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15 マーサ
しおりを挟むキアンの去った後でアリアが味気の無くなった夕食を済ませしょんぼりして部屋に戻ると、侍女のマーサが入浴の手伝いをするために待ち構えていた。
「いつもなら一緒に食事をして客間に泊まっていくのに・・・」
豊かな金の御髪に櫛を通すマーサの手がふと止まる。
「ご主人様のお話では、急に隣国へご出立されたということですが?」
「うん、この土地からなら今日中に隣国に渡れるからって」
侍女はオホホと笑いながら、
「伯爵領は本国の王都に行くより隣国の辺境伯領に行くほうが早いですから」
そう言い、彼女の髪を再び漉き始める。
「でも、隣国の女神様に用事があるらしくて」
「隣国は女神信仰でしたね。でもどうやったら女神様にお会いできるのでしょう。不思議ですねえ?」
「さあ」
むくれた顔になるアリア。
成程それでお嬢様のご機嫌が余計に悪いのかと、納得の侍女。
「ご心配にならずとも直ぐに帰っていらっしゃいますよ」
この屋敷の使用人たちは、皆キアンとアリアの事は伯爵から説明を受けている。
幼い頃流行病で死の淵から突然蘇るように元気になった途端、瞳の色が変わったお嬢様を心配したのは伯爵夫人だけでは無かった。
大勢の使用人が心配しないようにと、当主である伯爵は広間に全員を集め森であったことを全て打ち明け、その上で此処で働くかどうかを皆に決めさせたのである。
そう数も多くない伯爵家の使用人は誰一人屋敷を去る者はおらず、不思議な契約を交わした主人とキアンを自然と受け入れた。
元々王都から10日近くかかる辺境の地の民達は、この国が国教と認めた新興の神より土着の自然神達のほうが身近な存在だったからでもあったが、何より皆が大切にする愛らしいお嬢様を救ってくれたキアンを彼らは伯爵家の救い主として敬う事となったのである。
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