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26* 強い人
しおりを挟むこれからどうするかを話し合った結果、当分俺の所有する邸の1つに暫く彼女は留まることになった。
名義は商会だから寮だと思ってくれていいと告げた。
彼女は人妻だ。
ここで俺と一緒にいるのはいくら何でも世間体が悪いだろう。
しかも元妻。
痛くもない腹を探られるのも有り難くない。
彼女の実家は新婚になったばかりの弟夫婦がいるし、夫と住む自邸に戻るのは癪に障るので嫌だと言う――
幸い侯爵家には優秀な家令と執事が揃っているため彼女が家を空けても大丈夫なんだそうだ。
「私が職業婦人だから領地は優秀な者を揃えたの。貴方の商会からの給料も貯めてあるから5年位余裕で暮らせるし、海外にだって行けるわよ?」
ウフフ、と笑う彼女は化粧もし終わり朝見せたあどけなさは何処かに行ってしまい、しっかりと逞しいキャリウーマンだ。
「今回ばかりは赦せないわね。どうしようかしら」
そう言いながら楽しそうに眉を上げる。
「君の好きにしたら良いよ」
今は昔と違って、貴族のご婦人たちも逞しく手に職を付けて仕事をする事も厭わない。
稼ぎもそれなりに多くて、家を守る為に夫の浮気を黙認するような女性はごく一部だ。
それなのに未だに男共は浮気が甲斐性だとか思っているフシがある。
まさかアイツがそんなヤツだとは思ってもみなかったが、そういえば学生の時も女性を常に自分の周りに侍らしていたな、アレは地だったのか? と今更ながら気がついた。
アイツと縁を切ってしまおうかと俺は本気で考えた――
「そもそも、君に相談もなく5年後に迎えに来るまで待つと約束を交わした俺が悪かった」
そう言って頭を下げたら、困った顔をして
「今更よ。それに私もそれに同意したじゃない」
俺の顔を見つめて、
「同意した時点で、私がそれを決めたのよ」
きっぱりとそう言った。
やっぱり君はいい女だよ。
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