銀座のカクテルは秘め恋の味

坂本 光陽

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【龍馬カクテル】Ⅱ④

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「ミノリさん、あまりコーヒーは飲まないんですか?」
「はい、この苦味に馴染めなくて。でも、とても良い香りですね。ひょっとして豆から挽いたんですか?」

 桐野さんは首を横に振る。

「いえ、そこまで手間はかけていません。パック詰めのレギュラー商品です」
「あれ、そうなんだ。じゃ、豆の産地にこだわったとか? ガテマラとか、モカとか、ブルーマウンテンとか」

 また、首を横に振られた。
「いえ、業界で最も普及しているブレンドですよ」

 全然こだわりがないし、手も込んでいないんだ。何か、拍子抜け。
 まさかとは思うけど、桐野さん、今回は〈洗練〉の逆を指向しているとか?

「桐野さん、教えてください。新しい【龍馬カクテル】は、コーヒーを使ったカクテルなんですよね」
「そうです。別に珍しくはないですよ。コーヒー・リキュールを使ったカルーア・ミルクは御存知でしょう。女性に人気のカクテルですよね。あとホットですけど、アイリッシュ・コーヒーやカフェ・ロワイヤルもあります」

 言われてみれば、その通りだ。
 でも、あのお酒とコーヒーという組み合わせは、どうしても想像がつかない。

「あの、【龍馬カクテル】のために必要なものは、すべてそろいましたか?」
「はい、すべてそろいました」

「率直にうかがいます。【龍馬カクテル】は、いつ頃できそうですか?」
「いつでも結構ですよ。リオナさんの御都合次第ですが、何なら、明日でも構いません。これからレシピの微調整をしますが、そのつもりで準備しておきます」

「本当に、明日でも大丈夫なんですか?」
「ええ、ことカクテルに関する限り、僕は嘘やハッタリは口にしません」

 言い換えれば、それだけ自信があるということだろう。

「わかりました。では、早速リオナさんに御連絡して、スケジュールを組みますね。昨晩、偶然お会いした時、“映画の撮影前に味わっておきたい”と言っておられたし、できるだけ急いだ方がいいと思うんです」

 リオナさんは御多忙な方だし、タイミング勝負になるけれど、こういうことは勢いが大切だ。私はスマホを取り出した。メールにしようかな、という考えがよぎったけど、思い切って電話をかけてみた。

 リオナさんは2コールで出た。幸い、次の現場への移動中とのこと。運転しているのはマネージャーさんなので、今、話していても問題はない。

 御挨拶もそこそこに、私は【龍馬カクテル】の件を切り出した。リオナさんが【銀時計】に来るのに御都合のよい日時を問いかける。
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