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1 ルーンカレッジ編
021 ゼノビアとの打ち合わせ
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ジルたちが別室に通されると、そこには使者となるゼノビアとアルネラ、そして2人の近衛騎士が待っていた。
「ジル! 傷が言えたばかりというのに、ご苦労であったな。謁見は気疲れしたのではないか?」
ゼノビアが笑みを浮かべ気さくに声をかけてきた。一度生死をともにしたことで、ゼノビアの方でもジルたちに親しみがあるのだろう。
「正直に言えば、かなり」
ジルが苦笑しながら答える。
「ははは、そうだろう。騎士団の者でもあの場に出るのは気後れするものだ。まして学生で初めてではな」
「よい経験をさせていただきました」
「本当に、本日はお越しいただきありがとうございました。改めてお礼申し上げます」
アルネラが声をかける。ジル、ガストン、サイファーが深々と頭を下げる。
「ここは謁見の間ではありませんから、楽にしてください。今回の事件の当事者として、私とゼノビア殿がこの場でお礼したかったのです」
「重ね重ねありがとうございます。我々も偶然あの場に居合わせただけですので、姫がそれほど気にされることではありません」
「ところで……」
ジルは意を決して以前から心にとめていた疑問を口にする。
「姫を誘拐した犯人について何か分かったことはあるのでしょうか?」
「いや、あの後一応敵の死体を調べてみたが、身元が分かるようなものは発見できなかったのだ」
ゼノビアが難しい顔になる。シュバルツバルトとしても、このような大事件を放っておく事はできないだろう。
「私が殺した男は、他の冒険者とは違うようだったが、何も証拠となるものは残していなかった。このような事のプロなのかもしれぬな」
「やはりそうでしたか……。このような大それたことをするぐらいですから、情報の流出に関しては予め手をうっていたのでしょう」
ジルは予想通りという顔をする。
「姫、一つお聞きしても宜しいですか?」
「なんでしょう?」
「姫には襲われる理由について何か心当たりはおありですか?」
これはジルの身分では礼を失する質問かもしれない。
「そうですね……」
「私の価値は私個人にはないと思います。あくまでシュヴァルツバルトの王女という身分、そして王位継承権第二位という立場に意味があると思います。誰の企みかは分かりませんが、私を誘拐した男たちの狙いはその辺りにあるのではないでしょうか」
「なるほど……」
今度はジルが考えこむ。
シュバルツバルトでは女性にも王位継承権があり、過去に二度女王が戴冠したことがある。アルネラは王位継承権第二位である。第一位は実の兄のユリウスであり、すでに成人したユリウスが順当に王位を継承するだろうというのが一般的な見方である。ただ王位継承権第二位というのは微妙な立場である。ユリウスにもしものことがあれば、王位を継ぐのはアルネラである。ちなみに第三位は弟のルヴィエである。
「まあ今は判断する材料が全くそろっていないのだ。いくら思案したところで、想像の域をでないし、無用な軋轢を生みかねないだろう」
ゼノビアの言うことも、もっともなことだ。
「そうですね、その通りだと思います」
「差し当たり我々は弔問の使者のことを考えよう」
ジルがうなづく。
「先ほども話があったように、私が今回の弔問の使者となる。ジル、サイファー、ガストンは随行員として参加してもらう。他にここにいる私の部下2人がともに随行する」
近衛騎士団の2人が軽く会釈をする。ゼノビアの信頼の厚い部下なのであろう。
「諸君らは一度カレッジに帰り、支度を整えてきてもらいたい。王国の正規の使者とはいえ、行き先は帝国、何があるか分からない。何事が起こっても大丈夫なように装備を整えてくれ。それとカレッジにあるレミア殿の遺品をまとめ持ってきて欲しい。レミア殿の父君に渡さなければならないからな」
「分かりました。我々は一度カレッジへと帰ります」
「頼んだぞ、また会おう」
「ジル! 傷が言えたばかりというのに、ご苦労であったな。謁見は気疲れしたのではないか?」
ゼノビアが笑みを浮かべ気さくに声をかけてきた。一度生死をともにしたことで、ゼノビアの方でもジルたちに親しみがあるのだろう。
「正直に言えば、かなり」
ジルが苦笑しながら答える。
「ははは、そうだろう。騎士団の者でもあの場に出るのは気後れするものだ。まして学生で初めてではな」
「よい経験をさせていただきました」
「本当に、本日はお越しいただきありがとうございました。改めてお礼申し上げます」
アルネラが声をかける。ジル、ガストン、サイファーが深々と頭を下げる。
「ここは謁見の間ではありませんから、楽にしてください。今回の事件の当事者として、私とゼノビア殿がこの場でお礼したかったのです」
「重ね重ねありがとうございます。我々も偶然あの場に居合わせただけですので、姫がそれほど気にされることではありません」
「ところで……」
ジルは意を決して以前から心にとめていた疑問を口にする。
「姫を誘拐した犯人について何か分かったことはあるのでしょうか?」
「いや、あの後一応敵の死体を調べてみたが、身元が分かるようなものは発見できなかったのだ」
ゼノビアが難しい顔になる。シュバルツバルトとしても、このような大事件を放っておく事はできないだろう。
「私が殺した男は、他の冒険者とは違うようだったが、何も証拠となるものは残していなかった。このような事のプロなのかもしれぬな」
「やはりそうでしたか……。このような大それたことをするぐらいですから、情報の流出に関しては予め手をうっていたのでしょう」
ジルは予想通りという顔をする。
「姫、一つお聞きしても宜しいですか?」
「なんでしょう?」
「姫には襲われる理由について何か心当たりはおありですか?」
これはジルの身分では礼を失する質問かもしれない。
「そうですね……」
「私の価値は私個人にはないと思います。あくまでシュヴァルツバルトの王女という身分、そして王位継承権第二位という立場に意味があると思います。誰の企みかは分かりませんが、私を誘拐した男たちの狙いはその辺りにあるのではないでしょうか」
「なるほど……」
今度はジルが考えこむ。
シュバルツバルトでは女性にも王位継承権があり、過去に二度女王が戴冠したことがある。アルネラは王位継承権第二位である。第一位は実の兄のユリウスであり、すでに成人したユリウスが順当に王位を継承するだろうというのが一般的な見方である。ただ王位継承権第二位というのは微妙な立場である。ユリウスにもしものことがあれば、王位を継ぐのはアルネラである。ちなみに第三位は弟のルヴィエである。
「まあ今は判断する材料が全くそろっていないのだ。いくら思案したところで、想像の域をでないし、無用な軋轢を生みかねないだろう」
ゼノビアの言うことも、もっともなことだ。
「そうですね、その通りだと思います」
「差し当たり我々は弔問の使者のことを考えよう」
ジルがうなづく。
「先ほども話があったように、私が今回の弔問の使者となる。ジル、サイファー、ガストンは随行員として参加してもらう。他にここにいる私の部下2人がともに随行する」
近衛騎士団の2人が軽く会釈をする。ゼノビアの信頼の厚い部下なのであろう。
「諸君らは一度カレッジに帰り、支度を整えてきてもらいたい。王国の正規の使者とはいえ、行き先は帝国、何があるか分からない。何事が起こっても大丈夫なように装備を整えてくれ。それとカレッジにあるレミア殿の遺品をまとめ持ってきて欲しい。レミア殿の父君に渡さなければならないからな」
「分かりました。我々は一度カレッジへと帰ります」
「頼んだぞ、また会おう」
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