【完結】転生した元社畜男子は聖女になって人生逃げ切る事を諦めません！

オマケ閑話♡ ある日王子様が

１−５

「ご不快になられませんよう、伏してお願いいたします」


　そう言いながら、彼は上品な仕草で、騎士のように胸に手を当て軽くお辞儀をして、目の前にやってきた馬車に気が付いて振り向きざまに


「それではお先に失礼しますね」


　御者台から飛び降りてきたフットマンが開けた扉をくぐって、馬車に乗り込んで行く。


「貴族だね～。馬車の紋章が変わってるね」


　去っていく馬車のドアの上部に飾ってある紋章を素早く確認するアデリア。

　羽根の付いた馬、ペガサスと麦の穂のような意匠。


　ハイドランジアの貴族は植物の家紋が多いのだが、動物や架空の生き物の家紋を持つ家は少ない。アデリアが護衛騎士を振り返ると、


「あの家紋はティーダー侯爵家の家紋に似ていますが、麦の穂が一本ですので恐らくご嫡男のゼノア伯爵様でしょう」

「ふうん。伯爵様なんだ。王家の方かと思って焦っちゃった。顔が王子様みたいだったもん」


　それを聞いて、苦笑いをするメイドと護衛騎士。


　ぺろりと舌を出すアデリア。対して無言のジゼル。


「ジゼルどうしたの・・・あ・・・」


　姉の顔が真っ赤なのに気が付いてあちゃ～　という表情をするアデリア。


「アディ。あの人カッコいい、ゼノア様素敵・・・」


　目がハートマークになり動かないジゼルを自家用馬車まで引っ張っていくのに、その後非常に苦労したアデリアである。