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1 ルーンカレッジ編
045 ヴァルハラ祭 〜サイファーの戦い3
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「どうでしたか? サイファーさんって、先輩と一緒に姫を救った方ですよね?」
「そうだ。ルーンカレッジでは、剣でサイファーに勝てる学生はもういないだろうな。すでに1人の戦士としても相当高いレベルにいると思うよ。この大会程度でサイファーが負けるとは思えないな」
ジルは目の前でサイファーが実際に戦っている姿を見ている。しかも命のやり取りをする実戦でだ。学生レベルで負けるとはとても思えない。
「魔術師志望の私でも、剣の練習はした方が良いんでしょうか?」
レニは前から疑問に思っていたようだ。魔術師は1人では自分の命を守ることすら難しいからである。
「……いや、今はまだ魔法の学習に専念した方がいいだろう。精神的に疲れた時などに、運動がてらやるのは良いだろうけど」
「先輩、剣はお上手なんですか?」
「魔術師の中では下手ではないと思うけど、サイファーみたいな専門の戦士には到底敵わないよ。身を守るために最低限の嗜みは必要だと思うけど、魔術師が剣を持って戦うようではどのみち不味い状況だろうしね。それより僕もいまは魔法の研究に専念したいんだ」
ジルがいま目標としているのは、第四位階の魔法を習得することである。その習得には相当な時間と修練が必要であり、剣の訓練などに時間を費やす余裕はない。
「レニはいまどの魔法を使えるんだ?」
「ええと……、先輩が最初に教えてくれたライト、それから神聖魔法のキュアです。いまはマジックミサイルを特訓をしています」
キュアもマジックミサイルも第一位階の魔法である。
「なかなか順調だな。とくにキュアをもう使えるようになったのか。ひょっとしてレニは神聖適正が高いんじゃないか?」
「ええ、普通キュアはもっと上達した後に使えるようになるものだと、私も後から聞きました。私は習得するまでそんなに難しいことはなかったので、びっくりしたんですが」
「それが適正が高いということだよ。僕も治癒魔法はキュアしか使えない。神聖魔法なら僕と同レベルってことだな」
ジルがいたずらっぽくレニに笑いかける。レニもそれを見てこれ以上ない笑顔になる。
「先輩、からかわないでください。私が先輩となんて……」
「……いや、真面目な話、レニが高位の神聖魔法を使えるようになってくれると助かるよ。僕は大して使えないようだからね」
これは事実である。ジルは神聖魔法についてはすでに諦め、他の人間に任せようと思っている。もっともレニがいつまでも自分のそばに居てくれればの話であるが。
「先輩にも不得意な分野があるって分かって少し安心しました。――分かりました! 神聖魔法を頑張って覚えてみます!」
「いや、無理する必要はないからね。他の魔法を覚えたいならそっちを優先した方が良い」
レニが神聖魔法を使えればジルにとっても有り難いが、それをレニに押し付ける気にはなれない。なぜなら魔術師が魔法を覚えるには、時間や能力の点で数に限りがあるからである。
どんな魔術師も全ての魔法を使えるわけではない。ゆえに魔法の取捨選択はその魔術師の個性である。宮廷魔術師として採用される時の一つの基準として、その国が必要としている魔法を使えれば有利であるし、その国の宮廷魔術師が使えない魔法が使えるなら、すぐにでも採用されるだろう。
だからジルとしては、レニが自分の才能を見極め、自分で適切な魔法を選択してもらいたいのだ。
「そうだ。ルーンカレッジでは、剣でサイファーに勝てる学生はもういないだろうな。すでに1人の戦士としても相当高いレベルにいると思うよ。この大会程度でサイファーが負けるとは思えないな」
ジルは目の前でサイファーが実際に戦っている姿を見ている。しかも命のやり取りをする実戦でだ。学生レベルで負けるとはとても思えない。
「魔術師志望の私でも、剣の練習はした方が良いんでしょうか?」
レニは前から疑問に思っていたようだ。魔術師は1人では自分の命を守ることすら難しいからである。
「……いや、今はまだ魔法の学習に専念した方がいいだろう。精神的に疲れた時などに、運動がてらやるのは良いだろうけど」
「先輩、剣はお上手なんですか?」
「魔術師の中では下手ではないと思うけど、サイファーみたいな専門の戦士には到底敵わないよ。身を守るために最低限の嗜みは必要だと思うけど、魔術師が剣を持って戦うようではどのみち不味い状況だろうしね。それより僕もいまは魔法の研究に専念したいんだ」
ジルがいま目標としているのは、第四位階の魔法を習得することである。その習得には相当な時間と修練が必要であり、剣の訓練などに時間を費やす余裕はない。
「レニはいまどの魔法を使えるんだ?」
「ええと……、先輩が最初に教えてくれたライト、それから神聖魔法のキュアです。いまはマジックミサイルを特訓をしています」
キュアもマジックミサイルも第一位階の魔法である。
「なかなか順調だな。とくにキュアをもう使えるようになったのか。ひょっとしてレニは神聖適正が高いんじゃないか?」
「ええ、普通キュアはもっと上達した後に使えるようになるものだと、私も後から聞きました。私は習得するまでそんなに難しいことはなかったので、びっくりしたんですが」
「それが適正が高いということだよ。僕も治癒魔法はキュアしか使えない。神聖魔法なら僕と同レベルってことだな」
ジルがいたずらっぽくレニに笑いかける。レニもそれを見てこれ以上ない笑顔になる。
「先輩、からかわないでください。私が先輩となんて……」
「……いや、真面目な話、レニが高位の神聖魔法を使えるようになってくれると助かるよ。僕は大して使えないようだからね」
これは事実である。ジルは神聖魔法についてはすでに諦め、他の人間に任せようと思っている。もっともレニがいつまでも自分のそばに居てくれればの話であるが。
「先輩にも不得意な分野があるって分かって少し安心しました。――分かりました! 神聖魔法を頑張って覚えてみます!」
「いや、無理する必要はないからね。他の魔法を覚えたいならそっちを優先した方が良い」
レニが神聖魔法を使えればジルにとっても有り難いが、それをレニに押し付ける気にはなれない。なぜなら魔術師が魔法を覚えるには、時間や能力の点で数に限りがあるからである。
どんな魔術師も全ての魔法を使えるわけではない。ゆえに魔法の取捨選択はその魔術師の個性である。宮廷魔術師として採用される時の一つの基準として、その国が必要としている魔法を使えれば有利であるし、その国の宮廷魔術師が使えない魔法が使えるなら、すぐにでも採用されるだろう。
だからジルとしては、レニが自分の才能を見極め、自分で適切な魔法を選択してもらいたいのだ。
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