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1 ルーンカレッジ編
044 ヴァルハラ祭 〜サイファーの戦い2
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闘技場に目を向けると、すでに第一試合が始まっていた。剣闘大会で使う剣は当然真剣ではなく、試合用の刃のない剣である。ただし、試合用の剣とはいえ、まともに剣を身体に受ければ骨ぐらいは簡単に折れるため、この大会に出てくる学生は自分の技量に十分な自信がある者ばかりである。試合時間は、各試合5分に時間が制限されている。この5分で勝負がつかなかった場合、再度5分の延長戦が行われる。
第一試合が終わり、ついにサイファーの番となる。相手はジルの知らない学生で、デニスという魔法戦士コースの3年らしい。サイファーは2年なのでカレッジでの経験で言えば相手の方が長いことになる。サイファーはとくに気負った様子もなく、落ち着いているようだ。
この剣闘大会のルールでは、魔法を使うことはできるが、その使用は試合が始まってからに限られる。したがって魔法をかける場合には、相手と剣を交えながら呪文を完成させなければならないことになる。魔法戦士は、日頃からそのようなケースを想定した訓練を積んでいる。カレッジで学んだことを試す良い機会になっているのだ。
サイファーとデニスが試合前の礼をする。戦士の礼とは、剣を相手の剣と合わせることだ。両者はそのまま様子をみるかのように剣を構えて相手の出方をうかがう。デニスはそのまま呪文の詠唱に入っているようだ。サイファーが相手では勝ち目が薄いとみて、魔法で自己を強化しようと考えたのだろう。そこにサイファーが素早く踏み込んでいく。
サイファーは流れるような剣の振りで、上段から下段へと剣で切り下げ、返す刀で水平に横薙ぎする。デニスは呪文を唱えながらもなんとかかわしたが、続けてサイファーの繰り出した連続突きが肩口にヒットした。デニスは片膝をついてダウンし、手のひらをサイファーに向けて“待て”の合図を出す。デニスが負けを認めたのである。
試合はわずか30秒ほどで決着がついた。だがこれはそれほど短いわけでもない。一本勝負の剣闘の場合、試合がそう長引くことはない。一応延長戦の用意もあるが、そこまでいく試合はほとんどないのである。
サイファーとデニスは開始線に戻り礼をし、これで第二試合は終わりとなる。負けたデニスも恐らく軽い痣が残るくらいの軽症で済むだろう。
「レニ、ちょっとここで待っていてくれるか。サイファーと話してくるから」
「選手の控室に行かれるのですか?」
「そうだ。レニはここにいて席をとっておいてくれ」
次の試合はAの第3試合、第4試合と続き、そしてその後はBの山になるのでサイファーの試合は当分先になる。勝ち残った選手は一端控室に戻ることになっている。ジルは控室に一言激励に行こうと思ったのである。すでにサイファーとは深い仲になっているから、何も言わずに見ているのは薄情な気がするのだ。
ジルが控室に入ると、サイファーは椅子に座り次の試合に備えてシミュレーションしているようだった。
「サイファー、なかなか調子は良さそうだね」
「――ジルか、見ていたんだな」
「ああ、指導している学生と客席で見ていたよ。サイファーなら優勝行けるんじゃないか?」
「俺も負けるつもりは無いが、剣の勝負は必ずしも強い奴が勝つわけでもない。不覚をとって相手の剣を受ければ、そこで勝負は決まってしまう」
「まあでも俺はサイファーに“賭けて”おくよ」
ジルはニヤリと笑いかける。口では慎重なことを言っているが、サイファーは負けることなど微塵も想定していないだろう。ここ最近一緒に過ごしてきたジルにはそれが分かる。
「俺の分も賭けておけよ。後でおごってもらうからな」
剣闘大会での賭けはお遊び程度のものだが、不正を防止するために一応選手は賭けに参加できない決まりになっている。
「分かった。その代わり絶対に優勝してくれよ」
ジルなりにサイファーに発破をかけたつもりであった。たぶんサイファーにも通じているだろう。サイファーは何も言わず、手をあげてそれに答えた。
第一試合が終わり、ついにサイファーの番となる。相手はジルの知らない学生で、デニスという魔法戦士コースの3年らしい。サイファーは2年なのでカレッジでの経験で言えば相手の方が長いことになる。サイファーはとくに気負った様子もなく、落ち着いているようだ。
この剣闘大会のルールでは、魔法を使うことはできるが、その使用は試合が始まってからに限られる。したがって魔法をかける場合には、相手と剣を交えながら呪文を完成させなければならないことになる。魔法戦士は、日頃からそのようなケースを想定した訓練を積んでいる。カレッジで学んだことを試す良い機会になっているのだ。
サイファーとデニスが試合前の礼をする。戦士の礼とは、剣を相手の剣と合わせることだ。両者はそのまま様子をみるかのように剣を構えて相手の出方をうかがう。デニスはそのまま呪文の詠唱に入っているようだ。サイファーが相手では勝ち目が薄いとみて、魔法で自己を強化しようと考えたのだろう。そこにサイファーが素早く踏み込んでいく。
サイファーは流れるような剣の振りで、上段から下段へと剣で切り下げ、返す刀で水平に横薙ぎする。デニスは呪文を唱えながらもなんとかかわしたが、続けてサイファーの繰り出した連続突きが肩口にヒットした。デニスは片膝をついてダウンし、手のひらをサイファーに向けて“待て”の合図を出す。デニスが負けを認めたのである。
試合はわずか30秒ほどで決着がついた。だがこれはそれほど短いわけでもない。一本勝負の剣闘の場合、試合がそう長引くことはない。一応延長戦の用意もあるが、そこまでいく試合はほとんどないのである。
サイファーとデニスは開始線に戻り礼をし、これで第二試合は終わりとなる。負けたデニスも恐らく軽い痣が残るくらいの軽症で済むだろう。
「レニ、ちょっとここで待っていてくれるか。サイファーと話してくるから」
「選手の控室に行かれるのですか?」
「そうだ。レニはここにいて席をとっておいてくれ」
次の試合はAの第3試合、第4試合と続き、そしてその後はBの山になるのでサイファーの試合は当分先になる。勝ち残った選手は一端控室に戻ることになっている。ジルは控室に一言激励に行こうと思ったのである。すでにサイファーとは深い仲になっているから、何も言わずに見ているのは薄情な気がするのだ。
ジルが控室に入ると、サイファーは椅子に座り次の試合に備えてシミュレーションしているようだった。
「サイファー、なかなか調子は良さそうだね」
「――ジルか、見ていたんだな」
「ああ、指導している学生と客席で見ていたよ。サイファーなら優勝行けるんじゃないか?」
「俺も負けるつもりは無いが、剣の勝負は必ずしも強い奴が勝つわけでもない。不覚をとって相手の剣を受ければ、そこで勝負は決まってしまう」
「まあでも俺はサイファーに“賭けて”おくよ」
ジルはニヤリと笑いかける。口では慎重なことを言っているが、サイファーは負けることなど微塵も想定していないだろう。ここ最近一緒に過ごしてきたジルにはそれが分かる。
「俺の分も賭けておけよ。後でおごってもらうからな」
剣闘大会での賭けはお遊び程度のものだが、不正を防止するために一応選手は賭けに参加できない決まりになっている。
「分かった。その代わり絶対に優勝してくれよ」
ジルなりにサイファーに発破をかけたつもりであった。たぶんサイファーにも通じているだろう。サイファーは何も言わず、手をあげてそれに答えた。
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