最強で最弱な英雄&優しい魔女の物語~♡♡♡

ゆきちゃん

文字の大きさ
31 / 108

31 子供がいらないと捨てる国があった4

しおりを挟む
 ジェシカ王女が言った。

「皆さん。もうすぐ日が暮れます。今日は私達の隠れ家、洞窟の中でお泊まりください。」



 アーサー達4人は、子供達に案内され洞窟の中に入った。

 100人ほどの子供達が暮らす中は意外に広く、清潔に使われていた。



 ミレイネ王国でも、英雄であるアーサーの名声は高く、洞窟の中の大空間に通された彼を見ようとほとんどの子供達が集まってきた。



 無邪気に自分を見て喜ぶ子供達を見ているうちに、アーサーは泣き始めてしまった。



「王子様。大丈夫ですか。」

 メイナードが大変心配して声をかけた。



「大丈夫です。ありがとう。ただ、私を見て無邪気に笑う子供達を見ていると、この子達は世界の大切な宝だと強く思いました。この子供達がいらないとは、なんて理不尽で身勝手な! 」



 クラリスが言った。



「アーサー王子様。母様が言っていました。このような事態を引き起こした暗黒騎士は『身勝手のボウ』だと。大人なら、結構な負担になる子育てへの嫌悪感を最大限に大きくする魔術を使ったのです。」



「そうですか。子育てはとても大変ですけど、子供達の成長は何倍ものうれしさと幸福になって返ってくると思います。大人と子供の大切なきずなを断ち切ろうとしている暗黒騎士を許せません! 」



 アーサーの泣き顔はますます激しくなった。

 それを見て、クラリスは最高に優しい声で言った。



「アーサー王子様。そろそろ明るい笑顔にお戻りください。子供達が不審に思われます。子供達は不可能を可能にする強い意思と能力をもつ、あなたの明るい笑顔が好きなのです。」



「そうでした。泣いてはいけませんでしてた。英雄と呼ばれる者として失格ですね。」



「そんなことは決してありませんよ。」

 そう言いながら、クラリスは心の中で思った。



(ただ強いだけではない。感受性が高く情け深い。最弱で最強な英雄さん、私はあなたとともに必ずこの苦難を乗り越えます。)







 その夜、クラリスはなかなか眠ることができなかった。

 楽天的な彼女にとって、生まれてから始めての経験だったが一睡もできなかった。



 夜が明けそうになると、洞窟には少しずつ朝日が差し込み始めた。

 全く眠っていないクラリスは、起きてしまおうと思った。



 すっきりするため外の空気に当ろうと、彼女は洞窟の出口に向かって歩き始めた。

 睡眠不足でなんとなく体の調子も悪かった。



 そして、最後にクラリスが外に出たのとほぼ同時に、朝日が完全に水平線の上にでた。



「なんてきれいな景色でしょう。森の緑を朝日の光りが広がって照らし、包んでいるわ。」



 自分の体にも朝日が当った時、その光りは体の奥底まで吸収されたようだった。



 すると、調子が悪かった体が元気よくなってきた。



 クラリスに、あることがひらめいた。



「太陽の光りは地上の全てのものを照らす。もし、その光りに英雄の血の力を溶け込ますことができるなら、照らされた人の中で増殖しようとしている魔王の血を消滅させることができる。」



 早速クラリスは洞窟に帰って協力をお願いしようとして振り返った。



 すると、いつの間にか、アーサー、メイ、メイナードの3人がにこにこ笑いながら、すぐ後ろに立っていた。



 驚いているクラリスに、アーサーが話しかけた。



「どうやら、良い方法を思いついたようですね。」



「はい。アーサー王子様から少し血をいただき、ミレイネ王国全土に届く太陽の光りが通過する空中に、英雄の血の力のカーテンを張るのです。そして合体魔法をかけ、光りと英雄の力を結合させるのです。」



「お嬢様。空に昇った太陽がどのようにミレイネ王国を照らすのか、正確に調べなければなりませんね。」



 侍女のメイが言った。



「そうですね。私は天文学者ではないから詳しくはわかりませんが。魔眼で凝視し頭の中で計算すればなんとかできると思います。メイ、助けてください。」



「かしこまりました。お嬢様。魔法史に残るような偉大な魔法になりますね。」



「その間、私とメイナードはミレイネ王国の実情をできる限り確認します。」







その日から、クラリスは巨大なムナジロガラスになったメイの背に乗って、ミレイネ王国の空の上をくまなく飛び回り、朝日の光りの通路を調査した。



 すると、東部平原にある低い山脈の上を朝日の光りが凝縮して通過し、ミレイネ王国のほとんど全体を照らしていることがわかった。



「メイ。ここの上空の空間に英雄の血のカーテンをかければ、通過した朝日の光りをほとんど全ての人が浴びることができますね。」



 クラリスは、その美しい青い瞳の魔眼でその空間を凝視していた。



「お嬢様。アーサー王子様からいただく血の量は、どれほどになると計算されましたか。」



「3滴です。」



「えっ、そんなわずかですか。」



「はい。もともと英雄の力を太陽の光りは何倍にも高めるのです。ただ、一つだけ心配なことがあります。ミレーネ王国の大人達全員がその時間に外に出て、光りに当ってくれるのでしょうか………… 」







 その頃、アーサーはメイナードと一緒にミレーネ王国の王都キプロの幅広いメインストリートを歩いていた。



「王子様、誰も歩いていませんね。」



「もう、お昼近いのに住民達はどうしているのでしょう。」



 2人がしばらく歩いていると、ひとりの老婆が家の前に椅子を出して、通りをぼおっと見ていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

【完結】一番腹黒いのはだあれ?

やまぐちこはる
恋愛
■□■ 貧しいコイント子爵家のソンドールは、貴族学院には進学せず、騎士学校に通って若くして正騎士となった有望株である。 三歳でコイント家に養子に来たソンドールの生家はパートルム公爵家。 しかし、関わりを持たずに生きてきたため、自分が公爵家生まれだったことなどすっかり忘れていた。 ある日、実の父がソンドールに会いに来て、自分の出自を改めて知り、勝手なことを言う実父に憤りながらも、生家の騒動に巻き込まれていく。

【完結】侍女が王女に転生?!英雄と結婚して破滅の国を救います!

カナタカエデ
ファンタジー
八十歳で生涯を終えた、元王宮侍女カリナ。 その最期の瞬間――枕元に、かつて仕えた王女アメリアが現れた。 「お願い…私の人生をやり直して。国を、私を、救って――」 次に目を開くと、カリナは十八歳の“王女アメリア”として転生していた。 彼女は知っている。 このままでは王国は滅び、愛する主君が破滅する未来を。 未来を変えるため、アメリアは 冷徹と噂される英雄ヴァルクとの政略結婚を選ぶ。 これは、かつて守れなかった主人のための転生。 そのはずなのに――彼への想いは、気づけば変わり始めていた。 王女と英雄が紡ぐ、破滅回避ラブファンタジー開幕。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜 挿絵はA I画像を使用 10/20 第一章完結 12/20 第二章完結 2/16 第三章完結 他サイト掲載 (小説家になろう、Caita)

異世界でまったり村づくり ~追放された錬金術師、薬草と動物たちに囲まれて再出発します。いつの間にか辺境の村が聖地になっていた件~

たまごころ
ファンタジー
王都で役立たずと追放された中年の錬金術師リオネル。 たどり着いたのは、魔物に怯える小さな辺境の村だった。 薬草で傷を癒し、料理で笑顔を生み、動物たちと畑を耕す日々。 仲間と絆を育むうちに、村は次第に「奇跡の地」と呼ばれていく――。 剣も魔法も最強じゃない。けれど、誰かを癒す力が世界を変えていく。 ゆるやかな時間の中で少しずつ花開く、スロー成長の異世界物語。

【完結】異世界召喚 (聖女)じゃない方でしたがなぜか溺愛されてます

七夜かなた
恋愛
仕事中に突然異世界に転移された、向先唯奈 29歳 どうやら聖女召喚に巻き込まれたらしい。 一緒に召喚されたのはお金持ち女子校の美少女、財前麗。当然誰もが彼女を聖女と認定する。 聖女じゃない方だと認定されたが、国として責任は取ると言われ、取り敢えず王族の家に居候して面倒見てもらうことになった。 居候先はアドルファス・レインズフォードの邸宅。 左顔面に大きな傷跡を持ち、片脚を少し引きずっている。 かつて優秀な騎士だった彼は魔獣討伐の折にその傷を負ったということだった。 今は現役を退き王立学園の教授を勤めているという。 彼の元で帰れる日が来ることを願い日々を過ごすことになった。 怪我のせいで今は女性から嫌厭されているが、元は女性との付き合いも派手な伊達男だったらしいアドルファスから恋人にならないかと迫られて ムーライトノベルでも先行掲載しています。 前半はあまりイチャイチャはありません。 イラストは青ちょびれさんに依頼しました 118話完結です。 ムーライトノベル、ベリーズカフェでも掲載しています。

スローライフ 転生したら竜騎士に?

梨香
ファンタジー
『田舎でスローライフをしたい』バカップルの死神に前世の記憶を消去ミスされて赤ちゃんとして転生したユーリは竜を見て異世界だと知る。農家の娘としての生活に不満は無かったが、両親には秘密がありそうだ。魔法が存在する世界だが、普通の農民は狼と話したりしないし、農家の女将さんは植物に働きかけない。ユーリは両親から魔力を受け継いでいた。竜のイリスと絆を結んだユーリは竜騎士を目指す。竜騎士修行や前世の知識を生かして物を売り出したり、忙しいユーリは恋には奥手。スローライフとはかけ離れた人生をおくります。   

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

【完結】身代わり皇妃は処刑を逃れたい

マロン株式
恋愛
「おまえは前提条件が悪すぎる。皇妃になる前に、離縁してくれ。」 新婚初夜に皇太子に告げられた言葉。 1度目の人生で聖女を害した罪により皇妃となった妹が処刑された。 2度目の人生は妹の代わりに私が皇妃候補として王宮へ行く事になった。 そんな中での離縁の申し出に喜ぶテリアだったがー… 別サイトにて、コミックアラカルト漫画原作大賞最終候補28作品ノミネート

処理中です...