18禁BL/ML短編集

結局は俗物( ◠‿◠ )

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【打切未完結】威鳴祭祀社 6P(27話)未完/傍観主人公/年上攻め/師弟

威鳴祭祀社 6 未完打ち切り

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26話

 布団に入った青明がもぞもぞと動いた。師の様子を看に行くと言って聞かなかったが、部屋を塞ぐと大人しく布団に入っていったが、眠れないらしかった。視界を部分的に塞ぐ黒い霞は夜に溶けている。耳の奥の騒めきはまだ安定せず小さくあったが、それでも青年の落ち着かない物音は十分に聞こえる。
「ふ、…ぅッ、ん…」
 くぐもった細い声が布団と枕の間から漏れている。
「ぁ…っ、」
 息遣いに頬や背筋を撫ぜられているような感じがあった。手で触れられるより輪郭に沿っている。青年の金髪がさらさらと翻った。黒い靄に邪魔された視界の中で彼と目が合った。安住は腰を上げて布団に乗った。
「お前、な…に…」
 護手淫の修行中に聞こえた息だった。背後から彼に添い、前に手を伸ばす。熱く硬い膨らみを包んだ。
「やッぁ、ぉ前、手…怪我してっ…!ぁっあ、」
 布と素肌の間に手を入れる。それでも生命尊の力の弱まった身体では触覚も衰え、人間の肌との隔たりがあった。しかし彼のそこは熱く、爛れた指に染み込んでいく。
「護手淫じゃな…っ、ぁんっ」
 背を丸め、尻が安住の下半身へ押し付ける。腕の中で青明は強張り、包帯巻かれた手を外そうとしたが躊躇っていた。握り込んで、見様見真似で扱く。
「あ、ずみ…ぁあ、護手淫、途中っだ…たからあっ、ぁ…」
 くちくちと音がした。彼の肩に顔を埋める。鼻奥が求めた匂いで満ち溢れた。授けられた言葉が出てしまう。
「待っ、あず、みぃ…んぁっ、下着汚れる、から…っ、ぁぁっ待って、んん…ッ」
 振り向きかけた青明の唇が濡れている。吸い付きそうになった。茉箸にたぶらかされた言葉はもう舌の上にある気がした。
「ぁ、下着…汚れっ…あ、ずみ、…あずみぃ!」
 白い粘液が出るのだ。安住は手を止めた。腕と胸の中で青明は肩を上下させている。少し汗ばんでいるようで、彼の優しい香りが蒸れている。
「抜いてくる…」
 掠れた声でそう告げ、青明は布団を出ようとした。安住は首を振って布団へ戻す。
「安住…お前、今日変…」
 眉を下げ、彼は安住に従う。しかし数秒だった。寝間着の下へ安住は手を掛け、治まりのつかない茎に頭を突っ込んだ。
「ちょ、安住っ…」
 喉奥まで彼の器官を咥え、茉箸に唆された言葉を押し戻す。鼻腔まで青明が薫っていく。
「あ、ず、み…」
 髪を掴まれたがあまりにも弱く、撫でて梳かれているようで、熱芯に舌を絡めた。祭礼酒しか知らなかった味蕾に青明を覚える。
「あぁ…っん、出る…安住、口…放せっ、」
 放せなかった。味の濃い先端部を舌の裏で刺激した。
「ぁんんっ」
 びくびくと青明の身体が跳ね、口内で彼の肉茎が爆ぜた。護手淫の修行とは同じもので、違っていた。夜に彼が師にしているように弾けた後もまだ舐め摩る。
「安住…?」
 蕩けた声と共に手が頬に降ってきた。厚手の布を間に挟んだような鈍い感覚だったが、それでも青明の体温は心地良かった。
「飲んだの、か…?」
 頷く。頬にあった手が耳まで動き、視界を邪魔する黒い靄の間に青明が大きく映り込む。額に一点、微熱が触れた。彼が夜、この営みを終えた直後に師からされているものだった。安住は青明の薄く開いている濡れた唇に見惚れた。
「ごめんな」
 眉を下げ、円を切ろうとした手を止めた。首を振る。これは護手淫の修行ではない。耳の奥の騒めきが大きくなる。彼の声はしっかりと記憶している。
「お前もここで寝ろよ」
 穏やかな体温が慎重に爛れた指を辿り、包帯に巻かれた手を包む。布団を被せられ、彼は枕を半分空けた。
「また明日な。生命尊様にきちんと伝える。あの人と一緒にいたい…」
 くるりと向いて、喉が隆起した。
「もちろん、お前とも、さ」
 まだ繋がっている指が熱くなる。茉箸に預けられた言葉が逆流し、祭礼酒でしか潤わない喉をさらに渇かしていく。

27話

 青明はしっかりとした足取りで師の自室へとやって来た。日光に当たりながらラタンチェアに深く腰掛け眠っている主人の肩を安住は掴む。艶を失った髪に反し、まだ燃えるようなあでやかな黒い瞳が長く濃い睫毛の下から現れる。
生命尊みこと様」
 簾の前に彼は膝をついた。
「そのままで構いません。一夜考えました。わたくしの答えは変わりません。祭祀者になります。そして生命尊様の跡を継ぎ、務めを果たしたく存じます」
 生命尊は細く深い息を吐いた。骨の浮かぶ手の甲がラタンチェアの肘掛けを握り直す。
「いけない」
「っ!何故です!」
「昨日も話したね。祭祀者を継ぐというのはどういうことか。私はね、青明…君を死なせたくない」
 張りを失った眦が光るのを安住は傍で見下ろしていた。
「…ですが、わたくしは生命尊様の弟子でございます。生命尊様と同じ運命を辿ることこそ、弟子の本懐です」
「違うよ、青明。君の覚悟どうこうの話じゃあないんだよ…私が……ぼく個人が、ぼく個人として君を死なせたくないんだ」
 主人の喉が引き攣り、安住はその肩に触れた。巻かれた包帯が炙られ、縮み、焦げていく。爛れた皮膚が透き通って、主人の中に吸収されていく。黒い靄に覆われた視界がさらに狭くなる。眩しいくらいに晴れ、主人の自室を四方八方から照らしていた光はどこか曇ってしまった。耳の奥の騒めきも増し、すでに境内の小鳥の囀りや虫の鳴き声は聞こえず、主人の弟子の声を聞き取るので精々だった。
「それ、は…」
「君が好きなんだ。伝えていたつもりで伝えていなかったね。君が好きだ。師匠と弟子だなどという関係を越えて…」
 ゆっくりと長い睫毛が上下する。
「これで…言い遺すことはない。口にしてしまえば、師弟関係は終わりだ。新しい関係などと格好をつけてみたはいいが、君を傷付けるだけだった」
「生命尊、様…?あの…」
 蠢く黒い靄の中で簾越しに戸惑っている彼を安住はただただじっと見つめた。
「私は、君を好きで…抱いた。修行だなんて、嘘だよ。師匠失格だ。そんな可愛い声で、呼ぶもんじゃない」
 吐血するような調子で生命尊は乾いた笑い声を出す。
「お顔を拝見しても、よろしいですか」
「君に未練を残してしまうよ。もう私は、昨日で君の顔を見るのは最期と決めているんだ」
「……嫌です」
 青明は簾をくぐった。安住は目に入った眩しさを焼き付ける。
「生命尊様」
「君はいつでも美しいな。覚悟が、揺らぐよ」
 近付いてくる弟子に生命尊は顔を逸らした。
「俺だって貴方のことが、好きなのに…?貴方のことが好きで、でも貴方のようになりたかったから…」
 主人は眉を顰めた。安住は胸の中に呑み込んだ漬物石に罅が入っていくような心地がした。
「ありえない」
「公私混同していたのは俺のほうです。貴方でなかったらとっくに辞めていました。ただ貴方が好きで、貴方のようになりたくて…」
 顔を逸らす生命尊の前に立ち、骨と皮だけになった肘掛けの上の手を彼は取って両手で握った。
「冷めた俺を温かく迎えてくれたのは貴方だ。行き場のなかった俺に居場所をくれたのも、ただ無駄に生きていた俺に夢を与えてくれたのも、俺の中には生命尊様しかいない…もう貴方を否定して生きていくことは出来ません」
 簾の奥の境内の庭園を凝然としている生命尊の目に水膜が張る。瞬かないように必死になり、瞼が小刻みに動いていた。
「夢の中にいるみたいだ」
「俺もです」
 生命尊は立ち上がり、目の前の青年を捉えて唇を奪った。彼は柱に追い詰められ、想い人に挟まれる。口付けは角度を変えては濃く絡み、互いに呼吸を貪り合う。枝切れのようになった指に金糸が巻き付き、その手に髪の持ち主は指を差し入れる。
「ぅ、ん…っ、ふ…」
 吐血するほど弱った人間とは思えないほどの熱い舌が青明の口腔を掻き回す。遠慮していた彼の舌先も余裕をなくし、大胆に想い人の情熱を受け入れる。
「は、ぁ…っ、ンぁ…」
 火照った青年の幸せそうな表情を安住は透けていく身体でじっと見ていた。

【未完】

表紙


無加工
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