは百八本だし! 」

「うん」

「マーガレットとしかも苺って! 」

「う~んと、クロードお茶」


 静かに一礼して去っていくクロード。


「意味って知ってる? 」

「調べたわよっ!何であんな・・・」

「だって、口で言っても信じてくれないでしょ? 俺、年下だしさ。ねえ、嫌だった? 」


 執務机から立ち上り、エリーナの元に歩み寄るアレクシス。

 耳まで赤いエリーナの前に跪くと


「エリーナ・グラント嬢。ずっと昔からあなたの賢さが好きでした」


 そう言うと、キレイなピンク色の爪の先に口付けを落とす。


「そしてあなたの勇敢さを尊敬していました」


 手の甲に口付けを落とす。


「どうか私の妻として、貴方を私に与えてください」


 最後に手をくるりと裏向け両手で支えて掌にキスを落とす。

 下から見上げるトロリとしたラピスラズリの瞳に当てられるように、エリーナの顔があり得ないくらい熱くなり始め心臓が早鐘を打つ。


「あ、あ、あの その えと」

「うん。ゆっくりでいいからね」

「えと、わ、私も あの えと」


 立ち上がるアレクシス王子。

 昔と違って背が高くて、肩幅も広くて、声だって女の子みたいじゃなくて低くなって・・・


「好きって言ってくれないの? 昔の事怒ってる? ゴメンね」

「あ。思い出したの? 」

「うん。意地張っちゃって馬鹿みたいな俺を許して? エリー? 」


 小首を傾げながらアレクシスの顔が後悔で歪み、綺麗な髪の毛がサラリと頬に落ちる。


「うん。私も、馬鹿みたいに意地になって、ゴメンね。ホントは大好きだよアレク」


 エリーナの頬を涙が伝う。



 そして二人の影が一つになった。



ーーーーーーーーーーーーーーーー




マーガレット『真実の愛』

苺『幸福な家庭』『尊重と愛情』
『あなたは私を喜ばせる』『先見の明』

108本のバラ『結婚して下さい』



お読み頂きありがとうございます。
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