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77 ブルネットの女
しおりを挟む目の前の女性にソファーを勧めると彼女はもう1度優雅に軽く膝を折り、改めて礼を言いながら座る。
その所作も優美で彼女がステファンと間違いを犯したというのが嘘だったのでは? という錯覚すら覚える。
しかしこの黒に近い焦げ茶色の髪はあの晩に見た結い上げられた髪と同じ色だ。
それと社交の場でこの女性を見た覚えが全くないのが不思議だった。
「今日はどういったご要件で?」
口火を切ったのはクリスだ。
「先ずはお詫びを」
そう言いながら彼女は頭を下げた。
「私がバーンスタイン侯爵と不貞関係になったと勘違いをさせた事に対して。また彼の子を身籠ったという噂に関してですわ」
「・・・何故、私共オルコット商会にそれを?」
クリスが訝しげな表情になった。
「関係者の中では1番理性的にお話が出来そうでしたので。それとオルコット様は今回の騒動に率先して関わりを持ってらっしゃる」
サファイアのような澄んだ青い瞳が瞬いて、まるで此方のことを見透かされているように感じて、少し居心地が悪い。
「まず勘違いをなさらないようにお願いしたいのですが、私はバーンスタイン侯爵家の妻の座など欲しておりません」
そう言いながら、彼女の紅を引いた口角がクッと上がる。
「また、侯爵様の子を身籠っている訳でもございませんわ」
「「え?」」
「バーンスタイン侯爵に何も聞いて居られませんのね」
彼女はゆっくりと首を傾げてから、言葉を続ける。
その仕草はどうやっても目を逸らすことが出来ないくらい魅力的に見えた。
「本当に昔からプライドばかり高くて仕方のない方ですわね」
何故か彼女は溜息を1つ付いた。
「彼が私と閨を共にしたのは、試したかったからですわ」
「何を試したんですか?」
クリスが訝しげな表情で彼女に問う。
「彼が女性を抱けるかどうか、ということですわね」
「「え?!」」
アイツ・・・ 男色家だったっけ?
いや、それは今俺が周りから疑われてるんだったわ。
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