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1 ルーンカレッジ編
048 ヴァルハラ祭 〜魔法闘技大会2
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第一試合のセードルフと対戦相手が競技場へと向かう。後の試合の選手たちは自分の順番が来るのを控室で待つことになる。
試合慣れしていない者にとって、この時間はプレッシャーとなり嫌なものだ。ただジルはすでに実戦を経験していたし、元々この大会に特別な思いをもって参加したわけでもないので、あまり重圧は感じていなかった。その意味で言えば、勝ちが求められる上級クラスの学生、なかでも学生代表のセードルフの受けるプレッシャーは非常に大きなものであるはずだ。
レニは観客席で試合が始まるのを待っていた。ジルの試合は3試合目になっており、その他の試合は気楽に見ることが出来る。となりの席には、メリッサが外の屋台で買ったポテトフライの袋を持ってやってきた。
「第一試合のセードルフって人、前にジル先輩が言ってた人だっけ? 先輩と勝負して負けたっていう」
トーナメント表を眺めながらメリッサが聞く。レニはメリッサに言われて初めてセードルフの名前を思い出した。
「ああ、そういえばそうだよね。確かカレッジの学生代表の」
「だとすれば、そんなに強くないんだよね? 初戦で負けちゃうかな?」
セードルフも自分が新入生からこれほど侮られているとは思わないだろう。
眼下の競技場ではいよいよ第一試合が始まるらしい。セードルフの相手は中級クラスの3年生マルグレーテである。中級のなかではそれなりに名を知られた存在で、まず優秀な学生と言って良い。去年の大会でも中級ながら上級クラスの学生を倒して2回線に進んでいる。
競技場のディスプレイに両者の名前と経歴が表示される。セードルフのところには、昨年の魔法闘技大会準優勝と書かれている。
「あれっ、あの先輩結構強いんだ? 去年の準優勝だから弱くないはずだよね?」
メリッサがまたも正直ながら失礼なことを言う。セードルフは学生代表に選ばれるくらいであるから、弱いはずはないのだ。
「ビーー!」
第一試合の開始のブザーが鳴らされた。セードルフ、マルグレーテが同時に魔法の詠唱に入る。
この魔法闘技大会では、武器や体術など魔法以外の攻撃は禁止されており、魔法によるダメージだけがポイントとして判定される。例えばルーン・ソード(武器魔力付与)により魔力が付与された剣で攻撃するのは反則であるが、召喚魔法によって呼び出された魔獣の攻撃、サイコキネシスで相手を持ち上げ叩きつけるような攻撃はポイントとしてカウントされる。
選手たちはみな学生ゆえ、そう多くの魔法は使えない。そのため自分や相手がどの魔法を使えるのか、これにより相手との相性も決まるため、大会は運の要素も多分に左右する。
呪文はマルグレーテの方が早く完成した。マルグレーテのかざした手のひらから、白色の矢が投じられてセードルフに突き刺さる。これは第一位階のマジックミサイルである。詠唱が短く、早く呪文が完成するかわりに、威力の方は大したことがない。普通は低レベルの魔術師が使う攻撃魔法である。
しかもこの大会では威力が20分の1になるため、現実にはほとんどダメージを与えることはない。マルグレーテはどうやら数で押す気らしい。競技場のディスプレイにはセードルフの被ダメージが10と表示される。これが100になるとセードルフの負けである。
マルグレーテは続けて詠唱状態に入る。そしてようやくセードルフの魔法も詠唱が終わる。
「フレア!」
セードルフの頭上から炎の固まりがマルグレーテへと放たれ爆発する。第二位階の炎の元素系魔法フレアである。比較的詠唱時間が短く、威力も高いため、上級の魔術師でもよく使うスタンダードな魔法である。マルグレーテのダメージは25と表示される。そして攻撃に威力があったため、マルグレーテの詠唱は中断させられてしまう。
呪文の詠唱中に攻撃を受ければ、それが武器によるものであれ、魔法によるものであれ、集中力が途切れて魔法が失敗することがある。
マルグレーテはそれを狙って小技で押す気であったが、セードルフは見事にそのまま魔法を完成させたのである。
試合はこのままセードルフがフレアで押し続け勝利した。地味な勝ち方だが、魔術師の勝負とはこのように単純な勝負になることが多い。有効な手段でとことん押し続けるのは当然である。
控室にセードルフが姿を現したとき、ジルは自分の予想が当たったことを知った。ジルはセードルフのことをそれなりに評価しており、マルグレーテが相手では負けることはまずないと考えていたのである。
セードルフはジルを一瞥すると、空いている椅子へ腰をかけ、控室のモニターに目を向ける。試合が観戦できるように、控室にも魔法で競技場を映すモニターが設置されている。セードルフはこれでジルの試合も見るつもりだろう。
試合慣れしていない者にとって、この時間はプレッシャーとなり嫌なものだ。ただジルはすでに実戦を経験していたし、元々この大会に特別な思いをもって参加したわけでもないので、あまり重圧は感じていなかった。その意味で言えば、勝ちが求められる上級クラスの学生、なかでも学生代表のセードルフの受けるプレッシャーは非常に大きなものであるはずだ。
レニは観客席で試合が始まるのを待っていた。ジルの試合は3試合目になっており、その他の試合は気楽に見ることが出来る。となりの席には、メリッサが外の屋台で買ったポテトフライの袋を持ってやってきた。
「第一試合のセードルフって人、前にジル先輩が言ってた人だっけ? 先輩と勝負して負けたっていう」
トーナメント表を眺めながらメリッサが聞く。レニはメリッサに言われて初めてセードルフの名前を思い出した。
「ああ、そういえばそうだよね。確かカレッジの学生代表の」
「だとすれば、そんなに強くないんだよね? 初戦で負けちゃうかな?」
セードルフも自分が新入生からこれほど侮られているとは思わないだろう。
眼下の競技場ではいよいよ第一試合が始まるらしい。セードルフの相手は中級クラスの3年生マルグレーテである。中級のなかではそれなりに名を知られた存在で、まず優秀な学生と言って良い。去年の大会でも中級ながら上級クラスの学生を倒して2回線に進んでいる。
競技場のディスプレイに両者の名前と経歴が表示される。セードルフのところには、昨年の魔法闘技大会準優勝と書かれている。
「あれっ、あの先輩結構強いんだ? 去年の準優勝だから弱くないはずだよね?」
メリッサがまたも正直ながら失礼なことを言う。セードルフは学生代表に選ばれるくらいであるから、弱いはずはないのだ。
「ビーー!」
第一試合の開始のブザーが鳴らされた。セードルフ、マルグレーテが同時に魔法の詠唱に入る。
この魔法闘技大会では、武器や体術など魔法以外の攻撃は禁止されており、魔法によるダメージだけがポイントとして判定される。例えばルーン・ソード(武器魔力付与)により魔力が付与された剣で攻撃するのは反則であるが、召喚魔法によって呼び出された魔獣の攻撃、サイコキネシスで相手を持ち上げ叩きつけるような攻撃はポイントとしてカウントされる。
選手たちはみな学生ゆえ、そう多くの魔法は使えない。そのため自分や相手がどの魔法を使えるのか、これにより相手との相性も決まるため、大会は運の要素も多分に左右する。
呪文はマルグレーテの方が早く完成した。マルグレーテのかざした手のひらから、白色の矢が投じられてセードルフに突き刺さる。これは第一位階のマジックミサイルである。詠唱が短く、早く呪文が完成するかわりに、威力の方は大したことがない。普通は低レベルの魔術師が使う攻撃魔法である。
しかもこの大会では威力が20分の1になるため、現実にはほとんどダメージを与えることはない。マルグレーテはどうやら数で押す気らしい。競技場のディスプレイにはセードルフの被ダメージが10と表示される。これが100になるとセードルフの負けである。
マルグレーテは続けて詠唱状態に入る。そしてようやくセードルフの魔法も詠唱が終わる。
「フレア!」
セードルフの頭上から炎の固まりがマルグレーテへと放たれ爆発する。第二位階の炎の元素系魔法フレアである。比較的詠唱時間が短く、威力も高いため、上級の魔術師でもよく使うスタンダードな魔法である。マルグレーテのダメージは25と表示される。そして攻撃に威力があったため、マルグレーテの詠唱は中断させられてしまう。
呪文の詠唱中に攻撃を受ければ、それが武器によるものであれ、魔法によるものであれ、集中力が途切れて魔法が失敗することがある。
マルグレーテはそれを狙って小技で押す気であったが、セードルフは見事にそのまま魔法を完成させたのである。
試合はこのままセードルフがフレアで押し続け勝利した。地味な勝ち方だが、魔術師の勝負とはこのように単純な勝負になることが多い。有効な手段でとことん押し続けるのは当然である。
控室にセードルフが姿を現したとき、ジルは自分の予想が当たったことを知った。ジルはセードルフのことをそれなりに評価しており、マルグレーテが相手では負けることはまずないと考えていたのである。
セードルフはジルを一瞥すると、空いている椅子へ腰をかけ、控室のモニターに目を向ける。試合が観戦できるように、控室にも魔法で競技場を映すモニターが設置されている。セードルフはこれでジルの試合も見るつもりだろう。
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