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37 元妻
しおりを挟む「おっはようございまーす」
久々に出社すると、元気な挨拶が聞こえてくると、ああ今日も元気そうだなと感心した。
――なんか日課になって無いか?
「おはよう。今日も元気そうで何よりだ」
「ありがとうございますッ!」
ニパッという効果音が聞こえそうなくらい明るい笑顔のサーシャ嬢。
――しかし、この子は貴族の子女じゃなかったのか?
と、ちょっとだけ首を撚る。
「? どうかしましたか?」
「いや、サーシャ君の家は貴族じゃないのか?」
「・・・ 貴族の子女にしてはガサツとか思ってませんか?」
「・・・」
思わず視線が宙を泳いだ。
「まぁ、良いです。言ってませんでしたっけ? 一応家格は男爵ですけど、父は王宮勤めの官史です」
少しだけムッとしたがすぐ表情を戻して説明する彼女は、やはり切り替えが早い。
多分頭が良いんだろうな。
そう思ってふと、以前にも同じ様に気持ちの切り替えが早く、頭の回転のいい貴族女性がいた事を思い出した。
――元妻だ。
彼女も父が現役の間は商会の中で経理や事務仕事を任されていて、周りからも優秀だという評価を貰っていた。
「そういえば、君は仕事のミスは減ったのかい?」
「え? あ、はい。経理ミスは無くなりました。今は在庫管理を手伝ってます」
「入社してから1ケ月位だったね?」
「はい」
ん? という顔をしたが直ぐに頷く彼女。
この子はかなり優秀なのかもしれないなと考えていると、
「エイダン?」
入り口に背を向けていたので、後ろから人がやって来ていたのに全く気が付かなかった――
振り返ると、赤い髪の美しい女性。
「アデライン?」
元妻がそこに立っていた。
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