Lifriend

結局は俗物( ◠‿◠ )

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White Day 小話 1/2

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 Lifriend本編の根源を覆す世界線、パラレルワールドでのWD小話。



 ぼぅっとしていた初音の肩を青年が掴む。大丈夫ですか?と僅かに挑発も入っていそうな心配していますという表情を浮かべて初音を見上げる。
「へ!?あ!?」
 初音は大声を上げてしまい、掴まれた肩ともう片方の肩を浮かせた。
「考えてください、どれがいいか!」
 青年は頭を抱える。初音は背丈があり容姿も秀でているためよく目立つ。
「ん~じゃあコレとか?」
 図書館の本棚から適当に本を選ぶように初音は並んだ青や水色、緑の箱が並ぶ棚からひとつ薄い箱を手に取る。
「そんなテキトーでいいんですか?」
「だって分からねぇもん俺」
 初音が苦笑いを向けると青年は顔を逸らす。
「だから何度も説明しているんです。チョコ貰ったんですよね?返さないと…」
「変な文化だな?貰った後日に返せばいいだろ」
 唯一初音にチョコを渡した人物は返しを期待するような者でもなかった。さらにお返しをすることに躊躇いがある、それなりの相手がいる。
「中身なんてないです。形式ですから。でも世間では求められるんです」
 青年はカートに箱を入れていく。棚からカートに運ばれる工程を初音は呑気に頭を動かしながら見ている。右へ左へと首が動く。じゃらされている猫のようだ。
「そんなに要るのか?」
「大体貰った数の分でいいんですよ」
 青年は流れ作業のように箱を入れていく。
「すげぇな」
「前の仕事先の縦と横の繋がりがなかなか切れずにいるんです」
 青年が仕事中に薄いブルーの上下の服を着て、名前の書かれた札を付けた青い紐を首に掛けていたのを見たことがあるが、前の仕事先のことは知らなかった。
「へぇ~。じゃあこれとこれでいいかな」
 白いクマのぬいぐるみが青と銀のリボンを首に巻いて、緑のプレゼント箱を抱いている。おそらくプレゼント箱に何かお菓子が入っているのだろう。そして茶色のクマのぬいぐるみは赤と金のリボンを首に巻いて紫のプレゼント箱を抱いていた。
「中身確認した方がいいですよ。なんか返したお菓子によって返事に意味が出来てしまうみたいです」
 初音は後ろで数を確認しながら淡々と話す青年を振り返る。
「面倒臭いな?」
「ホントですよ。マシュマロ以外ならハズレなかったと思いますけどね」
 青年が初音をホワイトデーの買い出しに誘った。バレンタインデーを知らないようだから、おそらくホワイトデーも知らないだろうと。
「じゃあマシュマロにしよ」
 初音が一度手に取ったクマのぬいぐるみのケースを戻す。青年は訝しむ視線を寄越す。
「まぁいちいちお返しに意味を見出されちゃやっていられないですし」
 初音が置いたクマのぬいぐるみが入ったケースを青年は一瞥する。
「マシュマロここ売ってます?」
 青年が尋ねながら初音が置いたクマのぬいぐるみのケースを手に取って見つめる。クマのぬいぐるみのケースに貼られた成分表を読む。白いクマがバニラ味、茶色のクマがいちご味のマシュマロ。珍しさに青年は二度見した。マシュマロの返事にネガティブな意味合いがあるのだと広まった世間で、内容はチョコレートか、キャンディか、クッキーかと思っていた。
「これマシュマロみたいですよ」
 成分表を指して青年が言えば初音は再びその2つを抱えた。
「じゃあこれで決まり」
 会計を済ませて、青年の重そうな量の荷物を半分持つ。人間関係を大事にしているらしい。青年の面倒見の良さは初音もよく知っている。そしてそれに助けられた。バイトを紹介されもした。そうしてやっと自分で稼いでバレンタインデーのお返しが出来る。
「返す相手が意味知らないといいですけど。でも厄介ですよね、お互いにお返しに込められたメッセージ分かってなかったら成立しませんもんね」
 初音の片手で抱かれたクマのぬいぐるみのケースが2つ入った袋を一瞥して青年が言った。
「俺はマシュマロ好きだけどな」
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