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1 ルーンカレッジ編
053 ヴァルハラ祭 〜祭りの後1
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最後は不戦勝という締まらない形になってしまったが、ジルは魔法闘技大会に優勝した。学生によるお遊びの大会ではあるが、カレッジのレベルは非常に高いため、優勝という経歴はそれなりの実績として評価される。
だがジルにとっては、優勝と言っても内心忸怩たる思いであった。アスランと万全の状態で戦っていたら、自分は確実に勝てなかったであろう。それはトーナメントの対戦相手に恵まれたということだ。まだまだ力をつけなけれなならないことが多すぎる、ジルはそう自分に厳しく考えていた。
「先輩、最後にミスコンも見ていきましょうよ!」
それを横目でみながら、レニがジルの腕をとって誘う。ジルの気分をなんとか換えてあげたい、そんな気持ちにあふれている。
そんなレニを見ては、ジルとていつまでも難しい顔をしているわけにはいかない。
「……そうだな、ヴァルハラ祭の最後のイベントに行ってみるか」
「でも、あんまり女の子をジロジロ見ちゃ駄目ですよ!」
レニが容赦のないことを言う。ミスコンの会場に行って女子を見るなと言うのは酷な話である。
剣闘大会、魔法闘技大会とは違い、ミスコンはヴァルハラ祭の正式なイベントというわけではない。一部の有志の学生によって運営されている。もっとも、有志の学生の多くは男子学生だが、羽目をはずしたい女子も意外に多い。とくにルーンカレッジの6割は女子学生なので、女子が主役のイベントが求められるのである。
ミスコンの候補は誰でもなれるが、エントリーのためには10名以上の学生の推薦が必要である。これが意外とハードルが高いため、そう沢山の女子がエントリーするわけではない。
ジルたちはミスコン会場の掲示板の前まで来た。掲示板には候補者の似顔絵と名前、自己紹介が記された紙が張られていた。
「レニも出れば良かったんじゃないか?」
突然のジルの言葉に、レニは飲んでいたジュースを吹き出してしまう。
「な、何を言ってるんですか先輩! 私なんて無理に決まってるでしょう」
「そうかな、レニは結構いい線いきそうだと思うけどな。まあ確かにまだ13歳だから不利だとは思うけど、何年かすればレニは優勝できると思うぞ」
ジルはやはり天然だ、レニはそう思った。こんなことを真顔で本人に言うなんて普通は恥ずかしくて出来ないだろう。しかしそれだけに、ジルの偽らざる思いを聞いた気がして、レニも悪い気はしない。
「それではいつか出てみますよ。その時は先輩も応援してくださいね!」
そうレニは返しておいた。
今年のミスコンに出場する女子学生は、全部で8人だった。上級クラスが5人、中級クラスが3人である。レニの話では初級クラスの女子は、「暗黙の了解」で出場できないことになっているらしい。もしそれを破ったらどうなるか……レニは「恐ろしい事になりますよ!」と言っていた。
ジルが掲示板に張られた候補者についての紹介を見ていると、その中によく知る学生を発見した。中級クラスのイレイユである。
「イレイユ、こんなのに出ていたのか……」
と言いつつもそれほど意外でもない。イレイユは明るく活発で、お祭り好きな女の子だ。むしろ性格的に向いていると言ってよい。これはイレイユを応援しないわけにはいかなくなったな、とジルは思っていた。
ミスコンの審査は、壇上での自己紹介から始まり、特技などのアピールタイム、水着審査などがある。審査をするのは公平を自称する学生有志6人である。本当に彼らは公平なのか、というのは毎年聞かれる批判だが、意外にも毎年慣例として続いている。
すでにコンテストは始まっている。今は候補者の女子学生たちが壇上で自己紹介をしている。次はイレイユの番らしい。
「こんにちは! 私は中級クラス3年のイレイユです。この学校に入ったのは幻獣たちを召喚できるようになりたいからです。とくに美しいフェニックスちゃん、いつかあの子を召喚したいんです! それで魔法が上手くなるように、毎日トレーニングしています。宜しくお願いします!」
いつもと変わらず元気な自己紹介だった。もう少しお淑やかな方がコンテストでは受けるかもしれない、とレニなどは感じていた。
次はアピールタイムである。ここでは候補者が自分の得意なものなどを披露し、その才能をアピールする場である。
「あいつは一体何をするんだろうな」と、ジルは考えていた。
他の候補者たちはダンスや歌を披露したり、楽器の演奏など無難なことをしていた。
次はイレイユの番だ。
「4番のイレイユです。私はこれから得意の召喚魔法でユニコーンを召喚しまーす!」
会場がざわついた。無理もない。ユニコーンは第三位階の魔法である。加えて召喚魔法は非常に難しい魔法であり、それを合わせて考えると中級クラスでユニコーンを召喚できるなど極めて稀である。
イレイユは少しの時間集中を高めると、朗々と呪文を詠唱する。これはジルの聞いたことがない魔法である。召喚魔法はセンスが必要な扱いが難しい魔法のため、わざわざ習得する魔術師は少ない。
「ユニコーーン!」
イレイユが右手を差し出すと、そこに純白で一本の角を生やした美しい馬が出現した。ユニコーンである。
ユニコーンは通常神聖な存在として知られている。攻撃の手段としては突進や蹴りなどの他、角による攻撃は大きなダメージを敵に与える。また魔法のような特殊能力があり、敵を行動不能にする力を持つ。かなりの上位に位置する幻獣である。
おおおおおお!
会場は沸きに沸いていた。今まで知識としては知っていても、教員も含めて見たことがある者はほとんどいないだろう。イレイユは大得意である。イレイユは更にユニコーンに命じて芸をさせる。二本足で立つ、お手、3回まわってヒヒーンなど……。
「どこかおかしくないか、コレ……」
周囲でざわめきが起こっている。ユニコーンを召喚したことがアピールになっているか、極めて微妙なところである。
(普通に召喚するだけで良かったのに……)
ジルはユニコーンと戯れるイレイユを見て溜息をついた。
だがジルにとっては、優勝と言っても内心忸怩たる思いであった。アスランと万全の状態で戦っていたら、自分は確実に勝てなかったであろう。それはトーナメントの対戦相手に恵まれたということだ。まだまだ力をつけなけれなならないことが多すぎる、ジルはそう自分に厳しく考えていた。
「先輩、最後にミスコンも見ていきましょうよ!」
それを横目でみながら、レニがジルの腕をとって誘う。ジルの気分をなんとか換えてあげたい、そんな気持ちにあふれている。
そんなレニを見ては、ジルとていつまでも難しい顔をしているわけにはいかない。
「……そうだな、ヴァルハラ祭の最後のイベントに行ってみるか」
「でも、あんまり女の子をジロジロ見ちゃ駄目ですよ!」
レニが容赦のないことを言う。ミスコンの会場に行って女子を見るなと言うのは酷な話である。
剣闘大会、魔法闘技大会とは違い、ミスコンはヴァルハラ祭の正式なイベントというわけではない。一部の有志の学生によって運営されている。もっとも、有志の学生の多くは男子学生だが、羽目をはずしたい女子も意外に多い。とくにルーンカレッジの6割は女子学生なので、女子が主役のイベントが求められるのである。
ミスコンの候補は誰でもなれるが、エントリーのためには10名以上の学生の推薦が必要である。これが意外とハードルが高いため、そう沢山の女子がエントリーするわけではない。
ジルたちはミスコン会場の掲示板の前まで来た。掲示板には候補者の似顔絵と名前、自己紹介が記された紙が張られていた。
「レニも出れば良かったんじゃないか?」
突然のジルの言葉に、レニは飲んでいたジュースを吹き出してしまう。
「な、何を言ってるんですか先輩! 私なんて無理に決まってるでしょう」
「そうかな、レニは結構いい線いきそうだと思うけどな。まあ確かにまだ13歳だから不利だとは思うけど、何年かすればレニは優勝できると思うぞ」
ジルはやはり天然だ、レニはそう思った。こんなことを真顔で本人に言うなんて普通は恥ずかしくて出来ないだろう。しかしそれだけに、ジルの偽らざる思いを聞いた気がして、レニも悪い気はしない。
「それではいつか出てみますよ。その時は先輩も応援してくださいね!」
そうレニは返しておいた。
今年のミスコンに出場する女子学生は、全部で8人だった。上級クラスが5人、中級クラスが3人である。レニの話では初級クラスの女子は、「暗黙の了解」で出場できないことになっているらしい。もしそれを破ったらどうなるか……レニは「恐ろしい事になりますよ!」と言っていた。
ジルが掲示板に張られた候補者についての紹介を見ていると、その中によく知る学生を発見した。中級クラスのイレイユである。
「イレイユ、こんなのに出ていたのか……」
と言いつつもそれほど意外でもない。イレイユは明るく活発で、お祭り好きな女の子だ。むしろ性格的に向いていると言ってよい。これはイレイユを応援しないわけにはいかなくなったな、とジルは思っていた。
ミスコンの審査は、壇上での自己紹介から始まり、特技などのアピールタイム、水着審査などがある。審査をするのは公平を自称する学生有志6人である。本当に彼らは公平なのか、というのは毎年聞かれる批判だが、意外にも毎年慣例として続いている。
すでにコンテストは始まっている。今は候補者の女子学生たちが壇上で自己紹介をしている。次はイレイユの番らしい。
「こんにちは! 私は中級クラス3年のイレイユです。この学校に入ったのは幻獣たちを召喚できるようになりたいからです。とくに美しいフェニックスちゃん、いつかあの子を召喚したいんです! それで魔法が上手くなるように、毎日トレーニングしています。宜しくお願いします!」
いつもと変わらず元気な自己紹介だった。もう少しお淑やかな方がコンテストでは受けるかもしれない、とレニなどは感じていた。
次はアピールタイムである。ここでは候補者が自分の得意なものなどを披露し、その才能をアピールする場である。
「あいつは一体何をするんだろうな」と、ジルは考えていた。
他の候補者たちはダンスや歌を披露したり、楽器の演奏など無難なことをしていた。
次はイレイユの番だ。
「4番のイレイユです。私はこれから得意の召喚魔法でユニコーンを召喚しまーす!」
会場がざわついた。無理もない。ユニコーンは第三位階の魔法である。加えて召喚魔法は非常に難しい魔法であり、それを合わせて考えると中級クラスでユニコーンを召喚できるなど極めて稀である。
イレイユは少しの時間集中を高めると、朗々と呪文を詠唱する。これはジルの聞いたことがない魔法である。召喚魔法はセンスが必要な扱いが難しい魔法のため、わざわざ習得する魔術師は少ない。
「ユニコーーン!」
イレイユが右手を差し出すと、そこに純白で一本の角を生やした美しい馬が出現した。ユニコーンである。
ユニコーンは通常神聖な存在として知られている。攻撃の手段としては突進や蹴りなどの他、角による攻撃は大きなダメージを敵に与える。また魔法のような特殊能力があり、敵を行動不能にする力を持つ。かなりの上位に位置する幻獣である。
おおおおおお!
会場は沸きに沸いていた。今まで知識としては知っていても、教員も含めて見たことがある者はほとんどいないだろう。イレイユは大得意である。イレイユは更にユニコーンに命じて芸をさせる。二本足で立つ、お手、3回まわってヒヒーンなど……。
「どこかおかしくないか、コレ……」
周囲でざわめきが起こっている。ユニコーンを召喚したことがアピールになっているか、極めて微妙なところである。
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ジルはユニコーンと戯れるイレイユを見て溜息をついた。
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