純情 パッションフルーツ

坂本 光陽

文字の大きさ
19 / 30

19

しおりを挟む
「ね、就職や将来のこととか、いろいろ考えている?」
「まぁ、人並みに幸せになりたい、と思っているけど」
「突っ込みづらいので、真面目に答えてくれるかな」
「漠然とだけど、物作りに関わりたいと思っている」
「はぁ、物作り? それってメーカー志望ってこと?」
「家電製品とか時計とか、あ、玩具や文房具もいいな」

「細かい作業が苦手なくせに?」香里は呆れ顔だ。「あまりにも漠然としすぎだよ。せめて業種ぐらいキチンと考えないと」
「ああ、キチンと考えてみるよ」僕は素直に応じる。皮肉ったわけではない。

 それにしても、口の中が燃えるようだ。さすが激辛カレー。慌てて、水を飲み干す。
 香里が近くの水差しをとって、僕のコップに注いでくれた。

「ふん、拍子抜けね。いつもなら、あれこれ理屈をこねまわすのに」
「こねまわすって、人聞きが悪いな。僕はいつも素直なつもりだよ」

 香里は首を横に振って、小さく溜め息を吐く。
「キレのないリアクション。つまんないね、今日の駿介くん。普段の半分も頭が働いていない感じ。ひょっとして、秋の花粉症?」
「ああ、それかもな。春の花粉ほどじゃないけど、脳ミソが乾いて縮んでいる感じ」

「幼馴染として率直に言わせてもらうとさ、全然らしくない。駿介くんは思考型というより行動型でしょ。考える前に、とりあえず動く。うじうじ悩んでいるなんて、全然似合わないよ」

 ハッとした。そうかもしれない。いや、きっと香里の言うとおりなのだろう。
 激辛カレーを完食して、汗をかいたこともあって、少し血の巡りがよくなったのかも。
 もしかしたら、僕は問題の本質を見失っていたのかもしれない。あれこれ考えたところで、何も行動を起こさないのでは、状況は変わらない。それどころか、心が澱んで腐ってしまう。

「香里、悪かったな。何か、心配をかけたみたいで」
 素直な気持ちを口にすると、意外にも香里は慌てた。
「いやいや、大して心配はしていないよ。駿介くんが元気ないとつまんないしさ」

 それでも、ありがたい。照れくさいので、口にはしないけど。
 香里の言うとおりだと思う。うじうじ思い悩むのは僕らしくない。

「香里のおかげで、スポンと結論が出たよ。つまるところ、あれこれ思い悩むより、僕は何をどうしたいのか、肝心なのはそいつだな」

 香里は無言で頷いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

神楽囃子の夜

紫音みけ🐾新刊2月中旬発売!
ライト文芸
※第6回ライト文芸大賞にて奨励賞を受賞しました。応援してくださった皆様、ありがとうございました。 【あらすじ】  地元の夏祭りを訪れていた少年・狭野笙悟(さのしょうご)は、そこで見かけた幽霊の少女に一目惚れしてしまう。彼女が現れるのは年に一度、祭りの夜だけであり、その姿を見ることができるのは狭野ただ一人だけだった。  年を重ねるごとに想いを募らせていく狭野は、やがて彼女に秘められた意外な真実にたどり着く……。  四人の男女の半生を描く、時を越えた現代ファンタジー。  

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

N -Revolution

フロイライン
ライト文芸
プロレスラーを目指す桐生珀は、何度も入門試験をクリアできず、ひょんな事からニューハーフプロレスの団体への参加を持ちかけられるが…

処理中です...