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31 子供がいらないと捨てる国があった4
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ジェシカ王女が言った。
「皆さん。もうすぐ日が暮れます。今日は私達の隠れ家、洞窟の中でお泊まりください。」
アーサー達4人は、子供達に案内され洞窟の中に入った。
100人ほどの子供達が暮らす中は意外に広く、清潔に使われていた。
ミレイネ王国でも、英雄であるアーサーの名声は高く、洞窟の中の大空間に通された彼を見ようとほとんどの子供達が集まってきた。
無邪気に自分を見て喜ぶ子供達を見ているうちに、アーサーは泣き始めてしまった。
「王子様。大丈夫ですか。」
メイナードが大変心配して声をかけた。
「大丈夫です。ありがとう。ただ、私を見て無邪気に笑う子供達を見ていると、この子達は世界の大切な宝だと強く思いました。この子供達がいらないとは、なんて理不尽で身勝手な! 」
クラリスが言った。
「アーサー王子様。母様が言っていました。このような事態を引き起こした暗黒騎士は『身勝手のボウ』だと。大人なら、結構な負担になる子育てへの嫌悪感を最大限に大きくする魔術を使ったのです。」
「そうですか。子育てはとても大変ですけど、子供達の成長は何倍ものうれしさと幸福になって返ってくると思います。大人と子供の大切なきずなを断ち切ろうとしている暗黒騎士を許せません! 」
アーサーの泣き顔はますます激しくなった。
それを見て、クラリスは最高に優しい声で言った。
「アーサー王子様。そろそろ明るい笑顔にお戻りください。子供達が不審に思われます。子供達は不可能を可能にする強い意思と能力をもつ、あなたの明るい笑顔が好きなのです。」
「そうでした。泣いてはいけませんでしてた。英雄と呼ばれる者として失格ですね。」
「そんなことは決してありませんよ。」
そう言いながら、クラリスは心の中で思った。
(ただ強いだけではない。感受性が高く情け深い。最弱で最強な英雄さん、私はあなたとともに必ずこの苦難を乗り越えます。)
その夜、クラリスはなかなか眠ることができなかった。
楽天的な彼女にとって、生まれてから始めての経験だったが一睡もできなかった。
夜が明けそうになると、洞窟には少しずつ朝日が差し込み始めた。
全く眠っていないクラリスは、起きてしまおうと思った。
すっきりするため外の空気に当ろうと、彼女は洞窟の出口に向かって歩き始めた。
睡眠不足でなんとなく体の調子も悪かった。
そして、最後にクラリスが外に出たのとほぼ同時に、朝日が完全に水平線の上にでた。
「なんてきれいな景色でしょう。森の緑を朝日の光りが広がって照らし、包んでいるわ。」
自分の体にも朝日が当った時、その光りは体の奥底まで吸収されたようだった。
すると、調子が悪かった体が元気よくなってきた。
クラリスに、あることがひらめいた。
「太陽の光りは地上の全てのものを照らす。もし、その光りに英雄の血の力を溶け込ますことができるなら、照らされた人の中で増殖しようとしている魔王の血を消滅させることができる。」
早速クラリスは洞窟に帰って協力をお願いしようとして振り返った。
すると、いつの間にか、アーサー、メイ、メイナードの3人がにこにこ笑いながら、すぐ後ろに立っていた。
驚いているクラリスに、アーサーが話しかけた。
「どうやら、良い方法を思いついたようですね。」
「はい。アーサー王子様から少し血をいただき、ミレイネ王国全土に届く太陽の光りが通過する空中に、英雄の血の力のカーテンを張るのです。そして合体魔法をかけ、光りと英雄の力を結合させるのです。」
「お嬢様。空に昇った太陽がどのようにミレイネ王国を照らすのか、正確に調べなければなりませんね。」
侍女のメイが言った。
「そうですね。私は天文学者ではないから詳しくはわかりませんが。魔眼で凝視し頭の中で計算すればなんとかできると思います。メイ、助けてください。」
「かしこまりました。お嬢様。魔法史に残るような偉大な魔法になりますね。」
「その間、私とメイナードはミレイネ王国の実情をできる限り確認します。」
その日から、クラリスは巨大なムナジロガラスになったメイの背に乗って、ミレイネ王国の空の上をくまなく飛び回り、朝日の光りの通路を調査した。
すると、東部平原にある低い山脈の上を朝日の光りが凝縮して通過し、ミレイネ王国のほとんど全体を照らしていることがわかった。
「メイ。ここの上空の空間に英雄の血のカーテンをかければ、通過した朝日の光りをほとんど全ての人が浴びることができますね。」
クラリスは、その美しい青い瞳の魔眼でその空間を凝視していた。
「お嬢様。アーサー王子様からいただく血の量は、どれほどになると計算されましたか。」
「3滴です。」
「えっ、そんなわずかですか。」
「はい。もともと英雄の力を太陽の光りは何倍にも高めるのです。ただ、一つだけ心配なことがあります。ミレーネ王国の大人達全員がその時間に外に出て、光りに当ってくれるのでしょうか………… 」
その頃、アーサーはメイナードと一緒にミレーネ王国の王都キプロの幅広いメインストリートを歩いていた。
「王子様、誰も歩いていませんね。」
「もう、お昼近いのに住民達はどうしているのでしょう。」
2人がしばらく歩いていると、ひとりの老婆が家の前に椅子を出して、通りをぼおっと見ていた。
「皆さん。もうすぐ日が暮れます。今日は私達の隠れ家、洞窟の中でお泊まりください。」
アーサー達4人は、子供達に案内され洞窟の中に入った。
100人ほどの子供達が暮らす中は意外に広く、清潔に使われていた。
ミレイネ王国でも、英雄であるアーサーの名声は高く、洞窟の中の大空間に通された彼を見ようとほとんどの子供達が集まってきた。
無邪気に自分を見て喜ぶ子供達を見ているうちに、アーサーは泣き始めてしまった。
「王子様。大丈夫ですか。」
メイナードが大変心配して声をかけた。
「大丈夫です。ありがとう。ただ、私を見て無邪気に笑う子供達を見ていると、この子達は世界の大切な宝だと強く思いました。この子供達がいらないとは、なんて理不尽で身勝手な! 」
クラリスが言った。
「アーサー王子様。母様が言っていました。このような事態を引き起こした暗黒騎士は『身勝手のボウ』だと。大人なら、結構な負担になる子育てへの嫌悪感を最大限に大きくする魔術を使ったのです。」
「そうですか。子育てはとても大変ですけど、子供達の成長は何倍ものうれしさと幸福になって返ってくると思います。大人と子供の大切なきずなを断ち切ろうとしている暗黒騎士を許せません! 」
アーサーの泣き顔はますます激しくなった。
それを見て、クラリスは最高に優しい声で言った。
「アーサー王子様。そろそろ明るい笑顔にお戻りください。子供達が不審に思われます。子供達は不可能を可能にする強い意思と能力をもつ、あなたの明るい笑顔が好きなのです。」
「そうでした。泣いてはいけませんでしてた。英雄と呼ばれる者として失格ですね。」
「そんなことは決してありませんよ。」
そう言いながら、クラリスは心の中で思った。
(ただ強いだけではない。感受性が高く情け深い。最弱で最強な英雄さん、私はあなたとともに必ずこの苦難を乗り越えます。)
その夜、クラリスはなかなか眠ることができなかった。
楽天的な彼女にとって、生まれてから始めての経験だったが一睡もできなかった。
夜が明けそうになると、洞窟には少しずつ朝日が差し込み始めた。
全く眠っていないクラリスは、起きてしまおうと思った。
すっきりするため外の空気に当ろうと、彼女は洞窟の出口に向かって歩き始めた。
睡眠不足でなんとなく体の調子も悪かった。
そして、最後にクラリスが外に出たのとほぼ同時に、朝日が完全に水平線の上にでた。
「なんてきれいな景色でしょう。森の緑を朝日の光りが広がって照らし、包んでいるわ。」
自分の体にも朝日が当った時、その光りは体の奥底まで吸収されたようだった。
すると、調子が悪かった体が元気よくなってきた。
クラリスに、あることがひらめいた。
「太陽の光りは地上の全てのものを照らす。もし、その光りに英雄の血の力を溶け込ますことができるなら、照らされた人の中で増殖しようとしている魔王の血を消滅させることができる。」
早速クラリスは洞窟に帰って協力をお願いしようとして振り返った。
すると、いつの間にか、アーサー、メイ、メイナードの3人がにこにこ笑いながら、すぐ後ろに立っていた。
驚いているクラリスに、アーサーが話しかけた。
「どうやら、良い方法を思いついたようですね。」
「はい。アーサー王子様から少し血をいただき、ミレイネ王国全土に届く太陽の光りが通過する空中に、英雄の血の力のカーテンを張るのです。そして合体魔法をかけ、光りと英雄の力を結合させるのです。」
「お嬢様。空に昇った太陽がどのようにミレイネ王国を照らすのか、正確に調べなければなりませんね。」
侍女のメイが言った。
「そうですね。私は天文学者ではないから詳しくはわかりませんが。魔眼で凝視し頭の中で計算すればなんとかできると思います。メイ、助けてください。」
「かしこまりました。お嬢様。魔法史に残るような偉大な魔法になりますね。」
「その間、私とメイナードはミレイネ王国の実情をできる限り確認します。」
その日から、クラリスは巨大なムナジロガラスになったメイの背に乗って、ミレイネ王国の空の上をくまなく飛び回り、朝日の光りの通路を調査した。
すると、東部平原にある低い山脈の上を朝日の光りが凝縮して通過し、ミレイネ王国のほとんど全体を照らしていることがわかった。
「メイ。ここの上空の空間に英雄の血のカーテンをかければ、通過した朝日の光りをほとんど全ての人が浴びることができますね。」
クラリスは、その美しい青い瞳の魔眼でその空間を凝視していた。
「お嬢様。アーサー王子様からいただく血の量は、どれほどになると計算されましたか。」
「3滴です。」
「えっ、そんなわずかですか。」
「はい。もともと英雄の力を太陽の光りは何倍にも高めるのです。ただ、一つだけ心配なことがあります。ミレーネ王国の大人達全員がその時間に外に出て、光りに当ってくれるのでしょうか………… 」
その頃、アーサーはメイナードと一緒にミレーネ王国の王都キプロの幅広いメインストリートを歩いていた。
「王子様、誰も歩いていませんね。」
「もう、お昼近いのに住民達はどうしているのでしょう。」
2人がしばらく歩いていると、ひとりの老婆が家の前に椅子を出して、通りをぼおっと見ていた。
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