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2 動乱の始まり編
081 帝国の策謀2
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「ザービアック、もう良い。過ぎたことを追求しても何も生まれん。少なくとも、我々の犯行だということは知られていないのだな?」
ヴァルナードがそうベイロンに助け舟を出した。
「はい、それは確かです。冒険者が何名かやられましたが、絶対に秘密が漏れることはありません」
ベイロンは自信を持ってそう答えた。戦いの中で部下としては唯一副官が一人倒されたが、彼は「黒の手」の掟に従い一切の身元が分からないようにしてある。可哀想なことだが、それだけに信頼できる男だったのだ。
「王国では現在の王が高齢であるため、王位継承問題が起きようとしております。それゆえ、誘拐事件は対立する派閥がやったのではないか、そう考える者もいるでしょう」
ザービアックがベイロンの言を引き継いでそう説明した。確かにゼノビアなど王女派の人間は、心の片隅に王国内の人間がやったことではないかとの疑念を抱いている。そのような疑念によって王国に内部対立が起これば、それはそれで帝国を利することになる。
「しかし、本当に長男のユリウスは廃されるのか?」
ベイロンはそうザービアックに確認した。ザービアックは帝国の「大魔導師」として、あらゆる情報に通じている。ベイロンは彼と必ずしも関係が良いわけではないが、その識見は大いに認めている。
「その可能性は高いな。いまシュバルツバルトの王位継承問題はこのようになっている」
ザービアックは現在の状況をまとめ、紙に書き記した。
長男 ユリウス(22) 強い後ろ盾なし 凡庸
長女 アルネラ(18) ヘルマン伯、近衛騎士など 懸念材料:女子
次男 ルヴィエ(13) 最大派閥のブライスデイル侯など 懸念材料:若年、ブライスデイル侯への反感
現在もっとも有力視されているのは次男のルヴィエである。彼自身の才よりも、大貴族ブライスデイル侯が後見人となっていることが大きい。
ブライスデイル侯の孫娘エリーゼは、すでにルヴィエの妻となることが内々で決まっている。ブライスデイル侯としては外戚として権力を振るうために、婿のルヴィエを強く支持するだろう。彼が支持すれば、彼が押さえている大貴族たちもルヴィエを支持するに違いない。
しかしルヴィエにも泣き所がないわけではない。まず兄弟順が一番低いということ。シュバルツバルトでも、王位の継承はできるだけ長幼の序を考慮した方が良いと考えられている。まだ13才のルヴィエは国王の任にたえないと考える者もいるだろう。
そしてもう一つは、最大派閥のブライスデイル侯には敵も多いということである。反ブライスデイル派の貴族たちが結集すれば、容易ならざる勢力になるかもしれない。
次に有力なのがアルネラである。後ろ盾には王女の従兄にあたるヘルマン伯がつき、国王派の多くの貴族や騎士などもアルネラを支持しているようだ。ただし統制のとれた「ブライスデイル派」に比べ、国王派はまとまりが弱い。それに過去に女王が居なかったわけではないが、やはり女子であるということが最大の弱みであり、国王派の中にもそれを懸念する者は多い。
最後にユリウス。もともと長男として将来が約束されていたはずであるが、能力不足を露呈して古くからの家臣にも見放されている。現在積極的にユリウスを支持しているのは、ユリウスに娘を嫁がせたアルトワ侯の一派、そして幼い時より仕えてきた一部の近臣であるが、ルヴィエやアルネラに比べ支持する貴族は格段に少ない。
「我々にとっては長男ユリウスが王位につくことがベストだったんだがな。そのためにアルネラの暗殺まで試みたわけだが……」
玉座に頬杖をつきながらヴァルナードはそうつぶやいた。
ヴァルナードがそうベイロンに助け舟を出した。
「はい、それは確かです。冒険者が何名かやられましたが、絶対に秘密が漏れることはありません」
ベイロンは自信を持ってそう答えた。戦いの中で部下としては唯一副官が一人倒されたが、彼は「黒の手」の掟に従い一切の身元が分からないようにしてある。可哀想なことだが、それだけに信頼できる男だったのだ。
「王国では現在の王が高齢であるため、王位継承問題が起きようとしております。それゆえ、誘拐事件は対立する派閥がやったのではないか、そう考える者もいるでしょう」
ザービアックがベイロンの言を引き継いでそう説明した。確かにゼノビアなど王女派の人間は、心の片隅に王国内の人間がやったことではないかとの疑念を抱いている。そのような疑念によって王国に内部対立が起これば、それはそれで帝国を利することになる。
「しかし、本当に長男のユリウスは廃されるのか?」
ベイロンはそうザービアックに確認した。ザービアックは帝国の「大魔導師」として、あらゆる情報に通じている。ベイロンは彼と必ずしも関係が良いわけではないが、その識見は大いに認めている。
「その可能性は高いな。いまシュバルツバルトの王位継承問題はこのようになっている」
ザービアックは現在の状況をまとめ、紙に書き記した。
長男 ユリウス(22) 強い後ろ盾なし 凡庸
長女 アルネラ(18) ヘルマン伯、近衛騎士など 懸念材料:女子
次男 ルヴィエ(13) 最大派閥のブライスデイル侯など 懸念材料:若年、ブライスデイル侯への反感
現在もっとも有力視されているのは次男のルヴィエである。彼自身の才よりも、大貴族ブライスデイル侯が後見人となっていることが大きい。
ブライスデイル侯の孫娘エリーゼは、すでにルヴィエの妻となることが内々で決まっている。ブライスデイル侯としては外戚として権力を振るうために、婿のルヴィエを強く支持するだろう。彼が支持すれば、彼が押さえている大貴族たちもルヴィエを支持するに違いない。
しかしルヴィエにも泣き所がないわけではない。まず兄弟順が一番低いということ。シュバルツバルトでも、王位の継承はできるだけ長幼の序を考慮した方が良いと考えられている。まだ13才のルヴィエは国王の任にたえないと考える者もいるだろう。
そしてもう一つは、最大派閥のブライスデイル侯には敵も多いということである。反ブライスデイル派の貴族たちが結集すれば、容易ならざる勢力になるかもしれない。
次に有力なのがアルネラである。後ろ盾には王女の従兄にあたるヘルマン伯がつき、国王派の多くの貴族や騎士などもアルネラを支持しているようだ。ただし統制のとれた「ブライスデイル派」に比べ、国王派はまとまりが弱い。それに過去に女王が居なかったわけではないが、やはり女子であるということが最大の弱みであり、国王派の中にもそれを懸念する者は多い。
最後にユリウス。もともと長男として将来が約束されていたはずであるが、能力不足を露呈して古くからの家臣にも見放されている。現在積極的にユリウスを支持しているのは、ユリウスに娘を嫁がせたアルトワ侯の一派、そして幼い時より仕えてきた一部の近臣であるが、ルヴィエやアルネラに比べ支持する貴族は格段に少ない。
「我々にとっては長男ユリウスが王位につくことがベストだったんだがな。そのためにアルネラの暗殺まで試みたわけだが……」
玉座に頬杖をつきながらヴァルナードはそうつぶやいた。
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