純情 パッションフルーツ

坂本 光陽

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 もう思い悩むのはやめよう。
 エリさんの〈秘密〉は、就職と母子と恋愛という三つの問題とリンクしていた。それらはパスルのように複雑にからみあい、僕を混乱させていたのだ。

 誰か偉い人が言っていた。「解決困難な問題は分解するに限る。小分けして難度を下げてから、比較的簡単なものから手をつけろ」と。

 真中さんは就職を餌に僕を懐柔しようとした。これは卑劣で恥知らずな行為だと思う。僕の中の「潔癖さ」がそう主張する。だけど、僕は真中さんの会社に就職するつもりも、彼の世話になるつもりもない。

 だから、このパーツについては何も考えなくていい。

 次に母子の問題だ。真中さんの主張したこと。エリさんが僕の父や僕のことを愛していなかった、という戯言ざれごとについてである。調査資料には確かにそう書かれていたし、真中さんはその内容を信じきっている。いわゆる、エリさんの〈秘密〉だ。

 でも、それが僕と関係があるのか?
 僕とエリさんの関係は良好である。時々、小さなケンカや言い争いはするけれど、他所の家族よりは良好な関係をキープしている。仮に、〈秘密〉が真実であっても、その関係はゆるがない。

 僕はエリさんから愛されている。そう実感している。なら、〈秘密〉が真実であろうと、調査資料で証明されていようと、僕には関係ない。自信をもって、そう断言できる。他人の考えや価値観に振り回されるのは、もうごめんだ。

 だから、このパーツについても考えなくていい。

 最後に恋愛の問題。これが実は、一番恥ずかしい。僕には打算があったと思う。もし、真中さんの会社に就職し、一人前の社会人になれば、晴れて、魅子さんに想いを告げられる。好きです、付き合ってください、と大いばりで告白できる。そんな邪心をもっていた。

 でも、冷静に考えれば、そんな手はとれない。
 僕が真中さんの世話になった段階で、僕とエリさんの関係は微妙なものになる。魅子さんとの関係にも、微妙な影を落とすかもしれない。何よりも、僕自身が後ろめたい。

 なぜ、こんな打算を考えたのか、自分で自分が信じられない。
 たぶん、僕は自信がなかったのだろう。少しでも早く、魅子さんに想いを伝えたい。そのためには、大学生の身分では持ち得ない、社会的なバックボーン、後ろ盾のようなものが必要だと勝手に思い込んでいたのだ。

 それがやっと今、わかった。
 真中さんとのつながりを断ち切り、エリさんの〈秘密〉を無視してしまえば、こんな単純な話だったのだ。この数日、思い悩んでいたことがバカみたいだった。
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