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26 王子様見参

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 シルフィールド伯爵一家が疲れ果て、気を抜いて座っているテーブルに向かってやって来た者がいた。

 招待状に直々に手紙を付けて送ってきた第2王子フィリップ殿下である。

 後ろには辺境伯嫡男であるデニスが控えているようだが、父親に今回の不用意な行動をこっ酷く叱られた上に、伯爵一家への接触禁止令が出ているせいで、かなり遠くから見守るように覗いている・・・・






 類まれな美貌の王妃に似ているためか、見た目は中性的で周りに温和な印象を与えるらしく人気があると云われるフィリップ第2王子は、サファイアブルーの瞳とブロンズに輝く髪の毛は父親譲りだが、性格はやや軽は・・・ ゲフンゲフッ!・・・異性に甘く、社交も男性相手というよりやや女性に片寄り気味で外交や政治より、国内社交や消費活動に大変熱心らしい。


 ――周りの貴族の子女達が遠巻きにしながら黄色い声を上げているのが良い証拠である。


 テーブルから立ち上がり王族に対する礼をするシルフィールド一家に向かい形式的な挨拶を済ませた王子は


「シルフィールド伯爵令嬢、君は王宮の侍女見習いとして登城する気はないかい?」


 と、いきなりアリアに向かって切り出した。


「「「?」」」


 これには一家も困惑した。


「君は婚約者もいないと聞くが、王宮侍女になれば、すぐにでも良い嫁ぎ先が見つかるだろう」


 確かにアリアには決まった婚約者はいない娘ではあるが、では無い。
 しかも領地と王都は馬車で急いでも10日はかかる距離である。何を好き好んでこのんで王城に就職しなければいけないのだろう・・・

 王子の魂胆は見え見えだが、此処は知らぬ存ぜぬでお断りの一択である。


「王子殿下、恐れながら、娘は身体も弱く、王都へ参内するなどできません。そればかりはお許しを」


 伯爵一家は地面に頭を擦り付けんばかりの勢いで謝った。






 人の目がある場所で、貴族の当主一家を虐げるように見られるわけにもいかず、その場は言葉を濁し軽く謝罪とも言葉を残し、取り巻きを引き連れて王子は去っていった・・・

 デニスがビクつきながらその後を追って行く。






 辺境伯嫡男は本日も父上に本気の稽古を付けてもらうのかもしれない――


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