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45 呪 side-k
しおりを挟む頭の隅が冷静になり警鐘を鳴らす。
この姿はヒトの作った神から、【悪魔】と呼ばれた姿だと。
きっと彼女に嫌われる。
――それでも止まれない。
背中を向け、彼女に乱暴をしようとする男の襟を片手で荒々しく掴み引き離し、硬い肩を掴んで力ずくで放り投げるとデカい身体が宙を舞った。
落ちた所が運悪く机の上で、ぶつかった時木製の机は粉々になった。
驚き此方を見上げた男の鳩尾に片足の蹄を埋めてギリギリと踏みつけると、声を出す間もなく、白目を剥いて泡を吹くと大男は気絶してバタリと倒れた。
そいつが息をしているのを確認してから、振り返るとアリアがぐったりとしてベッドに横たわって居るのが目に映る。
「アリア? アリアッ!?」
一瞬で過去の自分の姿は霧散する。
――彼女が、返事をしない。
唯それだけで昔の自分は何処かに行ってしまい、今の自分の姿に戻ってしまった。
――妻も私もあの子を失う位なら一緒に死んだほうが幸せです――
伯爵がエクネに告げた言葉が今なら理解できる。
彼女を失うなら、死ねない俺は世界を壊す方が手っ取り早い――
ああ、狂気じみた事を想う自分に向かって、もう1人の自分が高笑いをするのが分かる。
それこそお前の嫌っていた神族そのものだと――
伴侶に執着して相手の全てを喰らいつくし、生まれ変わっても又相手を求め続け全てを捧げる、呪われた神々。
――神の愛は呪いだ。
俺はそれを初めて受け入れた。
遠くでエクネの奴がほくそ笑んだのが、一瞬だけ見えたような気がした。
俺がアリアを手放すなんてあり得ない、それこそ永遠に――愛しているから。
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