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43 公爵令嬢とハーブティー
しおりを挟む一方此方は王子達。
「えらい目にあった・・・」
「助かった・・・」
「うええぇええ・・・ 目が回った」
キャビンがグリンと回転し、馬車が若干後方に進んだおかげでめでたく合体(?)は解かれて王子とヨハンと呼ばれた令息は床に力なく座り込み、三半規管が若干弱かったらしいフロイラインが馬車酔い(?)を起こしていた。
「どうですか? 腰離れましたか?」
ドアを開けて顔を出したのは魔法に見識があるらしい伯爵子息。
「「腰っていうな!」」
「うえぇえッ・・・」
そこにやって来たのは、背中に真っ赤な鱗と真っ赤でモッフリとした立派な翼を持つ鳥竜を引き連れたロイド閣下である。
「おい、お前達もうそろそろ諦めて帰ったらどうだ? どうせリアーヌの元にはたどり着けんぞ」
『クエェッ!』
「「「「「ひぃッッッ!」」」」」
偉丈夫な元将軍も十分怖いが、彼等にとっては真っ赤な鳥竜はもっと恐ろしかった。
×××
「ねえ、レイ。お父様達が王宮から帰ってこないのだけど。どうなってるのか知ってる?」
「え、いつから? まさか昨日の面会から? 王宮に泊まったってことかい?」
「うん、そうなの」
ガラス製のティーカップに入った青いマロウの入ったハーブティーに、丁寧な手つきで蜂蜜を掬い入れレモンを絞りながら首を傾げるレイモンド。
「公爵夫妻の面会要請は14時からになってたんだけど。それ以降は国王陛下の執務室には近寄れない様になってるからね・・・ 宰相閣下に聞いてみようか?」
「ウ~ン、いつ頃こっちに二人が帰れるのかを知りたいのよね。それ次第で領都に行って来ようかなって思ってて・・・」
「へぇ。何しに行くの?」
「羽根伸ばしに・・・」
答えながらちょっとだけ戸惑うような素振りをするリアーヌに首を傾げるレイモンド。
「どうかした? 顔がちょっと赤いけど?」
「・・・何でも無いの。気にしないで」
今頃になって何で領地に行こうかと急に思い立ったのかを思い出し、段々と恥ずかしくなってきたらしく顔の赤味が徐々に増していく・・・
前世は親の言う通りエスカレーター式の女子小、中、高校と通い、更に女子大に入学。
卒業後は親の喜ぶような上場企業に就職し、真面目に働きほぼ直帰という良い子のお手本のような生き方だったリアーヌ。
親には可愛がられて大切にされた覚えがあるし、羽目を外すことなくひたすら真面目に過ごしたからこそ30歳手前になっても誕生日プレゼント――しかもboxティッシュと手ぬぐいだ――をくれる男性が銀行員くらいしかいなかった訳で・・・
『今更ながら、ゲームのプレイ以外で恋愛らしい事ってした事が無いのよね・・・』
ある意味生まれて初めて目の前の異性をキチンと恋愛対象として意識した訳で・・・
『・・・恥ずかし過ぎる!!!』
気がついたら恥ずかしくてどんどん顔に熱が集まって来た。
どうしよう・・・
「微熱かな? コレ飲むといいよ風邪の症状に効くから」
リアーヌの額に手を置き、さっき作ったばかりのブレンドハーブティーを彼女の前に反対の手で押しやるレイモンド。
「寝たほうが良くない? やっぱり熱っぽい気がする」
眉を下げて顔を覗き込んで来る彼の顔の周りに
「・・・なんか。花が咲いてるわ・・・」
「!! 大丈夫じゃないよ! 早く寝室に・・・」
慌てたレイモンドが『ガタンッ』と椅子から立ってリアーヌを子供のように縦に抱きあげると一目散に彼女の部屋に駆け出した。
「やだ、ちょっとレイったら、」
「熱があるって! マーサ早く医者ッ!」
「ええぇえ、お嬢様? レイモンド様?!」
一部始終を側で見ていたキャサリン夫人が
「若いわねえ」
と1人、ロビーのセティに腰掛けて硝子製の洒落たティーテーブルの上に残されたハーブティーを口に運ぶ。
「セバス、お代わりをお願いね。コレ美味しいわ」
執事が恭しくお辞儀した。
どうでもいいが祖父の事も王子一行の事もほったらかしなのを皆忘れっぱなしである。
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