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44 お祖父ちゃん上機嫌
しおりを挟む「え? リアーヌに30メートル以上は近付けない?!」
王子達3人が馬車からやっと降りられるような状態になるまで約30分かかった。
フロイラインは純粋に馬車酔いが主な理由だが、ハロルド王子と伯爵子息ヨハンは精神がゴリゴリ削られた事から来た疲れだろう・・・
そして目の前に仁王立ちになる元将軍に告げられた言葉に全員驚愕。
現在何故か地面に正座しているのだが、身分制度云々は関係なく睨みを利かせてくる真っ赤なプロクスバードが怖過ぎて全員自然と土下座状態になってしまった――これぞ畏怖の念から来る自然の法則である。怖いもんは怖い。
鳥竜の方は今も彼らの手首に輝く宝石と金で出来たカフスや首元でキラリと光るブローチを実に物欲しげにまじまじと確認中である・・・
「そうですな。王族たる者自らの発言に責任を持たねばならないでしょうなあ」
顔面蒼白になるハロルド王子を眺めつつ、いい気味だとニヤニヤ笑う前侯爵閣下である。
×××
先王陛下が退位した時、ビルエナ前侯爵が将軍職を自ら辞したのは決して戦士として衰えたからではなく、寧ろ自分の守りたい王族が出来たからに他ならなかっただけだ―― リアーヌは生まれながらに王族の血筋。
つまり初孫可愛さに
『仕事なんかやってられっか!』
というヤツで辞職したのある。
要は我儘――
現在年齢は50代と初老の域ではあるが、体力、気力、魔力、戦闘力全てにおいて未だに現役時代と変わらない。
むしろ現役時代より自由があって元気が有り余っているため周りが迷惑なくらいだ。
産まれたばかりのリアーヌこそ至高の天使であり護るべき王族である! と(勝手に)確信した彼はその日のうちに辞職するべく実力行使に及ぼうと画策したが、軍部からの妨害に遭い前国王の退位まで待たされたという経歴の持ち主。
因みに娘であるマチルダの時も似たようなことが起こったらしいので、軍部もそれなりに警戒して予防戦線を念入りに構えていたらしい。
そんなわけで。
彼からリアーヌを奪う男など、敵そのものなのである。
マチルダの婚約の時も一悶着あったのだが、それでも孫は別格。
しかし相手は王家、しかも王子殿下。
一応王家を守る為の国家機関に席を置いていた自分がその王家を潰す訳にもいくまいと自粛して、リアーヌをハロルドの婚約者にと説得に遥々やって来た現国王を土竜の蔓延る渓谷に連れて行き、木に吊し上げるという嫌がらせで赦してやったにも関わらず、8年間王都から聞こえてくる噂は自分の可愛い孫を蔑ろにする王子の噂ばかり。
何度本気で王宮に飛竜の大群をけしかけてやろうかと思ったことか・・・。
その度にもちろん妻の鉄扇が唸りを上げたが。
「一昨日の茶会の席で殿下がリアーヌにそう仰った筈ですが?『距離を置きたい』と」
「そ、それは。そういう意味ではなくて」
「そうそう、我が孫は王子妃教育は12歳の年に全て修了しておりますでなぁ」
ふっふーん♪と顎髭を右手で擦りながらニンマリ笑う元将軍。
「「「「「え?」」」」」
「故に、当分参内する必要もございませんなぁ」
お祖父ちゃん嫌味大全開で実にご機嫌である。
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