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163 賄賂?
一方的にレイモンドを見かけた瞬間舞い上がったのは良いが、困惑の表情になっているのはマリーナ・カザフ皇女、御年10歳である。
「レイモンド様の髪が短い・・・」
ゲーム内でのレイモンドは腰が完全に隠れるくらい長い金髪を緩い三つ編みにした美青年として登場していたのだが、窓の向こうを同僚達と歩く彼はサラリとしたミディアムヘア。
言い換えればその周りにいる文官達も似たような髪型なので、言い換えれば非常にありきたりな『文官スタイル』。
まぁ制服も文官のお仕着せなので当然だが・・・
袖口のラインの本数と胸元のポケットについているブローチが普通の文官とは違うものだけの制服が支給されているのだが、遠目だとぜんッぜん見分けがつかないのである。
「あのキラキラロングヘアが見られない・・・」
フカフカの豪華な絨毯にガクッと跪くマリーナ皇女。
2次元のゲームと違いこの世界は3次元構造。
しかもゲームと違い普通に皆生活しているわけで、
『我こそは古代種の血をひきし者 この星の正当なる後継者』
とか
『絶望を贈ろうか』
などと言う台詞を口にする某ゲームキャラみたいなサラサラロングヘアーを維持するには無理な世界。
しかもレイモンドは男である。
湯浴みだって一人でチャッチャと入ってしまうし、そんな長い髪の毛でトイレに入ったら悲惨な目に遭遇するのが考えなくても分かるだろう。
しかも『雑用係』とまで自分たちで言ってしまえるくらいには忙しい宰相補佐官達の一人である。
当然だが髪の長さなど風魔法一発で乾かす事が出来る様に、宮仕え(雑用係)達が効率的を重視して短かくしてしまうのが当たり前なのだ。
そう、現実世界はマリーナ皇女の期待など知ったこっちゃないのである。
「嫌ああぁあああ~ッ!!」
アホである。
×××
そんな事は全く知らないレイモンドが宰相の執務室を訪れたのは数刻後である。
ぶっちゃけ城下街に行くついでだからと昨晩作っておいた護符をフロイラインに渡してもらう為に、ハンスの固有魔力を捕まえ彼の近くに移転したら、まさかのビンゴだっただけなのだが・・・。
とっとと報告して自邸に帰るために宰相閣下に報告する。
「2番街にある『恋愛相談所フローラ』という事務所に殿下と騎士見習いの側近候補がおられます」
「レイモンドお前、相変わらず仕事が早いな」
「恐れ入ります」
「じゃあついでに・・・」
「お断りします」
ニコリと人好きのする笑顔を顔に貼り付けるが目の奥が全く笑っていない。
「やっと妻と初夜を迎えたばかりなんで帰らせていただきます」
「・・・・・・う、むむッ」
「宰相府は全員帰宅。
後は魔塔の管轄。
ですよね?」
にこおっと笑うレイモンド。
笑顔の圧がちょっと笑えない宰相。
「いや、しかし・・・」
「『異◯元ポケット』妻が予備を作ってくれたんですよね」
「ッ!」
「閣下と宰相補佐官全員分あるんですが?」
「全員、帰宅してヨシッ!」
宰相閣下から補佐官全員に向けて、魔鳥で全員帰宅許可が送られてきたのは直ぐだったらしい。
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