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13 公爵令嬢と専属侍女
王子ルートが確定したら、私も悪役令嬢に確定する。
まぁ、要はプレイヤー側から他のキャラに注目しなくなるから見えなくなるってだけであって、他の人達も普通に生活してる世界だからその辺りの絡みなんかはどうなるのかは未知数ななんだけど。
――でもまあ、せっかくのレイモンド様の美形が台無しだわ。
「? ねぇ、レイったら何だってそんな顔してるのよ? ヒロインちゃんと王子がくっつくのがそんなに嫌なの?」
「え? 俺? 俺は王子もヒロインもどうでもいいけど?」
途端にキョトーンとするレイモンドは、王宮図書館で出会って仲良くなったけれど、ゲーム上の彼とは随分性格が違うのはやっぱり転生者だからだと思う。
自分自身も、どちらかというと前世の性格寄りだ。
――ヒロインには興味がなさそう? 良かったわ・・・
んっ? 今誰か何か言った? 気のせいかな・・・?
「じゃあ、何かマズイことでもあるの? 困った顔してるじゃないの」
「困った顔? してたか? 俺?」
コクコクと頷くリアーヌ。
「こーんな顔してたわ」
両手の人差し指で自分の眉を下げて変な顔をして見せる彼女は、この国では屈指の淑女と言われているご令嬢のはずである。
「・・・あー。そりゃあね、王子とかヒロインの事じゃないよ。リアの事で変な顔になったんだよ」
「私?」
「帝国に行ったら、俺と会えなくなる。リアはそれでいいの?」
あ。眉がまた下がった・・・
×××
「お嬢様~? どうされましたか? 大好きなケーキですよ~?」
専属侍女であるマーサが、午後の紅茶と小さなカットケーキの乗ったワゴンをついてリアーヌの部屋にやって来たのだが、どうやらお仕えするお嬢様は上の空である。
――さっき着替える時もおかしかったけど・・・?
登城用のドレスから楽なデイドレスに着替える間もボーッと上の空だったような・・・
「お嬢様?」
「あ? ごめんマーサ。考え事してたのよ」
「体調が良くないとかじゃあなさそうですね」
「あ。うん。まぁそうね。突然不意打ちを喰らった感じよね」
「え。王宮で殿下に言われた例のアレが?」
「え。あ~、うん、いえ。違うわ。アレはご褒美よね。考え事は別の事よ」
ふーんという顔を一瞬で隠したマーサは、
『何かあったな』
と思ったが、その事を一切口には出さず紅茶のカップとケーキ皿をティーテーブルに並べ終えた。
「今日の出来事はどうなさいます? ご自分で旦那様に報告なさいますか? 一応私からも報告の書類は提出しておきますが」
「殿下の2年間距離を置きたい、の報告?」
「ですね。今日に限らず毎回お茶会の後は報告書を提出してますけど。今日はまだなんですよね。
旦那様と奥様が激怒するのが目に見えてますので・・・ まぁ私が怒られる訳じゃないのでそれは良いんですけど。
今日のは提出タイミング間違えたら旦那様達が王城に騎士達を連れてすっ飛んでいって、王宮に攻め込む気がするんですよねえ~・・・」
「・・・マーサが気が利く侍女で良かったわ。そうね、ちょっと遅め、晩餐の後に話すからその時に一緒に提出してくれる?」
小首を傾げるリアーヌを目に映しながら
「そうですね。王城の門が閉まってからの方が良いでしょうね。最低でも怒鳴り込めなくなりますから」
マーサはこっそり溜息をついた。
×××
公爵ご夫妻はお嬢様を王家に嫁がすのは元々嫌だったようで、出来れば今でも婚約は白紙に戻したいと常々思っているらしい。
お嬢様自身も殿下の事は弟、しかも仲のよくないアレ、みたいに思っているように見受けられる。
学園に入学後、登城の機会がぐっと減ったお陰で毎日楽しそうだったお嬢様が、殿下の入学後は溜息を吐く回数が増えた気がする・・・糞ガキ・・・ゲフンゲフン・・・
ただ、王子殿下の周りに公爵家の間諜が密かに配置されたみたいで、何かを探っているように感じていたが、今日の定例のお茶会でお嬢様に向かい『距離を置きたい』などという厚顔不遜な言い分から察するに殿下に想いを寄せるお相手ができたのではないだろうか。
何様のつもりだあの糞おu・・・コホン・・・再度失礼。
今日の報告書とお嬢様の報告で旦那様達が絶対に荒れるだろう。
尤もこの邸の者は止めるような者は皆無なのだけれど。
それでも此方が揚げ足を取られるような真似は出来る限りしない方が事が穏便に進むはず。
提出するのを遅らせたのは我ながら名案だった。
私はお嬢様の部屋から退室し、報告書の見直しをする為に私室に足を向けた。
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