シュバルツバルトの大魔導師

大澤聖

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2 動乱の始まり編

068 ゼノビアからの招待

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 レニの実家に二週間滞在した後、ジルとレニはルーンカレッジへと帰ってきた。この二週間、レムオンは軍務が忙しいため初日に話して以来ほとんど会うことはなかったが、母アニスは毎日のように歓待してくれた。ジルはこの間、快適に気持ち良く過ごすことができたのである。

「レニ。アニスさま、レムオンさまに宜しく伝えくれ。この二週間、お二人や家中の方々には本当に良くしてもらった。今まで夏をこんなに快適に過ごしたことはなかったよ」

 ジルは正直な胸の内をそう伝えた。

「先輩に喜んでもらえて私も嬉しいです。先輩を両親に紹介できましたし」

 レニにとっても目的を無事に果たすことができた。どうやら父レムオンもジルを気に入った様子であった。

「先輩は残りの期間はどうされるんですか?」

 夏季休暇は一ヶ月あり、あと半月ほど残っている。

「そうだな。何もなければ魔法を研究しようと思っている」

「そうですよね、先輩お忙しいのに私が時間をとってしまって……」

「いや、そんなことは気にしなくていい。今回の事も自分で決めて行ったことだ」

 レニの実家を訪ねたことは、ジルにとって本当に良い思い出となっていた。

**

 ジルが宿舎に帰ると、部屋にはジル宛の手紙が届いていた。ペーパーナイフで手紙を開封すると、中にはゼノビアからの手紙が入っていた。

 ゼノビアとは王都を案内してもらってから半年ほど会っていない。ジルの脳裏にはまだゼノビアとの最後のシーンが残っていた。ジルは妄想を振り払うように軽く頭を左右に振ると、手紙に眼を通した。

「やあジル、久しぶりだな。学生らしく魔法の勉学に励んでいるだろうか。無事上級クラスに進級しただろうか。君のことだ、恐らく何の問題もないのだろう。今日手紙を書いたのは、王都ロゴスで行われる“アリア祭”で君に協力してもらうためだ。アリア祭は毎年行われる恒例の祭りで、今年はアルネラさまが祭りを主催される。その警護ということで、君を王都へと招待したい。警護の仕事をしてもらうことになるが、祭りを楽しんでもらっていい。アルネラさまも君が顔を出せば嬉しいだろうし、私も君に会えると嬉しい。もし来る気があるなら、私宛てに返信して欲しい。 ゼノビア」

 ジルの記憶では、アリア祭とは王女アリアを記念するため、年一回ロゴスで行われる祭りである。毎年、祭りでアリアに扮する純血の女性が選ばれ、その女性はアリアとしてロゴスの通りを練り歩くのである。どうやら今年はアリア役にアルネラが選ばれたらしい。しかし王女のアルネラがそんな役をする必要があるのだろうか、ジルは疑問に思った。

 ロゴスを久しぶりに訪れたい気はあった。なにしろ歴史のある古都であり、アリア祭という伝統文化に触れるのはジルにとって嬉しいものである。それに、“友達”と言いつつ、アルネラのもとへ半年の間顔を出していないことに、ジルはいささか後ろめたさを感じていた。それにゼノビアに会えるのも楽しみだ。そう考えたジルは、了承する旨を手紙に記して返信した。
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